駒場東邦中学校 入試対策
2023年度「駒場東邦中学校の国語」
攻略のための学習方法
問題構成
論説文・小説の読解問題2題と、漢字・言葉の知識が数問という形式が定着している。素材文の長さは各2500~3500字の2問で計5000~7000字ほど。平均的な文量と言えるが、時間は45分と少し短いので注意。
選択肢問題がほとんどで、短い記述問題が出される年度もある。県下でも有数の高偏差値の学校であるが、国語の試験は非常にシンプルな構成になっている。
長文読解
論説文と小説の2問。同程度の難易度の学校では10000字を超える長文も多く見られる中、5000~7000字は文量としては少なめである。設問でも、長大な記述問題や答えを探すのに手間取りそうな書き抜き問題はほとんど出されない。
最新年度では書き抜きと適語記入の2問以外はすべて記号選択問題であった。選択肢は四択で文は少し長いのでここで多少時間を取られるが、内容は無理に迷わせるような意地悪なものではない。全体的にクセのないシンプルな試験である。
45分と少し時間は短いが、本校を志望するレベルの生徒であれば時間・難易度ともにさほどの困難は感じないであろう。
特別な対策は要らないので、長文読解の基本に沿って学習を進めればよい。
・論説文
段落の整理。形式段落→意味段落へとまとめ、各意味段落の内容を小見出しのようにつけてしまうとよい。
各段落の要点。段落の最初と最後に特に注意しながら、要点と思われる1文に傍線を引くなどしてマークしておく。細部でも、言い換えた部分などは手がかりになる場合も多いので、チェックしておく。
要旨の読み取り。どのような問題でも訊かれることが多いので、要旨の中でも特に重要な部分を目立つようにしておく。
・小説
場面分け。時間・場所・人物の移動などに注目し、場面の変わり目をチェックしておく。だれのどんな場面なのか、他の場面との関連なども考えておく。登場人物の性格を把握し、言動や情景から心理を読み取る。気持ちに変化があった場面は問題にされやすいので、特に注意しておく。全体を見渡して、何が中心テーマとして描かれていたのかを考える。
・漢字・その他
漢字はここ数年、同音異字の選択肢問題という形で3問程度出題されている。語句の意味も数問、出されている。標準的な難易度である。
まとめ
選択肢問題が多いので、類似問題で慣れておくことは重要である。しかし、本校の高い偏差値からすると難易度は控えめであり、全体としても取り組みやすい試験になっている。
それだけに、合格者平均点は7~8割と高いことが予想され、高得点での争いになると思われる。確かな実力と、ミスのない答案作成が求められる。
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2023年度「駒場東邦中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
出典は川和田恵真「マイスモールランド」(文字数約9200字)。設問は全12問(解答数27)。「選択肢」(「資料読み取りの考察問題」、「不適切」、「複数解答」、「総合的知識問題」あり)、「説明記述」(全5問。「30字以内」「40字以内」「60字以内」「80字以内」「100~120字以内」各1問)、「漢字の書きとり」(全15問)。問題文を12分強で読み切り、「説明記述」は35分程度、その他の設問は13分ほどで解きたい。
「小説の読解」(「漢字の書きとり」と、「選択肢」6問、「説明記述」5問)
- 難度:やや難
- 時間配分:60分
- ★必答問題
第72回ベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞・特別表彰を受けた映画「マイスモールランド」を監督自身が小説化した作品。ここにいたいと願うことも罪ですか?――日本で暮らすクルド人少女の願いと闘いの物語。
幼いころから日本で育ち、埼玉県の高校に通うクルド人の少女「サーリャ」の視点で、現代社会の不条理を提起している。本文では、在留資格を失った「父」の家族への想いを知り、自らも新たな決意をしていく姿が描かれている。「クルド人」、そして、彼らが日本で置かれている状況などを「前説」(500字もある)でしっかりと理解すれば、内容は理解できるはずだ。ポイントは定番の「説明記述設問」と、本校初出題となる「資料読み取りの考察問題」になる。以下、いくつか本校の典型的な設問を確認してみたい。
[問1] 「漢字の書きとり」(全15問)
二重傍線部(1)~(15)の「カタカナ」を「漢字」に直す。本年度は例年と比較してとても平易だ。やや注意すべきものだけを確認したい。
(2) 「タンジョウ日」=「誕生」⇒書けるに決まっているが、「誕」は「15画」、一画一画を丁寧に記すこと。
