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慶應義塾普通部 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2019年度「慶應義塾普通部の社会」
攻略のための学習方法

スライド式学習

「地理」「歴史」「公民」と「時事問題」の「知識」を確実に定着させておくこと。「基礎的事項」は当然だが、相当細かな「知識」や「深い理解」も求められるので、テキストの「注」や「囲み説明」等もチェックしなくてはいけない。

慶應では「地理」「歴史」からの出題が特に多いので、確実に定着させておきたい。
ただ、人は忘れるものだ。時が経てば経つ程忘れる。ここに実は落とし穴がある。基本的に「暗記」が最重要となる「社会」では、各単元をいつ学習し、定着させたのか、その時期が問題となる。

塾では通常、本格的な受験勉強が始まる5年生になってから、「地理」⇒「歴史」⇒「公民」と単元消化していき、6年生の夏休み前には終える。その後は「復習」となるが、そのメインは圧倒的に定着すべき事項の多い「歴史」にならざるを得ない。そのまま、秋から冬となり「過去問演習」と続いていく。6年生で学習した「公民」はまだしも、「地理」はどうだろうか? 実質的に1年以上の空白が生じてしまう。それはまずい。前述のように慶應では「地理」単元に含まれる全ての分野から多数出題されるのだ。

そこで、独自の「復習」が必要となる。塾での学習とはずらして(スライドさせて)、まだ時間的に若干の余裕がある5年生の冬休みやその後の春休みを利用して徹底的に「地理」の「復習」をしておくことが勝利につながる。「重要事項チェック問題集」のようなものを活用してもいい。さらに、その後も定期的に「地理」の理解を深めるような学習を続けておくことで、ライバルに差をつけておきたい。

いもづる式学習

「暗記事項」はそれぞれ単独(要は「一問一答方式」)で定着させておいてもほとんど意味がない。バラバラに覚えているだけでは、自分が覚えた通りに問われなければ結びつかないし、関連問題にも答えられないからだ。

そこで重要となるのが「いもづる式学習法」だ。「点」で覚えているものを「線」で結び、さらには「面」をも理解するには不可欠の学習だ。1つの「暗記事項」を確認する際、それに関連すると思われる「事項」を次から次へと思いつく限り引き出していく。単元も無視する。もし「言葉」としては覚えていても内容があやふやになっているものがあれば、すぐに確認しておく(ついでにここでも「復習」できる)。

また、それらは「線」で結びついているはずなので、どのように結びつくのかを確認していく。その上で、それらが結びつく背景(=「面」)も理解するようにする。このようにして改めて暗記し定着させた「事項」はどのような問われ方をしても「線」で結びつけて答えられることになる。さらに、単元もまたいでいるので、「単元融合問題」にも対応できるようになる。

慶應では、「問題文」や「設問内容」そして「他の各設問」、それらに関する「知識」をつなぎ合わせて考えさせる出題が多い。それに対応するにも「いもづる式学習法」が力を発揮する。

手づくり式学習

特に「歴史」単元の「復習」で必要となる。塾での「歴史」の学習は普通、「政治史」を軸とした「通史」として「時代別」「時代順」になっている。だが、慶應の入試問題ではそうした単純なものはない。特定の切り口での「分野史」が多いし、必ずしも「時代別」「時代順」ではなく様々な時間軸で出題される。

それらに対応するために必要なのが「手づくり年表」だ。「政治史」「社会経済史」「外交史」「文化史」「人物史」等の「分野史」別の「年表」を作成しながら復習する。その際、「原始」~「現代」という長い時間軸にする。当然、「重要事項」だけしか記入できないが、それでいい。「関連事項」を頭に思い浮かべるようにすれば、「いもづる式学習」にもなる。

さらに、その「年表」には「世紀」と「日本の時代名」「中国の王朝名」を対応させて記入しておきたい。「世紀」と「時代」がすぐに結びつかないと答えられない問題が多いからだ。「年表づくり」を楽しみながらやってみよう。

 細部へのこだわり式学習

必ず出題される「ひとつのことがらを掘り下げた問題」(特に「時事問題」に関したものが多い)や「設問文の内容を組み合わせて考える問題」。これらを考えるに当たって最も重要なことは、「ことがら(テーマ)」や「内容」をいかに正確に読み取るかということだ。問題文や設問文に示されていることに基づいて「考えるヒント」を見つけ出す。とにかく「細部」にこだわって読み取ることが必要となる。

