「空所」(Ａ)(Ｂ)となっている５組の「同音異義語」、各組の「空所(Ｂ)」を「漢字」で書く。いきなりだ。
ＳＦＣに限らず、慶應が求める「大人の一般常識」が試される。一筋縄ではいかない。「空所(Ａ)」はすぐ分かるが、「空所(Ｂ)」は手強い。
たとえば、②「(Ａ)な成績」「(Ｂ)の美を飾る」＝「ユウシュウ」⇒「空所(Ｂ)」＝「有終」、④「(Ａ)労働省」「(Ｂ)に名を残す」＝「コウセイ」⇒「空所(Ｂ)」＝「後世」、⑤「手(Ａ)」「背(Ｂ)」＝「ビョウシ」⇒「空所(Ｂ)」＝「表紙」。
「大人の教養」を磨いておくこと。難易度：Ｃ(「難解」。以下同じ)。

「題名」の通り、筆者が提起する「練習問題」に答えながら、日本語の骨格を理解し技能を磨くトレーニングの手順書。
「本文」では、「言葉づかいが適切かどうかは、それまでに出あった文例の記憶による」と指摘し「単語を的確に使うには、言葉に敏感になるだけではなく事実そのものをよく見る眼と心が要る」と述べている。
素直な問題ばかりだが、「細部」、特に「文脈」に注意しないと以外な落とし穴がある。以下、いくつか考えてみたい。

【問二】指示語の説明記述
傍線部①「それ」の「内容」を「本文中の表現」を使って答える(20字以内)。
「指示語が出たら前を見よ」は誰でも知っている。直前を確認すると、「それ」＝「変な言葉」だとすぐ分かる。これが、「記述」で当否を左右する「最も重要な要素」(「指示語」では「直接的に指し示している内容」)となる。「最も重要な要素」は「文末」にするので(基本的な「解法」)、あとは字数に合わせて他に「必要な要素」を積み上げていくことになる(「記述」は「積上げ方式」が原則)。
何を説明すればいいのか？　直後に「変な言葉」を使うと「その場だけは面白がられたりする」とある。これだ。あとはまとめればいいだけ。ただし、「文脈」に合わせないと「代入不可能」になるので注意すること(「指示語問題」では「答え」が「指示語部分」に「代入可能」なことが絶対条件)。難易度：Ｂ(「標準」。以下同じ)。
  ＜時間配分目安：2分程度＞
 
【問四】空所補充の語句記述
「空所(Ｘ)」に「あてはまることば」を「本文中の表現」を使って答える(６字指定)。
「空所補充」では「空所」に当てはまる「内容」を考えることが最優先。「傍線部一文一部の法則」(傍線部が一文の一部分の場合、傍線部以外が重要ということ)で確認する。「不的確な表現になった原因は単語」ではなく「空所(Ｘ)」となっている。要は、「不的確な表現」になった「単語」以外の「原因」ということだ。同じ段落の後半に、「的確な表現」には「言葉に敏感」になるだけでなく「事実そのものをよく見る眼と心が要る」とある。これが「答え」だということは難なく分かる。
が、問題はここからだ。「６字指定」、どうする？ 内容的に「事実を見る」は絶対に必要。残りは１字、「眼」か「心」か？ ここで「文脈」が重要となる。「空所(Ｘ)」が「曇っている」と続くのだ。「文脈」上、どちらが適切か。無論、「眼」になる。「文脈」の「細部」にこだわらないと得点を逃がす。要注意。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安：2分程度＞
 
【問五】空所補充の選択肢
「空所(Ｙ)」に「あてはまるもの」を答える(４択)。易しいだけにコワイ問題。
前後は「言葉を的確に」「空所(Ｙ)」「できない」となっている。瞬時に(ウ)「使用」を「答え」としてしまいそうだ。この段落は「単語を的確に使うこと」(冒頭)を論じていて、「空所(Ｙ)」は最後の部分なのだから当然だ。
だが、待ってほしい。他の「選択肢」を確認したか？ (エ)は「運用」。まさに、「的確な言葉」はどちらかということだ。「文脈」を検討すれば無論、(エ)「運用」になるはずだ。ＳＦＣでは徹底した「文脈」と「細部」へのこだわりが必要だ。難易度：Ｂ。
＜時間配分目安：1分弱＞

