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海城中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2017年度「海城中学校の理科」
攻略のための学習方法

物理、化学分野の問題で分かるように、応用レベルの問題集で出題されるような計算への習熟は必要不可欠である。

ただし、それは反復を重ねることで機械的に計算の手順を頭に入れるという意味ではない。たとえば、つり合いの問題では「支点からの水平方向の距離を用いてモーメントを考える」といった風に、解法の肝となる考え方を押さえておかなければ本番での応用が難しい。家庭や塾で普段使っているテキストの内容をきちんと身につけることは言うまでもないが、加えて解法テクニックの指南書を読んで学習しておくと役に立つだろう。

とは言え、合格者平均点でさえも6割を切るような入試問題で、全ての応用問題に適応できるとは考えない方が良い。その意味で、参考書に書かれていたり、どの問題集にも載っていたりするような知識や計算を問う問題でどれだけ確実に得点できるかが鍵になる。少なくとも一度解いた問題は全て正解できるようにする、といった意識で学習を進めたい。

また、一問一答レベルで用語を漏れ無く覚えるのは言うまでもないが、「水を生じる物質の加熱のしかた」や「自分の声は気導音と骨導音が合わさって聞こえている」といったレベルの知識を押さえておくことも重要である。参考書に載っているマメ知識やコラムの内容も注意して頭に入れておくと役に立つだろう。

多分に応用力が問われる問題であることから、過去問を含めた実戦演習の機会はなるべくたくさん確保したい。最低限、基礎知識や標準レベルの演習問題までは夏休みのうちに仕上げておくべきだろう。可能であれば夏休み中には応用・発展レベルの演習に着手し、10月頃から徐々に過去問を含めた実戦演習へと入ることができるのが理想である。その際には、受験しない学校のものであっても色々な過去問に触れておくのが望ましい。

以下、各分野の学習において特に注力すべき点を挙げておく。

 

生物分野

単純に知識さえあれば答えられるような問題は多くないと覚悟しておいた方が良い。

問題文の流れから空所に当てはまる用語を理解する力も求められるため、一問一答形式の問題集や同じ問題の反復練習だけでは心許ない。受験する、しないにかかわらず、色々な学校の過去問演習を通じて用語が問われる際の「ツボ」を押さえておくこと。また、身近な生命現象や器官の仕組みについての説明記述も出題されやすい。単に知識として覚えるだけでなく、なるべく物理的・化学的な側面からの理解に努めるのが望ましい。

 

地学分野

応用レベル以上の問題になると、図を理解せずに天体の問題を解くことはほぼ不可能である。太陽光線を受けて輝く惑星や衛星の見え方、天体間の位置関係の変化、緯度や地軸の傾きの違いが生む太陽高度や日照時間の違いといった事柄は、すべて作図によって説明できるようにしておくこと。

物理的・化学的な考え方との関連の強さで言えば、気象の問題にも注意したい。こちらも単に用語を覚えるだけでなく、気象の生成要因を図上で理解したり湿度を計算したりといった、応用的な問題に慣れておく必要がある。

 

物理分野

物理の計算問題は難解なイメージがあるが、応用する原則のパターンは限られている。力学にせよ電気にせよ数多くの問題に触れるのが望ましいのは当然だが、それぞれの問題を解くのに必要な「着眼点」を整理しておこう。

たとえば本年度の力学では「支点からの水平方向の距離」が重要なポイントであった。また、キャリーバッグのように身近な器具を題材とする問題が作られている点も見逃せない。複雑な計算を練習する以上に、基礎的な原理が生活でどう応用されているかもきちんと押さえておきたい。

 

化学分野

物理分野以上に計算処理のパターンが少ないのが化学分野である。基本的には物質を過不足なく反応させたり、溶質をとけるだけとかした際の量的な関係を押さえ、比例式を組み立てれば良い。他分野の計算練習の目的が色々な処理パターンを知ることにあるのに対し、化学分野では「結局またこのパターンか…」という実感を得ておく必要がある

一方、知識をきちんと身につけておくことも、他分野以上に重要である。気体の性質や生成・収集の方法、物質同士の反応、実験器具の使用目的とその手順など、覚えるべきことは多岐に渡る。代表的な実験処理については、ある程度図で説明できるようにしておくと良い。

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2017年度「海城中学校の理科」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

40個の解答箇所に対して時間は45分。分量が多いとは言えないが、単純な知識問題のように即答できる設問が少なく、記述、計算、描図など多様な形式に対する総合的な解答力が試される。

第1回試験の合格者平均点は例年6割に満たないことが多いので、3割落としても問題ない。解けそうなものから手を付けていくこと。

【大問1】てこのつり合い

  • 難度:
  • 時間配分:11分
  • ★必答問題

「棒の重さを考える」、「支点からの水平方向の距離を考える」など、てこの応用問題で定番の考え方を要求する設問の意図を見抜くのが難しい。5問中、3問正解できていれば上等。

