サレジオ学院中学校 入試対策
2022年度「サレジオ学院中学校の理科」
攻略のための学習方法
[出題分析]
男子校らしい質の高い問題が並ぶ中に、意表を突いたような設問がある。それがサレジオ学院の理科に対するイメージである。
ここ5年間の問題(A試験)を例にとるならば、
2017年度は頻出分野からの出題が多く、どの大問にも計算問題が含まれていてかなりやりがいのある内容となっており、2018年度は【大問1】【大問4】にかなりマイナーな分野を取り上げて受験生たちの肝を冷やし、【大問2】【大問3】は頻出分野でありながらあまり解いたことのない設問が並んだ。また、2019年度【大問1】はほぼ算数のような大問であり、【大問2】ではなかなか難しい記述の設問が2問出された。2020年度は取り立ててユニークなものが見当たらなかったものの、2021年度【大問3】・2022年度【大問3】はあつかいにくかった…。
どちらの形式をとっていても全体的に難易度は高く、受験生は心してその準備に取りかからなければならないだろう。
[初見の問題に出会ったら]
サレジオ学院の理科を解いていると、たとえば2017年度の【大問3】「血液の流れ」に関する問題、2018年度の【大問2】「塩」に関する問題など、日ごろの受験勉強や模試などでお目にかかったことのない問題に遭遇することがあるだろう。
この二つの大問はそれぞれ良問だと思われるが、その理由は、今までに習ってきた理科の勉強における知識・解法などを総動員すればある程度正解が得られるからだ。ただマイナーな知識を問うとか複雑な計算をさせるという見た目の難しさではなく、問題文や実験結果を読み考察し、その上で答えを出させるという「応用力」を問うているところが理科の力を見るというテスト本来の目的を果たしている。
このような問題に対応するためには、理科の基本的知識・解法を頭に入れた上で多くの問題演習をじっくりと行っていきたい。典型的な問題ばかり並べたまとめ的な問題集よりは、最新の入試問題を集めたものの方が良いかもしれない。サレジオ学院でなくても、入試問題にはいろいろなタイプがあることを知ることができ、その経験が初見の問題に相対したときに力強い味方となって正解を出すアシストをしてくれるはずだ。
[計算問題に強くなろう]
こちらも上記の勉強法と重なるところはあるが、ひとえに問題演習をこなしより多くの問題パターンに触れておきたい。2017年度のように典型的な計算問題に終始する場合もあるかもしれないが、2018年度のように「圧力」や「塩」の計算にはなかなかあたる機会がない。1つでも多くの設問を解けることがサレジオ合格につながる。それには「これだけたくさんの問題を解いてきた」という自信が何よりのパワーだ。ひと味違う計算の醍醐味を堪能しよう。
[問題文を読むということ]
さらに課題として残るのは、サレジオ学院の理科における問題文の分量の多さとその新しい内容だ。2017年度【大問3】の血液の流れを取り上げた問題ではその傾向が顕著である。1つ1つの設問に対する問題文が長い上に、(2)の「血液の流れる時間」、(3)の「胎児の血液の流れ」、(4)の「ヘモグロビンの計算」などはそれぞれの内容がはじめて解法するものであり、しっかりと問題文を読めないと正解を出すことが困難になっている。ありきたりな問題を解くだけではなく、サレジオ学院の過去問を通して、国語の長文読解のような深い気持ちで問題文を読んでもらいたい。
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2022年度「サレジオ学院中学校の理科」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
テスト時間40分に対し本年度は大問4問と例年と変わらないものの計算問題の分量が多かった。また、問題文・設問文自体が長いので時間に余裕はないと考えるべきだろう。
ただし、本年度の大問では【大問2】【大問3】の計算問題が中心ではあるものの、合格点から考えると時間不足に陥ることはなかったと思われる。年度によっては質の高い計算問題が並ぶ場合も多々あるので十分注意が必要だ。
