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駒場東邦中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2019年度「駒場東邦中学校の理科」
攻略のための学習方法

まず、大問1で出題される問題が確実に解ける程度の基礎力構築が最初のステップとなる。
中には思考力を要したり、時事的な知識を求められたりする難問も含まれるが、全体的にはテキストに記載されている知識や標準レベルの問題演習の理解を土台として解くことができる問題が大部分である。
ここを1、2問間違いで突破できるかどうかが、合格に足る実力を身につけられているかどうかの試金石となろう。半分以上間違えるようなら、確実に基礎の理解が不足している。その場合は既習の問題集の復習を通じて知識の再確認を行うべきである。

次に、物理と化学では標準〜発展レベルの問題演習を充実させ、定番の実験・計算問題処理の練度を上げておきたい。
これらの分野は問題文こそ込み入った内容になっているが、用いられるべき解法は馴染みのある考え方に基づくものが多い。特に化学における濃度や化学反応の量的計算は多少難度が高いものでも安定して処理できるようにしておくと差がつけられる。また、化学では実験の設定や現象に関する説明を記述させる問題が例年出題されている。
ピンポイントの対策は難しいかと思うが、テキストや問題集の中で登場する実験には日頃から注目しておこう。

一方、生物は知識問題と考察問題に大別されるが、知識については現象的なものよりも、生物の名称や分類、生態といった個別的なものが問われる傾向にある。四谷大塚の『四科のまとめ』などが対策として役に立つはずである。
考察問題では、基本的に文章や実験結果を見て答えを導くことが要求されるので、難関校の過去問や問題集の発展問題で練習を積んでおきたい。
その際、解答そのものを頭に入れるのも有益だが、何よりも「どのような情報に注目すれば正解が導けたか」に関する検証を意識して学習して欲しい。

地学に関しては教科書的な知識を下敷きとして、現象の考察や原理の推測をさせる問題が目立つ。したがって、特に細かい知識を必死に暗記する必要はないが、基礎的な知識に漏れがないように仕上げておきたい。また、考察は選択肢から選ばせるものが多く、推論の厳密さはあまり問われないが、それだけにもっともらしい選択肢の比較と消去が鍵になってくる。この辺りのノウハウは寧ろ国語の説明的文章における演習との親和性が高いので、国語が苦手だとしても疎かにすべきではない。

最後に、過去問演習に際しては時間をしっかり計測し、時間配分のマネジメント能力を鍛える意識で取り組んで欲しい。駒場東邦の問題は読み込むべき文章や図表の多さ、設問ごとに要求される思考力に比して制限時間が短く、漫然と解いていると時間が足りなくなる可能性がある。
また、前項で述べた通り、合格者平均点と受験生平均点との解離が小さいことから、解ける問題と解けない問題の傾向は全受験生にある程度共通するのではないかと思われる。したがって、限られた時間の中で他の受験生も解けるであろう問題は的確に解いた上で、時間と思考力を重点的に投入することで答えられる問題を優先的に解いていくメリハリが求められる。過去問演習では、全体として7割取れれば上等という意識を持ち、時間内で取れる得点を最大化できるような時間の使い方を身につける練習の機会としたい。

以下、各分野の学習において特に注力すべき点を挙げておく。

【生物分野】

細かいレベルの知識まで問われるが、多くは生物種ごとの形態や生態に関するものである。
動物であれば図鑑などで成体のみならず卵や巣の形状までを確認しておくと共に、それらのサイズ、孵化や成長段階における所要日数といった数字についても頭に入れておきたい。
一方、植物については種子や葉、花、花粉の形状、播種や開花の時期などが押さえておくべきポイントになるだろう。もちろん、実験問題で頻出の光合成や呼吸の問題については当然の知識として頭に入れておくこと。

【地学分野】

ここ2年は地質や大気に関する問題が出題され、日常生活で目にする気象現象に関する考察が求められた。
近年問題になっている異常気象や地震と津波、火山活動に関する知識は積極的に仕入れておくと良い。
一方、天体については扱う対象の性質上、思考実験的な出題が多くなるので、天体運動を図形的に捉え、計算などによって理論的な仮説が立てられるようにしておきたい。
また、実体験に基づく出題としては日食・月食がテーマになりやすいので、チェックしておこう。