そのためにはトレーニングが欠かせない。過去問や「時事問題用テキスト」等を用いて、各事項の細かな「意味」や「関連事項」と「設問文の内容」を全て材料として、そこから何が導き出せるのかを確認する訓練をするのだ。導き出せることについては、問題集やテキストの「解説」に示されているので活用すること。

こうした「細部へのこだわり学習」をつづけることで、次第に問題文や設問文に示された着目すべき「手がかり」が自然と浮かび上がるようになる。後は自分の「知識」と結びつけて考えればいいのだ。

意識継続式学習

常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。漫然と机に向っていても時間の無駄だ。その時々、何を目的としてどのような学習(たとえば、上記の「○○式学習」)をしているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切。

そうして何かを「意識」することが継続できるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」しながら学習したい。本番ではたった30分という制限時間の中で、様々な「設問条件」をクリアして答えなくてはいけないのだ。だからこそ、「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」しながら学習する必要がある。

当然、「時間」も「意識」すること。入試では見直しの時間はないと思った方がいい。常にそれらの「意識」を継続しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
そして、何度も指摘しているが、「慶應ボーイ」になるための「大人の常識」も「意識」すること。

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2019年度「慶應義塾普通部の社会」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「公民」(ただし1問のみ「一般常識」)。「司法」や「法令」、「犯罪」についての4つの説明文からの出題。
小問なし(解答数4)。全て「事項記述」(1問以外「漢字指定」)。

大問は「地理」。「メルカトル図法の世界地図」に関連する出題。
小問は全5問(解答数11)。「選択肢」(「位置特定」、「複数完全解答」あり)、「事項記述」(「国名記述」「数字記入」あり)。

大問も「地理」。「面積が広島県より狭く岡山県より広い5つの県についての、統計資料と各県の海岸線の地図」からの出題。
小問は全3問(解答数8)。「選択肢」(「位置特定」、「整序」あり)、「県名・都市名記述」(漢字指定)。

大問は「歴史」。「弥生時代から鎌倉時代までのさまざまな事柄についての8つの説明文」からの出題。
小問は全5問(解答数7)。「事項・人名記述」、「説明記述」(1問。「字数指定」なし、「100字ほど」の解答欄)。

大問も「歴史」(ただし1問のみ「地理」あり)。「歴史上の人物5人についての説明文」からの出題。
全5問(解答数12)。「選択肢」(「複数完全解答」あり)、「人名・事項・地名記述」(「空所補充」、「漢字指定」あり)。

大問は「総合」(「歴史」「時事」「一般常識」)。「明治時代の『改暦』についてのリード文」からの出題。
小問は4問(解答数7)、「選択肢」(「複数完全解答」あり)、「事項記述」(「空所補充」あり)。

時間配分は、「説明記述」で4分、他は平均すると1問を30秒強で解くという驚異的なペースとなる。
無論、メリハリのある「戦術」が求められる。

【大問1】「公民」(1問だけ「一般常識」あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:2分

「司法権」「犯罪」「地方自治」「選挙の法令」、それぞれについての(ア)~(エ)で「説明されているもの」の「事項記述設問」(全4問。ひとつを除いて「漢字指定」)。「公民」(ただし1問のみ「一般常識」)。

本校定番の「一般常識」がやや曲者か。それを含めて2問だけ確認したい。

(イ)「悪いことだと知ったうえで、人をだまして金品などを奪う行為」(「漢字指定」なし)⇒大人にとっては「常識」なのだが⇒「答え」=「詐偽(さぎ)」。

(エ)「改正によって選挙権年齢が18歳以上となった、選挙に関する法律」」(漢字指定)⇒「選挙」に関するといえば⇒「答え」=「公職選挙法」⇒「選挙権年齢」は既に引き下げられているが、2022年4月からは「成年の年齢」も「20歳」から「18歳」に引き下げられる。
こちらは約140年ぶりの「民法」の見直しなので、「公職選挙法」とは区別して理解しておく必要がある。

<時間配分目安:全問で2分>

【大問2】「地理」(「数字記述」あり)

