吉祥女子中学校 入試対策
2022年度「吉祥女子中学校の理科」
攻略のための学習方法
女子進学校として着実に実績を伸ばし、難関大学合格者数においても全国レベルの学校となった吉祥女子中。今、好調の波に乗っている学校といえよう。
そんな吉祥女子中の理科は、女子校の問題の中でもユニークな出題傾向を持っていた。
分量はやや多め、大問4つは公平に4分野から出題されるなど、とりたてて変わったところはなく、表面的には典型的な入試問題に見えるところだが、設問間の難易度に大きな差があるところが特徴になっている。
もちろんどこの入試問題においても、前半はやさしく、後半は難しいというのが普通なので、当たり前と言われれば当たり前と言える。
しかし、この学校の場合、前半は本当に「基礎的な知識」を問う問題(小4生が解いても基本問題)で、後半は女子校の中でもかなり上位にランキングするレベルなのだ。
ただし、2020年度・2019年度・2018年度ではこの傾向から外れ、全体に基本的な設問に設定が変更になっている。問題文の分量・少しユニークな設問などは健在ではあるものの個性がかなり薄まったのも事実である。計算問題にもうならされるような難問はなくなった。しかし昨年度・本年度(2021年・2022年)のテストには以前のような長大な大問も見られ、以前の吉祥女子らしさが見られた。しかし、計算問題は取り組みやすいものがほとんどだった。
平成28年度の問題を例にとれば、大問3の(1)~(4)と(5)~(7)まで、大問4の(1)~(5)とそれ以降の設問では、前半は本当に基礎的な知識を問う設問、後半は考察力や計算力を必要とする設問になっている。そして、その間を埋める設問が存在しないという設定になっている。普通は、その中間レベルで入試の勝負が決まるのだ。
受験生としては、まず初めに「基礎的な知識」をしっかりと身につけたい。分野にかかわらず、暗記用として与えられた教材をくりかえすことでこの段階を突破しよう。
ここから先は受験生によりけりということになる。
理科が得意な生徒は、前半をきっちり解いたうえで、後半の難問にも手が出せるよう過去問を利用して応用力の充実を図ろう。ただし、難問と言えるレベルなので、自信をもって取り組めるようでなければならない。無理して挑戦する必要はないというわけだ。なぜなら、前半の設問を正解しておけば、それだけで合格点に迫れるからだ。
したがって、理科を多少苦手としている生徒は、後半の難問は追わないほうが良いと思う。理科を不得意としている場合は、たいてい基礎的な知識すら不十分な場合が多い。まずそちらの充実を急ぎ、あとは算数・国語・社会などで得点を取る・貯金することを考えたほうが良い。
理科ほどのやりにくさは他の科目には見られない。
もちろん余裕があれば後半の設問に挑戦することは歓迎する。その部分にこそ吉祥女子理科の醍醐味があるわけだし、解けた時の喜びが大きいからだ。
他に言えることは、問題数に比べて問題文の分量が多いので、過去問をしっかり解いて、時間配分や問題文の量にも慣れておこう。傾向を知ったうえで十分な対策を施しておかないと、模試などの偏差値で合格ラインに届いていても、思わぬ墓穴を掘ることがあるのが入試の難しさでもあるからだ。
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2022年度「吉祥女子中学校の理科」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
35分で大問は4,小問は30強で、設問は基本的なものが多いとはいえ分量は多めである。この学校の特色である、設問に入る前の説明文には長いものが多く、またユニークな題材を扱っていることもあり、受験生にとってはスピードを要求されるテストとなった。計算問題はより平易になっているので計算自体の時間を要するものはほとんどない。合格点から見ると基本的な設問にはぼ正答できなければいけないので、難易度は全体的に高くはないものの、合格へのハードルは下がっていない。
【大問1】地学(太陽の動き)
- 難度:易
- 時間配分:8分
- ★必答問題
太陽の2つの動き(日周運動・年周運動)について天球図を参考にしながら答えていく問題。設問は最後まで基本問題の域を出ない。ここは全て正解して進みたい。
(1)[実験]の図を見ると、太陽は真東から上がり真西に沈んでいる。実験前の文に「3月下旬」とあるので答えは一つにしぼられる。
(2)(1)の日の、太陽の南中高度は「90°-その土地の緯度」である。
(3)もテキストなどでさんざんやって来たと思われる「6月下旬(夏至)」と「12月下旬(冬至)」のときの太陽の動きで、夏至では太陽は北寄りから、冬至では太陽は南寄りから登りそれぞれ沈んでいく。
(4)では、太陽を観測する位置が少し変わり、点差がつき始めるとしたらこの設問あたりか。選択肢をよく読み適切な記号を選ぶこと。北に移動したYでは、その土地の緯度に変化があり、西に移動したZでは、その土地の日の出・日の入りの時刻に変化が出る。
(5)ここでは、太陽を観測する場所が南半球(北緯と難易の差はあっても数値は同じ、東経は同じ)にうつる。気をつけたいのは、南半球では太陽は「東から上り、北を通って、西に沈む」となることだ。別に「なることだ」と言わずもがな、受験生はほぼ承知しているだろう。
(6)は北半球と南半球では季節が逆転する。地点Wの12月下旬は「夏」であるので注意したい。
しかしどれも典型的な出題なので、ここは全問正解しておきたい。
【大問2】化学(みりんの科学)
- 難度:標準
- 時間配分:9分
