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慶應義塾湘南藤沢中等部 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2024年度「慶應義塾湘南藤沢中等部の国語」
攻略のための学習方法

知識

SFCでは、「漢字の書きとり」はもちろん、様々な「総合知識問題」が出題されている。ありとあらゆる「知識」が求められる。

では、どうするか? 当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚えるようにする。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。

また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあいまいなものがあったら、書き出して自分なりの「語彙ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉が蓄積されていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。これらの「語彙」は様々な形式で多数出題されるし、「記述」の際にも重要だ。字数制限の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ(特にSFCの「短い記述」では重要)。最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。

そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。直接出題されるだけではなく、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。

速読

大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。全体で7000字弱~9000字超。解答時間は45分しかない。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の「最初と最後」を中心に読み進める。

「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自分から聞いてみるといった積極性も求められる。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。SFCに限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。

そして、最終的には分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしておきたい。

解法

前述したが、SFCらしい「読解問題」の基本は「解法」の応用。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。

たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして解説を聞いて納得した。以上終了ではダメだ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山だ。「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。

そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておく。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

記述

SFC定番の「長文自由記述問題」の「対策」も、先ずは「文を記す」ことに慣れることから始まる。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。
そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」等、正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことが正確に伝わっているかを確認しなくてはいけない。

では、何を「書く」のか? 読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。100字程度で書いてみる(「長文自由記述問題」の練習になる)。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。

次の段階としては「字数の感覚」を身につけること。書こうとしている内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要になる。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。

「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」や「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要の要素」を文末にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。

意識

いつ何時も、何かを「意識」しながら学習することが大切だ。無意識に机に向っていても無意味だ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが重要。

そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにして学習したい。「設問」を正しく理解しているか? 「細部」を無視していないか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。

45分という時間で解き進めていかなくてはならないSFCでは、ひとつのミスが致命的になる。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2024年度「慶應義塾湘南藤沢中等部の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問 は「総合的知識問題」。小問なし(解答数10)。「多義漢字記述」。2分ほどで丁寧に終えたい。

大問 は「論説文」、出典は松村圭一郎「うしろめたさの人類学」(文字数約2400字)。小問は全7問(解答数17)。「選択肢」(「空所補充」、「組み合わせ」あり)、「抜き出し」(3問)、「漢字の書きとり」(5問)。問題文は3分弱で読み切り、設問を10分弱で解きたい。

大問 は「小説」、出典は森絵都「出会いなおし」所収の「むすびめ」(文字数約7900字)。小問は全10問(解答数13)。「選択肢」(「空所補充」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(3問)、「説明記述」(1問。「字数指定」なし)。問題文は9分ほどで読み切り、設問を12分程度で解きたい。

大問 は「長文考察論述問題」1問。小問なし。「世の中をハッピーにしているもの」についての「理由説明論述」(「150字以内」指定)。10分ほどでまとめたい。

【大問一】「総合的知識問題」(多義漢字記述)

  • 難度:標準
  • 時間配分:2分

「多義漢字の空所補充記述」(全10問)。
示されているの各文中の空所(   )にあてはまる「漢字一字」を答える。
意味・用法がいくつかある「同じ漢字」だ。意表を突く問題で、難易が交錯している。紛らわしいものを確認したい。
「(   )ほどうかがいますので、(   )ろにお並びください」⇒「答え」は「後」⇒「のち(ほど)」と「(うし)ろ」だ。
「(   )い薬を飲むと、むせってしまって(   )しい」⇒「答え」は「苦」⇒「にが(い)」と「(くる)しい」。
「あの男に(   )わるな、だまされるのが(   )の山だぞ」⇒「答え」は「関」⇒「かか(わる)」と「せき(の山)」⇒「関の山」=「一生懸命やってできる可能な限度。精いっぱい」という意味の「慣用句」、知らなかった諸君は覚えておくこと。
「庭に(   )えたキノコを(   )で食べてはいけない」⇒「答え」は「生」⇒「は(えた)」と「なま」。
「雨が(   )ってきたので、校旗を(   )ろしてください」⇒「答え」は「降」⇒「ふ(って)」と「(お)ろして」。
本校の【大問一】は例年、趣向を凝らした「知識問題」となっている。どのような設問内容であっても、即座に対処できるように「語彙」の習得を完璧なものにしておくこと。

                                 <時間配分目安:全問で2分>

 

【大問二】「論説文の読解」(「漢字の書きとり」あり)

