明治大学付属八王子中学校 入試対策
2021年度「明治大学付属八王子中学校の国語」
攻略のための学習方法
[問題構成]
大問は2題で各15問の計30問という構成が定型である。ここ数年は大問1に小説、大問2に論説文という順番になっている。
設問は「文中の言葉を使って」「書き抜いて」など言葉で答える問題と選択肢問題とがおおよそ各10問ずつ、漢字の読み書きは各大問で5問ずつの計10問という内訳である。いわゆる記述問題は出題されていない。
素材文の文量は計10000~12000字とかなり多い。分速600~700字くらいを目標に、速く読む練習を積んでおきたい。
[小説の読解]
登場人物や舞台の設定が学生や学校である場合が多く、受験生にもなじみがあるので理解しやすいだろう。文中の言葉を使って答える問題が多いので、読解がしっかりできていれば得点しやすい。
ただし、選択肢問題は文中の細かな表現まで注意していないと惑わされる場合がある。一字一句、また全体に渡ってよく内容を吟味し、本文との一致・相違を見逃さないように注意しよう。
文学的文章の読解の技術を磨こう。
人物の整理――人数・名前・それぞれの関係などを確認する。だいたいの性格も見ておこう。性格が違えばその
言動の意味するところも違ってくる。
場面の変化――時間・場所・人物の入出などで場面の変わり目を見つける。場面の変わり目を訊かれる問題もあ
る。
心情の把握――人物の言動・表情や情景などから、気持ちを読み取る。最も問題にされる部分である。多くの文
章を読んで様々な人間の考えに触れておくことがなによりの経験になる。
主題の理解――作者が描きたかったことは何か。人間の成長や葛藤・挫折、戦争の悲惨さなど、よく描かれる
テーマがある。読書を通じて多くのテーマを見ておくことで、テーマをとらえる力もより付くこ
とだろう。
[論説文の読解]
ここ数年は人文科学分野からの文章が多い印象である。それほど難解な用語が出てくるわけでもなく、平易な言葉で書かれているので難しくは感じないだろう。2種類の文章を組み合わせたりして(2018年度)、読み易くする工夫をしてくれているようである。
説明的文章の読解の基礎をしっかり身に付けよう。
段落の整理――形式段落を意味段落にまとめる。意味段落の内容を小見出しのように書いてしまうとわかりやす
い。
要点と細部――段落の中で最も重要な1文を見つける。傍線などで目立つようにしておこう。説明や言い換えな
どは細部にあることが多い。
要約と要旨――要点をつなげて要約ができる。要約のなかで筆者の最も言いたいことが要旨である。つまるとこ
ろ、要旨を読み取るのが一番の目的である。
[漢字]
各大問の最後に漢字の問題がまとめられている。通常、漢字だけ最初に終えてしまうことが多いが、すべて文中にあるのでかえって時間がかかってしまうかもしれない。本校の試験では、読解を進めながら漢字の問題が出てきたところで答えを書き込んだほうが良いだろう。
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2021年度「明治大学付属八王子中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
2021年度は約12000字の文量で、文章量の多い年度となった。分速600~700字くらいで読めるようにして、問題を考える時間を確保したい。幸い、問題数は30問と控えめで記述問題も無いので、速読ができれば時間には余裕があるはずである。
【大問一】小説の読解
- 難度:標準
- 時間配分:26分
片方の耳が聞こえなくなってしまうという事実に感情が乱れてしまった主人公だったが、涼介の飾らない思いやりの言葉で心が軽くなる。
問一 耳に障がいを負ったという事実に娘がショックを受けたと思い、少しでも気持ちを軽くしてやろうと、母は明るく振る舞っている。「励ます」「元気づける」などの表現が考えられる。
問二 1. 母は片方の耳が聞こえなくなることで主人公に起こるであろう困難を予想し、「早く知ってもらって、きちんと対応してもらうほうが、結(主人公)だって楽になる」と考えており、「周囲の人に知っておいてもらう」ことを第一と考えている。
2. 主人公が話してほしくないと思っているのは、先生からみんなに伝えられた時に「みんなどう思うだろう」、周囲に気を遣わせてしまうのではないか、と考えているからである。
問三 みんなの「困惑」する顔が浮かんだ・「かわいそうだ」と思うかもしれない・やっぱり「めんどくさい」と感じるだろう、などと想像している。
