海城中学校 入試対策
2019年度「海城中学校の社会」
攻略のための学習方法
出題構成
海城中学校の社会の入試問題は、他校に類を見ないユニークな形式となっている。
大問は一つで、あるテーマにもとづく1000文字を超える長い本文の中に、
① 選択問題や用語記入などの基本的問題7~8問
② 写真や統計・グラフなどを読み取って50字あるいは150~200字程度の記述にまとめる問題1~3問が含まれていて、総問題数10問程度の総合問題形式で出題される。
基本的問題
上記①の基本問題については問題数も少なく、難易度も海城中学の高い偏差値を考えれば特別に難しい問題ではない。
出題範囲に偏りはなく、歴史・地理・政治経済すべての分野からひろく選ばれている。
受験勉強はともすると、覚えることの多い歴史分野に時間をかけがちだが、海城対策としては各分野の基本事項をまんべんなく学習し、それらのことがらの背景・原因や、もたらした結果・他のできごととの関連など、少し掘り下げてまとめて覚える必要がある。
ヨーロッパ・アジア・中東の地理なども出題されているので、白地図や資料集に普段から親しんで、使われている写真や図表に慣れて、歴史・政治のできごとと絡めて覚えれば得点源となるはずである。
一問の配点が大きいので取りこぼしを少なくし、速やかに答えて長文記述に時間を多く配分できるよう、過去問で練習しておきたい。
長文記述
上記②の長文記述については、テキストの単純な暗記では対処できない点がやはりやっかいなところである。
テーマとなる話題はユニークでバラエティ豊かだ。図書館船や医療船の役割や意義(2018年度・第1回)や民泊の規制緩和の理由と新宿区の条例の意図するところ(2019年度・第1回)など、普段あまり考えたことのないようなテーマが取り上げられ、最初は面食らうかもしれないが、新しい物語を読むような気持ちで、楽しんで本文を読み進めるくらいの心構えが欲しいところである。
そして、テーマに沿った資料やグラフが示されるのだが、注意したいのは資料を通り一遍に読み取っただけでは不十分だということである。
資料Aと資料Bのこの数値に差がある、といった程度の指摘にとどまらず、その差から推測できるCという結論を導き出す分析力こそが海城中学校が受験生に求めている能力なのだ。
だからといって、資料・データの分析ばかりに気を取られて、本文の読み取りをおろそかにしてはいけない。
1000文字超と量が多いので、慌てて読んでしまいがちだが、実際の設問を見てみると、「本文と資料1・資料2を参考にして・・・・・・」といった表現がよく見られる。
実は、この長い本文の中に解答に使える重要なデータや出来事が多く説明されているのが、海城の社会の一大特徴なのである。
先ほど例として挙げた「Cという結論」も、本文に手がかりがある場合が多い。
本文をよく読んで重要点をまとめ、指定された資料と合わせて読み取れば適切な解答を構成できるように問題が作られていて、難解な知識や細か過ぎる情報を求められているわけではないのだ。
簡潔にまとめると、海城中学校の社会の記述問題に向けては、以下のような力をつける訓練が必要となる。
●1000文字を超える長文を読み、解答に必要な部分を抜き出してまとめる読解力。
本文を読みながら線を引いたり、余白に書き出したりしておけば最後にまとめる時に作業がはかどる。
●与えられた資料・データを読み取りその一歩先まで考える分析力。
よく資料が引用される『日本国勢図会』などに目を通し、データの特徴やその背景なども考えるようにしよう。
●上記2点の内容を100字や200字でまとめる構成力。
そして、実際に試験に臨んだ時には、設問で指定された条件を必ず守り、示された資料をしっかり活用することが良い解答を得る一番の近道であることを意識して欲しい。
他校の社会の問題には見られない長い本文や200字あまりも要求される解答に、気後れしてしまう人もいるかもしれないが、先にも述べたとおり、テキストにも載っていないような難しい知識や細部にこだわった情報は必要ないのである。「自由に自分の考えを述べなさい」といった問題とも異なっている。
あくまで、本文を正確に読み、資料と比べて簡潔にまとめる「論理的」な思考力を期待されているのだ。
普段の学習において、「なぜそうなったのか」とか「この先どうなるのか」というように論理的に考える癖をつけておくことが大事である。また、過去問に積極的に取り組み、本校の特殊な出題形式に慣れておくことも大切であることはいうまでもない。
