｢輸送･交通手段と環境問題、地域間問題、さらには情報通信にも触れた｣リード文からの出題。
内容は、｢統計資料｣｢日本の河川の特徴｣｢地図上での都市･河川の特定｣｢温室効果ガス削減｣｢鉄道整備と過疎化｣等、幅広い。
平易な｢設問｣が基本だが、中には｢難問｣もある。
以下、そうした｢設問｣を考えてみる。

【問４】図表を参考にしての説明記述設問
下線部③について、｢日本では内陸の河川交通がさかんではない｣ことの｢理由｣に関して、｢気候的な影響｣を説明する(字数指定なし)。｢地形的理由｣であれば即｢流れが急｣となるのだが、さすが桜蔭ではそうはいかない。
従って、｢河況係数｣(最大流量を最小流量で割った数値)の図表から考えることになる。日本の河川はヨーロッパに比べ数値がとても大きい。
つまりは、最大流量と最小流量の差が大きいということ。｢気候的な影響｣なのだから、｢季節によって流量の差が大きい｣⇒｢水位の変化が激しい｣⇒｢船舶の航行が不安定になる｣と結びつけていきたい。
解答欄から判断して｢50～60字程度｣でまとめること。

【問６】地図中から位置を特定する選択肢設問
(１)～(４)の｢説明文｣が述べている｢都市｣の｢位置｣を、地図中の(ａ)～(ｉ)から答える。各文の｢キーワード｣に着目して｢都市｣を特定、｢位置｣を選んでいく
。
(１)は難しい。｢かつての石炭積出港｣｢家畜の飼料輸入｣から｢北海道の沿岸の都市｣だとはすぐ分かる。｢製紙･石油｣とあるのでなんとか｢苫小牧｣と特定したい。地図中では(ａ)か(ｃ)だが、どっちだ？　苫小牧の｢位置｣を正しく覚えていればいいが……。答えは(ｃ)。(ａ)は｢えりも町｣。
(２)は｢大きな橋｣｢道路と鉄道の二重構造｣⇒｢本四連絡橋の児島･坂出ルート＝瀬戸大橋｣⇒｢高松｣で(ｆ)。
(３)は｢2011年全線開通の新幹線｣｢灰が降る｣⇒｢桜島｣＝｢鹿児島｣で(ｉ)
(４)は｢もっとも旅客数が多い航空路線｣⇒｢羽田⇔新千歳｣＝｢札幌｣で(ｂ)となる。

【問９】文中写真についての事項記述設問
下線部⑤の｢トラック輸送の問題点｣こついて、｢文中写真の施設｣(他にもう１枚の｢写真｣も載っている)は｢温室効果ガス削減目的｣以外で｢どのような問題点を解決するために作られたか｣を答える(字数指定なし)。
｢～以外｣が曲者だ。やはり桜蔭は一筋縄ではいかない。
街角で見かけることがあると思うが、｢右の写真｣は｢自動車ではなく手押し車で荷物を運んでいる光景｣。
機転を働かせる(視点を変えてみる)ことが桜蔭では大切。｢車道｣ではなく｢歩道｣だ。ということは、と考えていく。｢小回りがきく｣ということもあるが、やはり最大の利点は｢渋滞がない｣ということ。
｢問題点｣を答えるので、｢交通渋滞｣となる。

【問１２】リード文に関連しての説明記述設問
下線部⑦について、｢鉄道の整備によって、かえって過疎化が進んだ地域もある｣とは｢どういうことか｣を｢具体的に｣説明する(字数指定なし)。
一瞬｢えっ？ 電車が通ったら便利になるでしょ？｣となって当然。そういう場合は｢リード文｣に着目すべし。必ずヒントがあるはず。
ここでは、直前に｢新幹線の整備｣とある。そう｢新幹線｣についてだ。であれば、全てが解決(となってほしい)。｢新幹線の整備｣によって、それまでの｢在来線の本数が減ったり、第三セクターになる場合｣や｢新幹線が停車しない駅周辺がさびれてしまう｣ということもある。こうしたことから｢過疎化｣につなげてまとめればいい。
解答欄から判断して｢50～60字程度｣でまとめること。

