栄東中学校 入試対策
2024年度「栄東中学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
「栄東の国語」では、「総合知識問題」が最重要攻略ポイントのひとつ。さあどうするか?
当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚える。
「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「敬語」「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する際、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあいまいなものがあったら、書き出して自分なりの「語彙ノート」を作成しておくといい。
そこには自分が分からない言葉が蓄積されていくので、折に触れ確認し定着させていく。
入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙」は様々な形式で出題されるし、「記述」の際にも重要だ。指定字数の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ。
最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。
そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。
栄東では必ず直接出題されるし、「記述」にも不可欠だ。
日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。
特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。なお、「語彙力」「文法力」強化用テキストとしては、「言葉力1200」「言葉力ドリル」(共に学研)「でる順過去問 ことわざ・語句・文法」(旺文社)等がオススメ。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。全体で7000~8000字程度。解答時間は50分。
当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。
こうした手法によって、栄東定番の「紛らわしい選択肢設問」にも的確に対処できるようになる。
これらのコツは塾でも教えてくれるはずだ。教えてくれなければ、自分から聞いてみてほしい。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
栄東に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。
そして、最終的に分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしたい。
解法
前述したよう、栄東特有の「難問」に勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。
「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。
「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。
それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして「解説」を聞いて納得した。以上終了ではダメ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山だ。
「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。
解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。
繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「栄東の記述対策」は前述の通りだが、その前に前提としてなすべきことがある。
それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。
いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。
「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要がある。
では、何を「書く」か? 読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのもとてもいい方法だ。
40~50字程度で書いてみる(栄東の典型的な「記述」の練習にもなる)。
無論、内容は先生に確認してもらう。
「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。
書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。
だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要要素」を文末にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
意識
いついかなる状況でも、常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。
ただなんとなくと机に向かっていても無駄だ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが必要。
そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」するようにして学習したい。
「設問」を正しく理解しているか? 「条件」に合致しているか? 「細部」は大丈夫か? 「必要な要素」は満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。
50分という時間で解き進めていかなくてはならない栄東では、ひとつのミスが致命的になる。
入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2024年度「栄東中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一 は「総合的知識問題」。小問なし(解答数8)。「空所補充の語句選択および漢字変換」。3分ほどで終えたい。
大問二 も「総合的知識問題」。小問なし(解答数10)。「空所補充の語句判別選択肢」。3分程度で解きたい。
大問三 は「記録文」、出典は竹内早希子「巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ」(文字数約3700字)。小問は全9問(解答数11)。「選択肢」(「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(1問)、「説明記述」(2問。「30字以内」と「50字以内」指定各1問)、「自由考察論述」(1問。「字数指定」なし、「60字ほど」の解答欄)。問題文は4分程度で読み切り、設問を14分ほどで解きたい。
大問四 は「小説」、出典は宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」(文字数約7100字)。小問は全10問(解答数11)。「選択肢」(「総合的知識問題」、「乱文整序」、「不適切」、「複数完全解答」あり)、「説明記述」(3問。「15字以内」と「40字以内」、「45字以内」指定各1問)問題文は9分ほどで読み、設問を17分ほどで解きたい。
【大問一】「総合的知識問題」(空所補充の語句選択および漢字変換)
- 難度:難
- 時間配分:3分
「総合的知識問題」。「空所補充の語句選択および漢字変換」(全8問。8択)。
示されている8つの文中の空所(1)~(8)に「当てはまる適切な言葉を『語群』から選び、漢字に直して」それぞれ答える。「語群」は、「シジ」・「セジ」・「ソウセイ」・「ゴショウ」・「マイキョ」・「ジョウセキ」・「ギョウソウ」・「ジュッコウ」だ。「語句の意味判別」と「漢字の書きとり」が同時に問われているハイブリッドな問題だ。本校の十八番であり、求められる「高度な語彙力」の一端を垣間見ることができる。難易度は昨年度より格段にアップしており、難解極まりない。可能な限り、「失点」は避けたい。「答え」を確認する。
・「(1)だから助けてください」⇒「ゴショウ」=「後生」⇒いきなり、はて?に違いない。「①後の世に生まれ変わること。②人に哀願するときに使う言葉」⇒ここでは無論、後者の用例だ。覚えておきたい⇒尚、「あとから生まれること」という意味の「コウセイ」も漢字は同じなので注意せよ。
・「お(2)でもほめられたらうれしい」⇒「(お)セジ」=「(お)世辞」⇒言葉としては知っているはず。漢字を書けるかがポイント。
・「この墓には(3)した天才画家が眠っている」⇒「ソウセイ」=「早世」⇒これまた未知で当然。「若くて死ぬこと」だ。
・「メリットは(4)にいとまがない」⇒「マイキョ」=「枚挙」⇒これは知っていてほしい⇒「枚挙に暇(いとま)がない」=「数え上げるときりがない、数えられないほどたくさんある」という慣用表現で定着していなくてはならない。
・「必死の(5)で走る」⇒「ギョウソウ」=「形相」⇒これは「中学入試」の定番。
・「(6)にとらわれない考え方」⇒「ジョウセキ」=「定石」⇒「囲碁で最善とされる決まった打ち方。転じて、物事を処理するときの決まった仕方」、これは知らなくてはいけない。
・「(7)を重ねた上での決断」⇒「ジュッコウ」=「熟考」⇒「文脈」を読み取れば、流石(さすが)に分かるはずだ。
・「誰にも(8)することなく独学をつらぬいた」⇒「シジ」=「師事」⇒「ある人を先生として、その教えを受けること」だが、押さえているか?⇒「同音異義語」には要注意。さあ、どうだったか? 難解ではあった。未定着や曖昧(あいまい)な語句はしっかりと確認しておくこと。
【大問二】「総合的知識問題」(空所補充の語句判別)
- 難度:やや難
- 時間配分:3分
「総合的知識問題」。「空所補充の語句判別選択肢」(全10問。10択)。