問四 先生に話すことだけは了承したが、その先生が席替え(みんなに耳のことを説明することになるかもしれない)を勧めてきたので、自分の「気持ちがいいって思えるときまで」待ってもらうという条件がちゃんと伝わっているのか訝(いぶか)しんでいる。
問五 イ. 「体育の先生」と「石川先生」と分けて表記されているので、この二名はおそらく別人であると考えられる。もし同一人物だとしても、石川先生について「礼儀」「型どおりの行動しか認めない」などの様子は描かれていないので、いずれにしても合わない。
問六 主人公がイラついているのは「手に負えない感情」のせいなのだが、涼介は腹が空いているせいだと考えて(考えたふりをして)パンと牛乳を買ってきた。これは主人公が何か問題を抱えているとわかっていながら詮索はしないでいてくれる涼介の優しさだったのだと思われる。
問七 自分のまっすぐにものを言うところがよいと涼介に褒められたが、耳のことを話そうとしても思い切れない自分がいる。その「まっすぐでない自分」に対して自嘲気味に発せられた言葉である。
問八 問六も参照。気持ちの乱れの背後に何か問題があることを感じながら、涼介はこの言葉をかけているのである。
問九 ウ. 「パンと牛乳」の食べ方は単においしいからで、主人公の心の内とは何の関係もない。
問十 ① 改札 ⑧ 反射 ⑨ 盛大 ④ なお(る) ⑩ ひたい
【大問二】論説文の読解
- 難度:やや難
- 時間配分:24分
- ★必答問題
人の価値は「生きること」それ自体にあり、それがどのような「あり方」であっても優劣をつけられるものではないということを説いている。
問一 傍線部から少し先に「生きていることだけで他者に貢献している」「病気になったからといって自分にもはや価値がないと思わなくてもよい」とある。しかし、「トシはこのように思わなかった」のである。つまり、自分が他者に貢献できていないという点でトシは苦しんでいるということになる。選択肢アとエは表現は違うがほぼ同じ内容なので、候補から外れる。
問二・問三 病者は「家族が貢献感を持てるという貢献」をしているのだという指摘に注目。賢治は妹から雪を取ってきてくれと頼まれることで「貢献感」を持ち喜びを得られるのである。
問四 数段落前に「生きていることがそのままで他者にとっての喜びであり、生きていることだけで他者に貢献している」とある。「生きていることだけ」が「(病者である)妹の存在そのもの」と重なっている。
問五 「優越性の追求」とは、人が生きているいろいろなあり方(病気である・病気が治る・成功する・失敗するなどのあらゆる状況・状態)に優劣をつけて「優」を目指すという考え方である。その反対となる生き方として、リハビリを例にとって「優劣」ではなくそれぞれ「自分のペース」があるだけなのだと述べている。
問六 自分が前にいるからといってその人よりも優れているわけではなく、「ただ歩いている場所が違うだけのこと」に過ぎないととらえている。
問七 ジッハーの考えとして「アドラーが進化だという時、その進化は上・下ではなく前に向かっての動きで優劣はない」と書かれているので、選択肢エが合う。
問八 まず、生きることは「変化」であると述べている。進化した・退化したなどと方向を決めて優劣をつけなくてもよいのであり、さらには変化しなくてもよい、変化することも変化しないことも「等価」であり、差はないとしている。この「変化」とは「その時その時のその人のあり方」であり、そのすべてが「生きること」でそれ自体に価値があるのであって、その時々の「あり方」には優劣などない、と筆者は言っているのである。
問九 問八も参照。「変化しない」ことも「変化する」ことも等価であり優劣はなく、「変化しない」こともありがたい、と書かれている。ここでは母親の病状を話題として「変化しない」ほうの例を挙げただけのことである。
問十 ウ. 「貢献感を持つために」「自分のためになる」など、「利己」が目的であるのが本文の主旨と合わない。
問十一 『蜘蛛の糸』の作者は芥川龍之介である。
問十二 ⑥ 延命 ⑧ 前提 ⑩ けんち ⑪ こうたい
攻略のポイント
多い時には12000字にもなる文量に慣れること。速読が必要である上に、何度も読み返す時間はないので正確な読み取りが求められる。速く・正確に読めるように、同じように文量の多い女子校の過去問なども利用しながら、読解のスピードを上げていこう。
文中の要素を使った適語記入・書き抜きが多い点も意識して、重要点をマークしながら読むコツをつかんでおくとよい。
漢字が大問の最後にまとめられているという特徴にも、過去問を多くこなして効率良く解答できるように慣れておきたい。
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