｢漢字の書きとり｣(全５問)
示されている①～⑤の文の傍線部の｢カタカナ｣を､それぞれ｢漢字｣に直す。昨年度まで２年連続で難解だったが、本年度はやや易化した。本校志望者であれば｢全問正解｣が必須だ。確認する。
① ｢ケイテキが鳴り響いていた｣＝｢警笛｣⇒これは問題ないはず。
② ｢自分の姿が、シャソウに映っている｣＝｢車窓｣⇒｢中学入試｣での定番だ。
③ ｢海峡のエンガン付近｣＝｢沿岸｣⇒書けて当然。
④ ｢女性はヒツウな表情を浮かべ｣＝｢悲痛｣⇒｢文脈｣を正確に読み取りたい。
⑤ ｢雪が降り積もるゲンカンの大地｣＝｢厳寒｣⇒｢ゴッカン｣とも読むので注意すること。
本年度こそ落ち着いているが、近年、【大問一】の難度がアップしてきている。来年度以降も要警戒だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分＞

｢空所補充のひらがな記述｣(全５問。｢２･３文字｣指定)　｢総合的知識問題｣
｢難解な語句表現｣だ。示されている①～⑤の文中の波線部は｢(　　 )内の意味を表す言葉｣だが、各文の空所 に｢あてはまる言葉｣を指定された文字数の｢ひらがな｣で答える。
近年難易度がますます上がっている本校定番の【大問二】の｢総合的知識問題｣だが､本年度もパワーアップした難解さだ。チェックしたい。
① ｢窮地(きゅうち)に陥(おちい)った彼は、 こ　　　　な手段を用いた｣(一時しのぎの)[二文字]⇒｢答え｣は｢ (こ)そく(な)｣⇒｢姑息(こそく)な手段｣という｢慣用表現｣で覚えておきたい。
② ｢彼は私の き　　　　に触れる演技をした｣(心を打つ)[三文字]⇒｢答え｣は｢ (き)んせん(に触れる)｣⇒｢琴線｣という｢漢字｣も必ず定着させておくこと。
③ ｢文章の一部を か　　　　する｣(やむをえず省略する)[三文字]⇒｢答え｣は｢ (か)つあい(する)｣⇒｢割愛｣は｢漢字の読み･書き｣でもよく出題される。
④ ｢集まった人を見回して、 お　　　　に立ち上がった｣(ゆっくりと)[三文字]⇒｢答え｣は｢ (お)もむろ(に)｣⇒｢不意に｣という意味で間違って使う人がとても多いので注意したい。
⑤ ｢部下が作成した お　　　　な書類の件で注意する｣(その場しのぎのいい加減な)[三文字]⇒｢答え｣は｢ (お)ざなり(な)｣⇒この｢おざなりだ｣と｢なおざりだ｣(｢放置したまま何もしない。本気でないさま｣いう意味)を混同しないこと。
尚、曖昧(あいまい)なものがあった諸君は本校の求める｢高度な語彙力｣に達していないことを痛感して、精進すべし。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で４分＞

すてきな芸術とおいしい料理。それだけあれば、明日も幸せ――イルミネーションに飾られた小さなサーカステントにキッチンカー、そこに期間限定で現れる幻のビストロ｢つくし｣は、猫を思わせるギャルソンとシロクマのようなコックが、抜群においしい料理で迎えてくれる……、そんな物語だ。
本文では、｢織絵(おりえ)さん｣にプロポーズするタイミングをはかっていた｢僕｣(山吹くん)が２人でビストロ｢つくし｣での食事中に、棚の上の絵についての感想を求められてあせる様子が描かれている。分かりづらい語句はあるが、｢*注｣を活用すれば内容は理解できる。｢セリフ｣や｢地の文｣などからの｢状況｣や｢心情｣の読み取りでは、いかにも本校らしい一筋縄ではいかないものがある。以下、いくつかの｢設問｣を確認してみる。

