海城中学校 入試対策
2017年度「海城中学校の社会」
攻略のための学習方法
出題構成
海城中学校の社会の入試問題は、他校に類を見ないユニークな形式となっている。
大問は一つで、あるテーマにもとづく1000文字を超える長い本文の中に、
① 選択問題や用語記入などの基本的問題7~8問
② 写真や統計・グラフなどを読み取って50字あるいは150~200字程度の記述にまとめる問題1~2問
が含まれていて、総問題数10問程度の総合問題形式で出題される。
基本的問題
上記①の基本問題については問題数も少なく、難易度も海城中学の高い偏差値を考えれば特別に難しい問題ではない。
出題範囲に偏りはなく、歴史・地理・政治経済すべての分野からひろく選ばれている。
受験勉強はともすると、覚えることの多い歴史分野に時間をかけがちだが、海城対策としては各分野の基本事項をまんべんなく学習し、それらのことがらの背景・原因や、もたらした結果・他のできごととの関連など、少し掘り下げてまとめて覚える必要がある。
ヨーロッパ・アジア・中東の地理なども出題されているので、白地図や資料集に普段から親しんで、使われている写真や図表に慣れて、歴史・政治のできごとと絡めて覚えれば得点源となるはずである。
一問の配点が大きいので取りこぼしを少なくし、速やかに答えて長文記述に時間を多く配分できるよう、過去問で練習しておきたい。
長文記述
上記②の長文記述については、テキストの単純な暗記では対処できない点がやはりやっかいなところである。
テーマとなる話題はユニークでバラエティ豊かだ。海城中学校の所在地の街の変遷〈平成23年度・第一回〉や社会の変化と温泉の利用目的〈平成27年度・第一回〉など、普段あまり考えたことのないようなテーマが取り上げられ、最初は面食らうかもしれないが、新しい物語を読むような気持ちで、楽しんで本文を読み進めるくらいの心構えが欲しいところである。
そして、テーマに沿った資料やグラフが示されるのだが、注意したいのは資料を通り一遍に読み取っただけでは不十分だということである。資料Aと資料Bのこの数値に差がある、といった程度の指摘にとどまらず、その差から推測できるCという結論を導き出す分析力こそが海城中学校が受験生に求めている能力なのだ。
だからといって、資料・データの分析ばかりに気を取られて、本文の読み取りをおろそかにしてはいけない。
1000文字超と量が多いので、慌てて読んでしまいがちだが、実際の設問を見てみると、「本文と資料1・資料2を参考にして・・・・・・」といった表現がよく見られる。
実は、この長い本文の中に解答に使える重要なデータや出来事が多く説明されているのが、海城の社会の一大特徴なのである。
先ほど例として挙げた「Cという結論」も、本文に手がかりがある場合が多い。
本文をよく読んで重要点をまとめ、指定された資料と合わせて読み取れば適切な解答を構成できるように問題が作られていて、難解な知識や細か過ぎる情報を求められているわけではないのだ。
簡潔にまとめると、海城中学校の社会の記述問題に向けては、以下のような力をつける訓練が必要となる。
●1000文字を超える長文を読み、解答に必要な部分を抜き出してまとめる読解力。
本文を読みながら線を引いたり、余白に書き出したりしておけば最後にまとめる時に作業がはかどる。
●与えられた資料・データを読み取りその一歩先まで考える分析力。
よく資料が引用される『日本国勢図会』などに目を通し、データの特徴やその背景なども考えるようにしよう。
●上記2点の内容を100字や200字でまとめる構成力。
そして、実際に試験に臨んだ時には、設問で指定された条件を必ず守り、示された資料をしっかり活用することが良い解答を得る一番の近道であることを意識して欲しい。
他校の社会の問題には見られない長い本文や200字あまりも要求される解答に、気後れしてしまう人もいるかもしれないが、先にも述べたとおり、テキストにも載っていないような難しい知識や細部にこだわった情報は必要ないのである。「自由に自分の考えを述べなさい」といった問題とも異なっている。あくまで、本文を正確に読み、資料と比べて簡潔にまとめる「論理的」な思考力を期待されているのだ。
