海城中学校 入試対策
2023年度「海城中学校の社会」
攻略のための学習方法
〇出題構成
海城中学校の社会の入試問題は、他校に類を見ないユニークな形式となっている。
大問は一つで、あるテーマにもとづく1000文字を超える長い本文の中に、
① 選択問題や用語記入などの基本的問題7~10問
② 写真や統計・グラフなどを読み取って50字あるいは150~200字程度の記述にまとめる問題1~3問が含まれていて、総問題数10~12問程度の総合問題形式で出題される。
〇基本的問題
上記①の基本問題については問題数も少なく、難易度も海城中学の高い偏差値を考えれば特別に難しい問題ではない。
出題範囲に偏りはなく、歴史・地理・政治経済すべての分野からひろく選ばれている。
受験勉強はともすると、覚えることの多い歴史分野に時間をかけがちだが、海城対策としては各分野の基本事項をまんべんなく学習し、それらのことがらの背景・原因や、もたらした結果・他のできごととの関連など、少し掘り下げてまとめて覚える必要がある。
ヨーロッパ・アジア・中東の地理なども出題されているので、白地図や資料集に普段から親しんで、使われている写真や図表に慣れて、歴史・政治のできごとと絡めて覚えれば得点源となるはずである。
一問の配点が大きいので取りこぼしを少なくし、速やかに答えて長文記述に時間を多く配分できるよう、過去問で練習しておきたい。
〇長文記述
上記②の長文記述については、テキストの単純な暗記では対処できない点がやはりやっかいなところである。
テーマとなる話題はユニークでバラエティ豊かだ。シャネルの服飾から考える時代の変化や国内生産の理由(2020年度・第1回)や口蹄疫感染疑いの家畜の殺処分が遅れた理由(2021年度・第一回)など、普段あまり考えたことのないようなテーマが取り上げられ、最初は面食らうかもしれないが、新しい物語を読むような気持ちで、楽しんで本文を読み進めるくらいの心構えが欲しいところである。
そして、テーマに沿った資料やグラフが示されるのだが、注意したいのは資料を通り一遍に読み取っただけでは不十分だということである。資料Aと資料Bのこの数値に差がある、といった程度の指摘にとどまらず、その差から推測できるCという結論を導き出す分析力こそが海城中学校が受験生に求めている能力なのだ。
だからといって、資料・データの分析ばかりに気を取られて、本文の読み取りをおろそかにしてはいけない。
1000文字超と量が多いので、慌てて読んでしまいがちだが、実際の設問を見てみると、「本文と資料1・資料2を参考にして・・・・・・」といった表現がよく見られる。
実は、この長い本文の中に解答に使える重要なデータや出来事が多く説明されているのが、海城の社会の一大特徴なのである。
先ほど例として挙げた「Cという結論」も、本文に手がかりがある場合が多い。
本文をよく読んで重要点をまとめ、指定された資料と合わせて読み取れば適切な解答を構成できるように問題が作られていて、難解な知識や細か過ぎる情報を求められているわけではないのだ。
簡潔にまとめると、海城中学校の社会の記述問題に向けては、以下のような力をつける訓練が必要となる。
●1000文字を超える長文を読み、解答に必要な部分を抜き出してまとめる読解力。
本文を読みながら線を引いたり、余白に書き出したりしておけば最後にまとめる時に作業がはかどる。
●与えられた資料・データを読み取りその一歩先まで考える分析力。
よく資料が引用される『日本国勢図会』などに目を通し、データの特徴やその背景なども考えるようにしよう。
●上記2点の内容を100字や200字でまとめる構成力。
そして、実際に試験に臨んだ時には、設問で指定された条件を必ず守り、示された資料をしっかり活用することが良い解答を得る一番の近道であることを意識して欲しい。
他校の社会の問題には見られない長い本文や200字あまりも要求される解答に、気後れしてしまう人もいるかもしれないが、先にも述べたとおり、テキストにも載っていないような難しい知識や細部にこだわった情報は必要ないのである。「自由に自分の考えを述べなさい」といった問題とも異なっている。あくまで、本文を正確に読み、資料と比べて簡潔にまとめる「論理的」な思考力を期待されているのだ。
普段の学習において、「なぜそうなったのか」とか「この先どうなるのか」というように論理的に考える癖をつけておくことが大事である。また、過去問に積極的に取り組み、本校の特殊な出題形式に慣れておくことも大切であることはいうまでもない。