[問一]　｢語句の意味の用法判別選択肢｣(全３問/各５択)　｢総合的知識問題｣
６年連続で｢語句の用法判別｣(もはや定番となった観あり)。
波線部(Ａ)｢取り繕(つくろ)う｣､(Ｂ)｢奇をてらう｣､(Ｃ)｢おずおずと｣について、これらの言葉を｢本文中と同じ意味で使っている文｣を答える。それぞれの｢答え｣を確認していく。
(Ａ)の｢取り繕う｣は｢不都合などを隠そうとしてうわべを飾る｣ことだと知っていて当然、｢答え｣は(ウ)の｢牛乳をこぼしたことを笑顔で取り繕う弟の姿が、かわいくて微笑ましい｣となる。
(Ｂ)｢奇をてらう｣とは｢わざと普通と違っていることをして人の注意を引こうとする｣ことだと誰もが定着しているはず(｢中学入試｣の必須定着語句だ)。したがって､｢答え｣は(オ)｢単に注目を浴びたいという理由で、奇をてらう行動をとる人の気持ちがわからない｣だ。
(Ｃ)｢おずおずと｣は｢相手を恐れて、ためらいながらする様子。おそるおそる｣だということは知っていて当然。よって、｢答え｣は(ウ)｢とっくに締め切りを過ぎた宿題を、先生におずおずと提出した｣になる。
尚、各選択肢の例文には紛らわしいものもある。如何(いか)に正確に｢原意｣を捉えているかが成否を分けるのだ。やはり、本校の｢総合的知識問題｣はなかなか厄介だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問二]　｢心情説明選択肢｣(５択)
傍線部①｢少し迷いながら、小箱を鞄(かばん)の中へ滑らせた｣について、｢このときの『僕』の心情｣を答える。
｢選択肢問題｣は｢消去法｣が大原則｡先ずは、｢原意消去｣を試みたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡本問は｢心情説明｣なので、｢少し迷いながら｣｢(指輪の入った)小箱を鞄の中へ滑らせた｣の｢原意｣と直接結びつかない｢心情説明｣を｢消去｣することになる。各選択肢の｢文末｣と照合する(｢選択肢｣の｢説明｣では｢文末｣が｢最重要要素｣)｡
(ア)｢指輪を渡すことができるかもしれないと思っている｣､(イ)｢(指輪を)中に入れてしまって良いのだろうかと思っている｣､(ウ)｢指輪のことはもう考えたくないと思っている｣､(エ)｢(大切な指輪なので)なくさないように気をつけようと思っている｣､(オ)｢指輪を渡す機会は訪れないだろうと思っている｣｡
さあ、どうか？　｢少し迷いながら｣も｢小箱を鞄の中へ滑らせた｣のだから、｢渡すことができるかもしれない｣以外は｢消去｣できるはずだ。念のために、他の部分の説明を｢同一場面｣で確認したい(｢小説は同一場面の直前直後に根拠あり｣が鉄則)｡特に誤ってはいないと分かる。
したがって、｢答え｣は(ア)になる。見事で華麗なる｢一発消去｣だった。｢原意消去｣を完全にマスターして、大いに活用すべし。
尚、｢小説｣では必ず｢心情｣が問われる。その際、｢セリフ｣⇔｢ト書き｣⇔｢動作｣⇔｢情景｣といった具合に多角的に読み取ることが必須だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分半＞

