｢ＳＤＧｓについて、日本ができること｣をテーマとし、調査した(Ａ)～(Ｅ)の｢発表文｣からの出題｡｢地理｣単元の大問だが、｢時事｣２問と｢考察問題｣１問が混在している。｢統計資料読み取り｣がほとんどで(｢地図｣｢地形図｣などからの出題なし)、中には厄介なものもある。また、｢考察問題｣はあまり類例のない出題内容となっている。いくつかの｢設問｣を確認してみる。

※尚、｢ＳＤＧｓ｣は近年のとても重要な｢時事問題｣のひとつだ。2015年に開催された国連の｢持続可能な開発サミット｣において、2030年までに達成すべき｢17の目標と169のターゲット｣からなる｢持続可能な開発目標｣(ＳＤＧｓ)が採択され、2016年に発効している。こうした内容を確実に理解しておくこと｡

 

[問１(１)]　｢下線部についての空所補充の都市名記述設問｣(全２問。ともに｢漢字指定｣)｡｢地理｣単元。発表文(Ａ)の下線部①｢(『ＳＤＧｓ未来都市』に)2019年度は31都市が選ばれた｣について、示されている｢５つの選定都市と提案タイトルの表｣の中の空所( あ )･( い )に｢あてはまる都市名｣を、【ヒント】を参考にして｢漢字｣でそれぞれ答える。

 

( あ )は｢表｣に｢福井県｣とあり、【ヒント】は｢日本のめがね枠(わく)の約９割を生産｣となっている。これはもう｢さばえ市｣だと即答できるはず。ただし、｢漢字｣はどうか？ ｢鯖江(市)｣だ。ちなみに、｢鯖｣の｢つくり｣は｢青｣ではなく｢靑｣なので注意すること。

 

( い )は｢愛知県｣で【ヒント】に｢東海道新幹線が通り三河湾に面していて、隣接市には浜松市など｣とある。意外と抜け落ちている｢都市｣ではないか。なかなかの曲者だ。｢答え｣は｢豊橋(市)｣。

 

本校の｢地理｣単元では、｢大都市｣だけではなくこうした｢中小都市｣も押さえておく必要があるということだ。むろん、｢漢字｣での定着が求められる。

＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問３]　｢下線部についての選択肢設問｣(４択)｡｢時事｣単元。発表文(Ｂ)の下線部③｢バーチャルウォーター｣について、｢ふさわしい説明｣を答える。

｢バーチャルウォーター｣とは｢輸入食料を自国で生産した場合、どの程度の水が必要なのかを推定したもの｣と問題文に記されている。それを｢手がかり｣として、それぞれの｢説明｣の｢キーワード｣で正誤判別する。

 

(ア)｢(日本は)食料自給率が高い国と比べてバーチャルウォーターは少ない｣

⇒消費する食料の６割以上を輸入しているのだから当然、食料自給率が高い国と比べたら多くの水を間接的に輸入していることになる＝不適切。

 

(イ)｢肉類よりも農作物を輸入する場合の方が、バーチャルウォーターが多くなる｣

⇒肉牛などには大量の飼料が必要であり、飼料作物の生産に多くの水が使われる＝不適切。

 

(ウ)｢遠い地域から食料を輸入するほど、バーチャルウォーターは多くなる｣

⇒むろん、｢位置｣は無関係＝不適切。

 

(エ)｢バーチャルウォーターを減らす取り組みとして、地産地消などが考えられる｣

⇒地元で生産された食料を地元で消費することになるので、食料輸入は減る＝適切。

 

よって、｢答え｣は(エ)だ。尚、｢バーチャルウォーター｣は典型的な｢時事問題｣なので、説明がなくても答えられなくてはいけない。

＜時間配分目安：30秒強＞

 

[問７(２)]　｢下線部についての条件付き理由説明記述設問｣(｢字数指定｣なし、｢60字ほど｣の解答欄)｡｢地理｣単元。発表文(Ｅ)の下線部⑦｢世界の飢餓(きが)｣について、示されている｢表｣(世界の栄養不足人口および栄養不足蔓延(まんえん)率を表したもの)をみると、｢世界全体の栄養不足人口が1990～1992年では10億人以上だったのに対し、2014～2016年では約８億人に減少している｣が、｢その理由として考えられる要因｣を説明する。｢条件｣は｢表から考えて説明する｣こと。

