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海城中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2022年度「海城中学校の社会」
攻略のための学習方法

出題構成

海城中学校の社会の入試問題は、他校に類を見ないユニークな形式となっている。

大問は一つで、あるテーマにもとづく1000文字を超える長い本文の中に、

 ① 選択問題や用語記入などの基本的問題7~10問

 ② 写真や統計・グラフなどを読み取って50字あるいは150~200字程度の記述にまとめる問題1~3問が含まれていて、総問題数10~12問程度の総合問題形式で出題される。

基本的問題

上記①の基本問題については問題数も少なく、難易度も海城中学の高い偏差値を考えれば特別に難しい問題ではない。

出題範囲に偏りはなく、歴史・地理・政治経済すべての分野から広く選ばれている。

受験勉強はともすると、覚えることの多い歴史分野に時間をかけがちだが、海城対策としては各分野の基本事項をまんべんなく学習し、それらのことがらの背景・原因や、もたらした結果・他のできごととの関連など、少し掘り下げてまとめて覚える必要がある

ヨーロッパ・アジア・中東の地理なども出題されているので、白地図や資料集に普段から親しんで、使われている写真や図表に慣れて、歴史・政治のできごとと絡めて覚えれば得点源となるはずである。

一問の配点が大きいので取りこぼしを少なくし、速やかに答えて長文記述に時間を多く配分できるよう、過去問で練習しておきたい。

長文記述

上記②の長文記述については、テキストの単純な暗記では対処できない点がやはりやっかいなところである。

テーマとなる話題はユニークでバラエティ豊かだ。シャネルの服飾から考える時代の変化や国内生産の理由(2020年度・第1回)、口蹄疫感染疑いの家畜の殺処分が遅れた理由(2021年度・第一回)など、普段あまり考えたことのないようなテーマが取り上げられ、最初は面食らうかもしれないが、新しい物語を読むような気持ちで、楽しんで本文を読み進めるくらいの心構えが欲しいところである

そして、テーマに沿った資料やグラフが示されるのだが、注意したいのは資料を通り一遍に読み取っただけでは不十分だということである。資料Aと資料Bのこの数値に差がある、といった程度の指摘にとどまらず、その差から推測できるCという結論を導き出す分析力こそが海城中学校が受験生に求めている能力なのだ

だからといって、資料・データの分析ばかりに気を取られて、本文の読み取りをおろそかにしてはいけない。

1000文字超と量が多いので、慌てて読んでしまいがちだが、実際の設問を見てみると、「本文と資料1・資料2を参考にして・・・・・・」といった表現がよく見られる。

実は、この長い本文の中に解答に使える重要なデータや出来事が多く説明されているのが、海城の社会の一大特徴なのである。

先ほど例として挙げた「Cという結論」も、本文に手がかりがある場合が多い。

本文をよく読んで重要点をまとめ、指定された資料と合わせて読み取れば適切な解答を構成できるように問題が作られていて、難解な知識や細か過ぎる情報を求められているわけではないのだ。

簡潔にまとめると、海城中学校の社会の記述問題に向けては、以下のような力をつける訓練が必要となる。

●1000文字を超える長文を読み、解答に必要な部分を抜き出してまとめる読解力。

本文を読みながら線を引いたり、余白に書き出したりしておけば最後にまとめる時に作業がはかどる。

与えられた資料・データを読み取りその一歩先まで考える分析力。

よく資料が引用される『日本国勢図会』などに目を通し、データの特徴やその背景なども考えるようにしよう。

上記2点の内容を100字や200字でまとめる構成力。

そして、実際に試験に臨んだ時には、設問で指定された条件を必ず守り、示された資料をしっかり活用することが良い解答を得る一番の近道であることを意識して欲しい。

他校の社会の問題には見られない長い本文や200字あまりも要求される解答に、気後れしてしまう人もいるかもしれないが、先にも述べたとおり、テキストにも載っていないような難しい知識や細部にこだわった情報は必要ないのである。「自由に自分の考えを述べなさい」といった問題とも異なっている。あくまで、本文を正確に読み、資料と比べて簡潔にまとめる「論理的」な思考力を期待されているのだ

