【大問一】

小学４年生の｢朝日｣を中心に、マイペースな｢父｣、母代わりのしっかり者の｢姉｣、愛猫の｢くろちゃん｣、そして、家族を取り巻く個性豊かな人々。ともに笑い、泣き、怒りながら家族の絆は強くなっていく――北海道･小樽を舞台にした、｢昭和｣の風情漂う、笑いあり涙ありの家族の物語。

本文では、誕生日に届いたカラーテレビのことを学校で｢富樫(とがし)くん｣に話した｢朝日｣が、｢すごいなあ｣と何度もつぶやく彼を家に誘う様子が描かれている。文章は平易で内容は難なく理解できるはずだ。さまざまなパターンの｢抜き出し｣など、いかにも本校らしい設問が並んでいる。以下、いくつかを検証する。

[問一]　｢条件付き内容説明記述｣(｢15～25字以内｣指定)。

傍線部(１)｢カラーテレビがきて、ねずみ色は単にねずみ色になった｣について、｢白黒テレビではどうだったのか｣を説明する。「条件｣は｢『白黒テレビでは』に続けて説明する｣こと。

｢同一場面｣に｢手がかり･ヒント｣を求める(｢小説｣｢随筆｣は｢同一場面の直前直後に根拠･手がかりあり｣が大原則)｡直前に｢白黒テレビでは、白と黒以外の色は、全部、ねずみ色だ｣とある。まさに、説明すべき内容だ。

あとは、｢条件｣と｢指定字数｣に注意してまとめていけばいい。たとえば、｢(白黒テレビでは)ねずみ色で、白と黒以外のすべての色を表していた｡｣(24字)といった｢答え｣だ。本問は平易だったが、｢小説｣では｢同一場面｣が全てのカギになると心得よ。

＜時間配分目安：１分強＞

[問二]　｢換言説明選択肢｣(５択)。

傍線部(２)｢カラーテレビの映す色の感じは、絵の具よりも折紙に近かった｣について、｢どのような意味か｣を答える。

｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣を最優先に考えること)｡

本問では、｢折紙(の色)｣という｢原意｣に着目して｢消去｣していく。各選択肢の｢文末｣と照合する(選択肢説明では｢文末｣が｢最重要要素｣になっている)｡

(ア)｢均一に見えたということ｣､(イ)｢種類が少なく感じられたということ｣､(ウ)｢優しい色合いだったということ｣､(エ)｢くっきりしていたということ｣､(オ)｢非現実的な美しさだったということ｣｡

どうだろうか？　｢折紙(の色)｣＝｢平面的な色紙｣で、しかも、｢絵の具(の色)｣と比べているのだから当然、｢均一に見えた｣以外は｢消去｣できなくてはいけない。他の部分の説明も特に誤ってはいないので、(ア)が｢答え｣になる。

｢一発消去｣だ。畏るべし！｢原意消去｣｡必ず活用できるようになるべし。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問三]　｢内容説明の表現抜き出し｣(｢17字｣の｢始めと終わりの４字｣指定)。

傍線部(３)｢あくる日、富樫くんにもそのように教えた｣について､｢相手は富樫くん以外でもよかったことがわかる本文中の表現｣を｢十七字｣で探し､｢始めと終わりの四字｣を抜き出して答える。

何ともややこしい問題文だ(本校の得意ワザ)｡ここは冷静に対処する必要がある。

｢抜き出し設問｣では、｢抜き出し内容｣を確定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込むことが肝要だ。

先ずは｢内容｣だが、端的に捉えれば、｢そのように教える｣のは誰でもよかったのだが、たまたま｢富樫くん｣だったということが分かる｢表現｣となる。｢指示語｣があるので開いておく必要がある(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢そのように｣＝｢カラーテレビの映す色の感じは、ひとことでいうと、『なっまらカラー (すごくカラー) 』だったというように｣となる。

次に、｢範囲｣は無論、｢同一場面｣だ｡本傍線部から｢同一場面｣が始まっていて、傍線部(６)の次の行までだ。相当に長いが、丁寧に探していきたい。すると、中頃に｢今日ももちろんやるつもりだったのだが、うっかり富樫くんに話しかけてしまい、やりそびれた。｣という一文がある。｢うっかり……話しかけてしまい｣ということは、｢たまたま話しかけてしまった｣わけだ。内容的に合致する。｢うっかり富樫くんに話しかけてしまい｣、｢字数｣もＯＫだ。念のために、それ以外の｢抜き出し範囲｣を確認しても他に｢候補｣はない。よって、｢答え｣は｢うっかり～てしまい｣となる。