【物理分野】

物理に関する現象は他の分野以上に発生メカニズムの説明が難しく、「フレミングの左手の法則」のように結果だけを覚える学習にならざるを得ない。そのため、苦手意識を持つ受験生が多いが、原則として解答を導くのに必要な法則や考え方のポイントは問題文や実験結果に記されていると考えて良い。
寧ろ、初歩的な原則や因果関係を所与の条件として、その組み合わせから答えを得るという方向の思考力を鍛えておきたい。
そういった問題は難関校の入試で多数見られるので、受験するかどうかにかかわらず、色々な学校の問題に取り組んで感覚を掴んでおこう。

【化学分野】

例年問題文が長く、設問の理解に時間を要する傾向にある。
その意味で、本年は相対的に取り組みやすかったと言えるが、水溶液の希釈を伴う問題は処理に慣れていないと混乱を来し得る。
水溶液などの化学反応や溶解をテーマとした計算問題は頻出なので、問題集に掲載されているパターンの処理は一通りこなせるように仕上げておきたい。
一方、知識面でも足をすくわれかねないのがこの分野である。水溶液や気体の性質、実験の手法や器具の名称などはきちんと覚えておこう。
特に、身の回りにある素材や食材が持つ化学的性質はテーマになりやすいので要注意。

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2019年度「駒場東邦中学校の理科」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

5つの大問に対して制限時間は40分。解答箇所は全36箇所で、前年度よりも3つ増加した。ただ、検討や計算に時間を要する問題はやや減った印象を受ける。
時間がかかるとすれば大問3の化学だが、必要な計算そのものは問題集で頻出の処理であり、練度が他の問題に時間をかけられるかどうかを左右する。

【大問1】小問集合

  • 難度:標準
  • 時間配分:7分

時事問題の(2)を除けば、標準的な知識と推量で突破できる問題がほとんど。
特に、(7)(8)は数値を含む実験設定が長々と書かれているが、計算は不要であると瞬時に見抜きたい。

(2) 火山噴火は時事問題として頻出であるが、意表を突かれるのが口永良部島。10月、12月に噴火が起こったが、このように年終盤の出来事が時事問題として問われることもあり得る。また、桜島のように噴火が常態化しており、時事として意識されないものにも注意が必要。

(4) 計算問題としては簡単だが、設問を読み誤らないように。
問題文の最後にわざわざ「光合成によって」体内に取り込む二酸化炭素の量を求めよと書かれていることから、最初に登場した「二酸化炭素の吸収量」が(光合成による二酸化炭素の吸収量)−(呼吸による二酸化炭素の放出量)を指しているのだと忖度する必要がある。

【大問2】地学分野:台風

  • 難度:
  • 時間配分:9分
  • ★必答問題

答えを厳密に推論するのは難しい問いが多いが、問題文や選択肢を丁寧に読み込めば正解の見当はつけられよう。

(1) 台風そのものについての知識が無かったとしても、空所の後にある「垂直に発達した」という表現が積乱雲という答えを導く手がかりとなる。

(2) このような問題では、台風が東京湾の東・西・南・北にある場合をそれぞれ仮定し、東京湾に吹く風の影響をシミュレーションしてみるのが良い。
すると、台風が東京湾の西に位置する際、海から内陸へ向けて強風が吹くことが確認できる。
また、設問においてわざわざ「日本南岸に位置する湾」と記述されているのも手がかりになる。「南岸にある=北向きの風に大きな影響を受ける」という示唆である。

(3) 選択肢の各文に含まれる情報は、いずれも台風の勢力を弱める要因として問題文中に記されているという点がいやらしい問題。
本問のポイントは、「上陸した台風」が「急速に」衰える要因に焦点を絞って考えられるかどうかにある。
北上や寒気の流れ込みは必ずしも上陸に伴う現象ではない。また、寒気の流入によって「次第に」台風本来の性質を失うと書かれている一方、海面からの熱供給が途絶えれば「2〜3日で」消滅すると書かれている点も重要。
これらの材料から、選ぶべき選択肢は水蒸気の供給と摩擦の組み合わせだと判断できる。

