栄東中学校 入試対策
2019年度「栄東中学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
「栄東の国語」では、「総合知識問題」が最重要攻略ポイントのひとつ。さあどうするか?
当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚える。
「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「敬語」「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する際、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあいまいなものがあったら、書き出して自分なりの「語彙ノート」を作成しておくといい。
そこには自分が分からない言葉が蓄積されていくので、折に触れ確認し定着させていく。
入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙」は様々な形式で出題されるし、「記述」の際にも重要だ。指定字数の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ。
最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。
そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。
栄東では必ず直接出題されるし、「記述」にも不可欠だ。
日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。
特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。なお、「語彙力」「文法力」強化用テキストとしては、「言葉力1200」「言葉力ドリル」(共に学研)「でる順過去問 ことわざ・語句・文法」(旺文社)等がオススメ。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。全体で7000~8000字程度。解答時間は50分。
当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。
こうした手法によって、栄東定番の「紛らわしい選択肢設問」にも的確に対処できるようになる。
これらのコツは塾でも教えてくれるはずだ。教えてくれなければ、自分から聞いてみてほしい。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
栄東に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。
そして、最終的に分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしたい。
解法
前述したよう、栄東特有の「難問」に勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。
「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。
「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。
それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして「解説」を聞いて納得した。以上終了ではダメ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山だ。
「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。
解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。
繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「栄東の記述対策」は前述の通りだが、その前に前提としてなすべきことがある。
それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。
いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。
「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要がある。
では、何を「書く」か? 読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのもとてもいい方法だ。
40~50字程度で書いてみる(栄東の典型的な「記述」の練習にもなる)。
無論、内容は先生に確認してもらう。
「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。
書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。
だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要要素」を文末にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
