慶應義塾普通部 入試対策
2023年度「慶應義塾普通部の国語」
攻略のための学習方法
知識
何度も述べてきたが、慶應は「知識」が合格を左右する。ありとあらゆる「知識」が求められ出題される。当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。慶應を志望した時点から、しっかりと取り組むことが重要だ。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚えるようにする。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙」は様々な形式で出題されるし、「記述」の際にも重要だ。字数制限の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ。最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。
そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。直接出題されるだけではなく、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。大問2~3題で8000字程度。しかも、解答時間は40分しかない。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は論旨が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の最初と最後を読み進める。
「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながらメリハリをつけて読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自分から聞いてみるといった積極性も求められる。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。慶應に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。
そして、最終的には分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしておきたい。
解法
「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして解説を聞いて納得した。以上終了ではダメだ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山。「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
例年数題で字数もさほど多くはないが、当然、準備をしておく必要がある。
先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」等、正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことが正確に伝わっているかどうかを確認しなくてはいけない。
何を「書く」か。読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書こうとしている内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。
その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしているポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていく。
慶應の場合、「最重要ポイント」+ひとつの「必要な要素」が目安だ。
意識
常に何かを「意識」しながら学習することが大切だ。無意識に机に向っていても無意味だ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが重要。
そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。
