攻玉社中学校 入試対策
2024年度「攻玉社中学校の社会」
攻略のための学習方法
〇形式・分野
2015年度から問題の形式が大幅に変更された。
2014年度までの攻玉社の問題は大問2~3つ、総解答数は35前後で構成され、記号選択と用語記入がほとんどで、100字ほどの記述問題が必ず1問出されていた。また、リード文が長いという特徴があった。2015年度から、総解答数は25問前後で、単純に記号選択・適語記入と表現できないユニークな問題構成になっている。以前あった長いリード文は無くなった。
特に設問の型が大きく変わっている。3~4つの知識をまとめて問い、合わせて1問の正解になるという形が多い。またクロスワードパズルのように最終的にできあがる4文字の人名・用語を答えさせるものもあった。
そして、2020年度でも設問に変化が見られた。上記の組み合わせ型の設問が減り、一般的な記号選択問題が多くなった。数年ごとに形式に変化が見られるので、過去問でそれぞれのパターンを見ておこう。
ここ数年、長文の記述問題がなかったが、2018年度から100字の記述問題が復活し、2019年度から1000~1500字ほどのリード文が復活した。しかし、2021年度ではどちらも見られなかった。年度により変化があるようなので、過去問でそれぞれのパターンを経験しておこう。問われる内容は例年と同じで基本的事項が多いが、難易度としては、合格者平均点が2019年度は7割ほど、2024年度は6割7分ほどであった。
分野別では地理と歴史の比重が大きく、政治分野や時事問題ではまとまった出題はここのところ見られなかったが、2022年度以降では大問一つが政治経済分野にあてられている。
〇地理分野
総合問題形式で出題されることが多い。各地の地名・地勢・気候や産業の特色などの基本事項が多く訊かれている。日本全体について広く問われる場合もあればひとつの地域について少し詳しく答える問題もある。
多少の細かい知識を問われることもあるので、白地図などで地域ごとに関連事項を整理しておくとよい。地図帳もそばに置いて地名や場所を確認しながら進めること。
〇歴史分野
3分野の中では、歴史分野の出題が多い傾向があるので、特に念入りに学習しておきたい。
内容も、幅広い年代から出題され偏りは無いが、この分野では細かい知識を問われることは少なく、「広い範囲からの浅い」出題が多くなっている。それでも他の分野より難易度が高めである点に注意しておきたい。
人物・年代・政治・文化などについての基本的事項を訊かれる問題と、それを時代の流れに沿って整理させるような設問がよく見られるので、やはり年表の活用が有効となる。
〇政治・時事問題
憲法や時事関連の設問が「申し訳程度」に1~2問出されるだけの年もあり、地理・歴史と比べてかなり冷遇されている。しかし、2022年度以降は大問一つが政治経済分野になっており、全く出されないとも言い切れないので、憲法・三権の仕組みなどテキストに載っていることや直近の時事問題などは一通り頭に入れておきたい。
〇記述問題
出題傾向が変わって以降、長い記述問題が出題されなくなっていたが、2018年度から復活している。
以前の長文記述問題は、字数は100字前後で、書く際に「3~4つの指定された語句を必ず使い、使ったら下線を引く」「字数制限の下限に達しないものは採点しない」などのきまりで出題されていたが、2020年度では100字以内という条件だけになっている。記述対策ということではなくても、やはり普段から新聞やニュースで社会的な問題に触れ、その背景を考えたり、自分なりの意見を持ったりと考えを深めておけば一段階上の実力がつけられるので、ぜひ心がけておいて欲しい。
なお、2021年度は記述問題が出されなかったが、2023年度では50字・2024年度では1行の記述問題が出されている。今後も対策はしておくべきであろう。
〇さいごに
設問の型が年度により変わるので戸惑いを覚える受験生も多いと思うが、問題自体は、特別な難しい知識を問われることはないので、テキスト・白地図・資料集で幅広く丁寧な勉強をしてあれば恐れることはない。また、長大なリード文が無くなったので、長文を読むのが苦手な人には楽になったかもしれない。
ただ、「4つの質問がまとまって1つの正解になる」形の場合、時間もその分かかるし、4つのうち1つミスがあると正解にたどり着けないという厳しさは出てくる。幅広い正確な知識が求められている。
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2024年度「攻玉社中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
設問形式が変更されてから総問題数は少なめになり、2024年度は35問であった。