  • 難度:
  • 時間配分:12分

市場、国家、社会……断絶した世界が、「つながり」を取り戻す――その可能性を、「構築人類学」という新たな学問手法で追求している。強固な制度のなかにスキマをつくる力は、「うしろめたさ」だと指摘し、「批判」ではなく「再構築」をすることで、新たな時代の可能性が生まれると論じている。
本文では、「バレンタインのチョコレート」を例に、商品交換と贈与の違いを考察している。さほど難解な語句はないので、内容は理解しやすい。「漢字問題」以外は全て「空所補充」という稀有な大問。ただし、難易度は高くない。一気呵成に得点をゲットしていきたい。少しだけ確認してみよう。

[問一] 「漢字の書きとり」(全5問)
本文中の二重傍線部の「カタカナ」を「漢字」に直す。本年度は本校としての標準レベルだ。本校志望者であれば「全問正解」したい。注意すべきものだけ「答え」を確認する。
「ほんの表面的な『印』の違いが、レキゼンとした差異を生む」=「歴然」⇒「まぎれもなくはっきりしているさま」を表す。
「思いや感情をモノのやりとりにフカしたり、除去したりする」=「付加」⇒「文脈」を正確に読み取ること。
キワ立たせる」=「際」⇒「際立つ」=「他のものと区別されてはっきりと目立つ」ということだ。万一曖昧(あいまい)なものがあったなら、徹頭徹尾「漢字練習」を繰り返すことが必要だ。

                                <時間配分目安:全問で1分半>

[問二] 「空所補充の語句選択肢」(全4問/4択)
本文中の空所  A  D  に「入る言葉」を答える。
各選択肢は「接続詞」と「副詞」。本校に限らず、「接続詞」などの「空所補充問題」は定番だ。特に、「接続詞」では「逆接」以外には十分に注意すること。しっかりと確認しないと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。前後の「文脈」をしっかりと確認することが肝要だ。では、「答え」をチェックしていく。
   には「転換」の「接続詞」である(エ)「では」、 B には「添加」の「接続詞」である(ア)「さらに」、  には「例示」の「副詞」である(ウ)「たとえば」、  には「順接」の「接続詞」である(イ)「だから」がそれぞれあてはまると分からなくてはいけない。
尚、こうした「空所補充問題」では「候補」がひとつとは限らないので、必ず全ての「候補」を「代入確認」すること。

                                 <時間配分目安:全問で2分>

[問四] 「空所補充の語句組み合わせ選択肢」(4択)
本文中の空所 5  6 に「入る言葉」の「組み合わせ」を答える。
候補は「商品」か「贈り物」だ。「文脈」を読み取り特定していく。
「『経済化= 5 らしくすること』は、『脱経済化= 6 にすること』との対比のなかで実現する」となっている。「経済化」であれば「商品」、「脱経済化」であれば「贈り物」だと判別できなくてはいけない。
つまり、 5 =「商品」、 6 =「贈り物」だと分かる。よって、その「組み合わせ」になっている選択肢(ウ)が「答え」だ。
本問は選択肢が少なく平易だったが、「組み合わせ選択肢」では、分かりやすい事項で判別し一気に絞り込むことが肝要だ。

                                  <時間配分目安:30秒強>

【大問三】「小説の読解」(「説明記述」1問あり))

  • 難度:標準
  • 時間配分:21分
  • ★必答問題

人の出会いと別れ、人生の大事な瞬間を描きだす――過ぎてゆく時間のなかで、再び「出会いなおし」をしていく人々の6つの物語のひとつ。
30人31脚に出場した子どもたちが、その後の同窓会で、引きずっていた心を昇華(しょうか)させていく。本文では、小学6年生の時の予選で転んでしまった「私」(飯田)が、いつも隣で支えてくれた「奥山くん」に謝りたいと、15年ぶりに初めてクラス会に参加した様子が描かれている。分かりづらい語句があるが、「※注」を使えば内容は理解できるはずだ。ユニークな問題があるが、全体としては標準的な難易度の大問。いくつかの「設問」を検証する。

