攻玉社中学校 入試対策
2014年度「攻玉社中学校の算数」
攻略のための学習方法
攻玉社中学は、東京都城南地区において、堅実な大学合格実績を出している伝統ある進学校だ。また、その入試問題も伝統の名に恥じない、立派な風格をもつ。
近頃、甘口の入試問題が多くなった…と嘆かれる方(?)には、ぜひ攻玉社の算数をお薦めしたい。
しかも、ただ難しいというだけではない。解くことによって算数力のグレードが上がるような、内容の濃い設問を並べて、受験生たちの実力を正確に計ろうという意欲が強く感じられる。入試問題の中には、ただただ計算や条件が面倒なだけの設問を並べて悦に入っている学校もないわけではない。
そんな中で、攻玉社の算数を解いていく時間は、中学入試のまさに王道を歩む時間であり、自分の力をステージアップしてくれる貴重な時間になる。
さて、難問揃いと称される攻玉社中学の算数。
具体的に克服するのはどうすればよいか。
テキストや問題集などに挙げられている基本問題の解き方は6年の秋までにマスターした、ということを前提にして話を進めたい。
全体として言えることは、条件の複雑な問題に丹念に取り組む時間を作ることが大切だ。
ある一定の長さの問題ばかり解いていると、短い文章の問題を解くことが出来るようになっても、長文問題を解くためのねばりや条件を整理する力が養われないままになってしまう。この学校でそれは避けたい。設問数が3~5ある、問題集で言えば「上級クラス」の問題を、1問10分前後かかってもいいので、集中して解いてみよう。
ただ、時間を要する割に問題数はこなせず、勉強の進捗度という意味ではイライラすることになるとは思うが、過去問対策も含めて何とか時間を確保したい。
次に分野別に見てみる。まず、平面・立体図形の強化に特に力を入れたい。
平面図形は相似形、立体図形には体積・表面積が問題の中心となるが、どちらにも共通するポイントは「作図力」と言うことになる。
相似形をつくり出す「補助線」、展開図から書き表わす「見取り図」など、ていねいな手作業が出来るかどうかと言うことだ(実際、図形がうまく書けない生徒は多い)。文章題の場合は、式を書いて答えを出す、でもよいが、図形問題の場合は、模範解答を見て解くための図が書かれていても、自分で書けるという保証はなく、結局解き方を理解できてもそのための作業が出来ないことになってしまう。つまり、出来た気になったまま次に進んでしまうと言う危険をはらむことになる。
また、細かいことになるが、与えられた図に数値を書きこむときも、どこに書きこめば次の作業において邪魔にならないかを考えてみよう。
あとは、速さの総合的な問題(グラフをからめた問題)と規則性の克服だ。
速さの問題では「速さの3公式」の内容を念頭に置きつつ、それを臨機応変に使いこなせるようになることが大切で、一行問題ならどの関係を使うかは一目瞭然だが、問題文が長くなったり条件が複数出てきたりすると分らなくなるでは困るので、本年度(H26年度)大問Ⅲレベルの、「速さの基本・旅人算・速さの比」などを含んだ総合問題を十分にこなしておきたい。少し古めの城北中学・海城中学などの問題が役に立つ。
規則性に関しては、何でもかんでも「差を考える(=)等差数列のみ」というような固定された考え方では歯が立たないので、「平方数」「三角数」「フィボナッチ数列」…などもう一つランクが上の規則性まで言及して問題の決まりを見つける力をつけたい。こちらには、巣鴨中学の問題が使える。
次に、50分で十分に考えを張り巡らし、答えが出せるという時間面での余裕を持てるように、スピード練習をすることも大事だ。自分のペースだけを守っているのでは解く速さは学年相応の伸びしか得られない。必ず自覚的に早く解く練習をすること。これは短い問題をたくさん解くという形でもよい。早く解くという練習をすると、自分自身がどういうところで時間をロスし、結果的に解くのに時間がかかっているかが分る。たとえば、計算の工夫・作図のスピード・字の巧拙・集中力等々。普段の勉強も、長くダラダラやらないで、多くの分量を短い時間でこなせるよう努力すること。しかし正答率とていねいさを犠牲にしてはいけない。速く、正しく解けるよう仕上げていくこと。