意識
いついかなる状況でも、常に何かを「意識」しながら学習することが重要だ。
ただなんとなくと机に向かっていても無駄だ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが必要。
そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつものことを「意識」するようにして学習したい。
「設問」を正しく理解しているか? 「条件」に合致しているか? 「細部」は大丈夫か? 「必要な要素」は満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。
50分という時間で解き進めていかなくてはならない栄東では、ひとつのミスが致命的になる。
入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2019年度「栄東中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「漢字問題」。
小問なし(解答数5)。「同音・同訓異字判別選択肢」。2分ほどで終えたい。
大問二は「総合的知識問題」。
小問は全3問(解答数11)。「語句の空所補充」、「文学史」(「作品冒頭部分」での「作品名」特定)、「漢字の組み合わせでの熟語作成」。4分程度で解きたい。
大問三は「論説文」、出典は正高信男「ニホンザルの心を探る」(文字数約4100字)。
小問は全9問(解答数13)。「選択肢」(「空所補充」、「不適切」、「複数解答」あり)、「抜き出し」、「説明記述」(4問。「10~15字以内」「10~20字以内」指定各1問)、「自由記述」(2問。「字数指定」なし、ともに「60字ほど」の解答欄)。問題文は5分半で読み切り、設問を16~17分で解きたい。
大問四は「小説」、出典は恩田陸「蜜蜂と遠雷」(文字数約5500字)。
小問は全8問(解答数8)。「選択肢」、「抜き出し」、「説明記述」(3問。「30~40字以内」指定2問と、「字数指定」なし1問で「60字ほど」の解答欄)。問題文は7分ほどで読み、設問を15分程度で解きたい。
【大問1】「漢字問題」(全5問。同音・同訓異字判別)
- 難度:標準
- 時間配分:2分
(1)~(5)の傍線部の「カタカナ」を「漢字」に直したとき、その「漢字と同じになるもの」を答える。
「書きとり」ではなく「選択肢」なので恐るるに足らず、などと甘く見てはいけない。より厳密に判別しないと間違う恐れがある。しかも、「各5択」ということは、合計で「30の漢字」を正確に知らなくてはいけないわけだ。
本校志望者であれば「全問正解」といきたいが、やや悩ましいものとしては、
(1)「知識のなさをジセイした」(=自省)⇒各選択肢は、
(ア)「中学生はセイフクを着る」(=制服)
(イ)「病院でセイミツ検査を受ける」(=精密)
(ウ)「家臣はチュウセイシンが高い」(=忠誠心)
(エ)「高速道路はキセイラッシュ」(=帰省)
(オ)「明るいセイカク」(=性格)⇒「答え」は(エ)
(2)「運命に身をユダねる」(=委ねる)⇒
(ア)「学級イイン」(=委員)
(イ)「キャプテンにニンメイされる」(=任命)
(ウ)「ヨキンをおろす」(=預金)
(エ)「練習場所をテイキョウしてもらった」(=提供)
(オ)「ケイイをもって接する」(=敬意)⇒「答え」は(ア)
(5)「町からはセントウが姿を消してしまった」(=銭湯)⇒
(ア)「トウニュウを飲む」(=豆乳)
(イ)「生徒会長にトウセンした」(=当選)
(ウ)「一石をトウじた」(=投じた)
(エ)「大臣がトウベンする」(=答弁)
(オ)「箱根にトウジに行く」(=湯治)⇒「答え」は(オ)
さあ、どうだろうか? 的確に判別できなかった諸君は、「知識のなさをジセイ」せよ。
【大問2】「総合的知識問題」(「語句」「文学史」など)
- 難度:難
- 時間配分:4分
「空所補充の文脈からの語句判別」、「文学作品冒頭からの作品名判別」、「構成と意味からの漢字特定と熟語作成」。
本年度は「文法」や「四字熟語」といった定番ではなく、やや毛色が変わっている問題だ。こうした分野もあり得ると心得よ。
さて、「語句判別」は問題ないはずなので、他の設問をチェックしてみたい。
「問二」 「文学作品判別の選択肢」(5択)。
示されている5つの「文学作品の冒頭部分」から、その「作品名」を答える。
確認したい。
①「親譲りの無鉄砲で……」⇒これはもう、誰もがすぐに「答え」は(エ)の「坊ちゃん」だと分かる。作者は夏目漱石。
②「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る……」⇒馴染みがなくて当然、難問だ。「答え」は(ウ)の「道程」。高村光太郎の「詩」だ。
③「ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池の……」⇒ちょっと分かりづらいが、「消去法」で(イ)の「蜘蛛の糸」だと特定したい。作者は芥川龍之介。
④「行く河の流れは絶えずして……」⇒誰もが覚える「文学史」の定番、「答え」は(ア)の「方丈記」。作者は鎌倉時代の鴨長明。
⑤「春はあけぼの。……」⇒ここから始まる冒頭部分を暗唱できる諸君もいるはず、「答え」は(オ)の「枕草子」。作者は平安時代の清少納言。