｢表｣を確認すると、人口の多い｢アジア｣で特に減少していることが分かるはずだ(｢栄養不足蔓延率｣が｢23.6%｣→｢12.1%｣とほぼ半減している)。ここ20年強に｢アジア｣で何が起きたのか？ ｢栄養不足｣が減少したということは、｢経済｣が成長し豊かになったと考えられるはずだ。であれば、｢中国｣や｢インド｣など｢アジア｣の｢新興国｣の存在と結びつかなければいけない。あとは、｢過不足なく｣まとめていきたい。

たとえば、｢世界の中でも特に人口の多いアジア地域で、中国やインドをはじめとする新興国の経済が発展し、栄養状況が改善されたという要因｡｣(60字)といった｢答え｣だ。

本問は結局、｢統計資料読み取り｣がカギだったが、その際には特徴的な｢項目｣に着目して｢自らの知識｣とつなげていくことが肝要だと心得よ。

＜時間配分目安：３分＞

 

[問８]　｢下線部についての図表読み取り選択肢設問｣(４択)｡｢考察問題｣。発表文(Ｅ)の下線部⑧｢食品ロス問題をどのように改善していくべきか｣について、示されている｢図｣(｢日本の食品ロスの内訳｣を図示したもの)から｢栄太君｣と｢花子さん｣が考えた｢取り組み｣が、｢図を正しく読み取れているかどうかを判断した文章｣として、｢ふさわしいもの｣を答える。

まずもって、問題文自体がややこしい。それを読み解いたとしても、二重、三重の｢考察｣が必要となる難問だ。｢図の正確な読み取り｣→｢栄太君｣と｢花子さん｣が考えた｢取り組みについての文章｣の正しい読解→｢それらの正しさを判断した文章｣の正誤判別が必要となる。それらを全てクリアできるかどうか？

結論としては、｢図の読み取り｣段階で｢栄太君｣と｢花子さん｣ともに誤りがあるので、｢栄太君の考え、花子さんの考えどちらも根拠が図から正しく読み取れていない｣と説明している選択肢(エ)が｢答え｣となる。

とにもかくにも、複雑怪奇な問題だった。時間ばかりがかかって、｢配点｣は他と変わらない。戦術的には｢捨て問｣にすべきだ。いずれにしても、本校ではこうした設問があるということだけは心得ておきたい。

＜時間配分目安：１分弱＞

 

示されている｢５世紀頃～1973年までの年表(14事項)｣からの出題。｢歴史｣のさまざまな分野からの小問が並んでいる。｢不適切選択肢設問｣､｢年代整序｣、｢事項記述｣､｢説明記述｣……､本校特有の目まぐるい変化が連続する。よほど注意しないと混乱してしまう。全体的には｢基本的知識｣を問うものが多いので、本校志望者であれば、一気呵成に得点をゲットしていきたい大問だ。以下、いくつか検討してみよう。

 

[問２]　｢年表についての不適切選択肢設問｣(４択)。年表中の(Ｂ)｢[710年]都が平城京に移される｣について、｢奈良時代の説明｣として｢あやまりをふくむもの｣を答える。

各選択肢の｢キーワード｣で正誤判別する。

 

(ア)｢寺院の勢力が強くなり、律令政治が乱れていった｣

⇒このことが結果的に、平安京遷都(せんと)にもつながった＝適切｡

 

(イ)｢三世一身の法･墾田永年私財法を定めた｣

⇒無論、適切｡

 

(ウ)｢遣唐使の航路は北路だったが、高麗との関係が悪化して南路に変わった｣

⇒｢北路→南路｣、ＯＫだ＝適切。

 

(エ)｢風土記｣｢日本書紀｣

⇒当然、｢奈良時代｣＝適切。……、あれっ、｢答え｣がない？ ちょっと待ってほしい。

 

(ウ)に｢高麗｣とあるではないか。｢10世紀以降｣に朝鮮半島を支配した国だ。｢奈良時代｣であれば｢新羅｣が正しい。

 

したがって、｢答え｣は(ウ)になる｡細部を見逃すと迷走することになるので、要注意だ。

＜時間配分目安：30秒強＞

 

[問５]　｢年表についての時期判別不適切選択肢設問｣(５択)。年表中の(Ｅ)｢『[1274年]文永の役』⇔『[1404年]日明貿易が始まる』｣について、｢この期間におこったできごとの説明｣として｢あてはまらないもの｣を答える。

