｢文学｣は人間存在の始まりから、その傍(かたわ)らに、つねに在(あ)った――想像力と共感の力を涵養(かんよう)し、｢いま、ここ｣にはいない者たちと私たちを結びつけ、人々の新たな関係性と社会、世界との結びつきを書き換えてゆく｢文学｣の可能性を根源から問い直している。本文では、文学作品をどのように読むべきかを指摘し、｢作品を読む｣とはどういうことかについて論じている。難解な語句には｢説明｣が付されているので、内容は理解できるはず。ただ、とにかく長文なので論旨をとらえて手際よく読み進めることが肝要だ。｢空所補充｣｢抜き出し｣｢説明記述｣……､多種多様な小問が並ぶ。以下、いくつかを確認してみたい。

[問一]　｢漢字の空所補充記述｣(｢漢字１字｣指定)。本文中の空所 １ に｢あてはまる漢字一字｣を答える。｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という｢重要解法｣)で、空所前後を確認する。｢われわれには(文学)作品の １ は聞こえるのに、そしてその １ に感動したり不快な気持ちになったり……、作品世界のなかの人物たちにわれわれの １ は絶対に届かないし、……｣となっている。｢～は聞こえる｣｢われわれの～は届かない｣といった表現から当然、｢答え｣は｢声｣だと特定できるはずだ。尚、｢空所補充｣で｢空所｣が何カ所かある場合は、必ず全てをチェックすること。そうでないと｢手がかり･ヒント｣を見逃してしまう場合がある。
＜時間配分目安：１分弱＞

[問三]　｢表現の空所補充抜き出し｣(｢７字｣指定)。本文中の空所　　２　　に｢あてはまる言葉｣を｢七字｣で抜き出して答える。｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で、前後を確認したいが、離れて２カ所あるので注意すること。｢本章の主題は『何を読むべきか』ではあるが、むしろ考えるべきは『　　２　　べきか』だろう｣･｢出会った人とどのようにつきあっていくかを学ぶように、出会った本とどのようにつきあっていくか、つまり　　２　　かを学ぶ｣となっている｡｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。｢内容｣は、後者の空所の直前に｢つまり｣という｢換言｣の｢接続詞｣があるのですぐに分かる。要は、｢(出会った本と)どのようにつきあっていく(か)｣と同じ｢内容｣だ。｢範囲｣は｢同一意味段落｣になる(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢手がかり･ヒント｣がある)｡ここでは、最初の空所の段落からの２段落となる。相当に長いが、丁寧に探していきたい。すると、後半の段落の最後に｢こうしてどのように読むかを学ぶことがますます重要になってきている｡｣という一文がある。｢内容｣｢字数｣ともにＯＫだ。そして、他に候補となる｢表現｣はない。よって、｢答え｣は｢どのように読む｣となる。尚、｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢抜き出し範囲｣の全てを確認すること｡
＜時間配分目安：１分半＞

[問四⑨]　｢指示語換言説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢30字ほど｣の解答欄)。傍線部⑨｢それ｣の｢指示内容｣を説明する。｢指示語換言｣はどこの学校でも定番｡｢指示語｣なので当然、前に戻りながら開いていく。直前から、｢それ｣＝｢モンテーニュが対等な立場で対話するそれらの言葉｣だと分かる。また｢指示語｣だ(二重指示語)｡再び開く。｢それらの言葉｣＝｢古典ギリシャ･ローマの文人たちの言葉｣だ。以上を整理して｢過不足なく｣まとめていく。たとえば、｢モンテーニュが対話する古典ギリシャ･ローマの文人たちの言葉｡｣(30字)といった｢答え｣だ。｢指示語｣の｢解法｣は徹底的に習得しておくことが肝要。尚、｢指示語｣自体が直接問われていない場合でも、｢指示語｣が傍線部などにあったらすぐに開くこと。
＜時間配分目安：１分半＞
※尚、[問四]には本問を含めて４つの枝問があるが、全てが｢指示語換言説明記述｣だ。

[問五]　｢語句の空所補充選択肢｣(４択)。｢総合的知識問題｣｡｢四字熟語｣だ。本文中にある空所　　３　　に｢あてはまる四字熟語｣を答える。空所前後は｢いやなやつだという第一印象だったのが、いつの間にか　　３　　して親友になっていた｣だ。各選択肢は、(ア)｢初志貫徹｣･(イ)｢言行一致｣･(ウ)｢自画自賛｣･(エ)｢意気投合｣。本校志望者であればこの時点で、瞬時に｢答え｣は(エ)の｢意気投合｣だと即答できなくてはいけない。｢意気投合｣＝｢互いの気持ちや考えなどが、ぴったりと一致すること｣だ。｢四字熟語｣だけではなく、｢慣用句｣｢ことわざ｣｢故事成語｣などの｢知識問題｣が、本校では必須だ。確実に定着しておくことが求められる。
＜時間配分目安：30秒＞