40分という時間で解き進めていかなくてはならない慶應では、ひとつのミスが致命的になる。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2023年度「慶應義塾普通部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「小説」、出典は加納朋子「空をこえて七星のかなた」(文字数約4600字)。小問は全15問(解答数16)。「選択肢」(「総合的知識問題」、「複数解答」あり)、「抜き出し」(5問)、「説明記述」(2問。「30字以内指定」と「40字以内指定」)。問題文は6分弱で読み切り、設問を18~19分で解きたい。
大問二は「随筆」、出典は古谷田奈月「心ゆくまで」(文字数約1200字)。小問は全7問(解答数7)。「選択肢」(「総合的知識問題」、「空所補充」あり)、「抜き出し」(3問)、「説明記述」(2問。ともに「30字以内」指定)。問題文は1分半ほどで読み切り、設問を8分強度で解きたい。
大問三は「語句の知識」(「漢字の書きとり」「熟字訓」「漢字パズル」)。小問は全3問(解答数10)。6分程度で丁寧に終えたい。
【大問一】「小説の読解」(「説明記述」2問、「抜き出し」5問。「総合的知識問題」あり)
- 難度:標準
- 時間配分:24分
- ★必答問題
大丈夫。昼間だって、見えないけれど星はそこにちゃんとあるから――南の島で、山奥のホテルで、田舎町の高校で……。星を愛し星に導かれた人々が紡(つむ)ぐ7つの連作短編集の1篇。本文では、ケガで学校を休んでいる「水輝(みずき)」を見舞いに行き、彼女と親しくなった「私」(=七星[ななせ])が、才能に恵まれた親を持つ大変さを語り合う様子が描かれている。文章は平易で内容は理解できるはずだが、「セリフ」や「地の文」からの「心情読み取り」でやや戸惑う可能性がある。以下、いくつかを検証したい。
[問二] 「空所補充の漢字記述」(「1字」指定)。本文中に2か所ある空所□に「あてはまる同じ言葉」を「漢字一字」を答える。空所前後は「『ありがとー! 非常食にするね。大事に食べる。嬉(うれ)しいけど、□はお土産なんか気にしないでね』『□?』『また来て、お願い。退屈で死にそう。何なら毎日来て』」となっている。会話だ。誰と誰のどのような会話なのか? 直前直後から「状況」を捉(とら)えたい(「小説」「随筆」は「同一場面の直前直後に根拠・手がかりあり」が大原則)。確認すると、「水輝」を見舞いに行った「私」が、手土産の「駄(だ)菓子」を渡した直後のやりとりだと分かる。「私」の「□?」に続けて、「水輝」が「また来て、お願い……」と言っているのだ。ということは、2か所の空所にあてはまる「答え」は「次」だと特定できなくてはいけない。「小説」では「同一場面」の「文脈」を正確に読み取ることが肝要だと心得よ。
<時間配分目安:1分強>
[問三] 「状況説明選択肢」(5択)。傍線部(2)「うーん、とりあえず」について、「ここから七星のどのような様子がわかるか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」を最優先に考えること)。本問は「状況説明」なので、「うーん、とりあえず」という表現が表している「様子」と結びつかない各選択肢の「文末」を「消去」する(選択肢説明では「文末」が「最重要要素」になっている)。確認したい。(ア)「聞こうとしない様子」、(イ)「話を急ぐ様子」、(ウ)「とまどっている様子」、(エ)「深入りを避ける様子」、(オ)「やり遂げようとする様子」。さあ、どうだろうか? 「とりあえず」なのだから、「とまどっている」以外は「消去」だと判別できなくてはいけない。その上で「同一場面」を確認して、他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かるので、(ウ)が「答え」になる。見事な「一発消去」だ。畏るべし! 「原意消去」。必ずマスターして活用できるようにすべきだ。
<時間配分目安:1分>