[問八]　｢条件付き理由説明記述｣(｢60字以内｣指定)
傍線部⑦｢こんなふうになれたらいいな｣について、｢『織絵さん』がこのように思うのはどうしてか｣を｢六十字以内｣で説明する。
｢条件｣は｢『こんなふうに』の内容を明らかにしながら説明する｣こと。｢条件｣でなくとも、｢指示語｣が出たら即開くこと。直前から、｢こんなふう｣＝｢織絵さんがじっと目を凝(こ)らしていた絵に描かれた、赤い背景に佇(たたず)むふたりの女性の姿｣だと読み取れる。
｢ふたり｣とは？ ｢織絵さん｣ともうひとりは？ ｢手がかり｣を｢傍線部一文一部の法則｣で探す(｢傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という読解の基本となる解法)。直前に｢山吹くんと｣とある。では、｢織絵さん｣は｢自分と山吹くん｣と｢ふたりの女性の姿｣とをどのように結びつけているのかを、｢同一場面｣から読み解いていきたい。傍線部の後の｢織絵さん｣のセリフに、｢ふたりの女性が同じ場所にいても、お互いに別な場所を見つめているところが好きで、そういうひととなら、面白い毎日を過ごせそうな気がする｣と語っている。また、別のセリフには｢(ふたりの女性の本当の関係は)ずっとわからないかもしれないからこそ、少しでもわかりたくて、ずっと面白く感じる｣ともある。こうした｢織絵さん｣の思いを、｢山吹くん｣と重ね合わせて｢理由説明｣として｢過不足なく｣まとめていきたい。
たとえば、｢自分とは別の方を見ている山吹くんと一緒なら、わからないことを少しでもわかろうと、面白い毎日を過ごせそうな気がするから｡｣(59字)といった｢答え｣だ。
尚、｢説明記述｣では必ず｢最重要要素｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を｢文末｣にすること。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：３分半＞

[問九]　｢換言説明記述｣(｢30字以内｣指定)
傍線部⑧の｢きっといま、絵画が、生まれる｣とは｢どういうことか｣を｢三十字以内｣で説明する。
｢比喩的表現｣だということはすぐに分かる。どのように｢換言説明｣するか？ ｢状況｣を｢同一場面｣で確認する。
｢織絵さん｣の好意を受け止めた｢僕｣が、プロポーズの指輪の小箱を差し出している｢状況｣であり、その想いは｢画家たちが筆に込めて描きこむ想い｣に重ねられていると判断できる。つまり、｢プロポーズする｣という｢僕の想い｣が｢織絵さん｣に届き、｢いままさに、ふたりの未来が始まる｣ということになる。あとは、内容を整理して｢指定字数｣に合わせて｢簡潔に｣まとめていく。
たとえば、｢『僕』の想いが織絵さんに届きふたりの未来が始まるということ｡｣(30字)といった｢答え｣になる。
尚、｢小説｣では｢同一場面｣から多角的に｢状況｣を読み取ることが肝要だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分半＞

｢友情｣とは、互いが友情を認め合うことで成立する関係だ――したがって、｢友情｣という関係性の多様さを知ることは、人生を豊かにしてくれるはずだと指摘し、哲学者７人の友情観を考察している。
本文では、カントの哲学における｢自由｣･｢欲求｣･｢尊敬｣というキーワードを踏まえ、｢友情｣の成立に必要なものを論じている。｢哲学論｣であり難解な語句もあるが、｢＊注｣を活用して内容を理解したい(ちなみに、昨年度の｢論説文｣も｢哲学論｣だった)。多種多様な小問が並ぶが、全体としては本校の標準レベルの大問。以下、いくつかを考えてみる。

[問一]　｢空所補充の語句選択肢｣(全４問。４択)
本文中の空所　　Ａ　～　Ｄ　に｢あてはまる言葉｣を答える。各選択肢は、｢接続詞｣や｢副詞｣だ。こうした｢空所補充｣は本校に限らず定番の問題。特に｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。順に｢答え｣を確認していきたい。
　Ａ　には｢逆接｣の｢接続詞｣である(イ)｢しかし｣、　Ｂ　には｢転換｣の｢接続詞｣である(エ)｢では｣、　Ｃ　には｢例示｣を表す｢副詞｣である(ウ)｢たとえば｣、　Ｄ　には｢順接｣の｢接続詞｣の(ア)｢したがって｣がそれぞれ入ると分かるはずだ｡
｢接続詞｣の｢逆接｣以外では、いくつかの｢候補｣をしっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分＞