【大問1】物理(電熱線)
- 難度:標準
- 時間配分:10分
- ★必答問題
総じて受験生は「電気」関係の問題は苦手としやすい。中でも電熱線の問題はイヤだな、と思っている生徒も少なくないだろう。しかし【大問1】の電熱線オンリーの問題に関しては、はじめに電熱線についての説明があり、さらに実験1・2の表の数値を通して電熱線とはどういったものか、またその長さや断面積との関係を復習できるようになっている。算数の問題に例えた場合、少なくとも(2)までは「易」レベルの問題になっている。
実験1の結果から、断面積が等しい電熱線においては、長さと電流の関係は「反比例」、実験2の結果から長さが等しい電熱線においては、断面積と電流の関係が「正比例」していることがわかる。正比例、反比例とは何かを忘れてしまっている受験生は論外である。
(1)のア・イは表の空いている箇所を適切な数値で埋めていけば答えは求まる。
(2)の表3のウ~オに関しては、表1・2の結果からその数値を簡単な計算で求めていけば良い。ウは表1の続きである。エは電流が1.5Aのところ(表1)から考える。オはやや難度が上がり断面積・電流ともに適切な箇所はないので、例えば表2のイの結果から答えを求めていけば良い。
(3)それに続く実験4と5では、電熱線の並列つなぎと直列つなぎの理解を求められている。
並列つなぎではそれぞれの電熱線を流れる電流の和を求めれば良い。表4の数値は「和」を求めれば良いことのヒントになっていてあまり難しくない。
最後の直列つなぎは、電熱線3と4の断面積が等しいことによって問題の難度が緩和されている。この場合は電熱線3と4を1本の長い電熱線と考えて数値を求めれば良い。もし電熱線3と4の断面積が異なればもう少し面白い問題になったはずだ。
以上のことから、理科の問題としても、また算数の問題としてもレベルが高いとはいえない【大問1】は全問正解を期したい。
【大問2】化学(温泉卵・ゆで卵)
- 難度:標準
- 時間配分:10分
本年度の問題の中では最もユニークと言えるのがこの【大問2】で、設問も記述があったりと、そこそこの難度を保っている。また、温泉卵・ゆで卵の区別がつかない生徒のためにボスコさんの体験談が語られているので、卵の中身(白身と黄身)さえ分かっていれば手が出せる問題になっている。
(1)はカロリー計算の問題で、算数でいうところの「平均」の解き方を用いればどちらも簡単な計算で求められる。②は平均の面積図を使うことで求めやすくなる。もちろん、反比例の関係を使っても良い。
(2)はゆで卵の内部がまだ温かいことを使えれば良い。
(3)は記述問題なので完答するのは難しいが、黄身がかたまる温度に注目して答えれば良いだろう。
(4)は卵の周りに付着したあわが何の気体かを選ぶ問題。ア~オから得られる気体はそれぞれ、水素・酸素・二酸化炭素・二酸化炭素・アンモニアで、この中から二酸化炭素を選べば良い。
(5)は難度の高い設問になっている。
①表1の結果から、100gのお酢を加えたとき、炭酸カルシウムは3.5g(4.0-0.5)溶けることを使うと、500gのお酢ではその5倍の炭酸カルシウムを溶かすことが出来る。卵1個のカラは8gとあるのであとは割り算をして求める。
②は①の結果から残っているお酢であと何gの炭酸カルシウムを溶かすことが出来るかを求め割合の計算で答えを出す。このあたりは容易ではなくなっているのでがんばりたいところ。
(6)①では、水を加えてもお酢の量に変化はないので「変わらない」、②では、お酢を100gくわえてももう1つの卵を完全に透明にすることは出来ないのでこちらも「変わらない」だ。ちょっと引っかけ問題くさくなっている。
(5)(6)が解けるかどうかがポイントだが、解くのが不可能なほど難しいわけではないのでここでも得点しておきたい。
【大問3】生物(昆虫・植物)
- 難度:標準
- 時間配分:10分