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2023年度「海城中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
記号選択と適語記入の問題が計8問、記述問題が3問で計350字という構成で、例年と大きな変化はない。2000字ほどのリード文と適語記入・選択肢の問題は15分程度で済ませて、記述問題に十分な時間を残したい。
【大問】総合問題
- 難度:やや難
- 時間配分:45分
- ★必答問題
地図の歴史についての文章を読んで答える問題。
問1 (1) 《資料1》と《資料2》を見比べながら、それぞれの長所・短所を考えてみよう。まず、伊能図は海岸線が細かく緻密であり正確に測量されていることがわかり、距離も正確であろうことが考えられる。一方、赤水図は形もおおざっぱで正確さに重きを置いているようには見えない。さらに大きな違いは、伊能図は海岸近くの地名や街道などは載っていても内陸のようすはほぼ空白であるのに対し、赤水図はびっしりと場所の名前が記されており、町などを探しやすいという点である。商売や旅など人々の行動が活発になった江戸時代後半には赤水図のほうが役に立ったと考えられるのである。
(2) 資料では、領主の指図がないので教えられないと村の代表者が答えている。他藩と争いになることも多かった封建時代においては、藩内の石高や地勢などは国内の経済的・軍事的機密でもあり、また国内の事情を幕府に知られることが藩にとって不利に働く場合もあった。そうした事情で、藩主の許しが無ければ簡単には話すわけにはいかなかったのである。
問2 ア(弥生時代の甕棺)→イ(平時物語絵巻)→オ(長篠の戦い)→ウ(下関戦争)→エ(西南戦争)
問3 ア. 1914年に起こった第一次世界大戦ではヨーロッパが主戦場となり輸出が減ったため、日本からアジアなどへの輸出が増えた。
問4 1964年の東京オリンピックの時期を境にEが急速に普及しその分Aが減っていることから、Aが白黒テレビでEがカラーテレビと考えられる。BとCは残る三種の神器の電気洗濯機か電気冷蔵庫となるが、電気洗濯機のほうがやや普及が速かったのでB、電気冷蔵庫がCとなる。Gの近年の普及率が91.8%と非常に高いことからエアコンと考えられ、残るDとFで自転車の方が普及率は高いと思われるので、Dが自転車でFが自動車と当てはめられる。
問5 憲法改正は、まず国会で両院の総議員の3分の2の賛成で発議され、国民投票で有効票の過半数の賛成があれば成立となる。
問6 米の生産が一番多いXが宮城県、京葉工業地域のある千葉県は鉄鋼業の出荷額が多いZ,残るYが鹿児島県である。
問7 風土記
問8 国際協力機構(JICA)は、政府開発援助(ODA)を一元的に行う独立行政法人である。
問9 (1) 情報が書き込まれる早さに注目。2週間ほどで細かい部分まで新しい内容が書き込まれている。現地の人や被災者本人がいつでも自由に書きこめて、さらにそれ以外の人の協力でGPSや地図情報などを利用して新しい地図を作製できることで、必要な最新の情報が細かい部分まで迅速に更新され、救助や復旧に役立った のだと考えられる。
(2) 紙で配布することで、パソコンやスマートフォンを持っていない人や電子機器の取り扱いが苦手な高齢者の人たちにも情報がいきわたる。スマホなどの小さな画面では得られる情報が狭い範囲に限られてしまう点でも、紙のハザードマップの方が見やすいであろう。また、災害時には携帯電話などの接続が爆発的に増加してつながりにくくなることも多く、充電が切れてしまえば使えない。このような場合に使えるのもアナログな紙媒体の利点である。
攻略のポイント
本校を受験する生徒のレベルから考えて、記号選択・適語記入問題は全問正解できるくらいの実力は必要とされる。
その上で記述問題でどれだけ得点を積み上げられるかの勝負になる。超難問というほどでもないので、類似問題を数多くこなしてコツを掴んでおこう。資料を読み取る問題は頻出である。統計・グラフの読み取りをよく練習し、データから原因や結果を推測する思考力を養っておこう。
社会の出来事に広く関心を持ち、その背景や周囲への影響などをよく考える習慣を持てば実力アップに大きく資するということは、強く指摘しておきたい。
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