示されている例文中の空所( 1 )~( 10 )に「当てはまる適切な言葉」を「語群」から選びそれぞれ答える。「語群」は、(ア)「忌憚(きたん)」・(イ)「日和見(ひよりみ)」・(ウ)「眉唾物(まゆつばもの)」・(エ)「びた一文(いちもん)」・(オ)「あらさがし」・(カ)「反故(ほご)」・(キ)「月並(つきな)み」・(ク)「高飛車(たかびしゃ)」・(ケ)「人となり」・(コ)「世知辛(せちがら)い」。差昨年度よりも難しくなった。未知の「語句」もあるはず(3つ? 4つ?……)。なかなかの曲者だ。特に厄介なものを確認しておく。
・「( 1 )世の中になったものだ」=「答え」は(コ)の「世知辛い」⇒馴染みがないに決まっている⇒「①暮らしにくい。②抜け目がない、けち」という2つの意味がある。ここでは前者の用法。
・「約束を( 3 )にされていら立つ」=「答え」は(カ)の「反故」⇒「反故にする」=「ないものとする」という意味として定着していて当然だが……。
・「( 4 )なく意見を述べる」=「答え」は(ア)の「忌憚」⇒これは知っているに違いない⇒「忌憚のない」=「遠慮なく」⇒「忌憚のない意見」は頻出だ。
・「( 6 )を決めこむ」=「答え」は(イ)の「日和見」⇒「有利な方につこうと、形勢をうかがうこと」のことだ⇒「日和見主義」という表現も覚えておきたい。
・「彼の話は( 9 )だ」=「答え」は(ウ)の「眉唾物」⇒定着させておきたい「慣用句」なのでOKか?⇒「だまされる心配のあるもの。真偽の確かでないもの。信用できないもの」のことだ。「語群」の中の知らない「語句」は、確実に習得し定着させておきたい。
【大問三】「記録文の読解」(「自由考察論述」1問あり)
- 難度:標準
- 時間配分:18分
「しょうゆ」「みそ」「酒」など、日本の伝統調味料づくりに欠かせない巨大な「木おけ」をつくれる職人がいなくなる!――立ち上がったのは小豆島の「しょうゆ蔵」。最後の「木おけ職人」に弟子入りし、次々に降りかかる困難を乗り越えて、おけづくりの輪を全国に広げた奮闘記(ドキュメンタリー)。本文では、伝統的な製法を行う醸造業に欠かせない「木桶(きおけ)」について、その働き・現状・歴史などについて説明している。平易な文章で内容はすぐに理解できる。本校らしい、ひねりのある「総合的知識問題」や「選択肢設問」が並んでいる。いくつかの小問を検討しよう。
[問一] 「換言説明選択肢」(5択)。
傍線部(1)の「付加価値」とは「何か」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「換言説明」なので、「付加価値」の「原意」と結びつかない「説明」を「消去」する。通常は各選択肢の「文末」と照合するが(「選択肢説明」での最重要ポイントは「文末」だ)、本問は各説明がとても短いので全体をチェックする。
(ア)「その蔵で作った醬油にしかない独特な香りやしょっぱさ」、
(イ)「近代的な設備で作ったのではなく木桶で作ったという製造方法」、
(ウ)「木桶仕込みならではのクセや個性が均一に保たれること」、
(エ)「自然食品店や、生活協同組合で醬油を売ってもらえること」、
(オ)「醬油の味が均一ではなく個性にとぼしいということ」。
どうだろうか? 「付加価値」の「原意」が「生産過程で新たに加えられた価値」だということは知っているはずだ。「生産過程で新たに加えられた価値」なのだから、(ア)以外は「消去」だと判別したい。念のために「同一意味段落」を確認する(「論説文」「説明文」「記録文」では「同一意味段落」に「根拠」「手がかり」がある)。他の部分の説明も特に誤っていないと分かる。よって、「答え」は(ア)でOK。なんと「一発消去」だ。「原意消去」は必須ツールだ。十分に活用できるように練習することが肝要。
<時間配分目安:1分弱>
[問二] 「語句の意味の選択肢」(5択)。
「総合的知識問題」。傍線部(2)「手間」の「ここでの意味」を答える。各選択肢は、(ア)「発見」・(イ)「技術」・(ウ)「進歩」・(エ)「移動」・(オ)「仲介」。これらの「原意」に忠実に判別すれば何の問題もないはずなのだが、「本文中での意味」を意識し過ぎると間違ってしまう可能性があるので、要注意。確認する。「手間」=「何かをするのに費やされる時間や労力」だということは知っているはずなので、「答え」は(イ)の「「技術」と特定できなくてはいけない。こうした「語句の意味」では、「本文」の「文脈」に惑わされずに「原意絶対優位の原則」を徹底させることが肝要だ。ただし、「多義語」では「文脈」による判別も必要になると心得よ。
<時間配分目安:全問で30秒強>
[問六] 「換言説明選択肢」(5択)。
傍線部(4)の「当時の状況からすれば無理もないことですが」とは「どういうことか」を答える。無論、先ずは「原意消去」をしたい。ここは「換言説明」なので、「無理もないこと」の「原意」と結びつかない「説明」を「消去」する。各選択肢の「文末」と照合する。
(ア)「納得できるということ」、(イ)「仕方がないということ」、(ウ)「理解できるということ」、(エ)「仕方がないということ」、(オ)「やむをえないということ」。
はて? 困った! 全て「無理もない」と結びついてしまう。残念ながら、この段階では「消去」不可能だ。次に、何が「無理もないこと」なのか、そして、「当時の状況」とは何なのかを「同一意味段落」から読み解いていく。直前から、「合成酒といわれる粗悪な三増酒をみんな喜んで飲んだこと」が「無理もないこと」だと分かる。また、直後からは、「当時」は「戦後の激しい食糧不足が続いていた状況」だったことが読み取れる。改めて、各選択肢説明の「状況」と「何が」を確認する。