普段の学習において、「なぜそうなったのか」とか「この先どうなるのか」というように論理的に考える癖をつけておくことが大事である。また、過去問に積極的に取り組み、本校の特殊な出題形式に慣れておくことも大切であることは言うまでもない。

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2022年度「海城中学校の社会」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

記号選択と適語記入の問題が計8問、記述問題が3問で計350字という構成で、例年と大きな変化はない。2000字ほどのリード文と適語記入・選択肢の問題は15分程度で済ませて、記述問題に十分な時間を残したい。

【大問】総合問題

  • 難度:
  • 時間配分:45分

かつては神判も行われていた日本の裁判の歴史についての文章を読んで答える問題。

問1 藤原京は天武天皇の計画に始まり持統天皇の代に完成した、日本で最初の本格的な条坊制の都である。唐の長安を手本にして694年に遷都され、平城京に遷るまで日本の都であった。

問2 資料1を見ると、まずは幕府や領主が裁判を行い事態の解決を図ろうとしていたことがわかる。しかし、やがて争いが再発し解決しきれていない。そこで、資料2・3でわかるような、神への誓いを重要視し湯起請に従っていた人々の心象を利用し、神判によって神へ伺いを立て、その結果に異議を挟む余地を無くし双方を納得させたのであろうと考えられる。

問3 石油は精製により重油・軽油・灯油などに分離される。その一つがナフサで石油化学製品の原料となる。

問4 南鳥島は日本最東端の島で三角形をしている(写真エ)。住人はいないが海上自衛隊や気象庁の人員が常駐している。火山の頂上にできたサンゴの環礁であり、日本海溝を隔てた太平洋プレート上にある。

問5 高知県を含む四国地方には3000mを超えるような山はなく、火山もないので選択肢のような対策は不要である。

問6 資料5を見ると、喧嘩両成敗法より以前から同様の取り決めが作られていたことがわかり、「新たに作り出した法」との評価は当たらない。また、資料4からは、法廷に訴え出た方には有利な裁定が下る仕組みになっていて、裁判を重要視する姿勢がみられることから、一概に「暴力的な法」であるとは言えないことがわかる。

問7 ア. 菅江真澄がどれほど優れた人物であったとしても、結局はその人個人の目を通して記録された情報・発信であり、この選択肢のように無批判に受け入れてしまうのは危険であろう。

問8 現代の刑事裁判では警察と検察が捜査し証拠を集めて、検察官が被告人を告発する。被告人には弁護人が付いて適正な捜査が行われたかを確認し、被告人の利益を守る。そして、裁判官は双方の主張を聞き、法にのっとり正当な判断を下すのである。しかし、遠山の金さんのようなやり方では、検察官と裁判官の両方の役割を金さんが兼任しており、公正な捜査が行われたか調べる人もおらず、被告人には弁護してくれる人がいないという状況で被告人に不利な判決が出かねず、現代の司法の考えからすると公正とは言えないものである。

問9 ア. 最高裁判所においては、長官は内閣が指名して天皇が任命し、その他の裁判官は内閣が任命する。

ウ. 犯罪事件以外の事案は民事裁判で争われる。

エ. 裁判は公正を期すため原則公開で行われ、一般人も傍聴できる。

問10 日本でも重大な刑事事件の第一審では裁判員制度が導入されている。有権者から無作為にくじで選任される。

攻略のポイント

本校を受験する生徒のレベルから考えて、記号選択・適語記入問題は全問正解できるくらいの実力は必要とされる。その上で、記述問題でどれだけ得点を積み上げられるかの勝負になる。超難問というほどでもないので、類似問題を数多くこなしてコツを掴んでおこう。資料を読み取る問題は頻出である。統計・グラフの読み取りをよく練習し、データから原因や結果を推測する思考力を養っておこう。

社会の出来事に広く関心を持ち、その背景や周囲への影響などをよく考える習慣を持てば実力アップに大きく資するということは、強く指摘しておきたい

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