本書は、「外国語の学習の基本は母語にあり」と指摘し、「日本語を鍛えることの重要性」を論じている。
本文では、「日本人と欧米人の言語環境」は異なっているので、「外国語でのコミュニケーション」には「対象を分析的に切り取る能力」が必要だと述べている。
洗足らしい多様な問題が並び、中でも「記述問題」の複雑さが際立っている。
洗足では入試結果の「得点率」が発表されているので、低いものについて以下、２問だけ考えてみたい。
なお、「問７」の「漢字の書きとり」は易しいので「全問正解」が必要だ(「得点率」も91.6%)。

[問1]説明記述
傍線部(１)の「あなたは何をしましたか？」について、「この問答」において「先生が期待した」のは「日本人生徒がどのように答えることか」を説明する(40字以内の字数指定)。さて、この問題、一体何を問われているのか？ すぐにはピンとこないに違いない。そう、これぞ「洗足の不可思議記述設問」だ。「設問内容」が複雑怪奇。
先ずは、「段落相互関係」(「論説文」の基本的「解法」のひとつ)から、複雑な「設問」を解きほぐしていく。傍線部(１)の段落から、「この問答」＝「先生」と「日本人」との「問答」だということ、そして、前段落で「先生」は「日本人」に「英語を指導」していると分かる。これで、「設問の意図」は理解できるはずだ。さらに、次の段落には、「問答」について説明がされている。そこには、「先生」が「日本人」に「早く答えて」「具体的に答えなさい」と「注意」を促し、「質問されたことに簡単でいいから答えを返しなさい」と「叱咤」したとある。「注意を促し」「叱咤した」ということは当然、そのことを「期待していた」ということだ。従って、そのことを字数に合わせてまとめればいい。
洗足の「複雑な記述設問」は、「解法」に基づいて先ずは「設問内容」を正しく理解することが重要。難易度：Ｂ(「標準」。以下同じ。「得点率」は63.6%)
＜時間配分目安:3分程度＞

[問5]説明記述
傍線部(５)の「ヨーロッパ人、そしておそらくアメリカ人に対しても、この感覚は通用しません」について、「では、ヨーロッパ人やアメリカ人」との「コミュニケーション」のために「必要なのはどのようことか」を説明する(45字以内の字数指定)。
この「設問内容」自体はさほど複雑ではない。ただ注意すべきは、「では」(「話題転換」の「接続詞」)とあるので、ここで問われているのは傍線部(５)とは直接関係ないということだ。要は、「外国語でのコミュニケーション」に「必要なもの」を説明するということだ。となれば、次段落に説明されている。「対象を分析的に切り取る能力が必要」とある。が、「指定字数」からすると不十分だ(「字数指定」は単なる「条件」ではなく、「それだけ説明する必要がある」という「ヒント」でもある)。次の文に注目する。「つまり」という「換言」の「接続詞」で始まっている。「字数」もちょうどいい。ということは、ここをまとめればいいい。
「接続詞」の重要性を改めて認識しなくてはいけない。難易度：Ｃ(「難解」。以下同じ。「得点率」は62.2%)。
＜時間配分目安:4分程度＞

本作品は、「三本足の犬」である「サンちゃん」と「僕」との交流を描いている。
本文は、「サンちゃん」と名付け、「まゆ毛」を書いて非難された「同じクラスの吉川くん」を「僕」が弁護する場面。この大問でも、洗足らしさが表れている。
ここでも、「得点率」が低いものについて、検証する。
なお、「問六」の「慣用句の意味」(「足」を使った「慣用句」５つ。選択肢)は「漢字」以上に平易。もちろん「全問正解」したい(「得点率」は95.7%)。

[問2]心情説明記述
傍線部(２)の「むずむずしてきた」について、「僕」の「どのような気持ちを表しているか」を説明する(25字以内の字数指定)。
先ずは、「原意」で考える(「原意絶対優位の原則」＝「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。「むずむず」という「オノマトペ(擬態語)」の「原意」と結びつく「心情」は何か？ 「落ち着かない」「いらいらする」といった「心情」だと、すぐに分かるはずだ。この「心情」がここでの「記述」の「最も重要な要素」なので、「文末」として他に「必要な要素」を積み上げていけばいい(「記述」では必ず「最重要な要素」を「文末」とすること。これ、「記述問題」の大原則)。
「必要な要素」は、「落ち着かない」「いらいらする」のは何に対してかということ。「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」(「小説」の「最重要解法」)なので確認すると、直前に「うつむいた吉川くんを見ていたら」、直後に「言いたいことがあるんなら、言っちゃえばいーじゃん」とある。つまり、「言いたいこと」が言えずに「うつむいている吉川くん」に対して、「落ち着かない」「いらいらする」ということだ。あとは、「字数」に合わせて簡潔にまとめればいい。
この問題、洗足にしては「設問内容」が単純なのだが、「得点率」が低い(46.7%)。「基本的解法」に則して「原意」にもこだわることが重要だ。難易度：Ｂ。
＜時間配分目安:3分程度＞

[問7]条件付き理由説明記述
傍線部(７)の「吉川くんはめずらしく声をあげて笑い」について、その「理由」を説明する(50字以内の字数指定)。
「条件」は、「本文全体をふまえること」。最初に、「動作」の「きっかけ」をつかみたい(「小説」では「動作」「セリフ」等の「きっかけ」がとても重要)。
「吉川くん」が「笑うきっかけ」は、直前から、「サンちゃん」が「しっぽはふりふり」で「吉川くん」の「顔をなめはじめた」ことだと分かる。ということは、「サンちゃん」の「うれしそうな様子」を感じて「吉川くん」は「笑った」ということ。要は、これが「理由」だ。
次は、「サンちゃん」はどうして「うれしそうな様子」なのか、だ。ここで、「条件」をしっかりと押さえなくてはいけない。「本文全体をふまえること」。
「本文」は、「サンちゃん」の「名前を変えること」について描かれている。そして、結局、「名前は変えなくてもいい」ということになり、傍線部(７)へとつながっている。つまり、「サンちゃん」の「名前はそのままでいい」ということが、「サンちゃん」の「うれしそうな様子」に結びついていると読み取れるはずだ。これで「条件」を満たすこともできた。あとは、まとめればいいだけ。
洗足にしては「設問内容」は単純にもかかわらず「得点率」が極端に低いのは、「条件」を的確に反映できなかったためだと考えられる。「条件は必ず満たす」、これが「失点」を防ぐ「絶対条件」だ。難易度：Ｃ。(「得点率」は28.1%、全小問中で最も低い)。