  • 難度:
  • 時間配分:6分
  • ★必答問題

「メルカトル図法」で示された「世界地図」に関連する出題だが、「図法」そのものについての「深い知識」が求められている設問と、世界各国についての「基本的事項と位置」が問われている設問などが混在している。
後者は「世界地理」の「基礎事項」だが(決して平易ではない)、前者は意表を突くもので相当な難問だ。

[1]では「地図上の直線の距離」が問われているが、考えるにしても多くの時間を要するので「捨て問」で構わない。以下、それ以外のいくつか「設問」を検討しよう。
※「世界地図」の「図法」では「メルカトル図法」以外に、「モルワイデ図法」「正距方位図法」などがあるので、それらの特徴は押さえておきたい。

[3] 「さまざまな国の特徴判別および位置特定選択肢設問」(全6問/各完全解答)。

「地図中」に示された(あ)~(け)のいずれかの国の「説明文」(A)~(F)について、それぞれの国を判別した上で、それらの位置を特定する。

「説明文」の「キーワード」で特定していくのだが、難易度がまちまちなので、判別しづらいものだけを確認したい。

(A)「首都では冬にマイナス20℃ぐらいになる」「永久凍土」「日本への輸出品で最も多いのは原油」⇒「原油」に惑わされてはいけない。「永久凍土」といえば「シベリア」だ⇒「答え」は「ロシア連邦」/「位置」はすぐに(い)だと分かる。

(D)「首都の気候は旭川市に似ている」「形や意味が少し違うが、同じ文字が使われている」⇒「同じ文字」=「漢字」⇒「中国」。しかし、首都の「北京」は北緯40度付近で「秋田県」と同じくらいなので悩むかも知れないが、内陸に位置し「旭川」と同じ気候になる⇒「答え」は「中華人民共和国」/
「位置」は(え)

<時間配分目安:全問で3分>

[5] 「地図に関する選択肢設問」(4択)。

「外国人にも分かりやすい案内用の図記号を何と呼ぶか」を答える。

このように説明されると、一瞬、はっ?となるかも。

各選択肢は、(ア)「ガイドピクチャー」、(イ)「ランドマーク」、(ウ)「シンボルグラフィー」、(エ)「ピクトグラム」。カタカナばかりが並んで紛らわしいが、そこは落ち着いて判別したい。
「答え」は(エ)だ。

尚、「ピクトグラム」は1964年の「東京オリンピック」をきっかけに広がったので、再び「東京オリンピック」が開催される来年度も要注意だ。

<時間配分目安:30秒>

【大問3】「地理」(「整序」あり)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:5分

「面積が広島県より狭く岡山県より広い」(ア)~(オ)県について、それらの「県庁所在地の人口」を縦軸(~200万人)、「県の人口」を横軸(~600万人)として、(ア)~(オ)それぞれを「●」で示した「資料1」と、「各県の県庁所在地の特色」の「説明文」(資料2)、そして、「各県の海岸線の一部」を表した5つの「地図」(資料3)に関する出題。

「資料1」は馴染みがなく、読み取りづらいので焦ってしまうかも知れないが、実際に問題を解くに当たっては「資料2」「資料3」でほぼ事足りる。冷静に解き進めていくこと。
尚、[1]は「面積を広い順に整序する」問題で、困難を極める。効率を考えれば、戦術として「捨て問」にすべき。他の設問を考えてみる。

[2] 「都市名記述設問」(漢字指定/複数完全解答)。

(ア)(オ)県の「県庁所在地のうち、その名前が県名と異なるものをすべて漢字」で答える。

先ずは、「資料2」の「キーワード」と「資料3」の「地形」から特定できる(ア)(オ)県を確認する。

「資料2」の「2番目」⇒「この市で開催される七夕祭り」=「仙台市」と目星が付く⇒「資料3」の「地図5」には「リアス海岸」が特徴的な「牡鹿半島」があるので間違いない=「宮城県」。

「資料2」の「4番目」⇒「有馬温泉」⇒「資料3」の「地図1」には明らかに「淡路島」がある=当然、「兵庫県」。

「資料2」の「5番目」⇒「羽衣伝説で知られる三保の松原」「世界文化遺産」⇒「資料3」の「地図2」に「御前崎周辺」があることから=「静岡県」で確定。

ここからがなかなか厄介だ。
「資料2」の「3番目」⇒「冬でも温暖な気候」「プロスポーツのキャンプ地」⇒プロ野球を少しでも知っていれば、「キャンプ地」といえば「沖縄県」か「宮崎県」となる(「大人の一般常識」だが、どうだろうか?)⇒「資料3」の残りにはどう見ても「沖縄県」はない=「地図3」の「宮崎県」となる。