ちなみに、④⑤と「徒然草」を合わせて日本の「三大随筆」と呼ばれていることも押さえておきたい。
尚、「文学史」については「時代」との結びつきも頻出だ。
<時間配分目安:全問で2分>
「問三」 「漢字を特定した上での熟語記述」。
示されている、2つの「ある漢字」を説明した①と②からそれぞれの「漢字」を特定し、それらの組み合わせでできる「熟語」を答える。
何やら奇妙な問題だが、先ずは、それぞれの説明の「キーワード」を手がかりに「ある漢字」を特定していきたい。
①「形声文字」「部首はこころ」「おもうの意味」⇒「形声文字」は、「意味」の「部首」と「発音(音読み)」の「つくり」で構成されている「漢字」のこと。「部首」が「こころ」で、「つくり」が「音読み」になっていて「意味」は「おもう」⇒「相」=「ソウ(音読み)」+「こころ」⇒「想」と決めたい。
②「形声文字」「部首はにんべん」「人の姿・かたちの意味」⇒「部首」が「にんべん」で、「つくり」が「音読み」になっていて「意味」は「人の姿・かたち」⇒「象」=「ゾウ(音読み)」+「にんべん」⇒「像」と特定できる。
したがって、「答え」は「想像」になる。
「六書」のひとつ「形声」について問われている。「知識」として抜け落ちている可能性が高いもので難問だ。本校では、こうした「深知り知識」も求められると心得よ。
ちなみに、「六書」とは「象形」「指事」「形声」「会意」「転注」「仮借」だ。それぞれの内容に就いて確認しておくこと。
<時間配分目安:1分>
【大問3】「論説文の読解」(「自由記述」あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:22分
鏡をみた時、求愛の時、餌(えさ)を探す時、ニホンザルたちは何を考えているのだろう?それを知るにはどうすればいいのだろう?――気鋭の動物行動学者たちがこのテーマに挑み、みごとな実験と観察によって、サルたちの「心のめばえ」に迫っている。
本文では、「パタスモンキー」と「ニホンザル」の「毛づくろい」の違いについて分析し論じている。専門用語でやや難解な語句があるが、「*注」を活用すれば理解できるはずだ。
本校特有の「紛らわしい選択肢」や「長文の選択肢説明」、昨年度に引き続いての新機軸の「自由記述」の出題がある。いくつかの「設問」を検討しよう。
[問一] 「語句の空所補充選択肢」(全3問/5択)。
本文中の空所 A ~ C に「あてはまる言葉」を答える。
各選択肢は「接続詞」と「副詞」。本校に限らず、「接続詞」や「副詞」などの「空所補充問題」は定番だ。特に、「接続詞」では「逆接」以外に十分に注意すること。しっかりと確認しないと、どれもがあてはまってしまう可能性があるので、慎重さが求められるのだ。
それぞれの「答え」をチェックしていく。
A には「逆接」の「接続詞」である(イ)「しかし」、
B には「換言」の「接続詞」の(オ)「つまり」、
C には「添加」の「接続詞」である(ア)「そして」がそれぞれあてはまる。
尚、こうした「空所補充問題」では「候補」がひとつとは限らないので、必ず全ての「候補」を「代入確認」すること。
<時間配分目安:1分強>
[問三] 「内容説明選択肢」(複数解答/5択)。
傍線部(2)「このような種で予想されること」について、「予想されることとして適切なもの」を「二つ」答える。
何はさておき、最優先は「指示語」だ(「指示語」が出たら即開くこと)。段落冒頭の「指示語」なので、前段落全ての内容を指し示している。よって、「このような種」=「パタスモンキーの種」ということだと分かる。
さて、「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。だが、ここは傍線部の「内容」を問われているので、さすがに無理だ。そこで、「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で「文脈」を確認する。
直後に「(このような種で予想されること)は、」とある。なんと、わざわざ「格助詞」の「は」だけ隠されていたではないか。ということは、「直後」からが問われている「内容」だ。
確認する。「血縁個体と非血縁個体との差が小さく、ニホンザルのような明確な違いがみられないのではないか、ということ」とある。ここから2つの「内容」は、「血縁個体と非血縁個体との差が小さい」こと、「ニホンザルのような明確な違いがみられない」ことだと分かる。
各選択肢をチェックすると、(キ)が「血縁のサルと非血縁のサルの行動に差があまりないこと」となっているので、「答え」のひとつだと断定できる。
しかし、他の選択肢のどれも「ニホンザル」に言及していないので2つ目の判別は不可能。
次に、「同一意味段落」に「手がかり」を求めたい(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。次段落冒頭が「もう一つの興味深い予想は」となっている。つまり、同段落で「もう一つ」の「内容」が説明されているわけだ。
そこには、「新生児の出現によって毛づくろいのルールは大きく変化するだろう」と記されている。したがって、「毛づくろいのルールが赤ん坊の出現によって変わること」となっている(オ)がもうひとつの「答え」になる。
本問では「段階的消去」となったが、時間短縮のためにも、先ずは「原意消去」を試みることが肝要だ。
<時間配分目安:2分半>