問1 棒の重さを考えるつり合いの問題と同じ。重心Gに380gのおもりを吊るして考える。

問2 棒を時計回りに回転させようとする力(モーメント)は一定なので、Bが床から離れる際にばねはかりが生む反時計回りのモーメント、すなわち「支点からの距離×力」も一定である。したがって、Aからの距離Lとばねはかりの示す値Fとは反比例の関係にある。

問3 モーメントに影響するのは支店からの「水平方向の距離」である。3点A、G、Bが一直線上にある限り、棒と床との間の角度にかかわらず支点からの水平方向の距離の比は20:80=1:4で変わらない。よって、問1と同じ答えになる。

問4 キャリーバッグが地面に横たわっている状態(Z=0)で、支点からの「水平方向の距離」の比を考える。重心Gには15kgの力がかかっている一方、取っ手に取り付けられたばねはかりが示す値は3kgであることから、15×X=90×3が成り立つ。

問5 キャリーバッグでは支点、重心、ばねはかりが一直線上に位置しないため、角度Zが変わると「支点からの水平方向の距離の比」が変化する。具体的には、取っ手を持ち上げるのに従い支点から重心までの距離に対するばねはかりまでの距離の比が大きくなるため、ばねはかりの示す値は小さくなる。

そして、重心Gが支点の真上に来たとき、時計回りのモーメントが0となるので、反時計回りのモーメントも0、すなわちばねはかりの示す値も0となる。その際、Zの値が65度になることがグラフから読み取れるので、角Yは90−65=25[度]と計算できる。

【大問2】気体の性質と反応

  • 難度:やや難
  • 時間配分:13分
  • ★必答問題

基礎的な問題が多く、計算もそこまで難しくない。必要な知識がきちんと頭に入っていれば、本年度の大問の中では一番解きやすいはず。こうした問題で確実に点を稼いでおきたい。

問1
(2) 塩化アンモニウムからアンモニアを発生させる方法として、「水酸化ナトリウムと少量の水を加える」と「水酸化カルシウムを加えて加熱する」の2つを覚えておきたい。「少量の水」と「加熱」が混ぜる物質を決定するキーワードである。

(3) 実験Cではアンモニアと同時に水(水蒸気)も発生する。加熱部から遠ざかった水蒸気は冷やされて液体となるが、それが底へ流れ込むと試験管が割れてしまう。したがって、加熱時には試験管の口を下に傾けて水が底へと流れないようにする。有機物(割りばし)や炭酸水素ナトリウムなど、水の発生を伴う加熱では全て同様である。

 

問2
(1) 窒素が酸素と結びついてできる窒素酸化物は、水にとけると「硝酸」になる。これが「酸性雨」の正体である。ヘリウムは水素の次に軽い気体で、空気よりも軽いヘリウムを入れた風船は空気中を上昇していく。水素は酸素と反応して爆発を起こす危険があるので、普通に加熱しても反応しないヘリウムが使われている。

 

問3
(1) メタン1Lと酸素2Lが完全燃焼すると二酸化炭素1Lが生成され、気体の体積は差し引き2L減少する。燃焼後、混合気体Ⅰの体積は15Lから9Lまで6L減少しているから、完全燃焼したメタンと酸素はそれぞれ3L、6Lであると分かる。また、このとき発生した二酸化炭素は3Lであるから、残った9Lから3Lを引いた6Lがメタンか酸素かのどちらかである。6Lがメタンだとすれば、燃焼前の体積は「メタン9L、酸素6L」となり、「酸素よりメタンが少ない」という条件と食い違う。よって、6Lは酸素であり、燃焼前の体積は「メタン3L、酸素12L」であったと考えられる。

(2) (1)と同様、プロパンと酸素を完全燃焼させると混合気体の体積は減少する。つまり、残る気体の体積を最小にしようと思えば「燃やせるなら燃やした方が良い」ということになるので、混合気体22Lが全て燃焼して二酸化炭素だけが残る状況を考えれば良い。完全燃焼が起こるときにはプロパン1Lと酸素5Lの計6Lが反応し、3Lの二酸化炭素が発生する。したがって、22Lの気体が全て燃焼した際に生じる二酸化炭素の体積は22×3/6=11[L]と求められる。

(3) 単なるつるかめ算。問3の中では一番簡単だろう。16Lが全てプロパンであるという仮定から出発して、(16×3−26)÷(3−1)=11[L]と求められる。(1)と(2)が分からないからといって、(3)を解かないようなことがあるともったいない。

