海城中学校 入試対策
2018年度「海城中学校の社会」
攻略のための学習方法
出題構成
海城中学校の社会の入試問題は、他校に類を見ないユニークな形式となっている。
大問は一つで、あるテーマにもとづく1000文字を超える長い本文の中に、
① 選択問題や用語記入などの基本的問題7~8問
② 写真や統計・グラフなどを読み取って50字あるいは150~200字程度の記述にまとめる問題1~2問が含まれていて、総問題数10問程度の総合問題形式で出題される。
基本的問題
上記①の基本問題については問題数も少なく、難易度も海城中学の高い偏差値を考えれば特別に難しい問題ではない。
出題範囲に偏りはなく、歴史・地理・政治経済すべての分野からひろく選ばれている。
受験勉強はともすると、覚えることの多い歴史分野に時間をかけがちだが、海城対策としては各分野の基本事項をまんべんなく学習し、それらのことがらの背景・原因や、もたらした結果・他のできごととの関連など、少し掘り下げてまとめて覚える必要がある。
ヨーロッパ・アジア・中東の地理なども出題されているので、白地図や資料集に普段から親しんで、使われている写真や図表に慣れて、歴史・政治のできごとと絡めて覚えれば得点源となるはずである。
一問の配点が大きいので取りこぼしを少なくし、速やかに答えて長文記述に時間を多く配分できるよう、過去問で練習しておきたい。
長文記述
上記②の長文記述については、テキストの単純な暗記では対処できない点がやはりやっかいなところである。
テーマとなる話題はユニークでバラエティ豊かだ。社会の変化と温泉の利用目的〈平成27年度・第一回〉や図書館船や医療船の役割や意義(平成30年・第一回)など、普段あまり考えたことのないようなテーマが取り上げられ、最初は面食らうかもしれないが、新しい物語を読むような気持ちで、楽しんで本文を読み進めるくらいの心構えが欲しいところである。
そして、テーマに沿った資料やグラフが示されるのだが、注意したいのは資料を通り一遍に読み取っただけでは不十分だということである。資料Aと資料Bのこの数値に差がある、といった程度の指摘にとどまらず、その差から推測できるCという結論を導き出す分析力こそが海城中学校が受験生に求めている能力なのだ。
だからといって、資料・データの分析ばかりに気を取られて、本文の読み取りをおろそかにしてはいけない。
1000文字超と量が多いので、慌てて読んでしまいがちだが、実際の設問を見てみると、「本文と資料1・資料2を参考にして・・・・・・」といった表現がよく見られる。
実は、この長い本文の中に解答に使える重要なデータや出来事が多く説明されているのが、海城の社会の一大特徴なのである。
先ほど例として挙げた「Cという結論」も、本文に手がかりがある場合が多い。
本文をよく読んで重要点をまとめ、指定された資料と合わせて読み取れば適切な解答を構成できるように問題が作られていて、難解な知識や細か過ぎる情報を求められているわけではないのだ。
簡潔にまとめると、海城中学校の社会の記述問題に向けては、以下のような力をつける訓練が必要となる。
●1000文字を超える長文を読み、解答に必要な部分を抜き出してまとめる読解力。
本文を読みながら線を引いたり、余白に書き出したりしておけば最後にまとめる時に作業がはかどる。
●与えられた資料・データを読み取りその一歩先まで考える分析力。
よく資料が引用される『日本国勢図会』などに目を通し、データの特徴やその背景なども考えるようにしよう。
●上記2点の内容を100字や200字でまとめる構成力。
そして、実際に試験に臨んだ時には、設問で指定された条件を必ず守り、示された資料をしっかり活用することが良い解答を得る一番の近道であることを意識して欲しい。
他校の社会の問題には見られない長い本文や200字あまりも要求される解答に、気後れしてしまう人もいるかもしれないが、先にも述べたとおり、テキストにも載っていないような難しい知識や細部にこだわった情報は必要ないのである。「自由に自分の考えを述べなさい」といった問題とも異なっている。あくまで、本文を正確に読み、資料と比べて簡潔にまとめる「論理的」な思考力を期待されているのだ。
