｢僕(阪野)｣は小学校の４年生。放課後になるといつも近所に住む｢カッチャン｣たちと遊びに繰り出す。野球漫画に影響されて魔球を投げようとし､弟を相手にプロレスごっこに興奮し、恐竜の化石探しに熱中する――毎日を全力疾走する少年たちを活き活きと描く、笑いと涙の青春小説｡
本文では、｢僕｣が転校してきたばかりの｢マサト｣と神社の森に出かけ､憧(あこが)れの｢ノコギリクワガタ｣(通称｢ノコ｣)を捕る奮闘ぶりが描かれている。本文の内容自体は分かりやすい｡｢空所補充｣に｢抜き出し｣､｢不適切選択肢｣や｢説明記述｣､｢総合的知識問題｣､そして、｢自由論述｣などと、実に多種多様な小問が並んでいる。以下、いくつかを検討してみる。

[問１]　｢漢字の空所補充記述｣(全２問/｢漢字１字｣指定)。｢総合的知識問題｣｡｢慣用表現｣だ。本文中の空所 Ａ ･ Ｂ に｢入る語｣をそれぞれ｢漢字１字｣で答える。

｢ただし、どちらも複数の答えが考えられますが、解答するのは一つで構いません｣と付記されている。それぞれの空所前後から｢答え｣を特定していく。
｢マサトは鈍いのか がすわっているのか､特に何の反応もしいない｣⇒｢文脈｣から､突然飛び立ったカラスに悲鳴を上げた｢僕｣と対比されていることが分かる⇒であれば、 Ａ の｢答え｣は｢物事に動じない。度胸がある｣を表す｢腹がすわる｣＝｢腹｣､あるいは、｢落ち着いていてめったなことには驚かない｣という意味の｢肝がすわる｣＝｢肝｣のどちらかだと分かるはず。

｢『そんなよわっちい蹴り方じゃダメだぜ～』マサトがへらへらと笑う｡ほんとにこいつは Ｂ にさわるやつだ｣⇒｢文脈｣から､｢マサト｣の｢僕｣に対する言葉だとすぐに分かる⇒よって、 Ｂ の｢答え｣は｢感情を害する。不愉快に思う｣という意味の｢気にさわる｣＝｢気｣､｢癇(かん)にさわる｣､｢癪(しゃく)にさわる｣でもいいが、｢漢字｣が難しい。

冒頭から、本校が求めている｢知識レベル｣の高さが分かる。覚悟せよ。

＜時間配分目安：２問で１分半＞

[問２]　｢語句の空所補充抜き出し｣(｢７字｣指定)。本文中の空所  　Ｘ 　に｢当てはまる語｣を｢７字｣で抜き出して答える。

｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。先ずは、空所前後を確認する。

｢入口に立つと、八幡の森はどこが頭か尻尾かもわからない、 　Ｘ 　雨雲のようなかたまりにしか見えず、かなり怖かった｣となっている。ということは、｢内容｣は､｢八幡の森｣をたとえた｢雨雲の様子｣を示すものであり、｢修飾部｣になっていることが分かる。

｢範囲｣は｢同一場面｣(｢小説｣では｢同一場面｣の｢直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。丁寧に探していく。すると、空所の次段落の最後に｢八幡の森がどす黒い得体のしれないかたまりから……｣とある。｢八幡の森｣を｢どす黒い得体のしれないかたまり｣と表現している。｢かたまり｣という言葉も一緒だ。間違いない。よって、｢答え｣は｢得体のしれない｣となる。

尚、｢抜き出し｣では｢候補｣がひとつとは限らないので、｢範囲｣の全てをしっかりと確認し、特定することが肝要だ。

＜時間配分目安：１分＞

[問６]　｢内容説明選択肢｣(５択)。傍線部③｢僕たちのやるクワガタやカブトムシの捕り方｣について、目あての｢ノコ｣を捕るためには、｢どのような捕り方が良いと述べられているか｣を答える。

｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここでは、｢ノコの捕り方｣なので｢原意｣はそのままだ。

次に、｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)｣が｢一文の一部分｣の場合｢傍線部以外が重要｣という基本的解法)で｢手がかり｣を求める。直後に｢本で読むものとちがう｣とある。そして、傍線部の前文では､｢僕｣が｢この辺で一発蹴ってみるか｣と言っている。つまり、｢ノコの捕り方｣は､｢本｣とは違い｢蹴る｣ことを使う方法だと分かる。ここで、各選択肢の｢文末｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)｡

(ア)｢木を蹴飛ばして『ノコ』を見つけるという方法｣､
(イ)｢大木を何度も蹴ることで少しずつ『ノコ』を落とすという方法｣､
(ウ)｢甘い汁などを塗っておき、やって来たところを捕まえるという方法｣､
(エ)｢倒木や太い木の洞(ほら)などをほじくり返すという方法｣､
(オ)｢大きな木の幹を蹴飛ばして一発で『ノコ』を落とすという方法｣｡