[問四] 「文脈読み取りの事実判別選択肢」(全4問/各2択)
傍線部(2)(5)は、示されている(ア)(イ)の「説明」のどちらかをそれぞれ答える。
各「説明」には、(ア)「その時に本当に起きていて、かつ、私もそう感じていたこと、またはそう考えていたこと」、(イ)「その時に起きてはいなかったが、私がそう感じていたこと、またはそう考えていたこと」とある。何やら不可思議な内容だが、ここは冷静に読み解いていきたい。
要するに、両者の違いは、(ア)は「その時に起きていたこと」であるが、(イ)は「その時に起きていなかったこと」だ。それぞれの傍線部の「文脈」を読み解いて「正誤判別」し、「答え」を出していく。
傍線部(2)「私がスタンドの一角へもどったときには、なぜだか空気が一変していた。いったいなにが起こったのか?」⇒明らかに「その時に起きていたこと」だと分かる⇒「答え」は(ア)
(3)「私がいないあいだ、きっと彼女がみんなに言いふくめたのだ」⇒「私がいないあいだ」のことであり、「きっと」とあるのだから「推量」だと読める⇒「答え」は(イ)
(4)「(練習中、いつも二人で三脚だった)私が転べば助けてくれた。励ましの言葉をくれた」⇒「練習中」に「助けてくれて」「励ましてくれた」ことは明白だ⇒「答え」は(ア)
(5)「(彼は)私を避けるようになった。目が合えばそらす。私が近づけば背を向ける」⇒「私を避けるようになった彼」が「目をそらして」「背を向けた」のは「事実」だと読み解けるはず⇒「答え」は(ア)
尚、本校では、本問のように不可解でユニークな出題がままある。自分だけではなく誰にとっても未知なのだから、落ち着いて対処することが求められる。

                                <時間配分目安:全問で2分強>

[問六] 「空所補充の語句選択肢」(4択)
本文中の空所  E  に「当てはまる言葉」を答える。「総合的知識問題」。「慣用句」だ。
空所前後は「クラス全員、一気に泣きやんだんだ。ぴたっと、ほんとに、  E  みたいに」。
各選択肢の言葉は、(ア)「泡を食った」・(イ)「せきを切った」・(ウ)「竹を割った」・(エ)「水を打った」。「クラス全員、一気に泣きやんだ」のだから、「一斉に静かになった」ことになる。よって、「その場にいる大勢の人々が静まりかえるさま」を表す「慣用句」である(エ)の「水を打った(よう)」が「答え」だと判別できなくてはいけない。
尚、本校では「慣用句」に限らず、「故事成語」「ことわざ」「四字熟語」等の「知識は完璧にしておくこと。

                                   <時間配分目安:30秒>

[問九] 「内容説明記述」(「字数指定」なし。「90字ほど」の解答欄)
傍線部(6)「ぬめりとした」について、「奥山くんの手が濡れていたのは、この後、何をすることに緊張していたからか」を説明する。
「同一場面」に「手がかり・ヒント」を求めたい(「小説」では「同一場面の直前直後」に「根拠・手がかり」がある)。ここでの「同一場面」は傍線部の前の(中略)から本文最後までだと判断できるが、「この後」のことを問われているので、後の部分から「状況」を読み取っていきたい。「奥山くん」は15年前の予選当日のことを振り返り、「飯田さんが転んだことでパニックにおちいり、汗でびしょびしょになった手が恥ずかしくて差し出せなかったこと」や「飯田さんの顔をまともに見られなくなったこと」を話している。ということは、「自分自身のそうした情ない話をすること」に「緊張していた」から、「手が濡れていた」と考えられるはずだ。あとは、こうした内容を整理して「過不足なく」簡潔にまとめていけばいい。
たとえば、「15年前の予選当日、飯田さんが転んだことでパニックにおちいり、汗でびしょびしょになった手が恥ずかしくて差し出せず、顔もまともに見られなくなったという自分自身の情ない話をすること。」(89字)といった「答え」になる。
「小説」では、「同一場面」から正確に「状況」を読み取ることが肝要だ。

                                   <時間配分目安:3分半>

[問十] 「内容説明の条件付き抜き出し」(「20~25字」指定)
傍線部(7)「私の涙腺(るいせん)がゆるみ」について、「それは奥山くんの言葉から何を知ったからか」が分かる「一節」を「二十字以上二十五字以内」で抜き出して答える。
「条件」は「解答欄に合うように抜き出す」こと。「解答欄」は「~こと。」となっている。「抜き出し」では、「抜き出し内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞り込んで探していくことがポイントだ。
先ずは「内容」の把握。設問を正確に読み取れば、「私の涙腺がゆるんだ理由(=泣いた理由)となった、私が奥山くんの言葉から知ったこと」になる。では、「奥山くんの言葉」とは何か? すぐに、直前の「あれ(15年前)からぼく、飯田さんの顔、とてもじゃないけどまともに見られなくて、謝る勇気もなく卒業しちゃって、それが、なんていうか、ずっとこのへん(=みぞおち)に引っかかってて……」という言葉だと判明する。つまり、「奥山くんが15年前から引っかかっていたこと」を知ったから「私の涙腺がゆるんだ」わけだ。次に「抜き出し範囲」、無論、「同一場面」だ。ここは[問九]と同じだと分かるはず。丁寧に探していくと、7行後に「十五年間、私とおなじ重さを負ってきてくれた元パートナー」という部分がある。まさに、求めている内容だ。「抜き出し範囲」には他に候補はない。
よって、「指定字数」および「条件」を勘案して、「答え」は「十五年間、私とおなじ重さを負ってきてくれた(こと。)」(21字)になる。
尚、「抜き出し」では「候補」はひとつとは限らないので、必ず全ての「範囲」を確認することが肝要だ