【大問3】耳のつくりと音

  • 難度:やや難
  • 時間配分:11分

基本的には知識問題だが、一筋縄ではいかない。問3や問4のような問題を解いたことのある受験生は少ないだろうから、本番での思考力が物を言う。少なくとも、他の問題では確実に点を稼ぎたい。

問2 内耳には傾きを知覚する前庭、回転を知覚する半規管が存在する。それぞれの部位が指示されていれば難しくないのだが、こういったことに自ら気付いて知識を応用する力こそが大事。

 

問3
(1) まず、音が距離の短い右耳に届くまでを考える。このとき左耳でとらえる音も同じ距離を進んでいるはずだから、その分を差し引いた残りの距離を進むのにかかる時間だけ音を聞くのが遅れることになる。ここで、斜辺を20cmとする30°、60°、90°の直角三角形ができていることに注意。正三角形を半分に割った形であることから、左耳までの距離は右耳までの距離よりも20÷2=10[cm]長いと分かる。よって、この10cmを進むのにかかる時間を10÷34000=1/3400[秒]の式で求めれば良い。

(2) (1)の問題文がヒント。脳では左右の耳に音が届く時間差で音源の方向が認識されることから、「音源の方向を認識しにくい=時間差がとらえにくい」という論理になる。時間差がとらえにくくなる原因として、水中では音の伝わり方が速くなり、例えば(1)の設定であれば10cmの差を進むのにかかる時間が短くなることを考えれば良い。

 

問4【あ】が分かりにくい。水を振動させることができなかった音はどうなるのか?水の代わりにコンクリート壁を考えてみることで、「反射」というキーワードを思いつくかもしれない。

【大問4】地球の自転と気候変動

  • 難度:やや難
  • 時間配分:10分
  • ★必答問題

リード文で扱われている内容は非常に難しいが、問5を除く各設問は天体を図でとらえる考え方が身についていれば、それほど難しくない。話の全体像がつかめないときは、部分の攻略を意識すること。

問2 作図によって南中高度や日射時間をとらえられるようにしておきたい。地軸の傾きが大きい場合、小さい場合の図を描いて南中高度と昼の長さをそれぞれ比べれば、高度は高くなり、昼の長さは長くなることが容易に確認できる。

 

問5 深く考えなければ簡単な問題である。「地球と太陽の距離が近いほど地球は暖かくなる」ということをまず念頭に置く。現在の地球で太陽との距離が最も近くなる1月には、北半球は冬であるから寒さが和らいでいる、すなわち季節性が減少している。一方、南半球は夏であるから暑さが増している、すなわち季節性が増大している。このように、地球と太陽の距離の変化がもたらす季節性への影響は南北半球で真逆になることが分かる。

※ 本問のポイントは本来、「自転軸の首振り運動によって、南中高度が最大になる夏が太陽との距離が近いときに訪れるのか、遠いときに訪れるのかということが変わってくる」という問題文中の記述を正しく理解することにある。

ここで述べられているのは、夏における地球と太陽との距離の変化が「公転軌道上の同じ位置にある地球の自転軸の倒れる向きが変わることによって生じる」ということである。

たとえば現在では、太陽との距離が最も近い1月、自転軸は北極側が太陽から遠ざかるように倒れているが、首振り運動が半周する約13000年後には、同時期に北極側が太陽に近づくように倒れている状況が訪れる。極端に言えば、自転軸の首振り運動は「現在の冬をやがて夏へと変えてしまう」ということである。

つまり、ある季節における地球と太陽の距離の変化は首振り運動がもたらす自転軸の向きの変化がもたらしているのであり、地球と太陽の距離が季節性に与える影響を考えることが、結果として自転軸の首振り運動による影響を考えることを意味する。

しかし、本文の記述からそこまで理解するのは難しい。きちんと理解してこの問題を正解できた受験生は、おそらくほとんどいなかったのではないだろうか…

 

問6
(1) 氷期には陸上の水が凍った状態で留められ、海へ流れ込まなくなる。その結果海水面は間氷期に比べて低くなる。逆に地球温暖化は陸上の氷をとかして海へと流れ込む水を増やすことで、海水面上昇の原因を作っている。

攻略のポイント

難問が多いが、考え方さえ分かってしまえば答えるのに時間はかからない問題がほとんどである。

問題を処理する手際はさほど正答率に影響しないだろうから、解き方の分かる問題の数が単純に得点を左右する。問題集でよく目にする計算・記述問題や知識問題を確実に押さえるという意識に徹すれば合格者平均程度は確保できるので、考え方の見当がつかないまま一つの問題に時間を費やした結果、解けたはずの問題が解けなかった、という事態だけは避けたい。

また、記述問題は知識問題の要素を含むものの、問題文中に手がかりを求めさせる形式が基本である。時間が許す限り、諦めずに考えてみよう。

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