[問二]　｢理由説明選択肢｣(５択)
傍線部①｢欲求が人間を不自由にする｣について、｢それはなぜか｣を答える。
当然、｢原意消去｣から。ここは｢理由説明｣なので、各選択肢の｢文末｣が｢欲求が人間を不自由にする｣ことの｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣していく。照合する。
(ア)｢社会全体が窮屈(きゅうくつ)なものになるから｣､(イ)｢(何を求めるのかは)あらかじめ決められているから｣､(ウ)｢(自分の行為が)自らの行動の可能性を狭(せば)めることになるから｣､(エ)｢欲求を持つこと自体は自分で選択できないから｣､(オ)｢(欲望に対して)常に自省する必要に迫られるから｣｡
｢欲求｣が｢不自由にする｣のだから、｢欲求を持つこと｣は｢自分で選択できない｣以外は全て｢消去｣だと判別できなくてはいけない。そもそも、(エ)以外は｢欲求｣が｢主語｣になっていないのだ。念のために他の部分の説明を｢同一意味段落｣で確認しても特に誤ってはいない(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手かがかり｣がある)。
よって、(エ)が｢答え｣だ。本問も｢原意消去｣による｢一発消去｣で決まった。畏るべし！ ｢原意消去｣だ。
尚、｢理由説明｣では｢直接的理由｣にこだわることが肝要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分強＞

[問三]　｢具体例判別選択肢｣(５択)
傍線部②｢私たちが従うべき義務｣について、｢その具体例｣を答える。
先ずは｢原意消去｣を試みたいが、ここでは｢従うべき義務｣の｢具体例｣なので、それは無理だ。｢義務｣とは｢どのようなものなのか｣を、｢同一意味段落｣で把握する。傍線部の４つ後の形式段落冒頭で｢人間が従うべき義務とは、すべての人々に等しく当てはまる規範｣だと定義されている。｢すべての人々に等しく当てはまる｣という視点で、それぞれの｢具体例｣を判別していく。
(ア)｢会員でなければ入場してはならない｣⇒明らかに｢会員限定｣｡
(イ)｢入院患者は勝手におやつを食べてはならない｣⇒｢入院患者｣だけが従う義務｡
(ウ)｢怖い先生が見ているところでは、礼儀正しくしなければならない｣⇒｢怖い先生｣が見ていなければ義務ではない｡
(エ)｢家族のためだとしても、嘘(うそ)をついてはならない｣⇒無論、｢すべての人々に等しく当てはまる｣｡
(オ)｢生徒は先生用の通用口を使ってはならない｣⇒｢生徒｣だけだ｡
ということは、｢答え｣は(エ)だと判別できる｡
尚、近年｢具体例判別｣が頻出だ。確実に練習しておくこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分半＞

[問六]　｢換言説明記述｣(｢60字以内｣指定)
傍線部⑤の｢二つの人格が相互に等しい愛と尊敬によって統合する｣とは｢どういうことか｣を｢六十字以内｣で説明する。
典型的な｢換言説明｣だ。｢傍線部一文一部の法則｣から、傍線部は｢カントが言う｣ところの｢道徳的友情｣の定義だと分かり、２行前の｢引力としての愛と斥力(せきりょく)としての尊敬が均衡することによって成立する｣の｢換言｣だとも読み取れる。次に、｢引力としての愛｣･｢斥力としての尊敬｣とはそれぞれ何かを｢同一意味段落｣から読み解いていく。
前者については５つ前の形式段落で、｢引力としての愛｣は｢『私』と他者の間にある隔たりを解消しよう、互いに近づこうとすること｣だと説明されている。
また、後者は２つ前の段落から｢斥力としての尊敬｣とは｢他者には『私』が侵すことのできない事由があることを認め、受け入れること｣だと読み解ける。そして、両者が｢均衡することによって道徳的友情は成立する｣わけだ。あとは、｢換言説明｣として｢過不足なく｣まとめていくことになる。
たとえば、｢道徳的友情は、互いに近づこうとする愛と、侵すことのできない相手を認める尊敬とが均衡することによって成立するということ｡｣(59字)といった｢答え｣になる。
｢指定字数｣を考慮して、｢同一意味段落｣から｢説明すべき要素｣を絞り込むことが重要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：３分半＞