(4) 図1を見ると、東北地方北部に前線が存在していたことが分かる。さらに、問題文中の記述に、台風が大雨を引き起こす要因として前線の活発化が挙げられていることから、前線が本問のキーワードであると考えられる。
問題はのどちらを選ぶかだが、両選択肢の相違点は暖かく湿った空気が前線に流れ込む経緯の説明にある。そこに注目できれば、は「台風から吹き出す強い風」という記述から誤りだと判断できるはず。
台風の際、風は台風へと向かって吹き込む点に注意。その過程で、の選択肢にあるように、暖かく湿った空気が各地に影響を与えるのである。

【大問3】化学分野:中和

  • 難度:やや難
  • 時間配分:9分
  • ★必答問題

中和反応の量的関係を考える典型的な問題であり、慣れていれば解きやすい。選択肢の問題は確実に正解したい。

(1) セオリー通り、実験1の記述から完全に中和する塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の量を特定し、濃度を変えた場合に等量の溶質を含む溶液の量を求めていけば良い。
まず、塩酸ウ10mLと水酸化ナトリウム水溶液A8mLが過不足なく反応することは即座に読み取れる。ここから、塩酸ウが塩酸アを1/10×1/10=1/100に希釈したものであることを踏まえ、塩酸ア10×1/100=0.1[mL]と水酸化ナトリウム水溶液A8mLが完全に反応するという関係を導けば良い。
塩酸エはアを1/50に希釈したものであるから、塩酸エ5mLは塩酸ア5×1/50=0.1[mL]と等量の塩化水素を含んでいる。
したがって、これを完全に中和させる水酸化ナトリウム水溶液の量は8mLである。

(2) (1)で考えた通り、水酸化ナトリウム水溶液A8mLと過不足なく反応する塩酸の量はアで0.1mL、ウで10mLである。同様にイについても考えると、イはアを1/10に希釈した溶液であるから、1mLで水酸化ナトリウム水溶液A8mLと過不足なく反応すると分かる。
ここから、塩酸ア、イ、ウそれぞれ5mLを中和するのに必要な水酸化ナトリウム水溶液Aの量を計算すると、アに対しては8×5/0.1=400[mL]、イに対しては8×5/1=40[mL]、ウに対しては8×5/10=4[mL]である。
つまり、水酸化ナトリウム水溶液Aの場合には400+40+4=444[mL]で塩酸ア、イ、ウの混合液を中和させることができる。
一方、本問で加えられた水酸化ナトリウム水溶液Bの濃度はAの10倍であるから、B45mLはA450mL分に相当する。つまり、444mLとの差分である6mLの水酸化ナトリウム水溶液Aが余分に加えられているのと同じである。
したがって、A6mLを1〜10mLの範囲の量で中和できる塩酸を考えれば、ウを10×6/8=7.5[mL]加えれば良いと分かる。

(4) 水に溶けた物質は長時間放置しておくと拡散し、均一に分布する。
つまり、最初は二層に分かれていても、24時間後には全ての溶質が拡散していると考えられるので、単純に塩酸2.5mLと水酸化ナトリウム水溶液3mLを混ぜた結果と変わりはない。

(5) 紅茶にレモンを入れると色が薄くなるという知識はしばしば問われるので押さえておきたい。紫色を与えるアントシアニンを含む物質が酸によって変色するという知識も標準レベル。

【大問4】生物分野:カイコガの生態・絶滅危惧種と外来生物

  • 難度:やや難
  • 時間配分:7分

絵や写真から生物を同定させる問題が立て続けに出題されているので注意したい。(8)の記述は身も蓋もない答えしか考えられないが、それ故に答えづらい問題。

(1) 簡単な問題だが、「変態」と答えないように気をつけよう。昆虫はさなぎの時期を有するかどうかで「完全変態」と「不完全変態」に分類されている。
つまり、さなぎの時期を経ずに成虫になる場合も、不完全ではあるが「変態」である。