普段の学習において、「なぜそうなったのか」とか「この先どうなるのか」というように論理的に考える癖をつけておくことが大事である。また、過去問に積極的に取り組み、本校の特殊な出題形式に慣れておくことも大切であることはいうまでもない。
【平成29年度・注】
平成28年度以降の記述問題は国語色が弱まり、与えられた資料から考えられることを問うという社会らしい記述問題となっている。今後も同様の傾向が続くか動向に注意しておきたい。
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攻略ポイント
特徴と時間配分
記号選択と適語記入の問題が計8問、記述問題が50字で2問・100字と150で1問ずつの計4問という構成で、例年と大きな変化はない。1500字ほどのリード文と前半の問題は15分程度で済ませて、後半の記述問題に十分な時間を残したい。
【大問1】各分野の問題
- 難度:標準
- 時間配分:15分
- ★必答問題
電気自動車を話題に、各分野出題されている。
問一 ハイブリッド車には、エンジンを発電だけに利用したり車軸の回転にも使ったりなど、エンジンとモーターの特徴を生かしたいくつかの型が存在する。
問三 解体新書の刊行は1774年で、選択肢アが選べる。島原・天草一機は1600年代・渋染一揆と大塩平八郎の乱は共に1800年代の出来事である。
問四 第一次世界大戦(1914~1918)の時期に当たる。
問五 単純にAを世界遺産・Bを国会議員と答えて正解となるかは疑問である。世界文化遺産・衆議院議員とできるかぎり精密に答えられるように覚えておこう。
問七 まず、車体が黒一色という点の違いはすぐ指摘できるだろう。また、機械によるオートメーション化も容易に頭に浮かぶので、この2点はすぐ書けるはずである。他には、ベルトコンベアによる流れ作業は現代も同様だが、車体のベース・基本構造が同じであれば、ひとつの生産ラインで色や内装などの異なる車種を作れる点が、当時から変化・進歩した部分として挙げられるだろう。
問八 文中には直接のヒントは見当たらないが、「戦後復興が本格化してガソリン車の生産が急増」とあるのが手がかりになる。戦時中は石油の輸入も制限されていた。戦争直後のこの時期には石油も含めて様々な物資の生産・輸入が不足しており、ガソリンも十分な供給は望めなかったはずである。戦後の石油不足が背景にあると推測される。
問九 問八と同様、「自動車の普及が社会問題の原因に」という部分から考えられることがある。高度経済成長に伴う環境汚染である。自動車の排気ガスは大気汚染の大きな原因のひとつであり、法律の整備もあって汚染物質を減らす対策が取られるようになったのである。
【大問2】記述問題
- 難度:難
- 時間配分:30分
- ★必答問題
問十 資料から読み取れることを基に考える記述問題。資料1からは自動車産業に従事する人の多さがわかる。資料2は自動車会社がその傘下に、部品などを製造する多くの関連会社を有していることを示したもの。資料3では、電気自動車はガソリン車ほど多くの部品を必要とせず、3割ほど部品点数が減るという事実が読み取れる。
以上、主に三点の事実から、ガソリン車から電気自動車へと生産が移行した場合、部品生産が減る→関連工場の受注が減少する→従業員の減給・解雇につながる、という変化が予想されるのである。
攻略のポイント
本校を受験する生徒のレベルから考えて、前半部分は全問正解できるくらいの実力は必要とされる。
その上で後半の記述問題でどれだけ得点を積み上げられるかの勝負になる。超難問というほどでもないので、類似問題を数多くこなしてコツを掴んでおこう。資料を読み取る問題は頻出である。統計・グラフの読み取りをよく練習し、データから原因や結果を推測する思考力を養っておこう。
社会の出来事に広く関心を持ち、その背景や周囲への影響などをよく考える習慣を持てば実力アップに大きく資するということは、強く指摘しておきたい。
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