攻玉社中学校 入試対策
2015年度「攻玉社中学校の算数」
攻略のための学習方法
攻玉社中学は、東京都城南地区において、堅実な大学合格実績を出している伝統ある進学校だ。また、その入試問題も伝統の名に恥じない、立派な風格をもつ。
近頃、甘口の入試問題が多くなった…と嘆かれる方(?)には、ぜひ攻玉社の算数をお薦めしたい。(本年度の問題は、少し甘口だったきらいはあるが…)
しかも、ただ難しいというだけではない。解くことによって算数力のグレードが上がるような、内容の濃い設問を並べて、受験生たちの実力を正確に計ろうという 意欲が強く感じられる。入試問題の中には、ただただ計算や条件が面倒なだけの設問を並べて悦に入っている学校もないわけではない。
そんな中で、攻玉社の算数を解いていく時間は、中学入試のまさに王道を歩む時間であり、自分の力をステージアップしてくれる貴重な時間になる。
さて、良問・難問揃いと称される攻玉社中学の算数。
具体的に克服するのはどうすればよいか。
テキストや問題集などに挙げられている基本問題の解き方は6年の秋までにマスターした、ということを前提にして話を進めたい。
全体として言えることは、条件の複雑な問題に丹念に取り組む時間を作ることが大切だ。
ある一定の長さの問題ばかり解いていると、短い文章の問題を解くことが出来るようになっても、長文問題を解くためのねばりや条件を整理する力が養われないままになってしまう。この学校でそれは避けたい。設問数が3~5ある、問題集で言えば「上級クラス」の問題を、1問10分前後かかってもいいので、集中して解いてみよう。
ただ、時間を要する割に問題数はこなせず、勉強の進捗度という意味ではイライラすることになるとは思うが、過去問対策も含めて何とか時間を確保したい。
次に分野別に見てみる。まず、平面・立体図形の強化に特に力を入れたい。
平面図形は相似形、立体図形には体積・表面積が問題の中心となるが、どちらにも共通するポイントは「作図力」と言うことになる。
相 似形をつくり出す「補助線」、展開図から書き表わす「見取り図」など、ていねいな手作業が出来るかどうかと言うことだ(実際、図形がうまく書けない生徒は多い)。文章題の場合は、式を書いて答えを出す、でもよいが、図形問題の場合は、模範解答を見て解くための図が書かれていても、自分で書けるという保証は なく、結局解き方を理解できてもそのための作業が出来ないことになってしまう。つまり、出来た気になったまま次に進んでしまうと言う危険をはらむことになる。
また、細かいことになるが、与えられた図に数値を書きこむときも、どこに書きこめば次の作業において邪魔にならないかを考えてみよう。
あとは、速さの総合的な問題(グラフをからめた問題)と規則性の克服だ。
速さの問題では「速さの3公式」の内容を念頭に置きつつ、それを臨機応変に使いこなせるようになることが大切で、一行問題ならどの関係を使うかは一目瞭然だ が、問題文が長くなったり条件が複数出てきたりすると分らなくなるでは困るので、平成26年度【大問3】レベルの、「速さの基本・旅人算・速さの比」 などを含んだ総合問題を十分にこなしておきたい。少し古めの城北中学・海城中学などの問題が役に立つ。
規則性に関しては、何でもかんでも「差を考 える(=)等差数列のみ」というような固定された考え方では歯が立たないので、「平方数」・「三角数」・「フィボナッチ数列」…などもう一つランクが上の規則 性まで言及して問題の決まりを見つける力をつけたい。本年度は「平方数」がポイントとなった。
次に、50分で十分に考えを張り巡らし、答えが出せるという時間面での余裕を持てるように、スピード練習をすることも大事だ。自分のペースだけを守っているのでは解く速さは学年相応の伸びしか得られない。必ず自覚的に早く解く練習をすること。これは短い問題をたくさん解くという形でもよい。早く解くという練習をすると、自分自身がどういうところで時間をロスし、結果的に解くのに時間がかかっているかが分る。たとえば、計算の工夫・作図のスピード・字の巧拙・集中力等々。普段の勉強も、長くダラダラやらない で、多くの分量を短い時間でこなせるよう努力すること。しかし正答率とていねいさを犠牲にしてはいけない。速く、正しく解けるよう仕上げていくこと。本年度の問題の場合、問題自体は平易になっていたが、問題数は例年に比べ増えている。スピードが合否を左右したはずである。
最後に、応用力がついてくればさらに算数は面白くなるものだ。昆虫の脱皮のように、学力の伸びというのは長期間なだらかに伸びるのではなく、グンといきなり アップして、それまで解けなかったような問題も解けるようになり、自分の立つステージが変わるものである。ぜひそういう体験を味わって欲しいと思う。
そのために攻玉社の問題は格好の材料となる。十分に力をつけ、来年度には合格して笑えるようにがんばっていこう。
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2015年度「攻玉社中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が5、小問が27。そのどれもが標準以上のレベルに属する。また分量も多めなので、のんびりと構えていたのでは時間不足は否めまい。