みりんという調味料を使ってさまざまな実験が試みられる、昨年度の【大問2】と並んでいかにも「吉祥女子の理科」らしいユニークな問題になっている。「みりん」に関する名称・原材料名・アルコール分などを参考にして問題にあたりたい。ただ、問われていることは易から標準の域を出ないので、ここも極力正解しておきたいところ。
(1)は「デンプンが多く含まれる食品」を選ぶのだが、選択肢が易しすぎる。
(2)は簡単な計算が必要になる。「度=%」が説明されているので易々と答えられる。「調べたこと2」を経て、問題は徐々に深みを増していく。
(3)は混合物はどれか、を選ぶ問題で、塩酸だけが「塩化水素+水」からなるのでこれを選ぶが珍しい問いではある。
(4)では「気体を冷やして液体にする」のと同じ仕組みの現象を選ぶ。気体→液体になっているものを選ぶ。そして[実験1]の長い文章がはさまるが、長い質問文が正解をリードしてくれるのでまだ迷うところではない。[実験2]は水だけを加熱させる実験とそのグラフが与えられる。
(6)は水の三態の基本的知識で水が沸騰して水蒸気になった状態である。
(7)も平易な問いで、水の量を半分にすれば沸騰するまでの時間は半減、ただし沸騰する温度は変わらないグラフを選べば良い。
- そして最後に結論として(8)の選択問題があるのでそれまでの経過を念頭に置きながら慎重に選択肢を選んでいく。得られる結論も常識的なものなのでそれほど迷うことはないと思われるが…。
【大問3】生物(植物)
- 難度:易
- 時間配分:8分
- ★必答問題
2021年8月の海底火山の噴火から話題は始まるものの、内容は植物がどのようには発生し増えていくかというごく普通の設問が続いていく。[調べたこと1]などはまさに[昔読んだことがあること]そのものではないか。去年のキュウリの方が面白かった。
(1)は最初に生育を始める植物、コケとかツル植物など、厳しい環境でも育っていける特徴を選ぶ。
(2)はそのあと、草原を作る草、陽樹の繁殖、陰樹の繁殖…最後は「極相」と呼ばれる陰樹林になる。それに合わせて①②③の組み合わせを選ぶ。
[調べたこと2]はさすがに[昔読んだこと]にはならないが、日本の国土と平均気温の話、そしてそれによって生えている植物は大きな影響を受けるという常識的な内容なのでまだ余裕が持てる。「たとえば」以降の具体的な地名と樹林の種類に目をつけて答えを出していく。
(3)は平均気温とともに重要なものは「年降水量」である。設問ではないが「日本で特に風が強いところはどこでしょう?」とか社会で出題されそうな問題にはなる。答えは「富士山の頂上付近」らしいがこれはシャレで誰でも行けるところではないので、普通は青森県の竜飛岬や北海道の襟裳岬あたりを覚えておけば良いだろう。
(4)の照葉樹の特徴を選ぶもの。照葉樹については「一年中葉をつけている森林」と説明があるのでそれを参考にしたい。
[調べたところ3]では「暖かさの指数」という面白い指数が紹介され、そのための計算問題もあるがそれに付随する設問は難しいものではない。
(7)は地球温暖化によって起こる現象を選ぶ。今年(2022年)は梅雨が異常に短く、6月下旬の観測史上最高の猛暑など相変わらず異常気象が続いているので、来年度も「生物と気象」などのテーマには要注意である。
【大問4】物理(浮力)
- 難度:標準
- 時間配分:10分
「浮力について…」と問題文が始まった途端、「浮力が出た~!」と顔面蒼白になった受験生は少なくないだろう。しかし、この学校では浮力についてもていねいに解説してくれるのでそれほど心配はしなくてもいい。ただし、水中の浮力に関しては正解できるようにしておきたい。
(1)発泡スチロールの体積は100cm3で、全て水の中にあることから受けている浮力は100gとなるが、発泡スチロールの重さが2gあるのでその分はひいておきたい。
次に空気中の「浮力」へと問題は移っていく。ここはあまり経験したことのない内容なので初見に弱い生徒は苦労したところだろう。しかしここでもていねいな解説が施されているのでそれを読みながら一つずつ答えを出していきたい。
(2)は文中の数値を参考にしながらヘリウムガスの重さを計算すれば良い。
(3)(4)は空気の重さを出しながら重さ4gの風船の重さも念頭に置きつつ計算して答えを出す。
そして最後に空気を温めることによって空気の重さを変え、それによって熱気球が浮くかどうかと言う実験に進む。
(5)~(7)も文中・グラフにある数値を参考にしながら計算して答えを出していく。計算は複雑なものではない。
(8)は最後のそのまとめで締めくくられる。計算がないのでここだけ答えておく、という手段もあるがやはり計算問題あっての吉祥女子の理科なので、解けなかった場合でもしっかり復習しておこう。
攻略のポイント
テスト時間は35分で70点満点。
受験者平均が47.2点(67%)、合格者平均が53.4点(76%)と高めであり、合格するためには少なくても50点台(80%弱)の得点は必要となる。
問題が易しくなったとは言え分量も多く、ここで80%程度という点数を得るためにはオールラウンドな知識と問題文への理解、計算問題などを迅速に処理するという学力が必要となる。
今後もこのレベルで移行すると思われるが、【大問2】「みりんの科学」のようなかつての「吉祥女子の理科」を思わせる、ユニークな大問も復活している。もちろん、基本的な知識と標準的な解法を身につけていれば十分に合格点はとれるものの、6年以上前の過去問にも触れることで「吉祥女子の理科」への免疫もつけておきたいところだ。
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