そして、最後が「資料2」の「1番目」⇒「市内にある有名に城や公園」「路面電車」⇒「路面電車」が走る都市はいくつもあるが、残っている「地図4」をよく観察すると「有明海と天草諸島」らしいと分かるはず=「熊本県」だと特定したい。
これで、(ア)(オ)県は「宮城県」「兵庫県」「静岡県」「宮崎県」「熊本県」となる。

これらの中で「県庁所在地名と県名とが異なるもの」になるので、「答え」は「仙台市、神戸市」ということになる。
確かに厄介ではあるが、適切に処理していけば正解できる。

尚、「都道府県庁所在地名と都道府県名と異なる」ところは全部で18ある(「東京」は算入せず、「さいたま市」は算入する)。それらは本校に限らず頻出なので、必ず全てを定着させておくこと。

<時間配分目安:1分以内>

[3] 「県についての選択肢整序設問」(5択)。

(ア)~(オ)県のうち、「平成になってから昨年(2018年)までのあいだに起きた大地震で、震度7が観測された県」を「3つ」選び、「地震が起きた順番」に並べて「記号」で答える。

[2]で「宮城県」「兵庫県」「静岡県」「宮崎県」「熊本県」は特定できている。
これらの中で「大地震」といえば、「宮城県」⇒「東日本大震災」(2011年)、「兵庫県」⇒「阪神淡路大震災」(1995年)、「熊本県」⇒「熊本地震」(2016年)だとすぐに結びつかなくてはいけない。
「年代整序」も容易だ。が、ここは「記号」で答える必要がある。それは「資料1」で判別する他はない。

「県庁所在地の人口」で決めていく。3県の「県庁所在地」である「仙台市」「神戸市」「熊本市」はいずれも「政令指定都市」だが、
最も人口が多いのは無論、「神戸市」=「資料1」の(オ)、次に「百万都市」である「仙台市」=(ウ)、そして、「50万人以上100万人未満」で並んでいる(イ)(エ)では、「静岡県」には「静岡市」「浜松市」という2つの「政令指定都市」があるので当然、「県の人口」がより少ない(イ)が「熊本市」だと判別できる。
したがって、「答え」は「(オ)(ウ)(イ)」となる。

尚、現在20ある「政令指定都市」に関しては、本校も含め様々な観点から出題されるのでしっかりと確認しておくことが肝要だ。

<時間配分目安:1分以内>

【大問4】「歴史」(「説明記述」あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:7分

「1世紀~13世紀」までの「遺跡」や「争い」「生活」などのさまざまな事柄についての、(あ)~(く)の「説明文」からの出題。

「原始・古代~中世」の「歴史」に関する「基本的問題」がほとんどだ。本校志望者であれば「全問正解」といきたい。
だが、最後の「説明記述」は困りものだ。記述すべき内容はすぐに思いつくはずなのだが、「字数指定なし」の「解答欄」が相当に大きく、それだけの内容を埋めることができるのかが不安になるはずだ。
やはり本校は、そう甘くはない。その1問だけを確認する。

[5] 「説明文に関する条件付き説明記述設問」(「字数指定」なし。「100字ほど」の解答欄)。

(お)~(く)の「説明文」の様子から、鎌倉幕府の力はどのように変化していったのか」を説明する。「条件」は「[4]の(ア)~(ウ)の書き方を参考にする」こと。

「条件」として「書き方」が示されているので先ずは[4]を確認する。「1~9世紀にかけて、王の力はどのように変化していったのか」というテーマについての説明だ。
(ア)(ウ)はすべて同じ「書き方」で、「○世紀(頃)に……し、✕世紀(頃)には……した(が)、□世紀(頃)には……した」というものだ。こうした「書き方」を意識して、(お)(く)の「説明文」で「記述すべき要素」を確認していく。