[問六] 「内容説明の条件付き抜き出し」(「6字」指定)。傍線部(5)「ああ、こういう話がしたかったんだと思う」について、「ここから七星がどのような友人を求めていたことがわかるか」を表した言葉を「六字」で抜き出して答える。「条件」は「『~友人』に続くように抜き出す」こと。「抜き出し設問」では、「抜き出し内容」を確定した上で、「抜き出し範囲」を絞り込むことが肝要だ。「内容」だが、先ずは「こういう話」という「指示語」があるので開く(「指示語」が出たら即開くこと)。直前から、「七星」と「水輝」の会話で、「こういう話」=「お互い、特殊な親を持つと大変だよねーと、そろってため息をつくような話」だと読み取れる。ということは、「お互いがそろってため息をつくような話ができる友人」が「抜き出し内容」になる。次は「抜き出し範囲」、当然、「同一場面」。ここでは傍線部の前の3段落と後の4段落だと分かるはずだ。丁寧に探していくと、9行後に「ああ、なんて楽なんだろ、共感しあえるって……」という部分がある。「共感」⇒「お互いがそろってため息をつく」、見事に結びつくではないか。字数もOKだ。念のために、残りの「抜き出し範囲」を確認しても他に「候補」はない。したがって、「答え」は「共感しあえる(友人)」(6字)になる。「抜き出し設問」では、「抜き出し内容」に即して「抜き出し範囲」を的確に絞り込むことが肝要だ。尚、「候補」はひとつとは限らないので、「範囲」の全てを確認すること。
<時間配分目安:2分弱>
[問七] 「表現の意味の選択肢」(5択)。「総合的知識問題」。「故事成語」の意味だ。傍線部(6)の「間髪を入れず」とは「どのような意味か」を答える。「間髪を入れず」(「かん、はつをいれず」と読む)、この「故事成語」、決して平易ではないが、慶応義塾志望者であれば押さえておいてほしい。「少しの時間も置かないさま」だ。各選択肢は、(ア)「はっきり」・(イ)「親しげに」・(ウ)「近くで」・(エ)「一度だけ」・(オ)「すぐさま」。もちろん、「答え」は(オ)。「故事成語」は「意味」だけではなく、「空所補充」でも出題されるので確実に「漢字」で定着させておくこと。尚、「慣用句」「四字熟語」「ことわざ」なども頻出なので、改めて確認しておきたい。
<時間配分目安:30秒>
[問八] 「内容説明記述」(「40字以内」指定)。傍線部(7)「ふいに表情が強張(こわば)ったのだ」について、「この瞬間、水輝は父親がどのようにふるまい、どういう結果を招く可能性を予感したのか」を「四十字以内」で説明する。「同一場面の直前直後」から「状況」を読み解く。「七星」と「水輝」の会話の途中、突然、「水輝」の表情が「まるで何か、怖いものでも見たように」変化している。そして、そこに「おや、お客さんかい?」と言って「国民的大スター」(=「水輝」の「父親」)が現れたのだ。その瞬間、「水輝」は「表情が強張る」ような「父親」の「ふるまい」と「結果」を「予感」したわけだ。それはどのような内容なのかを「同一場面」から読み取っていきたい。「父親」はいつも来客をチェックし、特に「水輝」の友人には品定めをして「ケチ」をつけているので、「七星」に対しても同じような「ふるまい」をして、「結果」として彼女に「嫌(いや)な思い」をさせてしまうのではないかと「予感」したということが読み取れるはずだ。あとは、内容を整理して過不足なくまとめていきたい。たとえば、「父親がいつものようにケチをつけ、友人である七星に嫌な思いをさせてしまう可能性。」(39字)といった「答え」になる。「小説」では「同一場面」の「文脈」を正確に読み解くことが肝要だと心得よ。
<時間配分目安:3分>
[問九] 「理由説明選択肢」(5択)。傍線部(8)「平坦(たん)な声で言った」について、「なぜ『平坦な声』なのか」を答える。本問は「理由説明」なので、各選択肢の「文末」⇒「だから」⇒「『平坦な声』な声で言った」と、「直接的理由」として結びつかないものを「消去」する。チェックする。(ア)「怒りを抑えていたから」、(イ)「気持ちを落ち着かせようと努めたから」、(ウ)機械的な反応になってしまったから」、(エ)「冷めた思いがしたから」、(オ)「追いつめてやりたくなったから」。「平坦」=「土地が平らなこと。 物事が平穏なこと」、知っていて当然だ。したがって、 (ア)と(イ)以外は「消去」だと判別できなくてはいけない。2択になった。次に、「状況」から「七星」が「水輝」に「平坦な声で言った」ということを踏まえた上で、「理由」に直接結びつく直前の「きっかけ」や直後の「結果」を確認してみる。「きっかけ」は「水輝」の「七星」への「一言」であり、「結果」としては「水輝」が「泣きそうな顔」になっている。であれば、「裏切りともいえる仕打ちに対して」となっている(ア)は「消去」で(「仕打ち」は「他人に対する行為や態度」で「言葉」ではない)、「あまりに思いがけないことで」と説明されている(イ)が「答え」だと判別できる。本問は「2段階消去」だったが、先ずは「原意消去」することがショートカットとなる。
<時間配分目安:2分>