普段の学習において、「なぜそうなったのか」とか「この先どうなるのか」というように論理的に考える癖をつけておくことが大事である。また、過去問に積極的に取り組み、本校の特殊な出題形式に慣れておくことも大切であることはいうまでもない。
【平成30年度・注】
平成28年度以降の記述問題は国語色が弱まり、与えられた資料から考えられることを問うという社会らしい記述問題となっている。今後も同様の傾向が続くか動向に注意しておきたい。
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2018年度「海城中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
記号選択と適語記入の問題が計8問、記述問題が50字で1問・100字と150で1問ずつの計3問という構成で、例年と大きな変化はない。1700字ほどのリード文と適語記入・選択肢の問題は15分程度で済ませて、記述問題に十分な時間を残したい。
【大問1】各分野の問題
- 難度:標準
- 時間配分:15分
日本で活躍する専門的な役割を持つ船という話題で、地理・歴史・政治経済についての問題が出されている。
問一 南蛮貿易では、スペイン・ポルトガルなどとの間で、生糸や絹織物・火薬などが輸入され、日本からは主に銀が輸出された。当時、世界の銀の3分の1は日本産だったとされる。
問二 A地点は清盛が日宋貿易の拠点として整えた大輪田泊である。瀬戸内海が宋との貿易の重要な航海ルートになるのである。
問三 好きな時・好きな場所・好きな方法で思想・意見・事実を対外的に表わす権利が表現の自由である。書物の出版などにおいて検閲されない自由である。
問四 ア 国連難民高等弁務官事務所の役割。
イ 国連児童基金の活動。
ウ 政府開発援助は文字通り各国の政府が行う活動である。
問五 警察は都道府県、自衛隊は国の管轄なので市区町村の運営ではない。
問六 浮世絵が海外に知られるようになったのは開国して貿易が開始されてからのことなので、ウは誤り。
問七 資料1から、移動図書館事業が広島県から倉橋町に移管されたことがわかる。資料2では町の運営になってから配本所が増えたこと、資料3では住民の要望に応えた配本が可能になったことが読み取れる。巡回の回数が増え、サービスの内容もきめ細やかになった点をまとめる。
問八 (1)A―ウ 川が形成した三角州に街が広がっている様子がわかる。世界遺産は原爆ドームのことであろう。
B―エ ところどころ黒く見えるのがため池である。香川県讃岐平野付近。
C―イ 巨大な石油タンクが並ぶコンビナートであることがわかる。岡山県水島地区。
D―ア 愛媛県。山の斜面を利用したミカンや伊予かんの栽培が盛んである。
(2)大仙古墳は大阪府堺市にあるのでウが間違い。
【大問2】記述問題
- 難度:難
- 時間配分:30分
- ★必答問題
問九 資料4から、済生丸は大きな病院と同じような医療機器が備えられていて、様々な検査・治療が済生丸一か所でできることがわかる。資料5では船が巡回する諸島部で高齢化が進み、高齢者が多くなっている事実がわかる。資料6はがんの早期発見の大切さが、資料七からは船ががん検診やがんの治療に多く利用されていることが読み取れる。
たとえ島が橋で結ばれても、高齢者が遠くの大病院まで出かけるのは大変である。また、がんの早期発見や継続した治療という意味でも、医療船が巡回する意義は大きいと考えられるのである。
攻略のポイント
本校を受験する生徒のレベルから考えて、前半部分は全問正解できるくらいの実力は必要とされる。
その上で後半の記述問題でどれだけ得点を積み上げられるかの勝負になる。超難問というほどでもないので、類似問題を数多くこなしてコツを掴んでおこう。資料を読み取る問題は頻出である。統計・グラフの読み取りをよく練習し、データから原因や結果を推測する思考力を養っておこう。
社会の出来事に広く関心を持ち、その背景や周囲への影響などをよく考える習慣を持てば実力アップに大きく資するということは、強く指摘しておきたい。
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