                                   <時間配分目安:2分強>

【大問四】「考察論述問題」(理由説明論述)

  • 難度:標準
  • 時間配分:10分

本校で最後に控えているお約束の「考察論述問題」。本年度は「理由論述」だ。

[問] 「条件付き考察理由論述問題」(「150字以内」指定)
示されているの事項のうち、「あなたが『世の中をハッピーにしている』と考えるものを三つ選び」、「その理由」を「一五〇字以内」で論述する。
「条件」は「①から⑮までの語は書かずに、番号で記して論述すること」と、「原稿用紙の使い方に従って書くこと。ただし、一マス目から書き始め、改段落はしないこと」だ。
それぞれの事項は、「独立」・「鉄道」・「リゾートホテル」・「誕生日」・「国家」・「オリンピック」・「スポーツ」・「藤沢」・「プロフェッショナル」・「自動車」・「温泉」・「ファッション」・「学校行事」・「自然」・「オーディション」。
「あなたが考えるもの」なので、何を選んでもよく、自由に論じていけばいい。だが、「自由」「自由」……と言われても何を選び、どう論じればいいのか? 悩んでしまう諸君もいよう。そこで、15の事項の中で何か共通点があるものを選ぶと論じやすいだろう。
たとえば、「リゾートホテル」・「温泉」・「自然」⇒仕事や勉強といったあわただしい日常を離れてのゆっくりとリラックスした空間。
「独立」・「国家」・「オリンピック」⇒独立を果たした国家、平和の祭典としてのオリンピック。
「鉄道」・「プロフェッショナル」・「自動車」⇒プロフェッショナルによる技術革新で移動の自由の達成。
「誕生日」・「オーディション」⇒非日常的な体験による新たな自己実現。……。
こうして選択した事項について「理由」を論じていくわけだが、その際、「世の中をハッピーにする」とはどういうことなのかという「あなたの考え」を明確にすることが肝要だ。本校では定番の「長文考察論述問題」は配点も大きく(本年度は「10点」)、合否を左右すると言っても過言ではない。したがって、多くの過去問をこなして練習しておくことが不可欠だ。
尚、「条件」は「手がかり・ヒント」でもあると心得よ。

                                 <時間配分目安:10分程度>

攻略のポイント

「長文考察論述問題」をいかに攻略するかが最大のポイント。しかし、突飛とまで言えるユニークな「題材」や「設問内容」は毎年変わるのだから(特に5年前は全く新しい傾向の出題だった)、具体的な「対策」は難しい。ただ、着目すべきはこの問題を通して本校が何を問おうとしているのかということだ。簡潔にいえば、柔軟な「発想力」や「着想力」と、「思考力」「構成力」「表現力」だ。したがって、こうした「力」を磨く訓練をすることが攻略への道となる。「発想力」や「着想力」については、たとえぱ、目前にある「何か」(「消しゴム」でも「ノート」でも「お守り」でも何でもいい)について「100字程度の自由記述(論述)」をしてみる。思いつくままでいい。とにかく、「何か」に着目して次々と「連想」し「発想」を広げて書いていく。その繰り返しこそが重要なのだ。何度も何度も練習したい。また、「思考力」「構成力」「表現力」は「長文記述(論述)」の基本的「解法」なので、しっかりと磨いておくこと。

●無論、通常の「読解問題」も侮れない。「高度な読解力」が求められるが、その基本も「解法」だ。それぞれの「文章内容」や「設問内容」に対応した「解法」を、的確に用いることが重要。特に、本校では「空所補充設問」の比率が高いので、十分に練習を重ねておくことが求められる。

●本校に限らず慶應義塾は「教養人」を求めている。それは、単に「国語」としての「語彙力」というだけでなく、「一般常識」「社会的通念」というものまで問うてくるということだ。本校を志した瞬間から「あらゆる知識」を吸収するように努力することが必要だ。

●制限時間は45分。問題文のボリュームは全体で7000~10000字超(本年度は約10300字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速800字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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