尚、｢候補｣はひとつとは限らないので、｢範囲｣の全てを確認すること。

＜時間配分目安：２分＞

[問六]　｢経過説明の部分抜き出し｣(｢部分｣の｢始めと終わりの４字｣指定)。

傍線部(６)｢ケーキもあるでよ｣について､｢このように朝日の気持ちが変化するまでの経過を述べた部分｣を探し､｢始めと終わりの四字｣を抜き出して答える。

｢気持ちが変化するまでの経過｣というユニークな｢抜き出し内容｣が求められている。

先ずは、｢朝日｣の｢何に対する気持ちがどのように変化したのか｣を読み取る。｢同一場面｣から、｢朝日｣が｢富樫くん｣に対して、｢(カラーテレビを)観にくる？｣と家に誘っている｢状況｣が分かる。そして、傍線部で｢ケーキもあるでよ｣と言っているので、この時点では｢家にくることを認めている｣わけだ。｢気持ちが変化｣したということは、｢朝日｣は｢富樫くん｣を誘っていながらも｢来てもらうかどうか、迷っていた｣わけだ。つまり、｢誘った｣けれども｢悩んでいた｣、その｢気持ち｣が｢変化｣して｢ケーキもあるでよ｣という言葉になったことになる。その間の｢経過｣が抜き出すべき｢内容｣になる。

｢範囲｣の｢同一場面｣を確認していくと、前半で｢観にくる？｣と誘った次文に｢誘ったものの、朝日の内心はなかなかに複雑だった｡｣とある。ということは、この時点ですでに悩んでいたことになる。ここが｢経過｣の｢始まり｣だ。では、｢終わり｣はどこか？ 当然、傍線部直前となるはずだ。前文に｢『べつにいいけど？』朝日は髪の毛をかきまぜるようにした｡｣とある。｢富樫くん｣が｢行ってもいいの？｣と聞いたことに答えたものだ。よって、ここが｢経過｣の｢終わり｣になる。これで｢抜き出し部分｣は確定したが、｢抜き出し方(答え方)｣に注意したい。

通常、｢部分｣の｢抜き出し｣では｢抜き出し箇所｣の最初と最後にある｢句読点等の記号｣は抜き出さないが、ここでは、大問全体の前提として冒頭に｢字数を数える場合は、句読点･かぎかっこ等も一字と数えます｣という｢※注｣があるので、抜き出す必要がある。したがって、｢誘ったも～にした｡｣が｢答え｣になる。

｢問題用紙｣全体への目配せが欠かせないと心得よ。

＜時間配分目安：２分半＞

[問十]　｢条件付き様子説明の部分抜き出し｣(｢９字｣指定)。

傍線部(10)｢(テレビ番組の)『マッハＧｏＧｏＧｏ』が始まったのだ｣について､｢朝日がテレビにくぎづけになっている様子がわかる部分｣を探し､｢九字｣で抜き出して答える。｢条件｣は｢これ以降で抜き出す｣こと。

｢抜き出し内容｣は問題文だけで明確だ。｢抜き出し範囲｣は｢同一場面｣で、しかも、｢条件｣で｢傍線部以降｣と限定されている。丁寧に探していく。直後に｢『風もふるえるヘアピンカーブ』と(『マッハＧｏＧｏＧｏ』の主題歌を)口ずさみながら｣とあり、さらに、｢頭で拍子を取りながら口ずさみつつ、……咀嚼(そしゃく)してもつづけ、……コップを手に取り、口でストローを探すあいだもつづけた｣と続いている。｢テレビにくぎづけになっている様子｣だと分かるはずだ。これらの中で｢指定字数｣に合致するのは、そう、｢答え｣は｢口でストローを探す｣だ。さまざまな｢抜き出し条件｣に対応していくことが肝要。

＜時間配分目安：１分弱＞

【大問二】

記録でもなく、伝説でもなく、｢歌｣だからこそ残っていた、白黒つけられない人々の感情――−｢百人一首｣を通して、千年の向こうがわで生きていた彼らの感情をつづっている。