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2019年度「海城中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
記号選択と適語記入の問題が計7問、記述問題が120字・130字・100字の計3問という構成で、例年と大きな変化はない。
1500字ほどのリード文と適語記入・選択肢の問題は15分程度で済ませて、記述問題に十分な時間を残したい。
【大問】総合問題
- 難度:標準
- 時間配分:45分
観光の歴史を題材とした総合問題。
問1 同じイスラム教国でも、サウジアラビアは戒律が厳しく、トルコは比較的服装の自由が許されているので、イが誤り。
問2【難/筆答問題】
まず、資料1からは、世の中の不安定が読み取れる。自然災害や飢饉の多発、疫病の流行などにより、高い身分の貴族たちにも死者が出ていた様子がわかる。科学の発達していない時代には神仏に頼るしかなかったのである。
資料2からは熊野詣が阿弥陀如来を信仰することを意味していることが分かる。阿弥陀如来はすべての者を極楽浄土へ導くとされ、平安時代後期の末法思想の流行に応じて、現世の幸福を諦め、生まれ変わって来世の安寧を願う阿弥陀仏信仰が盛んになったものと思われる。
阿弥陀如来を信奉する意味がわかったかどうかで、得点に差が出た問題かもしれない。
問3 「富嶽三十六景」の作者・葛飾北斎。ゴッホやセザンヌも影響を受けたとされる。
問4 学制は1872年、地租改正と徴兵令はともに1873年の出来事。廃藩置県は使節団の出発直前の7月に行われた。
問5 アは冬の降水量(降雪量)から日本海側の新潟県、
イは夏の降水量の多さから梅雨や台風の影響を強く受ける熊本県、
ウは気温の低さと降水量の少なさから東北地方の宮城県、
エが太平洋側の気候と温暖さから静岡県となる。
問6 まず、畜産の割合が高いエとオは宮崎県・鹿児島県と推測されるので除外できる。
漁獲量の多いアは島が多く養殖や沿岸漁業の盛んな長崎県、工業生産額が多いウは製鉄所や石油化学コンビナートがある大分県と考えられる。残ったイが熊本県である。
問7 池田勇人内閣は1961年からの10年間で国民所得を倍増しようという「国民所得倍増計画」を打ち出し、経済政策に力を入れた。これは閣議決定された際の名称で、一般には「所得倍増計画」とも言われる。
問8 エ. 国籍を取得していない外国人には選挙権はない。
問9【難/筆答問題】
(1) 資料3は大阪を代表として、都市部での宿泊客が増え予約が取りづらい状況を説明している。国内邦人の利用が急激に増えたというデータは示されていない。
資料4を見ると、訪日外国人の旅行消費が急激に増えていることがわかり、それは客数自体も増えていることを表している。
外国人訪日客の急激な増加で都市部の宿泊施設数が不足しており、今後も増えることが予想されるインバウンドによる経済効果を逃さないためにも、建設に費用と時間がかかるホテルだけでなく、既存の施設を利用した民泊の規制を緩めて施設を増やそうとしているのである。
(2) 資料5で、もともと住居専用地域は地域住民の「良好な生活環境を保護する」目的であることが示されている。そのような地域に民泊施設ができるにあたって、資料6に示されたような規制が新宿区では設けられたのである。
近隣住民への周知や事前説明で納得してもらう、ごみ捨てを決められたとおりにしたり平日の利用を制限したりなどして、近隣住民の生活に悪影響がないように配慮を義務付けているのである。
問2・問9 (1)・(2)
- 難度:難
- 時間配分:
- ★必答問題
■難度:難 ★必答問題
攻略のポイント
本校を受験する生徒のレベルから考えて、記号選択・適語記入問題は全問正解できるくらいの実力は必要とされる。
その上で記述問題でどれだけ得点を積み上げられるかの勝負になる。超難問というほどでもないので、類似問題を数多くこなしてコツを掴んでおこう。
資料を読み取る問題は頻出である。統計・グラフの読み取りをよく練習し、データから原因や結果を推測する思考力を養っておこう。
社会の出来事に広く関心を持ち、その背景や周囲への影響などをよく考える習慣を持てば実力アップに大きく資するということは、強く指摘しておきたい。
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