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慶應義塾普通部 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2016年度「慶應義塾普通部の国語」
攻略のための学習方法

知識

何度も述べてきたが、慶應は「知識」が合格を左右する。ありとあらゆる「知識」が求められ出題される。当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。慶應を志望した時点から、しっかりと取り組むことが重要だ。

先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚えるようにする。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。

また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。

これらの「語彙」は様々な形式で出題されるし、「記述」の際にも重要だ。字数制限の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ。最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。

そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。直接出題されるだけではなく、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。

速読

大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。大問2~3題で8000字程度。しかも、解答時間は40分しかない。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は論旨が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の最初と最後を読み進める。

「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながらメリハリをつけて読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自分から聞いてみるといった積極性も求められる。

その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。慶應に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。
そして、最終的には分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしておきたい。

解法

「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。

たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして解説を聞いて納得した。以上終了ではダメだ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山。「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。

さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

記述

例年数題で字数もさほど多くはないが、当然、準備をしておく必要がある。

先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」等、正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことが正確に伝わっているかどうかを確認しなくてはいけない。

何を「書く」か。読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥。

次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書こうとしている内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。

その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしているポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていく。

慶應の場合、「最重要ポイント」+ひとつの「必要な要素」が目安だ。

意識

常に何かを「意識」しながら学習することが大切だ。無意識に机に向っていても無意味だ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが重要。

そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。

40分という時間で解き進めていかなくてはならない慶應では、ひとつのミスが致命的になる。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2016年度「慶應義塾普通部の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「詩」、出典は工藤直子の詩集「なんとなく・青空」所収の「けっしん」(文字数約250字)。小問は全3問(解答数4)。「選択肢」(「空所補充」あり)。4分程度で解きたい。

大問は「小説」、出典はバーバラ・オコーナー作/こだまともこ訳「スモーキー山脈からの手紙」(文字数約5100字)。小問は全13問(解答数も13)。「選択肢」「抜き出し」「説明記述」(2問/「15字以内」「20字以内」指定)。問題文は8分ほどで読み切り、設問を15分程度で解きたい。

大問は「随筆」、出典は「毎日新聞」掲載の「梅田望夫氏の文章」(文字数約750字)。小問は全5問(解答数6)。「選択肢」(「空所補充」「本文合致」)「抜き出し」。問題文は1分強で読み切り、設問を7~8分で解きたい。

大問は「漢字の書きとり」(全10問)。3分程度で丁寧に終えたい。

 

【大問1】詩

  • 難度:標準
  • 時間配分:4分

明け方に現れて殻(から)を脱ぎはじめたせみが、どうしたら生まれ変われるのか、その心構えを「私」に教えてくれる様子を描いた一編。「比喩」などの「詩の表現技法」と、「作者の思い」が問われている。「詩」の基本を押さえていれば、決して難しくはない。
以下、2問だけ確認してみたい。

[問一] 「比喩換言の選択肢」(5択)。
傍線部(1)の「家」について、「どのような場所のたとえなのか」を答える。

「傍線部一文一部の原則」(「傍線部」が「一文の一部」の場合、「傍線部以外」が重要な「手がかり」「ヒント」)から、「家」=「せみ」が脱ぎはじめた「殻」で、「生まれ変わるための『じかん』の家」だと分かる。「選択肢設問」は「消去法」が原則なので、「自分だけが入っていたもの」「生まれ変わるために脱ぎ捨てるもの」といった視点で、各選択肢を確認する。

すると、(ア)の「いつか帰る場所」、(ウ)の「家族と生活する場所」、(エ)の「楽しく過ごす場所」、(オ)の「しつけを受ける場所」は全て不適切だと判別できなくてはいけない。
よって、「答え」は(イ)「安心できる場所」になる。「一発消去」だ。的確な根拠で「消去」していくこと。

<時間配分目安:1分>

[問三] 「空所補充の選択肢」(5択)。
詩の中の□にあてはまる語を答える。

前後は「飛び立ったせみを□は しっかり抱きよせ」となっている。各選択肢は、(ア)「夜」、(イ)「海」、(ウ)「母」、(エ)「空」、(オ)「私」。「せみ」が「飛び立った」先は無論、「空」だ。よって、「答え」は「(エ)」。