最後に、応用力がついてくればさらに算数は面白くなるものだ。昆虫の脱皮のように、学力の伸びというのは長期間なだらかに伸びるのではなく、グンといきなりアップして、それまで解けなかったような問題も解けるようになり、自分の立つステージが変わるものである。ぜひそういう体験を味わって欲しいと思う。
そのために攻玉社の問題は格好の材料となる。十分に力をつけ、来年度には合格して笑えるようにがんばっていこう。
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2014年度「攻玉社中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が5、小問が20以上。そのどれもが標準以上のレベルを持つ難問の部類に属する。また分量も多めなので、普通のペースで解いていったのでは、時間不足は否めまい。
出題傾向に挙げた分野から大問が1つずつ出され、設問がそれぞれ4・5問準備され、比較的解きやすいものからかなりの難問まで、大問を掘り下げる形で出題される。そのレベルは、テキストの基本問題だけを押さえておいても到底かなう相手ではない。いわゆる難問に多く挑戦してきた受験生を選抜するための、練りに練られた問題群であり、やりがいがあり、解きがいもある。
まずは基本的なレベルの力をつけることは必要だが、その上さらに応用問題もしっかりと演習しておく必要がある。
【大問Ⅰ】計算問題・計算の工夫・数の性質・場合の数
- 時間配分:16分
(1)の計算問題は分数・小数の混合計算でありかなり複雑である。が、後の問題のことを考えると正解しておかなくてはならない。臨機応変に「分数→小数」「小数→分数」を使い分けられないと時間がかかってしまうだろう。
(2)は「11」に着目して式をまとめられなくてはならない。桁を変え、姿を変えと言うことでうまくまとめられるかがポイント。
(3)は求め方が複数考えられるがいずれにしても容易に答えまでたどり着かない。ねばり強く探していこう。
(4)は6通りとも試して答えにふさわしいものを選ぶ。難易度は大問Ⅰの中では落ちるが手間がかかる問題。
どの問題も小問の1つとして扱うには骨が折れる内容になっている。
【大問Ⅱ】規則性の問題
- 時間配分:8分
小問が3つあり、できれば(2)までは解けておきたい。
白と黒が交互に増えていくことをつかめば(1)は問題あるまい。
(2)は、(1)のことから最後に白を並べたときと黒を並べたときの2通りあることが分る。表を書き続けていけば答えは求まる。まったく同種の出題が他校にもあった(青山学院中等部大問13)。
(3)は10000枚を使う1つ前が答えになる。①が分れば②③は簡単な計算で求まる。
【大問Ⅲ】速さの問題(ダイヤグラム)
- 時間配分:10分
まずは長い問題文とグラフを対照しながら、問題全体を把握しよう。
(1)は①の条件から答えを見つけることが出来る。
(2)も108mを何分で歩いたかが分れば簡単に求められる。
ここまでは正解できたと思う。問題はここからだ。
(3)で一気にグラフの使い方がワイドになり、全問解けるか解けないかの大きな分岐点を迎える。この爽快感がたまらない。
「登山口からB地点までがコース全体の5分の2」ということは、シの時間から同時に登山口・頂上に着く時間までに、先生は「5分の2」、まこと君は「5分の3」歩いたことになり、答えが求まる。これが分ると(4)の答えは、比を習い始めてから1日目の生徒でも解けるような容易さだ。また、(5)の設問に関しても普通の速さの問題として取り扱うことができ、その難易度は高いものではない。しかし、(3)でつまずくとそれ以降はすべてが水の泡になる。大変な良問だが、ある意味とてもこわい問題と言える。
【大問Ⅳ】平面図形(相似形)
- 時間配分:8分
定番の複雑な相似形問題!