【大問3】は生物分野の総合問題になっていて、はじめに昆虫の問い、そのあとは植物…特に光合成について焦点があてられている。後半は難度が上がっている。動物と植物の割合が昨年度とは反対になっているが、昨年同様【大問3】がもっとも難しいのではないかと思う。
(1)(2)は知識問題ではあるものの、(2)はオニヤンマがトンボであることが分からないと混乱する。ちなみに、オニヤンマにかまれるとかなり痛い。
(3)は完全な正方形の数とハンパになっている部分の数をしっかり数えて計算する。
(4)の①は基礎。②は突然の難問で、イネ科の植物が光合成によって作られた養分をでんぷんではなくて糖で蓄えていることが分からないと難しい。ここの失点はやむを得ない。
(5)(6)は(4)に引き続き難易度が高い。
(5)①では(3)の数値を2で割って使う。8.6mgも2で割ってみると、光合成によって増えた重さを求めることが出来る。
②は昔の実験を考察する問題で、すべて選びなさいなので難しくなっている。エで、弛緩を通るときはすでにでんぷんではない、が選べるかどうか。
(6)①まず10mLを2で割って1時間あたりの酸素の量を求め、あとはその酸素の量と与えられている数値(酸素4.2L、でんぷん5.6g)から比例の関係を使って計算をして求める。
②これはあまり難しくない。密閉されている容器だと、光合成によって使われる二酸化炭素の量が不足してしまうからである。
後半どれだけ正解できたかが大切だが、本年度のテストではここの難度が最も高いので若干の失点はやむを得ないだろう。
【大問4】地学(星座・星座早見)
- 難度:易
- 時間配分:10分
- ★必答問題
地学分野は「天体」の出題が続いているものの、設問の中身が平易なので助かる。ほぼ基礎的な知識を頭から出してくるだけでよいので時間もかからない。星座早見の計算はあるものの難しいものではない。
(1)がむしろ一番難しいか…「月以外」とあるので惑星である木星などを挙げれば良い。いわゆる一等星と呼ばれる恒星も厳密には明るさはほとんど異なる。しかし小学校では一律に1等星と覚えるので恒星からの答えは出しにくいと思われる。
(2)は星座早見を持ったことがあればまず解答できる。この星を中心にして天体はまわっている。
(3)は、星座早見はこの状態では南向きの使用になるので、夏の大三角の向きを知っていれば答えられるだろう。
(4)は星座早見の基本的な使い方。忘れていた生徒はテキストまで戻って復習だ。
(5)も星座早見を使ったことがあればわかるだろう。1日は24時間だから、360を24で割って1時間あたりに移動する角度を調べてから2倍、あとは時計回りか反時計回りかを選ぶ。
(6)は(3)の答えから考えることも出来る。アルタイルとベガの間に横たわっている。
(7)は社会の「東北三大祭り」を知っていれば誰でも答えられる。ただし、8月の七夕である。
(8)はボーナスポイントで全問正解できるだろう。
ここではレベルを「易」としたが、少なくとも知識問題は全問正解したい。
攻略のポイント
テスト時間は40分で75点満点。
受験者平均点が49.2点、合格者平均点が54.7点と昨年度より若干下がった。とはいうものの平均点は40点台半ばの年度が多い。合格を確実にするには50点台前半の得点が必要だったことになる。
本年度は計算問題が中心である【大問1】の設問が分野にかかわらず平易だったが、【大問2】【大問3】には難問も見られた。
サレジオ学院の場合、頻出の内容であってもユニークな出題形式をとることがあるので、基本的な知識を身につけておくのはもちろんのことだが、それを新しい形式の問題においても活用できる「応用力」が必要とされる。
過去問をしっかりと解いて内容を吟味・研究し、多少変わった問題が出されても対応できる柔軟性を取得しておこう。誰でもはじめて見るような問題は苦手なものだ。その条件は同じなのだから、あせることなく問題に立ち向かう努力を続けてもらいたい。
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