当然のことなのだが、「内容」にこだわり、「抱きよせ」を「擬人法」ではないと勝手に思い込むと、「私」にしてしまう恐れがある。全てにおいて「原意絶対優位の原則」(「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)は最重要なのだが、特に「詩」では「ことば」にこだわること。また、「表現技法」は常に意識しなくてはいけない。

<時間配分目安:1分以内>

 

【大問2】小説

  • 難度:やや難
  • 時間配分:24分

スモーキー山脈にある古ぼけたホテルに集まった4家族、そこに思いもしなかったつながりが生まれる奇跡のような物語。本文は、問題児の「カービー」が「スモーキーマウンテン少年学院」に転校することになり、「母ちゃん」が車で連れて行く場面。とても分かりやすい内容だが、「心情」などをつかみづらい部分もあるので、要注意だ。
以下、いくつかの「設問」を検証する。

[問一] 「内容説明の抜き出し」(「一文」の「始めの十字」指定)。
傍線部(1)「赤いリコリス・キャンディの包みをさっととって、ポケットにつっこんだ」について、「カービー」は「キャンディ」がほしくてとったわけではないが、「そのことがわかる一文」を探し「始めの十字」を答える。

要は、「カービー」が結果的に「キャンディ」をどうしたのかということが分かる「一文」だ。
「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」なので確認する。ただし、本文は全てが「同一場面」、やっかいだ。探していく。すると、傍線部(4)の直前に「カービーは、さっきくすねたリコリス・キャンディを、窓から放りなげた。」という「一文」がある。これが「結果」だ。
従って、「答え」は「カービーは、さっきく」となる。「小説」では「近い・遠い」ではなく「同一場面」にこだわること。

<時間配分目安:1分半>

[問三] 「内容説明の選択肢」(5択)。
傍線部(3)「サイドミラーに、自分の顔が映っている」について、「カービー」は「自分の顔を見てどのように考えているか」を答える。

直後に、「カービー」自身の「思い」が説明されている。「たちが悪そう」→「そうじゃない」→「頭に来てる顔をしてる」→「みんなに、にくまれてるのも、むりないな」となっている。そこから、各選択肢を「消去」していく。
結果、(ウ)の「頭に来ているのが顔に出ているせいで、たちが悪そうに見えてしまう」(=「答え」)以外は、「消去」可能だと判別できなくてはいけない。やはり、「直前直後」に着目することが「正解」への王道だ。

<時間配分目安:1分半>

[問五] 「内容説明の条件付き説明記述」(「二十字以内」指定)。
傍線部(5)「あたしも覚悟をきめてるんだよ」について、「母親はどのような覚悟を決めているのか」を説明する。

「条件」は「本文中の言葉を用いる」こと。そもそも、「説明記述」では「本文中の言葉を用いる」わけで、あえて「条件」としてそのことを改めて記載するということは、ほぼそのまま「答え」となる部分があるということだ。

そう、直後に「母ちゃん」の言葉がある。いわく、「今度、やっかいごとを起こしてごらん。二度とあたしの家の敷居はまたがせないから」。この部分を「過不足なく」まとめればいいわけだ。たとえば、「次に問題を起こしたら縁を切るということ。」といった「答え」だ。「設問条件=ヒント」と心得よ。

<時間配分目安:2分半>

[問十二] 「心情説明の選択肢」(5択)。
傍線部(12)「思いっきり乱暴に」について、ここから「カービー」の「どのような心情が読み取れるか」を答える。

「心情」は「セリフ」「ト書き=セリフを直接説明している部分」「動作」「情景」などから多角的にとらえていくが、ここでは「動作」だ。「車のドア」を「思いっきり乱暴に」「閉める」という「動作」と直接的に結びつかない「心情」を、「消去」したい。
各選択肢の「文末」を確認する(「最重要要素」は選択肢説明の「文末」)。(ア)「切なく願った」、(イ)「荒々しく閉めようと思った」、(ウ)「不安な気持ちをまぎらわせたかった」、(エ)「怒りがおさえられなかった」、(オ)「どうにもやりきれなかった」。(エ)(オ)以外は「消去」できるはずだ。