(お)「12世紀後半、武士の力が強くなり、東国の武士たちと共に平氏を倒した源頼朝が鎌倉に幕府を開いた」。
(か)「1221年、承久の乱で幕府の御家人たちが朝廷の軍を破ると、西国の武士の領地が没収され、御家人たちに与えられた」。
(き)「1274、1281年に元が攻めてきた時、幕府は御家人だけでなく、それ以外の武士も集めて戦った」。
(く)「幕府は、蒙古襲来の戦いで活躍した武士に十分な恩賞を出せず、生活に困る武士や幕府の命令に従わない武士が出てきた」。

こうした「要素」を自らの「知識」も踏まえて、「鎌倉幕府の力の変化」という視点でまとめていけばいい。
たとえば、「12世紀後半、平氏を倒した源頼朝が鎌倉に幕府を開き、13世紀前半の承久の乱で勝利した幕府は勢力を西国にまで広げたが、13世紀後半の蒙古襲来では武士に十分な恩賞を与えられず、次第に鎌倉幕府の力は衰えていった。」(100字)といった「答え」になる。

「条件」は「手がかり・ヒント」でもあるので、先ずはそれに従って活路を見いだすことが肝要だ。

<時間配分目安:4分>

【大問5】「歴史」(1問だけ「地理」あり)

  • 難度:標準
  • 時間配分:6分
  • ★必答問題

「縄文時代~明治時代」にさまざまな分野で活躍した「人物」についての(あ)~(お)の「説明文」からの出題。

「歴史」(ただし1問のみ「地理」あり)の、「基本的事項」を問う設問と「ディープな知識」が求められる問題とが混在している。2つの「設問」を検証する。

[1] 「   線部の人名記述設問」(全5問/全て漢字指定)。

(あ)~(お)の「説明文中」の「   線部の人物名」を「漢字」で答える。

(あ)=「豊臣秀吉」(「太閤検地」や「刀狩」の説明あり)、
(い)=「徳川家光」(「参勤交代を定めた」という説明あり)、
(う)=「大久保利通」(「木戸孝允らと欧米を回る」「同じ藩出身の人物による士族の反乱」という説明あり)
は誰でもすぐに分かるはず。
が、残りの2人はなかなか厄介だ。特定していく。
(え)には「この人物は、『応仁の乱』([2]の「答え」のひとつ)が起こった年に明に渡り、帰国後、代表作を描いた」といった内容が説明されている。
さあ、どうか? すぐにピンとくるか? なかなか難しい。
少ない「手がかり」から類推していきたい。
「代表作を描いた」=「画家」?⇒「明で水墨画を学ぶ」?⇒「応仁の乱」⇒「室町時代後半」=「東山文化」と結びつけていけば、そう、「答え」は「雪舟」だ。

そして、(お)では「この人物は、日本の美術品の大切さに目を向け、アメリカ人の学者であるフェノロサと共に『法隆寺』([2]の「答え」のひとつ)を調査した」という内容が説明されている。
一瞬悩むかもしけないが、ここは「フェノロサ」と結びつけて、「答え」は「岡倉天心」だと特定したい。

直接「知識」として定着していない問題では、「キーワード」を結びつけて類推していくことも求められると心得よ。
尚、本問のような「文化分野」は「歴史」単元の中でも抜け落ちやすいので注意すること。

<時間配分目安:全問で2分半>

[3-①] 「下線部についての選択肢設問」(6択)。

(あ)の「説明文中」の下線部①「農民から武器を取りあげるよう命じた」命令に「含まれる文」を、選択肢(ア)~(カ)から答える。

無論、「刀狩令」だ。しかし、どの選択肢にも「刀」「武器」などといった文言は見当たらない。流石(さすが)に本校はそう甘くはない。
そこで、「刀狩令」の内容を少し詳しく思い出してみる。「武器を取り上げる名目」として「大仏をつくるときの釘などに用いる」といった説明があったではないか。
したがって、「答え」は「仏の恵みを受けるから、百姓はこの世だけではなく、死んだ後も救われるだろう」とある「(エ)」になる。

重要な「史料」等については細部まで確認しておくことが必要だ。

<時間配分目安:30秒強>

【大問6】「総合」(「歴史」「時事」「一般常識」)

  • 難度:標準
  • 時間配分:4分

「1872(明治5年)、明治政府が行った『改暦』にまつわる当時の様子を紹介したリード文」からの出題。「総合問題」(「歴史」「時事」「一般常識」)だが、「時事」「一般常識」で本校志望者の「素の常識」が問われている。