｢鎌倉時代後半｣～｢室町時代前半｣の｢期間｣だとすぐに特定できるはず。そのことを念頭に、各選択肢の｢キーワード｣で時期を判別する。

 

(ア)｢南朝と北朝が一つにまとめられ｣

⇒｢南北朝合一｣、室町幕府第３代将軍｢足利義満｣と結びつく＝適切｡

 

(イ)｢建武の新政｣

⇒｢鎌倉幕府滅亡｣の直後だと知っているはず＝適切｡

 

(ウ)｢永仁の徳政令｣

⇒｢蒙古襲来(元寇)＝文永の役･弘安の役｣の後＝適切。

 

(エ)｢正長の土一揆｣

⇒室町幕府の力が衰え始めていたと考えられるはず⇒｢1428年｣だ＝不適切。

 

(オ)｢室町に花の御所｣

⇒足利将軍家の邸宅であり、｢足利義満｣が造営したことは誰もが知っている＝適切｡

 

よって、｢答え｣は(エ)だ｡｢時期判別｣では、｢背景｣や｢前後の流れ｣で結びつけていくことが肝要。

＜時間配分目安：30秒強＞

 

[問８]　｢年表についての年代整序選択肢設問｣(全２問/５択/複数完全解答)。年表中の(Ｈ)｢『[1603年]徳川家康が江戸幕府を開く』⇔『[1787年]松平定信が老中となる』｣の期間におこった｢できごと｣として示されている(ア)～(オ)を｢年代の古い順｣に並べかえ､｢２番目｣と｢４番目｣を答える。

｢年代整序｣では、覚えているであろう｢年代｣で無理やり｢整序｣しようとすると、｢数字｣を取り違えて誤ってしまう可能性があるので、必ず｢できごと｣の｢背景｣や｢人物｣などの｢流れ｣で整理してつないでいくこと。｢流れ｣を確認する。

 

選択肢(エ)｢最初の武家諸法度｣＝｢元和令｣で｢２代将軍秀忠｣

→(イ)｢ポルトガル船来航禁止｣＝｢鎖国の完成｣で｢３代将軍家光｣と結びつく

→幕府の力が安定し｢元禄の世｣に

→(ア)｢生類憐みの令｣＝｢５代将軍綱吉｣

→飢饉(ききん)などにより、幕府の財政が次第に悪化する

→｢８代将軍吉宗｣による｢享保の改革｣で(ウ)｢上米の制｣

→｢田沼意次の政治｣の頃に(オ)｢天明の大ききん｣という｢流れ｣だ。

 

したがって、｢答え｣は｢２番目｣＝(イ)、｢４番目｣＝(ウ)となる。

本問では主に｢人物｣で｢流れ｣をつないでいった。

＜時間配分目安：１分＞

 

[問14]　｢下線部についての条件付き原因説明記述設問｣(全２問。ともに｢字数指定｣なし、各｢50字ほど｣の解答欄)。年表中の下線部(Ｘ)の｢米騒動｣は｢米の価格が上昇したことが原因｣だが、｢米の価格が上昇した原因｣を説明する。｢条件｣は｢①当時の世界との関わりとその影響と、②大戦景気による国内産業の変化とその影響に分けて、それぞれ説明する｣こと。

｢原因｣自体はすぐに思い浮かぶだろうが、｢条件｣があるのでなかなか厄介だ。｢知識｣を整理して考えたい。｢世界との関わり｣については、すぐに｢シベリア出兵｣と｢買い占め｣と結びつくはずだ。｢大戦景気による国内産業の変化｣はどうか？ そうした視点では理解していないかも知れないが、考えていきたい。

｢第一次世界大戦｣で日本が好景気になったのは、戦場となったヨーロッパに代わって｢工業製品｣の輸出が大きく伸びたからということは知っているはず。工業生産が増加するにともない、その労働力が農村から都市へと移ってくるわけだ。すると当然、米の生産量の減少を招く。供給量が減るのだから、価格は上昇することになる。こうした内容を｢過不足なく｣まとめていく。

たとえば、①｢ロシア革命の拡大を防ぐ日本のシベリア出兵にあたり、値上がりを見越した米の買い占めが起きたという原因｡｣(50字)/②｢工業製品の輸出増加により、工場労働者として多くの農民が都市に移った結果、米の生産量が減ったという原因｡｣(51字)といった｢答え｣だ｡

｢歴史的事項｣に関して多角的に理解していないと解けない問題もあるということだ。やはり、本校は一筋縄ではいかない。

＜時間配分目安：４分＞

 