(ア)「GHQからの指示や統制がある状況」・「合成酒しかつくることができないこと(が)」、(イ)「酒をつくることが制限されてしまっている状況」・「(質を落としても)酒をつくろうとすること(が)」、
(ウ)「戦後の食糧不足の状況」・「質の悪い三増酒がはやること(が)」、
(エ)「ひもじい思いをしている状況」・「質の悪い三増酒を求める人々が増えること(が)」、(オ)「欠減などの不利な点がある状況」・「三増酒をつくること(が)」。
(ウ)以外は「消去」だと即決できて当然だ。したがって、「答え」は(ウ)になる。本問は「2段階消去」だったが、最初に「原意消去」を試みることは必須だ。
<時間配分目安:2分強>
[問九] 「条件付き自由考察論述」(「字数指定」なし、「60字ほど」の解答欄)。
「あなたが醸造を営む場合、伝統的な日本のやり方と、近代的な設備で作るやり方のどちらを行うか」を論述する。「条件」は「本文をふまえ、理由とともに論述する」こと。尚、「伝統的と近代的のどちらを選んでも試験の点数に差はつきません」と付記されている。「自由論述」であり「あなたの場合」なので、無論、「伝統的」と「近代的」のどちらを選び、どのような「内容」にするかは自由。しかし、自由……、自由だからこそ、雲をつかむようで何も思い浮かばないかも知れない。ただ、「本文内容」は無論、「手がかり・ヒント」になる。「条件」に「本文をふまえ」とあるのだから尚更だ。「伝統的な日本のやり方」とは「木桶仕込みの醸造」で、「蔵元ごとの風味の魅力」や「伝統技術の継承」といった利点があり、「近代的な設備での醸造」には「クセがなく、品質が均一レベルに保たれる」というような長所があると、本文で説明されている。こうしたことを考慮して、どちらかを選択し、その「理由」を明確にして論じていきたい。本校では、「自由考察論述・記述」は必出だ。志望者は、「設問自体」や「条件」、そして、「本文内容」などを「手がかり・ヒント」にして、「考察」「感想」や「体験」「創作」を「60~100字前後」でまとめる練習を重ねておくことが必須だ。
<時間配分目安:5分>
【大問四】「小説の読解」(「乱文整序」あり)
- 難度:標準
- 時間配分:26分
- ★必答問題
コロナ禍に閉店を控えるデパートに毎日通い、M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする……。今日も全力で我が道を突き進む「成瀬あかり」をめぐる青春小説。本文では、人間関係の苦手な「わたし」(大貫)が、東大を目指す中で「須田」と親しくなった様子や、東大のオープンキャンパスで苦手な「成瀬」と出くわしたときの様子などが描かれている。未知の語句もあろうが、「*注」を参照すれば内容は理解できる。本校ならではのバラエティーに富んだ設問内容の小問が並んでいる。以下、いくつかの設問を確認する。
[問一] 「空所補充のひらがな記述」(全2問。各「ひらがな3字」指定)。「総合的知識問題」。「慣用句」。本校の定番だ。波線部(a)「ご多分に( ) 」・(b)「( )の見物」について、空所部( )にそれぞれ「ひらがな三字」を入れて「慣用句」を完成させる。空所前後の「文脈」からふさわしい「慣用句」を特定していきたい。それぞれの「答え」をチェックする。
(a)には「世間と同じように。例外ではなく」といった意味内容の「ご多分に漏(も)れず」が入ると分かる⇒「答え」=「もれず」。
(b)には「第三者の立場から、興味本位に物事の成り行きを傍観すること」を表す「高みの見物」が入ると分かる⇒「答え」=「たかみ」。尚、本校では「慣用句」はもちろん、「故事成語」「ことわざ」「四字熟語」などについても完璧にする必要がある。
<時間配分目安:1分弱>
[問四] 「換言説明不適切選択肢」(全2問。複数完全解答。5択)。
傍線部(2)の「気持ちが盛り上がるのがわかる」とは「どういうことか」、「あてはまらないもの」を「二つ」答える。もちろん、「原意消去」から。本問は「不適切選択肢」なので、「消去」すべきものが「答え」となる。各選択肢の「文末」を確認したい。
(ア)「うれしい気持ちがあふれてきたということ」、(イ)「がんばれそうだということ」、(ウ)「いい気分になったということ」、(エ)「期待を寄せているということ」、(オ)「気分が高揚しているということ」。「気持ちが盛り上がる」のだから、「がんばれそうだ」と「期待を寄せている」は「消去」可能だと判別できなくてはいけない。他の部分の説明を「同一場面」で確認する(「小説」では「同一場面の直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。特に誤ってはいないと分かる。したがって、「答え」は(イ)と(エ)だ。見事な「一発消去」であった。「小説」でも「原意消去」が活躍する。確実にマスターすること。
<時間配分目安:1分強>
[問五] 「内容説明記述」(「30~40字以内」指定)。