(8) 「アカギやシマグワの根絶は困難」、「オガサワラグワの芽生えはヤギに食べられる」という記述は、「自然環境下でのオガサワラグワの繁殖はあきらめなさい」という示唆である。よって、純粋種子を採取し、自然から隔離された環境で人工的に繁殖させることが、当面は純粋なオガサワラグワの遺伝子を保存する唯一の方法であろう。
もし他に有効な方法があれば、既に実践されているはずである。
ただ、試験であることを脇に置くなら、こうした問題の解決法を模索する姿勢は常に持っていて欲しい。

【大問5】物理分野:磁石

  • 難度:
  • 時間配分:8分
  • ★必答問題

(3)以降は実験結果を推測する問題。(3)が正しく考えられれば以降の問題も解きやすくなるという点で、勝負の分かれ目となる。

(2) アルミニウムが磁石とくっつかないことはすぐに分かるし、磁石とくっつく金属板の上であればこの実験が成立しないことも容易に分かる。
しかし、これらの情報は「なぜ『わざわざ』アルミニウム板の上で実験するのか」という問いに答えていないと言わざるを得ない。本来ならば、「なぜ木やプラスチックの板ではなくアルミニウムなのか」に答える必要があろう。
ただ、木やプラスチックとアルミニウムとの違いに触れようと思えば、磁石をアルミニウム板の上で移動させた際に生じる「渦電流」が生む磁場についての考察が必要となり、小学生の理解を超えた内容になる。
したがって、現実問題としては磁石にくっつかないというアルミニウムの性質に触れるのみで説明を終えるのが限界である。設問意図が中途半端な問題だと感じられる。

(3) 実験で得られた情報は2つ。「極が上下同じ向きの磁石同士は反発し合う」および「極が上下逆向きの磁石同士はくっつき合う」である。図5の状態から磁石③を磁石①に近づけると、これらは極が上下逆向きになっているので、くっつくことが予想される。
問題は、磁石②と磁石③との関係である。これらは極が上下同じ向きになっているので、反発し合う力が生じるはずである。
一方、磁石①と②の間には引き付け合う力が存在するので、結果として、②は①にくっついたまま、磁石③との距離が最も遠くなるように、磁石③の180°反対側へ移動すると考えられる。

(4) 磁石②、③、④が互いに反発しつつ磁石①とくっつかなければならない。(3)と同様に考えれば、3つの磁石間の距離が最も遠くなるように、120°ずつ離れた位置で安定すると考えられる。

(5) 磁石④は磁石①と反発し合うが、磁石②、③とは引き付け合う関係にある。そこで、磁石①は遠ざかる一方、磁石②、③は磁石①とくっついた状態を保ちながら、磁石④ともくっつく形をとる。
さらに、磁石②と③も反発し合う関係にあることから、最終的には磁石①と④、②と③がそれぞれ等しい距離で離れた状態、すなわち、それぞれが正方形の頂点を形成する状態で安定する。

(6) 図6のような状態は極が上下同じ向きの磁石同士が接触するまで近づかなくては実現されない。しかし、実際には磁石①と引き付け合う力以上の反発力が周囲の磁石との間で働くため、新しい磁石を磁石①とくっつけることはできなくなる。

攻略のポイント

駒場東邦の理科は、年度により多少の差異はあるものの、合格者平均点が6割前後であると同時に、受験者平均点との差が3点程度である。不合格者を含めても平均点に大きな差が無いということは、解ける問題と解けない問題が受験生全体である程度共通していることを窺わせる。
つまり、難しい問題の正答率を上げていくよりも、他の受験生が正解しているであろう問題での取りこぼしを如何に減らしていくかが、受験戦略の現実的な勘所となる。
では、正答率を重視すべき問題とは何かを考えると、「推論によって答えられる問題」と「計算によって答えられる問題」であろう。
これらは知識の有無によらず、読解力と情報処理能力とを駆使すれば、高い確率で正解を導くことができる。
知識問題の比重が小さい難関校の理科では、「読んで考えれば解ける問題」への対応力が重要であるし、これらは難関校に合格できるような受験生が共通して備えている能力である。半面、駒場東邦の知識問題は出題頻度の低い、細かい事項を問うものが多い。ある程度の失点は計算に入れておいた方が良い。

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