[問五] 「理由説明の条件付き抜き出し」(「40字以内」の「最初と最後の5字」指定)。
傍線部(4)「母親に対する毛づくろいの催促はほとんど見られなくなった。逆に赤ん坊持ちのメスは、相手から毛づくろいされたあとに、自分から積極的にやりとりを続けようとしなくなった」について、「その理由を説明している部分」を「四十字以内」で探し、「最初と最後の五字」を答える。「条件」は「『~から。』に続くようにする」こと。
「抜き出し」では、「抜き出し内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞り込んでいく。
先ずは「内容」を捉えたい。「傍線部(空所部)一文一部の法則」で「文脈」を確認すると、直前に「赤ん坊を持っているメスに対してはほかのサルからの一方的な毛づくりが見られ」とある。
つまり、「赤ん坊を持っている母親への一方的な毛づくりが見られるが、母親に対しての毛づくろいの催促は見られなくなった」ことの「理由」が「抜き出し内容」になる。そして、「抜き出し範囲」は無論、「同一意味段落」だ。
確認していくと、前段落から「毛づくろい」には「互恵性」(=「互いに都合のいい利益を与えたり、受けたりすること」と「*注」にある)という観点があることが分かる。それが、「赤ん坊を持っている母親」へは「一方的」になるのはなぜか? 「毛づくろい」以外に「利益」があるということに違いない。
そうした視点で探していくと、傍線部の段落の後半に「毛づくろいのやりとりのなかで、赤ん坊への接触や子守行動という毛づくろい以外のものが、利益として交換の対象となる」という部分がある。まさに、これが「理由」になる。
したがって、「指定字数」に応じて「赤ん坊への~対象となる(から)」が「答え」となる。
尚、「抜き出し」では「候補」はひとつとは限らないので、必ず「抜き出し範囲」の全てを確認すること。
<時間配分目安:2分>
[問七] 「理由説明記述」(「10~20字以内」指定)。
傍線部(5)「相手がやりとりの少ない個体の場合、毛づくろいをした側だけでなく、毛づくろいを受けた側も積極的にお返しをしようとする」について、「その理由」を「十字以上二十字以内」で答える。
「傍線部(空所部)一文一部の法則」で確認すると、傍線部は「パタスモンキー」のことだと分かる。
「理由」を「同一意味段落」で確認していくと、次段落が「では、なぜこのような『受け手による互恵性』のきざしがパタスモンキーで見られるのだろうか」と始まっている。といことは、同段落に「理由」が説明されているはずだ。
4行目に「理由」として「群れのなかでは、非血縁個体同士の結びつきが日常生活のなかで大きな位置を占めていることがあげられる」と述べられている。したがって、この部分を「指定字数」に合わせてまとめていけばいい。
たとえば、「非血縁同士の強い結びつきが必要だから。」(19字)といった「答え」になる。
尚、「説明記述」では「最重要要素」(「理由説明」では「直接的理由」)を必ず「文末」にすることが肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問九] 「体験談および感想の自由記述」(全2問、ともに「字数指定」なし、各「60字ほど」の解答欄)。
「これまでの生活であなたが経験した利他的行動」と「その感想」を記述する。
昨年度に続いての、本校としては新機軸の「自由記述」だ。
一瞬戸惑うかも知れないが、「問題文」に即して考えていけばいい。
本文の「*注」で、「利他」=「自分を犠牲にして他人に利益を与えること」と説明されている。
また、本文全体で、「利他的行動」としての「毛づくろい」の「互恵的なやりとり」がさまざまな具体例とともに紹介されている([問五][問七]も参照のこと)。
そうした内容も参考にしながら、自らの「体験談」と「感想」を述べていけばいい。
尚、来年度以降も、こうした新傾向の出題が予想される。本校対策の新たな課題として意識し、練習しておくことが不可欠だ。
<時間配分目安:全問で5分>
【大問4】「小説の読解」(「自由説明記述」あり)
- 難度:標準
- 時間配分:22分
- ★必答問題
新たな才能の発掘の場として注目を集める「芳ヶ江国際ピアノコンクール」。そこでの優勝を目指す、自宅にピアノを持たない「風間塵(15歳)」、かつての天才少女「栄伝亜夜(20歳)」、楽器店勤務のサラリーマン「高島明石(28歳)」、優勝候補と目されている「アナトール(19歳)」。彼らを含め数多(あまた)の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い――音楽の神様に愛されているのは誰か? 人間の才能と運命、そして、音楽を描き切った青春群像小説。
本文では、コンクールでの「高島明石」の様子が中心にに描かれている。内容自体は分かりやすいが、微妙な「心情の機微」を読み取るのに苦心するかも知れない。判別の悩ましい「選択肢設問」だけを検証したい。
[問一] 「心情説明選択肢」(5択)。
傍線部(1)「自分だけが最年長ではないと知ってホッとしているのが我ながら滑稽だった」について、「この時の明石の心情」を答える。
なんとこの小問、各選択肢の説明が「110字以上」もある。「5択」なので「600字ほど」もの「文」を読み、照合していくことになるが、そんなことをしていては混乱するばかりだ。そもそも時間がない。では、どうするか?
