海城中学校 入試対策
2016年度「海城中学校の社会」
攻略のための学習方法
出題構成
海城中学校の社会の入試問題は、他校に類を見ないユニークな形式となっている。
大問は一つで、あるテーマにもとづく1000文字を超える長い本文の中に、
① 選択問題や用語記入などの基本的問題7~8問
② 写真や統計・グラフなどを読み取って50字あるいは150~200字程度の記述にまとめる問題1~2問
が含まれていて、総問題数10問程度の総合問題形式で出題される。
基本的問題
上記①の基本問題については問題数も少なく、難易度も海城中学の高い偏差値を考えれば特別に難しい問題ではない。
出題範囲に偏りはなく、歴史・地理・政治経済すべての分野からひろく選ばれている。
受験勉強はともすると、覚えることの多い歴史分野に時間をかけがちだが、海城対策としては各分野の基本事項をまんべんなく学習し、それらのことがらの背景・原因や、もたらした結果・他のできごととの関連など、少し掘り下げてまとめて覚える必要がある。
ヨーロッパ・アジア・中東の地理なども出題されているので、白地図や資料集に普段から親しんで、使われている写真や図表に慣れて、歴史・政治のできごとと絡めて覚えれば得点源となるはずである。
一問の配点が大きいので取りこぼしを少なくし、速やかに答えて長文記述に時間を多く配分できるよう、過去問で練習しておきたい。
長文記述
上記②の長文記述については、テキストの単純な暗記では対処できない点がやはりやっかいなところである。
テーマとなる話題はユニークでバラエティ豊かだ。海城中学校の所在地の街の変遷〈平成23年度・第一回〉や社会の変化と温泉の利用目的〈平成27年度・第一回〉など、普段あまり考えたことのないようなテーマが取り上げられ、最初は面食らうかもしれないが、新しい物語を読むような気持ちで、楽しんで本文を読み進めるくらいの心構えが欲しいところである。
そして、テーマに沿った資料やグラフが示されるのだが、注意したいのは資料を通り一遍に読み取っただけでは不十分だということである。資料Aと資料Bのこの数値に差がある、といった程度の指摘にとどまらず、その差から推測できるCという結論を導き出す分析力こそが海城中学校が受験生に求めている能力なのだ。
だからといって、資料・データの分析ばかりに気を取られて、本文の読み取りをおろそかにしてはいけない。
1000文字超と量が多いので、慌てて読んでしまいがちだが、実際の設問を見てみると、「本文と資料1・資料2を参考にして・・・・・・」といった表現がよく見られる。
実は、この長い本文の中に解答に使える重要なデータや出来事が多く説明されているのが、海城の社会の一大特徴なのである。
先ほど例として挙げた「Cという結論」も、本文に手がかりがある場合が多い。
本文をよく読んで重要点をまとめ、指定された資料と合わせて読み取れば適切な解答を構成できるように問題が作られていて、難解な知識や細か過ぎる情報を求められているわけではないのだ。
簡潔にまとめると、海城中学校の社会の記述問題に向けては、以下のような力をつける訓練が必要となる。
●1000文字を超える長文を読み、解答に必要な部分を抜き出してまとめる読解力。
本文を読みながら線を引いたり、余白に書き出したりしておけば最後にまとめる時に作業がはかどる。
●与えられた資料・データを読み取りその一歩先まで考える分析力。
よく資料が引用される『日本国勢図会』などに目を通し、データの特徴やその背景なども考えるようにしよう。
●上記2点の内容を100字や200字でまとめる構成力。
そして、実際に試験に臨んだ時には、設問で指定された条件を必ず守り、示された資料をしっかり活用することが良い解答を得る一番の近道であることを意識して欲しい。
他校の社会の問題には見られない長い本文や200字あまりも要求される解答に、気後れしてしまう人もいるかもしれないが、先にも述べたとおり、テキストにも載っていないような難しい知識や細部にこだわった情報は必要ないのである。「自由に自分の考えを述べなさい」といった問題とも異なっている。あくまで、本文を正確に読み、資料と比べて簡潔にまとめる「論理的」な思考力を期待されているのだ。