一種の「真の実力」が試される大問になっている。以下、それらについて考えてみたい。

[1] 「空所補充の事項記述設問」(全3問)。「一般常識」。

「リード文中」の空所( ア )~( ウ )に「当てはまることば」をそれぞれ答える。

各空所を確認していきたい。

「これまでの太陰暦をやめて欧米各国が採用している新暦の( ア )暦に改める」⇒これはとても平易だ。瞬時に分からなくてはいけない⇒「答え」=「太陽(暦)」。

「西洋にては一七日(ひとなのか)を一( イ )と名づけ、世間日用の事、大抵一( イ )にて勘定せり」⇒当時の「文語」のままだ。
果たして諸君の「常識」が通用するのか?⇒「一七日」、つまりは「ひとつの七日」で「世間一般の用事を数える」ということは、「一七日」を「単位」としているわけだ⇒「単位」としての「ひとつの七日」⇒「答え」=「(一)週間」となる。

「改暦と同時に変えられた( ウ )の表し方について『まず短針の指す所を見て次に長針の居所(いどころ)を見るべし』と述べている」⇒「長針の居所」? なんやそれ? 確かにそうなのだが、「短針」「長針」であれば「時計」のことで、その「見方」を説明しているのだから、何の「表し方」なのかは分かるはず⇒「答え」=「時刻」だ。

「常識的」に考えれば、(イ)(ウ)も当然の「答え」になる。

万一、「答え」を出せなかった諸君がいたならば、「慶應義塾志望者」として「自らの常識」を疑うべし。

<時間配分目安:全問で1分半>

[4] 「リード文に関連する事項記述および選択肢設問」(「選択肢設問」は5択/複数完全解答)。「時事」単元。

「リード文」に関連して、最近、話題になった「夏を中心とした時期に標準時を1~2時間程度早める制度」を「何と言うか」を記述し、「この制度がねらいとしている効果」に「当るもの」を(ア)~(オ)から「2つ」答える。

「事項記述」の方は何の問題もない。「夏に時間を早める制度」のだから、「答え」は「サマータイム」で決定。
で、その「効果」の方だが、「夏」に「時間を早める」のだから、「暑さ対策」があるということはすぐに判断できる⇒ひとつの「答え」は「日中の暑さを回避したい」とある選択肢(ウ)だ。

では、もうひとつは何か? 残りの選択肢は、
(ア)「労働者の睡眠時間を増やしたい」・(イ)「労働者の休日を増やしたい」・(エ)「海外からの観光客を大幅にを増やしたい」・(オ)「経済面で個人の消費を増やしたい」。
「時間を早める」ことで、「夕方~夜」にかけての活動時間がいつもより増えると考えられる⇒「答え」は(オ)だと判別したい。

「時事問題」ではあるが、ここでも「常識的判断」が求められたわけだ。

<時間配分目安:全問で1分半>

攻略のポイント

●最大のネックは「試験時間」。「戦術」が絶対不可欠だ。基本は「取れる問題を確実に押さえる」こと。逆にいえば「取れそうにない問題は潔く捨てろ!」ということだ。最悪なのは「できそうにもない問題」に時間を取られ、「できるはずの問題」を逃がしてしまうということ。
瞬時に「捨て問」を判別し次の問題に立ち向かうべきだ。もし時間が余ったら、また戻ればいい。

配点はほぼ各2点前後(「説明記述」は4点ほど。本年度も4点)、7割程度と推定される合格ライン(非公表)を考えれば、10問は「捨て問」としても構わない。
難易度から判断して「基礎的知識」で十分対応可能だ。まして、慶應対策の学習をしていれば何の問題もない。

●「選択肢設問」について補足しておきたい。「不適切」や「複数完全解答」などが混在している。各選択肢自体は決して判別が難しくはなくても、焦り過ぎていると「取りこぼし」が生じてしまう恐れがある。
「即断即決」は必須なのだが、「慎重さ」も求められている。
こうした「矛盾」を克服することが課題になると心得よ。

慶應義塾が求めている「教養人」としての備えも必要だ。「大人の一般常識」が問われる。
塾のテキストでは扱われていないようなものが出題されるので、日頃から「意識」しておくことが重要。その上で、「新聞」や「テレビのニュース」は必ずチェックし、気になったことがあったらすぐに確認すること。そして、周りの「大人の人たちの会話」にも「参加」するように心がけたい。

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