｢日本国憲法に定められている国と地方の政治と、グローバル化する現代社会｣に関する｢リード文｣からの出題。｢公民｣のさまざまな分野の｢基本的事項｣についての小問が並ぶ(１問のみ｢時事｣あり)。平易な大問なので、手際よく解き進めたい。以下、少しだけ検証する。

 

[問２]　｢下線部についての正誤判別組み合わせ選択肢設問｣(４択)。｢時事｣単元。｢リード文｣中の下線部②｢選挙｣について、｢2019年９月現在の衆議院と参議院の選挙制度｣の説明として示されている(Ａ)と(Ｂ)について､｢正しければ『○』｣､｢あやまっていれば『×』｣とした場合の｢組み合わせ｣として､｢正しいもの｣を答える。

それぞれの説明の｢正誤判別｣をする。

 

(Ａ)｢衆議院の選挙区選挙は小選挙区制であり、参議院の選挙区選挙は都道府県を１つの単位として47の選挙区に分けられ、選挙区の有権者数に応じて小選挙区と大選挙区に分けられる｣

⇒まるで｢テキスト｣の文章そのもののようだ。確かに、５年程前であれば……。しかし、｢社会の知識｣は常に｢最新版｣にバージョンアップしておかなければならない。参議院では、2016年から｢鳥取県と島根県｣、｢徳島県と高知県｣がそれぞれ合区され、選挙区は45になっている＝不適切｡

 

(Ｂ)｢衆議院の比例代表選挙は全国を11区、参議院の比例代表選挙は全国を１区とする｣

⇒これは難なく判別できるはず＝適切｡

 

よって、(Ａ)(が｢☓｣で、(Ｂ)が｢○｣となっている(ウ)が｢答え｣だ。

尚、｢選挙制度｣に関してはしきりに改革されているので、｢時事問題｣として必ず押さえておくことが肝要。

＜時間配分目安：30秒強＞

 

[問７]　｢下線部に関する不適切選択肢設問｣(４択)。｢公民｣単元。｢リード文｣中の下線部⑦｢貿易｣に関して、｢貿易の際にはアメリカのドルが多く使用されている｣が、｢円高･円安の説明｣として、｢あやまっているもの｣を答える。

各説明の｢キーワード｣で正誤判別していきたい。

 

(ア)｢昨年度よりも円高｣｢今年度の方が同じ金額の円でより多くのドルに両替｣

⇒｢円高｣＝｢円の価値｣が高まったのだから当然だ＝適切。

 

(イ)｢円高で日本企業がアメリカに工場を建設しやすくなる｣｢産業の空洞化｣

⇒｢現地生産｣が進めば、国内での生産が減るのは必然＝適切｡

 

(ウ)｢円安になると日本製品のドルでの価格が下がる｣｢日本からの輸出が有利になる

⇒｢円安は日本の輸出企業に有利｣はもはや常識のはず＝適切。

 

(エ)｢円安になると日本は輸入しやすくなる｣

⇒｢円安｣＝｢円の価値｣が下がるのだから、輸入価格は上昇する＝不適切｡

 

したがって、｢答え｣は(エ)。尚、｢円高･円安｣は｢金額の高低｣で考えてはいけない。｢１ドル＝100円｣→｢１ドル＝110円｣は｢円高｣ではなく｢円安｣だ。注意すること。

＜時間配分目安：１分弱＞

 

[問８]　｢下線部に関する事項記述設問｣(｢アルファベット３字｣指定)。｢公民｣単元。｢リード文｣中の下線部⑧｢国際協調｣に関して、｢労働者の移動や経済制度など、幅広い分野での連携｣で｢日本においても、シンガポールをはじめとして、インドやＥＵと協定を締結している｣が、｢このような協定を何というか｣、｢アルファベット３字｣で答える。

｢経済での連携｣ということで｢経済連携協定｣と結びつかなくてはいけない。その｢アルファベット略称｣の問題だ。果たして正確に定着しているかどうか？　｢答え｣は｢ＥＰＡ｣だ｡

尚、頻出の｢国連機関｣や｢国際機関｣の｢アルファベット略称｣は、｢日本語正式名称｣とセットで定着させておくことが肝要。ちなみに、｢Ｉ～｣＝｢国際～｣､｢Ｗ～｣＝｢世界～｣､｢ＵＮ～｣＝｢国連～｣と覚えておくと便利だ。

＜時間配分目安：30秒＞