｢蹴る｣のだから、(ウ)(エ)は直ちに｢消去｣。次に、｢同一場面｣から具体的な｢捕り方｣を読み解いていきたい。傍線部の２段落後に、｢僕たちのクワの捕り方｣のひとつとして、｢木の幹を蹴飛ばすこと｣で｢虫がしびれて、ぼとっと落ちてくる｣と記されている。ということは、残りでは(オ)以外が｢消去｣できると判別できるはずだ。他の部分の説明も特に誤っていないので、｢答え｣は(オ)｡

｢選択肢設問の説明文｣が｢長く紛らわしい｣本校では、先ずは｢原意消去｣により｢選択肢｣を絞り込むことが｢決め手｣だと心得よ。

＜時間配分目安：２分＞

[問９]　｢傍線部についての条件付き自由論述｣(｢101～120字以内｣指定)。傍線部⑥｢僕は二重に嬉しくなってノコとマサトを見比べた｣について、｢もしあなたが『僕』の立場ならば、どちらの方がより嬉しいと感じるか｣を｢101～120字以内｣で論述する。

｢条件｣は｢何と何を比べたかを明らかにしながら、あなたが考える理由も含めて述べる｣こと。
｢あなた｣が｢僕の立場｣で｢どのように考えるか｣なので何を述べてもいいのだが、何でもいいとなると逆に困ってしまうはずだ。そこで、｢傍線部｣と｢条件｣を｢手がかり｣にする。｢傍線部｣の｢二重｣が､｢条件｣の｢何と何を比べるか｣に結びついているわけだ。

｢同一場面｣から｢二重｣の｢嬉しさ｣を読み解いていくと、｢マサトに得意気にノコを見せ付けた｣｢オレの勝ちだ｣などとあることから、ひとつは｢ノコを捕ってマサトに勝った｣ことの｢嬉しさ｣であり、もうひとつは、直前に｢マサトっていいやつなんだな……｣とあるので、｢マサトがいいやつだと分かったこと｣の｢嬉しさ｣だと判断できるはず。

この両者を比べて、｢どちらの方が嬉しいか｣を｢あなたの考え｣として、｢理由｣を踏まえた上でしっかりとまとめていきたい。本校定番の｢自由論述｣では、｢問題文｣や｢条件｣を｢手がかり｣として、そこから｢あなた自身の考え｣をふくらませていくことが求められている。

＜時間配分目安：５分＞

さまざまな用途のヘビ型や四足歩行ロボットを開発してきた筆者が､それぞれどのようにつくったかを解説し､｢ロボット｣を｢やわらかい機械｣として説明している。本文では、｢ロボット｣は人間に形も機能も近づき、｢人造人間(ヒューマノイド)｣になる宿命だという考え方に疑問を提起した上で、｢模倣から独創へ｣というステップを踏んできた｢工学の世界｣について､｢飛行機｣を例に挙げて解き明かしている。
専門分野についての説明だが、中学･高校生向けに書かれているので、内容は理解できるはず。紛らわしい｢不適切選択肢｣や｢二重指示語の換言記述｣､難易度の高い｢語句の意味｣など、いかにも本校の面目躍如といった大問。いくつかの｢設問｣を確認する。
[問１]　｢語句の空所補充選択肢｣(全４問/６択)。｢総合的知識問題｣｡｢接続詞｣だ。本文中の　Ａ　～　Ｄ　の空所に｢当てはまる語｣を答える。

本校に限らず定番の問題。｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。

順に空所の｢答え｣をチェックしていく。
　Ａ　には｢逆接｣の選択肢(ウ)｢しかし｣､　Ｂ　には｢(話題)転換｣の(オ)｢さて｣､　Ｃ　には｢例示｣の(ア)｢たとえば｣､　Ｄ　には｢換言説明｣の(エ)｢つまり｣が入る｡

｢候補｣はいくつかあるので、しっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。

＜時間配分目安：全問で２分以内＞

[問２]　｢語句の意味の選択肢｣(全３問/各５択)。｢総合的知識問題｣｡波線部(ａ)｢阻害する｣､(ｂ)｢模倣｣､(ｃ)｢固執｣の｢本文中での意味｣を答える。

これらの｢原意｣(本来の意味)に忠実に判別すれば何の問題もないはずなのだが、｢本文中での意味｣を意識し過ぎると､間違ってしまう可能性があるので、要注意。それぞれ確認する。
｢阻害する｣＝｢さまたげること。じゃますること｣なので、(ａ)の｢答え｣＝選択肢(エ)｢さまたげる｣⇒｢本文中｣で判断すると(オ)の｢だめにする｣も合致してしまう。
｢模倣｣＝これは｢本文｣からも間違えようがなく、(ｂ)の｢答え｣＝(イ)｢すでにあるものをまねること｣｡
｢固執｣＝｢あくまでも自分の意見を主張して譲らないこと｣なので、(ｃ)の｢答え｣＝(イ)｢意見をかたくなに変えないこと｣⇒｢本文中での意味｣で判別すると(ウ)の｢自信を持って主張すること｣になってしまいかねない。