【大問二】「随筆の読解」(「説明記述」2問、「抜き出し」3問。「総合的知識問題」あり
- 難度:標準
- 時間配分:10分
旅のビジュアル月刊誌「ひととき」(2022年7月号)の連載エッセイ「そして旅へ」の一文。どこかに属することが苦手な筆者が「旅への想い」を綴(つづ)っている。本文では、「到着」が嫌いな筆者が、目的地に向かって移動している「道中」が十分に楽しめる「旅程の大部分が移動時間という旅」の魅力を語っている。平易な文章で、内容は分かりやすい。本校としては標準的な小問が並んでいるので。一気呵成に得点を重ねていきたい大問だ。以下、典型的な「設問」を確認したい。
[問四] 「理由説明の条件付き抜き出し」(「15字以内」指定)。傍線部(3)「旅人はどこにも属さない」について、「筆者は反対の意見を持っている」が、「筆者がそう考える理由」を探し「十五字以内」で抜き出して答える。「条件」は「『~と考えているから』に続くように抜き出す」こと。「抜き出し内容」を捉(とら)えるためには、筆者の「反対意見」を特定する必要がある。「同一場面」を確認する。傍線部直後に「でも私には、旅人にも属性があり、旅人も旅人なりにその土地に属しているのだと感じられる」とある。これが「反対意見」だと判断できる。よって、「抜き出し内容」は「旅人にも属性があり、旅人も旅人なりにその土地に属している」と「筆者が考える理由」ということになる。「抜き出し範囲」は「同一場面」。ここでは傍線部からの3つの段落だと分かるはずだ。丁寧に探していく。すると3行後に「……観光客にも、大げさな言い方をすれば、その場所で果たすべき義務があるのだ」という部分がある。まさに、「旅人も旅人なりにその土地に属している」ことの「理由」になっている。字数も問題ない。他の「抜き出し範囲」にこれ以上ふさわしい「候補」はない。したがって、「答え」は「その場所で果たすべき義務がある(と考えているから)」(15字)になる。ややひねった設問だったが、設問を正確に読み解き、臨機応変に対応することが肝要だ。
<時間配分目安:2分弱>
[問六] 「条件付き理由説明記述」(「30字以内」指定)。傍線部(4)「素晴らしい一人旅になった」について、「旅程の大部分が移動時間である旅を筆者はなぜ『素晴らしい』と感じているのか」を「三十字以内」で説明する。「条件」は「『所属』と『解放』という言葉をそれぞれ必ず使って説明する」こと。「旅程の大部分が移動時間である旅」の内容を「同一場面」から読み取る。その際、「条件」である「『所属』と『解放』という言葉」に着目することが重要だ。前段落で説明されているとすぐに分かる。確認したい。「旅の移動中は、その土地に対してなんの権利も義務もなく、無力、無所属、無責任で、旅人としての義務どころか人間の義務からさえ一部開放されている」と述べられている。つまり、筆者は「移動中の、無力、無所属、無責任で、人間の義務からさえ開放されている」ことを「素晴らしい」と感じているわけだ。あとは、「理由説明」になるようにまとめていけばいい。たとえば、「移動中はどこにも所属せず、人間の義務からさえ解放されるから。」(30字)といった「答え」になる。本問のように、「条件」は重要な「手がかり・ヒント」でもあると心得よ。
<時間配分目安:2分半>
[問七] 「空所補充の語句選択肢」(5択)。本文中にある空所 C に「あてはまる語」を答える。空所前後は「(旅程の大部分が移動時間であるという私向きの旅で)知らない電車に揺られ、知らない土地を過ぎながら、心ゆくまで C でいられた」となっている。各選択肢は、(ア)「青春」・(イ)「旅人」・(ウ)「存在」・(エ)「妖怪」・(オ)「一人」だ。「文脈」を正確に読み取って判別したい。前問で確認したように「旅程の大部分が移動時間である旅」については前段落で説明されており、その最後の部分に「……移動中の人々は、皆、妖精(ようせい)や妖怪(ようかい)の類いといえるかもしれない」とある。したがって、(エ)の「妖怪」が「答え」だ。本問は平易だったが、「語句の空所補充」では内容以前に「文脈的」(文法的)にあてはまらないものがあればそのまま「消去」してしまうのが鉄則だ。たとえば本問では、「青春」と「存在」は即「消去」になる。
<時間配分目安:1分>
【大問三】「語句の知識」(「漢字の書きとり」「熟字訓」「漢字パズル」)
- 難度:やや難
- 時間配分:6分
近年の【大問三】は隔年で「総合的知識問題」か「漢字の書きとり」のみとなっている。本年度は前者で、「漢字の書きとり」「熟字訓の熟語づくり」「漢字パズル」の3問。チェックしてみる。