無論、最優先は「原意消去」だ。ここは「心情説明」なので、「我ながら滑稽だった」の「原意」と、各選択肢説明の「文末」の「心情」とが結びつかないものを「消去」していくことになる(選択肢説明の「最重要要素」は「文末」に記されている)。
だが、全ての選択肢の「文末」が「自分をおかしく思う」となっているので「消去」は無理だ。
そこで、「どのような自分」を「おかしく思う」のかで「消去」する。それぞれ確認していく。
(ア)「緊張している自分」、
(イ)「逃げようとした自分」、
(ウ)「忘れていた自分」、
(エ)「余裕がある自分」、
(オ)「矛盾を覚えた自分」。
「おかしく思う」のだから当然、(オ)以外は「消去」できるはずだ。
そして、(オ)の「他人の年齢を気にしていることに気づき」という説明は、傍線部の「自分だけが最年長ではないと知って」という部分とも合致している。さらに、他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は(オ)だ。
結果として「一発消去」だ。本校らしい「長文の選択肢説明」など、紛らわしい「選択肢設問」では「原意消去」が必須だと心得よ。
<時間配分目安:1分>
[問二] 「理由説明選択肢」(5択)。
傍線部(2)「明石は混乱した」について、「それはなぜか」を答える。
当然「原意消去」からだが、ここは「理由説明」なので、各選択肢の「文末」を「直接的理由」として、「混乱した」に結びつくかどうかで「消去」する。確認する。
(ア)「突然できなくなってしまったから」⇒「混乱した」、
(イ)「曲も忘れてしまったから」⇒「混乱した」、
(ウ)「縁起の悪いことだから」⇒「混乱した」、
(エ)「自覚したから」⇒「混乱した」、
(オ)「想像できなかったから」⇒「混乱した」。
さあ、どうだけろうか?
「混乱した理由」だ。普通に考えれば、(ア)(イ)以外は「消去」できるはずだ。
次に、何に「混乱した」のか、その「きっかけ」を「同一場面」から読み解いていく(「小説」では「同一場面の直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。
直前に「(ほどけかけているスニーカーの靴ひもを)結び直そうとしたが、結べない。えっ?」とある。このことが「きっかけ」で「混乱した」のだ。さらに、直後は「いつも普通にやっているはずの……」と続いている。したがって、(イ)ではなくて、「普段できていることが」説明されている(ア)が「答え」だと判別できる。
尚、「小説」では、「動作」や「心情」などの「きっかけ」が特に重要だと心得よ。
<時間配分目安:1分以内>
攻略のポイント
●本校の特徴のひとつである「紛らわしい選択肢設問」をどう攻略するか? 残念ながら「裏ワザ」はない。「設問内容」に対応した「解法」を的確に用いて、段階を踏んで「消去」する他ない。従って、基本的「解法」を完全に習得して適切に応用できるようにしておくことが重要だ。特に、「原意消去」は完璧にマスターすること。それによって「得点力」も安定する。
合格ラインは60%半ば(過去5年間の「受験者平均得点率」は57.6%。本年度は昨年度よりさらに上がって61.8%)。「得点力の安定」は、近年難化が著しい「合格」への近道となる。
●「総合的知識問題」にはどう対処するか? 特に「落とし穴」となりそうなのが必出の「文法問題」だ。全分野から、細部にわたって出題される。
塾での学習だけでは全く不十分なので、独自に完全習得し定着させること。本年度は「文学史」なども出題されたので、無論、「文法」以外も抜かりなく。
●「説明記述対策」も肝要。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要な要素」を積み上げていく手法をマスターすること。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。
本校では「指定字数」の幅が狭いので、細かな「字数調整」ができるようにもしておく必要がある。
●昨年度に引き続き本年度も、新傾向の「自由記述」の出題があった。
「思考力・判断力・表現力」が徹底して重視されるようになる2020年度からの新たな大学入試制度を意識していることは間違いない。当然、来年度以降もこうした出題が予想されるので、入念な準備が求められる。
●試験時間は50分。問題文のボリュームは全体で7000~8000字程度(ここ数年は増加傾向で、本年度は約9600字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。
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