普段の学習において、「なぜそうなったのか」とか「この先どうなるのか」というように論理的に考える癖をつけておくことが大事である。また、過去問に積極的に取り組み、本校の特殊な出題形式に慣れておくことも大切であることはいうまでもない。
【平成28年度・注】
前述のとおり、今年度の記述問題は国語色が弱まり、与えられた資料から考えられることを問うという社会らしい記述問題となっている。来年度の動向に注意しておきたい。
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2016年度「海城中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
今年度は長文記述3問、用語記入3問、記号選択・並べ替え6問という構成である。
本文約1500字、長文記述3問が160字・130字・70字と分量も多い。知識問題9問は10分程度で済ませ、残りの時間は本文と資料の読み取り・長文記述に使うといった配分となろうか。
【大問1】記述中心の総合問題
- 難度:難
- 時間配分:45分
- ★必答問題
例年、国語の読解問題のように本文の要旨を読み取ってまとめる記述問題が見られた本校の試験であるが、今年度は国語色が薄まり、資料・データを読み取ってそこから考察できることをまとめるという、言わば社会らしい記述問題となっている。
問1 時代順の並べ替え。年代が近いので、正確な知識がないと迷ってしまう。
問2・問3 世界地理・国際関係の問題も少しだけ出題されている。
問4 それぞれの資料から、夏季に船舶・冬季に自動車輸送が増加すること、一年の半分以上が氷点下の気温で冬は河川が完全に凍結すること、夏に大型の船が通れる川も多く、冬季は凍結した河川の一部が道路として利用されていることがわかり、厳寒地の特徴が読み取れる。資料が丁寧に示されているので取り組みやすいだろう。
<時間配分目安:13分>
問5 鎌倉に集中する道の様子や有力な御家人の領地の位置など、考えやすい資料がきちんと示されているので、あとは当時の封建制度における主従関係に触れてまとめればよい。
以上の問4・問5とも、ひとつひとつの資料をよくみて、無駄なく活用すればうまくまとめられるように作られているので、以前の本校の記述問題よりは書きやすくなっている印象を受ける。
<時間配分目安: 12分>
問6 群馬方面に向かう中山道であることから、浅間山であろうと推測できる。
問7 政治経済分野からも出題されている。「すべて選びなさい」という設問は、選択肢すべてを正確に吟味しなければならないので、特に注意が必要である。
問8 四大公害病の一つなので、本校の受験者であれば当然間違えてはいけないレベルの問題である。
問9 3つの資料から、高速道路の整備が高地にまで及び、トンネルや橋などの複雑な構造物が増えている事実が読み取れる。高地まで資材・人材を運ぶ経費や、複雑で高度な技術を要する工事に建造費がかさむことが推測されるだろう。この問題も、資料の指すところをよく考えれば答案が書けるようにできているので、しっかり書き込みたい。
<時間配分目安: 10分>
<時間配分目安:知識問題(問1~3・6~8)まとめて10分>
攻略のポイント
計9問の知識問題を速やかに解き、記述問題に多く時間を回したい。過去問を解いてみて、この知識問題部分でてこずるようなら、テキストレベルの実力が足りないので、徹底した復習を。
記述問題は慣れる事が気持ちの余裕にもつながるので、過去問の第2回分まで繰り返し練習しておくこと。模範解答を覚えるくらいやり込むのも、解答の形式・パターンが身について良いだろう。綺麗な解答が書けなくても、部分点は必ずもらうつもりで、臆せず試験に向かって欲しい。
なお、資料から読み取れることを論ずるという今年度のような社会らしい記述問題が今後も続くのか、傾向に注意したい。
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