｢2013年4月に発生したダッカ(バングラデシュ)郊外ビル崩落事故(＝時事問題)を導入として、繊維や繊維産業の歴史を、イギリス･アメリカも含めて説明した｣リード文からの出題。
内容は、｢奈良時代｣～｢現在｣までと幅広い。ほとんどが平易な｢設問｣。ここでしっかり得点を重ねておきたい。ただ、いくつかは｢いかにも桜蔭｣といったものもある。
以下、そうした｢設問｣を検討してみよう。

【問１(ｂ)】空所補充の選択肢設問
問題文中の空所(Ｂ)に当てはまるものを答える。
｢ダッカ郊外ビル崩落事故｣というややマニアックな｢時事ネタ｣を知っていれば即答可能だが、そうでないと手ごわい。だが、いくつかの｢手がかり｣がある(｢桜蔭攻略｣には様々な視点から多角的に考えることが必要)。
｢下の表を参考に｣という｢設問条件｣、先に他を埋める｢消去法｣、そして、｢裏ワザ｣としての｢文脈的消去｣(日本語として｢代入｣可能かを確認する)などだ。
どのように考えてもいいが、いずれにしても｢なんとしてもねじ伏せる｣という気概を持つことが重要。
答えは(い)｢縫製｣。

問３(ｄ)】適切説明の選択肢設問
下線部④にある｢幕末に日本から大量に(５)が輸出された｣ことに関しての問題。
｢空所(５)｣(＝｢生糸｣)は、｢問２｣の問題(桜蔭ではこうした｢設問｣どうしの関連にも注意すること)。
下線部④の結果｢どのようなことが起こったか｣を｢すべて｣答える(しかも｢選択肢｣は７つ)。そう、桜蔭定番の｢完答問題｣だ。｢完答問題｣は当然ながら、ささいなミスが致命的となってしまう。とにかく｢細部｣に注意することが重要だ。動揺せずに落ち着いて考える。
ここでは、選択肢(あ)～(え)と(お)～(く)で内容が二分されるので消去しやすい。
｢開国直後の生糸輸出｣で日本国内はどうなったか？ もう分かるはずだ。答えは(あ)(お)。

【問３(ｅ)】条件付きの理由説明記述設問
下線部⑤の｢1930年代後半には日本の繊維産業は停滞し、その後衰退した｣という状況が｢なぜ起こったのか｣を、当時の｢日本の対外的な行動に触れて｣説明する(｢30字以内｣指定)。
｢設問条件｣そのものが｢ヒント｣になっているという、桜蔭に限らず上位校特有の問題。
先ずは、｢1930年代後半の日本の状況｣から考えろということだ。頭の中に｢年表｣を思い浮かべたい。
1936｢二･二六事件｣→1937.7.7｢盧溝橋事件｣から｢日中戦争｣→1938｢国家総動員法｣→1939｢日米通商航海条約破棄｣、そして、1941｢太平洋戦争｣。つまり、国際的には孤立し国内的には一気に｢軍国主義｣が進展して、全てが戦争遂行のためだけに費やされていくといった｢時代状況｣を捉えられるはずだ。
産業も無論｢軍需優先｣となる。こうしたことをまとめればいい。
｢対外的な行動に触れて｣とあるので、｢日中戦争｣と結びつける必要がある。｢30字以内｣なので簡潔に。

主に、｢政治｣｢国際｣分野についての①～⑤の各説明文に関しての問題。
｢空所補充の事項記述と選択肢｣(各設問共通)。とても易しい問題が並んでいる。
注意すべきは、平易な問題こそ落としてはいけないということだ。そうでないと桜蔭の門はくぐれない(合格者は必ず正解してくる)。
以下、１問だけ検証する。

【問１】空所補充の事項記述設問と選択肢設問
2013年９月に最高裁判所が下した｢相続に関する民法規定｣についての｢違憲判決｣に関する問題。
基本的には｢時事問題｣だ。押さえていれば何ということはない。仮に抜けていたとしても、｢知識｣を総動員すれば分かる。
最高裁判所が｢(１)権を行使｣⇒｢違憲判決｣、とくれば｢(１)権｣＝｢違憲立法審査(権)｣とつながる。
また、｢民法の相続に関する規定｣⇒｢(Ａ)を保障した憲法に反する｣の方はちょっと悩むかもしれない。ただ、｢選択肢｣なので、｢相続｣から｢消去法｣でたどり着きたい。 (Ａ)＝(い)｢法の下の平等｣となる。

全て何回も解いたことのある問題であったろう。
問１から問５　基本問題。必答。