出題傾向に挙げた分野から大問が1つずつ出され、設問がそれぞれ4~7問準備され、比較的解きやすいものからかなりの難問まで、大問を掘り下げる形で出題される。そのレベルは、テキストの基本問題だけを押さえていたのでは克服するのは難しい。いわゆる難問に多く挑戦してきた受験生を選抜するための、練りに練られた問題群であり、やりがいがあり、解きがいもある。
まずは基本的なレベルの力をつけることは必要だが、その上さらに応用問題もしっかりと演習しておこう。
【大問Ⅰ】計算問題・計算の工夫・約束記号
- 時間配分:10分
(1)の計算問題は分数・小数の混合計算でありかなり複雑である。が、後の問題のことを考えると正解しておかなくてはならない。臨機応変に「分数→小数」「小数→分数」を使い分けられないと時間がかかってしまうだろう。
(2)は「2.3」に着目してまずはじめの2つをまとめる。その結果から、さらにあとの項もまとめるという仕組みになっている。受験生なら、おなじみのレベルだろう。
(3)の約束記号は平易だった。問題文をよく読み、例から記号の意味がわかれば解けたと思われる。(4)は約束に合わせてひたすら計算していくという根気だけがいる問題。
【大問Ⅱ】規則性の問題・・・数列
- 時間配分:8分
【大問2】規則性の問題…数列
小問が4つあり、できれば(3)までは解けておきたい。
数字の増え方が単純なので(1)・(2)は問題あるまい。
(3)では、1の個数を求めるときに、平方数を使っていられれば簡単に解ける。ひたすら数えていく方法だとここは解けても(4)に時間を費やしそう。
(4)では(3)であみだした平方数の解き方を駆使しよう。決して出来ないレベルではないので不正解だった場合はしっかりやり直して理解しておきたい。
【大問Ⅲ】水そうグラフ
- 時間配分:12分
与えられている長い問題文とグラフを対照しながら、問題全体を把握しよう。
1カ所でも早とちりがあると次々に不正解の連鎖をもたらすことになる。条件が複雑なわりには比を使うことなく求められていく問題なので、ここでの大失点は痛手となる。
(1)容器Aのグラフを分析することで求められる。穴Yの位置に注意で、8秒後に穴Yまで水が到達するが穴Xから水が流れていてグラフも変化している点は押さえておきたい。
(2)は容器Bと容器Cがいっぱいになったときをグラフから見つけて、それぞれ使う。
ここまでは正解できたと思う。問題はここからだ。
(3)ではグラフの使い方を変えて、容器BとCの水が1秒間にどれだけ深くなるかという数値を求め、旅人算のように解ければよい。本年度は速さの問題がなかったので、ここだけが速さのにおいがする。
(4)は容器Aのグラフを最後まで正確に追求できれば解答できる。
さて、全部答えることが出来ただろうか。
【大問Ⅳ】平面図形・・・相似形など
- 時間配分:10分
テスト後半は図形の問題で、毎回定番の相似形問題!
本年度はまたシンプルになったものだ…「問題集の方が、過去問の方がずっと難しかったぜ」という受験生の声が聞こえるようだ。
しかし努力は無駄にならない。ここで全問正解できていれば合格は確実といえるだろう。
(1)から(3)までは、底辺と面積の関係を使うもの。かなり基本的な設問である。
(4)に至ってようやく相似な関係を使う問題となる。与えられた図のままでは相似な関係は見つからないので補助線を引いて相似な図形を作りたい。ここで少し差がつくかもしれない。
(5)は(4)の続きで、(6)は(5)の続き。
攻玉社を受ける受験生であれば、この手の平面図形の問題は数多く手がけてきたことであろう。欲深く、全問正解して点数を稼ぎたい。
【大問Ⅴ】立体図形・・・円柱
- 時間配分:10分
本年度の立体図形は最後の1問まであまり難しくなかった。時間不足で解くことが出来なかった受験生は悔いを残したことだろう。
大問4と比べてもシンプルな問題であり、作図などの作業も要らない。与えられた図のまま求めていける問題になっている。
もし差が開くとすれば(2)・(3)の設問か。
それでもそれほど頭をひねるという設問ではなく、計算も簡単なのでここでも全問正解を求めたい。
攻略のポイント
テスト時間は50分で100点満点。
平成27年度だと受験者平均、合格者平均から見て合格点は60点台後半、70点台を目安に勉強を進めるといいだろう。
こと本年度の問題に関して言えば、男子難関校受験のための勉強を積んできた生徒にとってはちょうど良い具合の達成目標ではないだろうか。受験算数の問題としてみると、どれも良問と言うにふさわしい出来映えであり、ぜひ生徒たちには解いてもらいたいと思える一品である。設問もよく練られており、受験生の実力をうまく測れる問題になっている。
では、どのよう過去問に接していけばよいかだが…
問題が易めの年(本年度や平成25年度など)の場合は、普段使っているテキストで難問と呼ばれる問題に多く触れ、それと平行して過去問を消化していけばよいだろう。ポイントは問題レベルが高い年度の場合だが、こちらはかなり骨が折れるはずだ。解けそうな設問を取捨選択して、合格点に到達するように本腰を入れて取り組んでいきたい。
総じて良問が並んでいる入試問題である。難問に次ぐ難問ではあるが、やりがいのある問題だ。持てる力を存分に発揮してもらいたい。
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