[問一] 「漢字の書きとり」(全5問)。本校としては標準的難易度。注意すべきものを確認したい。(3)「土地のカンシュウに従う」=「慣習」⇒「文脈」を正確に読み取ること。「ある社会で古くから受け継がれてきている生活上のならわし」という意味も押さえておくこと。(4)「メンミツな計画」=「綿密」⇒「詳しく細かいこと」という意味で必須定着語句だ。(5)「家畜のシリョウ」=「飼料」⇒「同音異義語」に要注意だ。ひとつでも曖昧(あいまい)なものがあった諸君は、本校志望者として自覚し復習せよ。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問二] 「熟字訓の熟語づくり記述」(全2問)。「【時・下・朝・行・今・手・山】の中の漢字を使って、熟字訓になる二字の熟語を二つ作り、また、その特別な読み」を記述する。例として、「土」(つち・ド)+「産」(う・サン)=「土産」(みやげ)が記されている。さあ、どうだろうか? 「答え」を確認したい。「下」(した・カ・ゲ)+「手」(て・シュ)=「下手」(へた)、「今」(いま・コン・キン)+「朝」(あさ・チョウ)=「今朝」(けさ)となる。「熟字訓」や「慣用読み」、本校志望者にとってはスルーできないと自覚せよ。
<時間配分目安:全問で1分強>
[問三] 「熟語づくりの漢字記述」(全3問)。おなじみの「漢字パズル」だ。「例にならって、上下左右が二字の熟語になるように□に入る適切な漢字一字」を記述する。「例」は、【「上」→□、□→「下」/「左」→□、□→「右」】の順に【「成」→熟、熟→「考」/「早」→熟、熟→「語」】⇒「成熟」・「熟考」/「早熟」・「熟語」。同じようにそれぞれの「答え」をチェックする。(1)【「軽」→視、視→「覚」/「直」→視、視→「察」】⇒「軽視」・「視覚」/「直視」・「視察」=「視」が「答え」。(2)【「出」→演、演→「出」/「実」→演、演→「技」】⇒「出演」・「演出」/「実演」・「演技」=「演」が「答え」。(3)【「発」→展、展→「示」/「進」→展、展→「開」】⇒「発展」・「展示」/「進展」・「展開」=「展」が「答え」になる。こうした「漢字パズル」は慶応義塾では頻出だ。十分に慣れておきたい。
<時間配分目安:全問で2分強>
攻略のポイント
●「出題傾向」「解答形式」はこれまでほぼ一貫しており「対策」はしやすい。難易度は一部の難問を除き、「標準」か「平易」のレベル。合格ラインは7割程度(推測。非公表)。もちろん、決して楽ではない。平易な設問は絶対に落とさないことが重要だ。その上で、「知らない問題」は潔く「捨て問」として、習得した「解法」などで解ける「設問」に力を傾注するという「戦術」が求められる。尚、近年は「抜き出し設問」が難問のターゲットになりやすいようだ。改めて、「解法」をしっかりと確認しておくこと。
●ポイントは「知識問題」だ。「総合的知識問題」だけでなく、あらゆる設問でさまざまな「知識」が問われてくる。本校に限らず慶應義塾は「教養人」を求めているのだ。それは、単に「国語」としての「語彙力」だけでなく、「一般常識」「社会通念」までに及ぶ。そうなると、幼少期からの素養が問題となってしまうが、とにかく本校を志した瞬間から全ての「知識」を吸収するように努力したい。
●「説明記述問題」にも留意したい。前にも述べたように、本校ではとても短い「字数指定」のものが多い。「問題文」の趣旨を的確に理解して、「必須要素」を絶対に外すことなく、過不足なく、文を組み立てられるように、繰り返し練習することが求められる。また、「条件」が課される場合も結構あるので、的確に応じることが必須だ。ただし、「条件」は「手がかり・ヒント」でもあると心得よ。
●制限時間は40分。問題文のボリュームは全体で6000~7000字前後(本年度は昨年度より一気に減少して約5800字)。したがって、いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
慶應義塾普通部の科目別
入試対策一覧
中学受験のために
家庭でできること
インタビュー=学力が伸びる子と伸び悩む子の特徴とは
リーダーズブレインの合格実績豊富な現役家庭教師が、プロならではの視点でポイントをお話ししています。どのようなタイプの子供が伸びるのか、家庭でのサポートで親が気を付けるべき事は何か。勉強のサポートの仕方から親子の関係性など…ぜひ参考にしてください。