こうした｢語句の意味｣では、｢設問｣に惑わされずに｢原意絶対優位の原則｣を徹底させること。

＜時間配分目安：３問で２分弱＞

[問３]　｢具体例の不適切選択肢｣(５択)。傍線部①｢ヒューマノイド｣について、｢『ヒューマノイド』と呼べないもの｣を答える。

当然、｢原意消去｣からだが、｢ヒューマノイド｣の｢定義｣がここでは不明なので確認する。直前直後から、｢ヒューマノイド｣＝｢人造人間｣で、｢人間の形｣で｢機能｣も｢人間に近い｣ものだと分かる。
次に各選択肢を｢消去｣していくのだが、(ア)～(オ)で｢具体例｣として示されているものは全て、｢同一意味段落｣で説明されていることに気づきたい(｢説明文｣｢論説文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡

それぞれ読み解いていくと、(ア)｢フランケンシュタインのロボット｣､(イ)｢チャペックの労働者ロボット｣､(エ)｢加藤一郎先生のロボット｣､(オ)｢ＡＳＩＭＯと呼ばれるようになったロボット｣､どれもが｢ヒューマノイド｣だと判断可能で｢消去｣でき、｢答え｣は(ウ)の｢金属でできた産業用ロボット｣だと判別できるはずだ。

尚、本校では｢具体例の判別選択肢設問｣が頻出なので、｢一般論｣⇔｢具体論｣の変換練習を重ねておくことが肝要。

＜時間配分目安：２分＞

[問４]　｢指示語の換言説明記述｣(全２問/各｢30字以内｣指定)。傍線部②｢この問題｣について、｢どのような問題か｣を｢二つ｣説明する。

典型的な｢指示後換言｣だ。なら､どうってことはない､と甘く考えてはいけない。なかなか厄介な問題なのだ。｢指示語｣なので当然、直ちに開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)｡直前で、２つの｢問題提起｣がなされている。では、それらが説明すべき｢問題｣､ではない。｢この問題｣は｢段落冒頭の指示語｣だ。したがって、｢この｣は前段落全ての内容を指し示している(｢指示語｣の｢重要解法｣)｡

確認すると、前段落には実は｢３つ｣の｢問題提起｣があると分かる。そして、最初の｢問題提起｣には､さらなる｢指示語｣がある(つまり｢二重指示語｣)｡無論、開かなくてはいけない。その上で、｢３つ｣の｢問題提起｣を｢２つ｣にまとめて説明する必要がある。

｢指示語内容｣を読み解くと、｢２つ目｣と｢３つ目｣は｢同じもの｣についてだと判断できる。整理すると、｢ひとつ｣は｢ほんとうにこのように(＝｢ヒューマノイドこそがロボットだというように｣)考えるべきなのか｣､｢もうひとつ｣は｢ロボット研究者はその方向(＝｢ロボットはいずれ人間の形になるという方向｣)に向けて研究しなければならないのだろうか｣だ。これらを｢過不足なく｣まとめていく。

たとえば、｢ヒューマノイドこそがロボットだと考えるべきなのかという問題｡｣と、｢ロボットが人間の形になるように研究するべきなのかという問題｡｣といった｢答え｣だ。

｢指示語換言｣は本校に限らず定番だ。いくつかある｢解法｣を的確に応用できるようにしておくこと。

＜時間配分目安：２問で４分＞

｢総合的知識問題｣｡

[問１]は｢漢字の書きとり｣(全４問)｡
例年並みの難易度。①｢勤勉｣⇒何ら問題なし､②｢縦断｣⇒細部の｢トメ･ハネ･ハライ｣を丁寧に､③｢操る｣⇒｢部首｣に要注意､④｢装う｣⇒｢文脈｣を的確に把握すること。

[問２]は｢比喩表現と慣用句の空所補充｣(全３問)｡
①｢進み具合が遅い様子｣＝｢牛の歩みのようだ｣､②｢自慢する｣＝｢鼻にかける｣､③｢いい気になる｣＝｢図に乗る｣｡平易だ｡｢全問正解｣したい｡

[問３]は｢敬語表現の換言記述｣(全２問)｡
｢傍線部の動詞を用いないで､敬語表現｣に改める。①｢先生が教室に来た｣⇒｢いらっしゃった｣､②｢私があなたの家で食べた夕食｣⇒｢いただいた｣｡本校では｢敬語｣が必出。完全にマスターしておくこと。

[問４]は｢漢字パズル｣｡
周りの８つの漢字と｢熟語｣ができるように、９つのマス(２つある)の中心に｢漢字１字｣を入れて、それぞれの｢漢字｣をつないだ｢熟語｣を答えるという問題。分かりやすいはずだ。｢生｣と｢活｣で､｢生活｣が｢答え｣｡こうした｢漢字パズル｣､本校では度々出題されている。十分に慣れておくこと。

＜時間配分目安：全問で４分＞