[問七]　｢条件付き内容説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢80字ほど｣の解答欄)。傍線部④｢標識は矛盾だらけ｣について、｢どのようなことが『矛盾』と感じられるのか｣を説明する。｢条件｣は｢『標識』が何を示しているかを明らかにした上で説明する｣こと。｢条件｣から、｢標識｣は｢比喩表現｣だということが分かる。何の｢比喩｣なのかを｢同一意味段落｣から読み解いていく。段落前半から、ここでは｢文学作品｣と｢批評｣について論じられていることが読み取れる。そして、｢批評が作品と読み手を媒介(＝仲立ち)｣し、｢批評の言葉は、われわれ読者が対象(作品)と出会うことを助ける｣と述べられている。であれば、｢標識｣＝｢われわれ読者が文学作品と出会うことを助ける批評の言葉｣だと判断できる。次に、何がどう｢矛盾｣しているのかを確認する。そのことは傍線部前後で説明されている。｢さりげなく道行きを示してくれることで、われわれも自分自身の力で目的地にたどり着いたのだという達成感がある｣が、｢いまや道は標識だらけで、それを読み、追いかけることに夢中のあまり、かえって道に迷う。目的地には着いたものの、それが自身の経験だとは思えない｣｢批評の言葉が壁として立ちはだかり邪魔(じゃま)をする｣などと述べられている。つまり、｢本来われわれ読者が文学作品と出会うことを助けるはずの批評の言葉があふれすぎていて、かえって邪魔をしている｣ということが｢矛盾｣として感じられるわけだ。あとは、こうした｢要素｣を整理して｢過不足なく｣まとめていきたい。たとえば、｢本来はわれわれ読者が文学作品と出会うことを助ける標識であるはずの批評の言葉がいまやあふれすぎ、逆に読者と作品との出会いの邪魔をして達成感が得られなくなっていること｡｣(82字)といった｢答え｣になる。｢同一意味段落｣の｢文脈｣から、述べるべき｢要素｣を｢字数｣に応じて読み取ることが肝要だ。尚、｢条件｣は｢手がかり･ヒント｣でもあると心得よ。
＜時間配分目安：３分＞

[問十]　｢語句の空所補充選択肢｣(全３問/６択)。｢総合的知識問題｣｡｢接続詞｣と｢副詞｣だ。本文中の(　Ⅰ　)～(　Ⅲ　)の空所に｢あてはまる言葉｣を答える。本校に限らず定番の問題。｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。順に空所の｢答え｣をチェックしていく。(　Ⅰ　)には｢逆接｣の｢接続詞｣である選択肢(ウ)｢しかし｣､(　Ⅱ　)には｢理由説明｣の｢接続詞｣である(エ)｢なぜなら｣､(　Ⅲ　)には｢換言説明｣の｢接続詞｣である(ア)｢つまり｣がそれぞれ入る｡｢候補｣はいくつかあるので、しっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。
＜時間配分目安：全問で１分強＞

[問十五]　｢理由説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢80字ほど｣の解答欄)。傍線部⑫｢矛盾を承知｣について、｢筆者はなぜこう言っているのか｣を説明する。先ずは、｢筆者が言っている｣ことを｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で確認する。｢一文｣は、｢……と、こんなふうに作品との適切な距離を見つけることの重要性を強調しながらも、一方で、矛盾を承知でこうも思うのだ――われわれがまず行うべきことは、距離のことなどいっさい忘れて、まずは作品に身を投げ、作品とひとつになることなのかもしれない｡｣となっている。すでにこの段階で、傍線部の前後が｢矛盾｣していることに気づくはずだ。無論、これだけでは説明が不十分なので、補足すべき｢要素｣を読み取りたい。何はともあれ、｢指示語｣があるので開く。直前から、｢こんなふうに｣＝｢われわれ読者が、精魂(せいこん)をこめて作品を創造した他者である作者と対等な友であるというふうに｣だと読み解ける。また、傍線部直後では、｢作品とひとつになること｣で、｢作品世界と融合する(＝一つになる)ことこそ必要なのかもしれない｣とも説明されている。こうした｢要素｣を整えて説明していけばいい。たとえば、｢われわれ読者は作者を対等な友として作品と適切な距離を取ることの重要性を強調する一方で、距離などいっさい忘れて作品世界と一つになることこそ必要だと思っているから｡｣(80字)といった｢答え｣だ。尚、｢説明記述｣では、｢最重要要素｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を必ず｢文末｣とすること｡
＜時間配分目安：３分＞

｢漢字の書きとり｣(全10問)。示されている(１)～(10)の｢文中の(カタカナ)を漢字｣で書く。昨年度と比較すると難易度が上がっているが、本校としてはこれが｢標準レベル｣。本校志望者としては何としても｢全問正解｣をしたい｡特に注意すべきものを確認する。(１)｢(シュクガ)会に出席する｣＝｢祝賀｣⇒知っているはずの熟語、｢めでたいこととして喜び祝うこと｣だ。(５)｢(コウシ)を混同しない｣＝｢公私｣⇒この短文から｢文脈｣が読み取れるかがポイント、｢公的なことと私的なこと｣だ。｢公私混同｣という｢四字熟語｣として覚えておくこと｡(７)｢(ヒキョウ)にある温泉｣＝｢秘境｣⇒これはなじみが薄いか？ ｢外部の人が足を踏み入れたことがほとんどなく、まだ一般に知られていない地域｣という意味も覚えておきたい。(10)｢会場が熱気を(オ)びる｣＝｢帯(びる)｣⇒｢熱気を帯びる｣＝｢その人物やその場の雰囲気に、興奮した様子や強い意気込みが感じられるさま｣という慣用表現だ。尚、｢画数やバランスの乱れがあった場合は不正解｣(本校ＨＰ)なので，丁寧に記すこと。