(8) 「大学やセンモン学校」=「専門」⇒間違いやすい代表格。「専」の右上に「`」を打たないこと。また、「専門」は「問」ではない。
(9) 「シュウショクにも繋(つな)げる」=「就職」⇒「就」の右側の「尤」に注意したい。
(12) 「冬の寒さはさらにキビしく」=「厳(しく)」⇒これはできて当然。
(13) 「毎日トナえた言葉」=「唱(えた)」⇒「結晶」の「晶」と混同しないこと。
<時間配分目安:全問で3分半>
[問2] 「語句の意味の選択肢」(全2問。各5択)
本校の面目躍如といった「総合的知識問題」。波線部(A)「唇(くちびる)を噛(か)んだ」・(B)「無機質な」の「本文中の意味」を答える。チェックしてみよう。
(A)⇒「唇を噛む」という「慣用句」=「怒りや悔(くや)しさをこらえる」⇒「答え」は選択肢(オ)の「悔しさをこらえた」。
(B)⇒「無機質」あるいは「無機物」=「炭素を含まない」(対義語は「有機質」あるいは「有機物」)⇒「非生物」⇒「人間らしくない」⇒「答え」は(イ)の「あたたかみのない」。「語句の意味の選択肢」では「原意」(=もともとの意味)を最優先に考えることが必須だ(ただし、「多義語」では「文脈」による判別も必要になる)。
尚、本校では、「漢字」だけではなく「四字熟語」「慣用句」「故事成語」「ことわざ」「オノマトペ」「慣用表現」など、あらゆる「知識」に対応できるようにしておくことが肝要だ。
<時間配分目安:全問で1分以内>
[問3] 「内容説明記述」(「40字以内」指定)
傍線部①「その時、私は、ずっと寂(さび)しかったんだ、と気がついた」について、「サーリャはどのようなことについて『寂しい』と思っていたのか」を「四十字以内」で説明する。「状況」を「同一場面」から読み取りたい(「小説」では「同一場面」に「手がかり・ヒント」がある)。だが、先ずは「指示語」があるので開きたい(「指示語」で出たら即開くこと)。直前から、「その時」=「友人である聡太(そうた)が私(サーリャ)に『それはちょっと寂しいよね』と言い、私が『……うん』と答えた時」だと判断できる。さらに、「それ」という「二重指示語」があるので開く(「二重・三重指示語」も必ず全て開くこと)。「それ」=「ここ(河原)は生まれたところに似ているらしいけど、私は全然覚えていないこと」だと読み取れる。これらが説明すべき内容のポイントだ。あとは、指定字数に応じて補足要素を「同一場面」から読み取ってまとめていけばいい。たとえば、「自分が生まれたのはどんなところだったのかを、今となっては全然覚えていないこと。」(39字)といった「答え」になる。結果的に本問は「指示語換言」として解けたことになる。「指示語」はさまざまな設問形式で問われてくるので注意したい。
<時間配分目安:2分半>
[問4] 「心情説明選択肢」(5択)
傍線部②「その瞬間、揺れ動いていたはずの心が、急にぴたりと固まった」について、「ここでのサーリャの心の動きの説明」を答える。「指示語」は最初に開いておく。「その瞬間」=「聡太くんの瞳(ひとみ)の中にいる自分と目が合った気がした瞬間」だと分かる。さて、「選択肢問題」は「消去法」が大原則。「原意絶対優位の原則」(「設問」「傍線部」等の「原意」、すなわち「もともとの意味」を最優先に考えること)で、先ずは「原意消去」をしたい。ここは「心情説明」なので、各選択肢の「文末」が表す「心情」と「心がぴたりと固まった」が結びつくかどうかで「消去」する(選択肢説明の最重要要素は「文末」に記されている)。確認する。
(ア)「自信が芽生えたということ」、(イ)「固く決意したということ」、(ウ)「はっきり分かったということ」、(エ)「はじめて気づいたということ」、(オ)「確信したということ」。どうだろうか? 「ぴたりと固まった」のだから当然、「固く決意した」と「はっきり分かった」以外は「消去」できるはずだ。続いて、「自分と目が合った瞬間」に「ぴたりと固まった」ということから、「(聡太と)共に生きていこうと(固く決意した)」と説明されている(イ)は「消去」で、「自分が何を守り大切にしたいのか(はっきり分かった)」となっている(ウ)が残ると判別できる。念のために「同一場面」で他の部分の説明を確認する。特に誤ってはいないと判断できる。よって、「答え」は(ウ)になる。ここでは「2段階消去」だったが、「原意消去」は絶対に活用すべきだ。なにせ、全ての選択肢説明(各80字ほど)を確認していてはいくら時間があっても足りないのだ。
<時間配分目安:2分半>
[問7] 「理由説明記述」(「80字以内」指定)