…と思いきや、直線はたくさん引いてあり一見面倒くさそうに見えるものの、(1)から(3)までは、相似形のペアを1つ見つけるたびに答えが1つずつ求まるという、その設問だけを取り出すと意外と単純な問題になっている。
ただ、緻密な作業が必要なことは間違いなく、大雑把に数字を書きこむ男子生徒たちにはわけがわからないカオスにとらわれることになるだろう。
(4)は正解できるに越したことはないが、捨て問と処理しても大丈夫だ。
【大問Ⅴ】立体図形(展開図)
- 時間配分:8分
本年度の立体図形は最後の1問まであまり難しくなかった。時間不足で解くことが出来なかった受験生は悔いを残したことだろう。通常のように難易度が高ければあきらめもつくのだが。
大問Ⅳ以上にシンプルなところがあり、緻密な作業もあまり要らない。いずれの問題も見取り図を書いて取り除く立体自体をつかんでいくのだが、単純な図形ばかりで、求めるものも体積だけと計算も簡単になっている。
それでも差が開くとすれば(2)~(4)の設問か。
攻玉社を受けるのであれば(2)の立体の体積の求め方は身につけておきたい。
(3)(4)の設問の書き方次第で難易度は高くなりそうだがここでは一度切断するだけで済んでいる。毎年この程度か、と思われると心配だが…
展開図を参考にして見取り図を書き、体積を求める標準問題としては大変よい問題だと思う。
攻略のポイント
テスト時間は50分で100点満点。
受験者平均、合格者平均から見ると合格点は50点台後半、60点台を目安に勉強を進めるといいだろう。
これはなかなか手強い仕事だ。
初めにも書いたとおり、なにごとも基本が大切とは言え、基本だけでは補えないレベルのものもある。当校の問題がそれで、受験生に思考力と応用力を要求している。過去問を数年分解いてみて、質的に「かなわないな」と思った場合は受験を避けた方がいいかもしれない。そんな中身を持っている。
受験算数の問題としてみると、どれも良問と言うにふさわしい出来映えであり、ぜひ生徒たちには解いてもらいたいと思える一品である。設問もよく練られており、受験生の実力をうまく測れる問題になっている。
では、どのように力をつけ、過去問に接していけばよいかだが…
普段使っている教材でも、または公開模試においても、難問と呼ばれるレベルの問題に常日頃から触れる機会を多く持ち、難問への耐性と克服できる粘り強さを持てるようになりたい。
たとえば合格可能性だけを考えた場合、公開模試の前半3分の2の問題が正解出来たとすれば、攻玉社の合格率は「50%以上」が出ると思われる。
しかしそれは見かけの合格率である。
男子上位校はどこもそうだが、公開模試と過去問の水準はかみ合っていない。公開模試における合格可能性はあくまでも目安であって、難問の並ぶ過去問に匹敵する問題集か(指導を受けている)先生に選んでいただいた問題群を解いていくべきである。基本問題の履修時間が短くなるので一度成績は落ちるかもしれないが、直前になってこの難問特訓が効いてくるはずだ。
「合格点は高くないのだから、そこまでする必要はないんじゃないか?基本的な問題だけきっちり解いてくれば合格点に達するんじゃないか?」
という声もあると思う。確かに、「難問に目がいきつつも、実際には基本的な設問も多くあり、難問は捨てて合格できる学校」もある。というか、ほとんどの学校がそうだといえよう。
しかし、攻玉社の場合は、基本的な設問が少ないのだ。生徒の力がある一定ラインを超えると急に問題が解けるようになるが、その力がない生徒は残念ながら得点出来る設問はほぼない。先にも書いたとおり、公開模試と異なり、誰でも点が取れるという設問がない以上、その水準を超えた力をつけるよりほかにはあるまい。
難問に次ぐ難問ではあるが、やりがいのある入試問題だ。持てる力を存分に発揮してもらいたい。
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