「まゆみのマーチ」は表題作を含む作者の「自選短編集」(６作品収録)。
本問はその中の「また次の春へ——おまじない」より。東日本大震災からの「再生」を思い書かれた作品で、「マチコさんが子どもの頃に暮らしていた町が、海に呑み込まれた」と書き出されている。本文は、「マチコさん」が震災から２ヶ月後に被災地に向かう場面から始まる。
「物語の設定の事実関係」や「心情」を問う問題、、「知識問題」「空所補充」等が並んでいるが、中にはＳＦＣらしい「難問」もある。以下、２問だけ検討してみる。
 
【問三】空所補充の抜き出し
傍線部①「その問いの答え」について説明した「(Ａ)や(Ｂ)を見つけに行く」の、「空所」(Ａ)(Ｂ)に当てはまる「表現」を抜き出す(それぞれ「５字」と「12字」)。
「その問い」とは、「マチコさん」が「なんのために」「被災地」となった「子どもの頃に暮らしていた町」に向かうのかということ。そして、「答え」は「見つからないまま」、場面は変わる。そこまではすぐに分かる。ここで「小説」の「解法」だ。
「持ち越された問いの答えは最後に判明する」。これを知らないと、当てもなく「本文」をさまようことになるので要注意。最後の「公園の場面」、「ブランコ」をする「二人の女の子」と「マチコさん」とのやりとりの後に注目。「この町でいちばん会いたかった」のは「昔のわたし」だった、そして、「マチコさん」が「この町で暮らしたことの証」は「残っていた」とある。「昔のわたし」と「この町で暮らしたことの証」、「内容」も「字数」も合致するので「答え」となる。「解法」の重要性を改めて思い知らされる問題だ。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安：3分程度＞

【問八】空所補充の表現記述
「空所」(Ｘ)(Ｙ)に「あてはまる表現」を「考えて」答える(各５字以内)。これは難しい。が、何とかねじ伏せたい。
「考えて」といっても手がかりは必要。「空所」(Ｘ)(Ｙ)は「ブランコ」での「マチコさん」の「おまじないの言葉」。気づいてほしい。
「ブランコ」での「おまじない」は、少し前の「二人の女の子とマチコさんとのやりとり」で説明されていた。そこと対応させればいいわけだ。「おまじない」の「目的」は「誰かとまたいつか会える」こと。「十回ずつ」唱える「言葉」は、最初がその「誰か」のことで次が「いつか」のこと。
では、「マチコさん」は「誰」と「いつ」、「また会いたい」のか？ 「小説」では「きっかけ」が大きな手がかりになる。「マチコさん」が「ブランコ板」の上に立った「きっかけ」は、直前の「電話でのやりとり」。そこにヒントがあるはず。しっかりと読み解いて、「みんな」と「来年の春」「再来年でも」「その次でも」いいから「また会いたい」と、考えをつなげていきたい。
様々な手がかり、ヒント、要素を多角的に結び付けて思考することが求められている。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安：3分程度＞

ＳＦＣの最重要定番「長文自由記述問題」。
「題材」は「詩」、谷川俊太郎作「うつろとからっぽ」。「うつろ」と「からっぽ」のように「似ているようで違う言葉」を挙げ、「その違い」を答える(100字以内)。「自由記述」なので何を書いてもいいが、絶対に「条件」を満たすこと。ここでは特に、「その違い」が明確になるようにまとめたい。そのためにも分かりやすい「構成」にすることが必要だ。
たとえば、「(Ａ)と(Ｂ)は～という点では同じ意味だが、(Ａ)は～であり、(Ｂ)は～であるという点では違っている」といった具合。なお、「題材」は重要な手がかり、ヒントなので十分に活用すること。本問では、「うつろ」と「からっぽ」の「違い」が「詩」の中に説明されているのだから、そこから発想を広げていけばいい。いずれにしても、ＳＦＣ受験生の真価が問われる問題だ。難易度：Ｃ。