また、例年ではよく出されていた組み合わせて一つの正解となる問題が減り、通常の選択問題が増えた。基本的事項を問われる問題が多いのでそれほど迷うことはないだろう。長文記述問題が2018年度から復活したが、2022年度は出されず、今年度は1行記述が出されている。その他の問題は知識を答えるものが多いので40分あれば時間は足りるだろう。
【大問1】歴史分野
- 難度:やや難
- 時間配分:16分
- ★必答問題
歴史上の戦争を題材に、各時代の出来事や人物について訊かれている。
問1 (ⅰ) 吉野ケ里
(ⅱ) 明智光秀
(ⅲ) 朝鮮
問2 (あ) 源義家 (い) 足利義満
問3 藤原清衡(ふじわらのきよひら)は奥州藤原氏の初代当主にあたる人物で、後三年の役後に建立した多宝寺が中尊寺の始まりとされる。
問4 『太平記』は南北朝時代を舞台に記された軍記物語で、歴史文学では最長の作品とされる。
問5 エ. 日宋貿易を行ったのは平清盛で、厳島神社は平家一族の氏神である。
問6 後北条氏は小田原城を本拠地に関東一円を支配した戦国大名で、鎌倉時代に勢力を誇った北条氏とは関係がない。
問7 イ. バテレン追放令を出したのは豊臣秀吉。
ウ. ポルトガル船の来航禁止は島原・天草一揆終結の翌年である。
エ. 五榜の掲示では従来通りキリスト教は禁止されている。
問8 遼東半島
問9 「令和」という元号は万葉集の「梅花の歌」という歌集から取られている。
問10 柳条湖事件(南満州鉄道爆破事件)を中国軍の犯行であるとして日本は満州占領のきっかけとしたが、爆破は関東軍の自作自演であった。
問11 鈴木貫太郎は1945年4月に内閣総理大臣に就任し、8月15日の玉音放送のあと総辞職した。
問12 北海道・北東北の縄文遺跡群が2021年の登録で最も新しい。
【大問2】地理分野
- 難度:標準
- 時間配分:16分
- ★必答問題
日本のかんがい施設の歴史を題材にして、主に農業や気候などについて訊かれている。
問1 (ⅰ) 徳川吉宗
(ⅱ) 大久保利通
問2 安積疎水は猪苗代湖を水源として引かれ、主に農業用水として使用される。
問3 (1) 1位は同じ瀬戸内海に面している兵庫県。
(2)・(3) グラフはア。瀬戸内海は北の中国山地と南の四国山地に挟まれ、年間を通して湿度の少ない風が入り、降水量が少ないという特徴がある。
問4 クリーク
問5 イ. 日本の米の輸出量は直近の10年間で約5倍に増えている。
問6 (1) スプロール現象とは都心から郊外に無秩序に開発が進むことを言い、インフラ整備の遅れや無計画な自然の破壊などの問題が懸念されている。
(2) ビオトープ(生物生息空間)は、その地域の生物が生息しやすいような環境を指す言葉である。
問7 (1) ふっとう
(2) 線状降水帯。近年は天気予報でもその発生が予測されるようになった。
問8 東京の年平均降水量を約1600mmとして、年蒸発散量を引いて残り1100mm。国土面積を約38.7万㎢とし、メートルで単位をそろえて計算すると 1.1m×3780㎢=4158㎦となる。
【大問3】政治経済分野
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
日本国憲法や政治のしくみなどについて。
問1 エ. 説明はクオータ制のこと。アダムズ方式は選挙区の人口に応じて議席数を振り分ける仕組みである。
問2 ウ. 国政調査権の権限は裁判所の判決については及ばない。
問3 エ. 第69条の解散は衆議院での内閣不信任決議案が可決された場合の解散で、第7条の解散は内閣の助言と承認に基づく天皇の国事行為である。現行憲法下での解散は、第7条に基づく解散のほうが圧倒的に多くなっている。
問4 エ. 裁判員制度は重大事件の第一審(地方裁判所)で導入されており、高等裁判所では行われていない。
問5 ア. 住民自治と団体自治の説明が逆である。
問6 エ. コンツェルンは旧財閥にみられたような異業種の企業による資本的な結びつきのことであるが、独占禁止法で禁止されてはいない。
問7 規制が強化されるのが2024年4月なので、「2024年問題」と呼ばれている。
攻略のポイント
問題の難易度をみると、本校は中学入試の基本的レベルで安定した実力を有する生徒を望んでいると思われる。マニアックな知識ではなく、幅広い正確な知識を問われている。まずはテキストレベルでの確かな学力をつけるべきである。難問・奇問の心配をする必要は無い。
その上で
・歴史・地理に重点が置かれていること
・特に歴史分野で漢字を書かせる問題が多く、他分野より難しめであること。
といった本校の特徴を念頭に置いて学習を進めることである。
出題の形式は変わっても、テキストレベルの十分な実力があれば対処できる試験なので、傾向の変化に気をもむ必要は無い。
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