傍線部⑤「私は、それを自分の力で読みたい、と思った」について、「サーリャはなぜこのように思ったのか」を「八十字以内」で説明する。お約束の「指示語」が最優先。「それ」=「お父さんがノートに書いたクルド語の文章」だ。なぜ「自分の力で読みたい」のか? 「理由」の読み取りのポイントのひとつは、「きっかけ」や「結果」だ。ここでは「結果」がカギになるとすぐに分かるはず。直後に「お父さんを、自分の力で知りたい」とある。まさに、これが「直接的理由」だ。続いて、「クルド語を覚えたいと思ったのは生まれて初めてだった」「お父さんと向き合っていなかったこと、お父さんの思いを知ろうとしなかったと後悔したのも、これが初めてだった」「これまでずっと、あんなにそばに居たのに。いつでも話せたはずだったのに」と述べられている。これらが、「間接的理由」を含めた説明すべき内容だと分かる。「間接的理由」→「直接的理由」という構成で、過不足なくまとめていきたい。たとえば、「いつでも話せたのに父の思いを知ろうとしなかったことを後悔し、父が書いたクルド語の文章を自分の力で読み理解することで向き合い、思いを知りたいと初めて思ったから。」(79字)といった「答え」になる。
尚。「説明記述」では、必ず「最重要要素」(「理由説明」では「直接的理由」)を「文末」とし、その他の「要素」を「指定字数」に応じて加えていくこと 。
<時間配分目安:3分>
[問12] 「資料読み取りの不適切選択肢」(5択)
「考察(思考)問題」だ。「この小説を読み終えたAさん・Bさん・Cさん・Dさん・Eさんが見つけた難民制度に関する資料1・2・3と、本文をもとに述べられた意見」として、「適切でないもの」を答える。
「資料1」は「先進7カ国の難民認定率(2018年)」、「資料2」は「トルコ出身難民申請者の先進7カ国の難民認定率(2018年)」、「資料3」は「クルド人を難民認定 札幌入管、 トルコ国籍は全国初 代理人『大きな一歩』」という見出しの「新聞記事」(2022年8月10日 北海道新聞)。これらの「資料」および「本文内容」と、それぞれの「意見」で指摘されている内容を正確に照合して、的確に「正誤判別」をしていく。すると、「意見(イ)」に「そもそも日本ではトルコ出身の人が難民申請をするケースが他国に比べて少ない」という記述があることに気づくはずだ。だが、「資料2」からは、「日本」の「トルコ出身難民認定処理数(人)」の「1010」よりも、「イギリス(933)」・「アメリカ(674)」・「イタリア(276)」の方が「少ない」ことが読み取れる。「7カ国中3カ国」だ。決して「日本」が「他国に比べて少ない」とはいえない。したがって、「不適切」⇒よって、(イ)が「答え」だと判別できる。こうした「資料読み取り」では、先入観にとらわれることなく、純粋に「データ」だけを読み取り「考察(思考)」することが肝要だと心得よ。
尚、来年度以降もこうした出題があり得るので、十分に練習しておくこと。
<時間配分目安:3分半>
※尚、[問11]に「表現特徴の不適切選択肢設問」(複数解答/6択)がある。6か所の「表現の効果や表現技法」などについての「事実関係」等を正確に読み解いて判別する必要があり、とても手間暇(ひま)がかかる。こうした「本文合致設問」、「論説文」では「序論部分」と「結論部分」とを照合すれば済むが、「説明文」や本校のような「小説」では本文全てをチェックする必要がある。時間がかかるので、戦術的には「あとまわし」にすること。「捨て問」でも構わない。
攻略のポイント
●出題傾向は完全に一貫しており、対策はしやすい。「選択肢設問」はさほど難しくないので落とさないこと。やはり、攻略のポイントは本校特有の「説明記述」だ。厳しく採点されるので、「細部」への目配りが欠かせない。合格ラインは6割ほど(直近15年間の「国語」の「合格者平均得点率」は64.0%。本年度は64.2%)。
●「説明記述」対策では「書くこと」の練習は当然だが、その前提として先ずは「解法」をマスターし応用できるようにしておくことが重要。「問題解説」でもいくつかの「解法」には触れたが、「小説」の「解法」は確実に習得し、応用できるようにしておくことが肝要だ。また、「総合的知識問題」も侮れない。確実に習得しておくこと。
●本年度初出の「考察(思考)問題」、新しくなった「大学入試制度」で重要視されている「思考力・判断力・表現力」が問われているわけだ。今後新傾向として定着する可能性がある。しっかりと練習して備えておく必要がある。
●解答数はそれほど多くはないが、「説明記述」に時間がかかるので、時間配分には細心の注意が必要。戦術的に、解く「優先順位」を考え、「捨て問」の判別も適切にすべきだ。問題文は7000~10000字にもなる(本年度は昨年度と同じで約9200字)。いかに速く読み取ることができるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすること。
志望校への最短距離を
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