傍線部(3)「気を抜いていたらしい」について、「これは『わたし』のどのような態度を表しているか」を「三十字以上四十字以内」で説明する。先ずは「傍線部一文一部の法則」に「手がかり」を求めたい(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。直前は「新たな味方ができたわたしは、自分でも気付かぬうちに」となっている。そして、「新たな味方」とは「メッセージをやりとりするようになった『須田』」だということも読み取れる。さらに、「同一場面」で「状況」を確認すると直後で、「気を抜いていた」「わたし」に対して「悠子(ゆうこ)」が「かえでって、わたしのことどうでもいいと思ってるでしょ」「(わたしに興味がないんだろうなって)明らかにこっちに伝わっちゃうのはどうなの?」と詰め寄っていることが分かる。つまり、「須田」という「新たな味方」に気をとられ、「悠子に興味がない」ように「明らかに伝わっちゃう」ような「態度」だったというわけだ。こうした内容を整理して、「過不足なく」まとめていきたい。たとえば、「須田とのやりとりに気をとられ、明らかに悠子に興味がないように伝わってしまう態度。」(40字)といった「答え」だ。尚、いくつかの「解法」を組み合わせて考えていくことが肝要だと心得よ。
<時間配分目安:3分>
[問十] 「換言説明選択肢」(5択)。
傍線部(7)「わたしの描く相関図の外で暮らしている人たちも、それぞれの相関図の中で生きている」について、「どういうことか」を答える。最初に「原意消去」から試みる。ここは「換言説明」なので、「それぞれの相関図の中で生きている」の「原意」と直接結びつかない説明を「消去」することになる。各選択肢の「文末」と照合したい。
(ア)「さまざまな人間関係の中で生活しているということ」、(イ)「それぞれの価値観の中で生計を立てているということ」、(ウ)「(派手な人ばかりではなく)普段着でふらっと来るような人もいるということ」、(エ)「興味関心を持ったり持たれたりしながら存在しているということ」、(オ)「それぞれの個性を生かしながら暮らしているということ」。「相関図」とあるのだから無論、(ア)以外は「消去」でいいと判別できるはずだ。「同一場面」から、他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かる。したがって、「答え」は(ア)でいい。やはり、「原意消去」は合格へのショートカットだ。
<時間配分目安:1分以内>
※尚、[問九]は「会話のやりとり」の「乱文整序選択肢設問」だ(2年続けての出題)。通常の「乱文整序」の「解法」とは別に、大きな「手がかり」がある。「会話」の間に「ト書き」がなければ、その「やりとり」は基本的に「2人」の「話者」によるものなので、「A」「B」「A」「B」「A」……、といった具合に「2人」の「セリフ」が交互に連なっていると考えればよい。
攻略のポイント
●本校の特徴のひとつである「紛らわしい選択肢設問」をどう攻略するか? 残念ながら「裏ワザ」はない。「設問内容」に対応した「解法」を的確に用いて、段階を踏んで「消去」するほかない。したがって、「基本的解法」を完全に習得して適切に応用できるようにしておくことが重要だ。特に、「原意消去」は完璧にマスターすること。それによって「得点力」も安定する。合格ラインは60%台半ば(過去10年間の「受験者平均得点率」は59.7%。本年度はやや低く58.1%。ちなみに、本年度、4教科合計の「3年間特待合格基準点」は73.1%)。「得点力の安定」は、近年難化が著しい「合格」への近道となる。
●「総合的知識問題」にはどう対処するか? 特に「落とし穴」となりそうなのが頻出の「文法問題」だ(本年度は未出だったが、油断禁物)。全分野から、細部にわたって出題される。塾での学習だけでは全く不十分なので、独自に完全習得し定着させること。4年前には「文学史」なども出題されたので、無論、「文法」以外も抜かりなく。尚、一昨年度出題された「一般常識」、本年度は2年連続で未出だったが、来年度以降に向けて引き続き要注意だ。
●「説明記述対策」も肝要。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要な要素」を積み上げていく手法をマスターすること。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。本校では「指定字数」の幅が狭いので、細かな「字数調整」ができるようにもしておく必要がある。
●6年連続で新傾向の「自由考察論述・記述」の出題があった。「思考力・判断力・表現力」が徹底して重視されるようになった新たな大学入試制度を意識していることは間違いない。当然、来年度以降もこうした出題が予想されるので、入念な準備が求められる。
●試験時間は50分。問題文のボリュームは全体で7000~8000字程度(近年は増加傾向で、本年度は昨年度並みで約10800字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速800字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
栄東中学校の科目別
入試対策一覧
中学受験のために
家庭でできること
インタビュー=学力が伸びる子と伸び悩む子の特徴とは
リーダーズブレインの合格実績豊富な現役家庭教師が、プロならではの視点でポイントをお話ししています。どのようなタイプの子供が伸びるのか、家庭でのサポートで親が気を付けるべき事は何か。勉強のサポートの仕方から親子の関係性など…ぜひ参考にしてください。