本文では、中納言家持(大伴家持)の｢かささぎの渡せる橋に置く霜の  白きを見れば夜ぞ更けにける｣を取りあげ、｢七夕伝説｣を踏まえて、当時の人が｢星｣をどのように感じていたのかに、思いを馳(は)せている。この和歌そのものは難解だが、分かりやすく説明されているので理解できる。｢総合的知識問題｣も含め多種多様な小問が並ぶが、おしなべて平易だ。一気呵成に得点を重ねていきたい。以下、２つの｢設問｣を確認したい。

[問四]　｢具体例の不適切選択肢｣(５択)。

傍線部(３)｢知識としては、北半球が夏の時、南半球は冬だ、と知っているけれど、感覚としては摑(つか)みきれていない｣について、｢これと同様の例ではないもの｣を答える。

｢同一場面｣で傍線部の内容をさらに読み取りたい。直後に｢どこかで自分がいる季節は、夜は、現在の世界すべてに染(し)み渡っているものだと信じてしまう｣とある。｢知識｣｢事実｣よりも｢実感｣｢感覚｣を優先させてしまうということだ。｢不適切｣だということを意識して、各選択肢を確認する(ここは｢具体例｣なので各説明の全体と照合する)。

(ア)｢飛行機が飛ぶ原理は説明できる｣｢あんな金属のかたまりが飛ぶはずがないと感じてしまう｣⇒｢知識｣を｢実感｣できない＝｢適切｣､(イ)｢空っぽのビンの中には空気が入っている｣｢何も入っていないと思ってしまう｣⇒｢実感｣としては｢空っぽ｣＝｢適切｣､(ウ)｢津波の被害はテレビで見知っていた｣｢実際に来てみると予想をこえて深刻に感じる｣⇒｢予想｣と｢現実｣が異なっていた⇒｢予想｣は｢知識｣｢事実｣ではない＝｢不適切｣､(エ)｢潮の満ち引きは月の引力によると知っている｣｢自分の足を冷やす海が月に引かれていると思えない｣⇒｢実感｣が｢知識｣にまさっている＝｢適切｣、(オ)｢ボールペンの先は球状であると知っている｣｢書いている時にボールが先端についていると意識しない｣⇒｢知識｣に対する｢実感｣がない＝｢適切｣。ということで、｢答え｣は(ウ)だ。

｢本文における抽象的法則を、設問の具体的事象と的確に照合する｣(⇒この文の内容がもし理解できなければ、必ず辞書で確認すること)。それが、｢具体例問題｣でのポイントになる。

＜時間配分目安：1分半＞

[問五]　｢被修飾部の判別選択肢｣(５択)。

｢総合的知識問題｣。｢文法｣だ。傍線部(４)の｢どこかで｣は、｢意味の上でどの部分にかかっているか｣を、二重傍線部(ア)～(オ)の中から答える。｢文節の関係｣の中の｢修飾･被修飾の関係｣の問題だ。

傍線部を含む一文は｢(４)どこかで(ア)自分がいる季節は、(イ)夜は、現在の世界(ウ)すべてに(エ)染み渡っているものだと(オ)信じてしまう｡｣となっている。｢修飾･被修飾の関係｣では、両者を結びつけて内容が｢完結｣するかどうかがカギになる。｢どこかで｣→｢信じてしまう｣だ。よって、｢答え｣は(オ)になる。何ら難しくはないはずだが、悩んでしまった諸君がいたら、本校では｢文法｣が頻出なので、徹底的に復習しておくこと。

＜時間配分目安：30秒＞

｢漢字の書きとり｣(全10問)。

本年度はここ数年と比較して難易度がアップしている。注意すべきものを確認したい。

(１)｢めいろう快活｣＝｢明朗｣⇒｢朗｣を｢郎｣としないこと､

(２)｢古くなったえきしゃの建てかえ｣＝｢駅舎｣⇒｢鉄道の駅の建物｣のことだが、｢死語｣に近いので要注意、

(３)｢けいしょう地を訪ねる｣＝｢景勝(地)｣⇒｢同音異義語｣をチェックせよ､

(７)｢身のけっぱく｣＝｢潔白｣⇒一画一画を丁寧に記すこと､

(８)｢せんもん家｣＝｢専門｣⇒｢誤字｣の定番、｢専｣の右上に｢、｣を打たない、｢門｣は｢問｣ではない、

(９)｢新聞をすっている｣＝｢刷っ(て)｣⇒｢同訓異字｣に注意。

全問クリアしたい。あやしいものがあった諸君は、本校志望者として自覚し復習しよう。

＜時間配分目安：全問で３分以内＞