次に、選択肢の「文末以外」をチェックすると、(エ)は「母ちゃん」だけに対する心情なのに対して、(オ)は「母ちゃん」と「自分」に向けられている。どっちだ? 改めて、直前直後を精査する。「カービー」は「自分のバッグ」に箱を「つっこむ」と、「車のドアを思いっきり乱暴に閉め」、「母ちゃん」に「ついていった」のだ。

であれば、「答え」は「(オ)」だと判別できるはずだ。「直前直後」を細かく検討すること。

<時間配分目安:1分半>

 

【大問3】随筆

  • 難度:やや易
  • 時間配分:9分
  • ★必答問題

「約束の時間を厳守する」という習慣が身についてしまっている筆者が、携帯電話の普及とともに「アバウトな約束の仕方」をするようになった若者の生き方を好意的に述べている。分かりやすい文章で、「設問」も処理しやすい。
最後の「本文合致選択肢」の問題も、「事実関係」で「消去」していけば判別できるはずだ。
2問だけ考えてみたい。

[問二] 「空所補充の選択肢」(5択)。
本文中の            にあてはまる語句を答える。

前後は「若い世代が『七時三十分            』という約束の仕方をしなくなったと聞いた」となっている。では、「若い世代」はどのような「約束の仕方」なのか? 直後に「七時ごろに渋谷で」という「アバウトな約束」とある。つまり、「おおまかな約束」ということだ。であれば、「空所」は「アバウト(おおまか)ではない約束」ということになる。

各選択肢を確認する。(ア)「渋谷近辺で」、(イ)「渋谷ハチ公前で」、(ウ)「渋谷で」、(エ)「渋谷ハチ公付近で」、(オ)「渋谷ハチ公前あたりで」。もう分かったはずだ。
無論、「答え」は「(イ)」。「空所前後」をしっかりと確認することが肝要だ。

<時間配分目安:1分以内>

[問四] 「換言説明の抜き出し」(「8字」指定)。
傍線部(3)の「その場その場で事に処する」について、「これとほぼ同じ内容を言いかえている部分」を抜き出す。

「傍線部一文一部の原則」から、筆者は傍線部のような「生き方」を「意識的に指向している」ことが分かる。そして、その「生き方」は前段落で述べていた「若者たち」の「生き方」だと判断できる。
前段落を確認する。後半に「しなやかに生きる彼ら彼女らが、僕にはとてもうらやましい」とある。「しなやかに生きる」、「字数」も合致するので「答え」となる。「文脈」と「段落の相互関係」を意識すること。

<時間配分目安:1分半>

 

【大問4】漢字の書きとり

  • 難度:標準
  • 時間配分:3分
  • ★必答問題

「漢字の書きとり」(10問)。
基本的な漢字なので、本校志望者は全問正解したい。
やや「言葉」として分かりづらいものとしては、(2)「事業のさいさんが合わない」(=「採算」)、(6)「たいきょく的にものを見る」(=「大局」)、(7)「今月のやちんをはらう」(=「家賃」)、(10)「輸入品をあきなう店」(=「商(う)」)などだ。

攻略のポイント

「出題傾向」「解答形式」はほぼ一貫しており「対策」はしやすい。難易度は一部を除き、「標準」か「平易」のレベル。合格ラインは7割程度(推測。非公表)。決して楽ではない。平易な設問は絶対に落とさないこと。

●ポイントは「知識問題」だ。本校に限らず慶應義塾は「教養人」を求めている。それは、単に「国語」としての「語彙力」だけでなく、「一般常識」「社会通念」までが問われている。そうなると、幼少期からの素養が問題となってしまうが、とにかく慶應を志した瞬間から全ての「知識」を吸収するように努力したい。その上で、「知らない問題」は潔く「捨て問」として、習得した「解法」等で解ける「設問」に力を傾注するという「戦術」が求められる。

●制限時間は40分。問題文のボリュームは全体で8000字前後(本年度は減少したが、決して油断はできない)。従って、いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速650字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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