慶應義塾湘南藤沢中等部 入試対策
2019年度「慶應義塾湘南藤沢中等部の国語」
攻略のための学習方法
知識
SFCでは、「漢字の書きとり」はもちろん、様々な「総合知識問題」が出題されている。ありとあらゆる「知識」が求められる。
では、どうするか? 当然、一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚えるようにする。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「分かりづらい言葉の意味」等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあいまいなものがあったら、書き出して自分なりの「語彙ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉が蓄積されていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。これらの「語彙」は様々な形式で多数出題されるし、「記述」の際にも重要だ。字数制限の中でいかに的確な「言葉」を用いるかが勝負となるからだ(特にSFCの「短い記述」では重要)。最終段階では、問題集等で何度も確認しておくこと。
そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。直接出題されるだけではなく、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。全体で7000字弱~9000字超。解答時間は45分しかない。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の「最初と最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自分から聞いてみるといった積極性も求められる。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。SFCに限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。
そして、最終的には分速650字以上(できれば700字近く)で「速読」できるようにしておきたい。
解法
前述したが、SFCらしい「読解問題」の基本は「解法」の応用。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
たとえば、塾での練習問題。答え合わせをして解説を聞いて納得した。以上終了ではダメだ。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要。特に、間違った問題は宝の山だ。「解き方の過程」のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方の過程」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておく。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
SFC定番の「長文自由記述問題」の「対策」も、先ずは「文を記す」ことに慣れることから始まる。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。
そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」等、正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことが正確に伝わっているかを確認しなくてはいけない。
では、何を「書く」のか? 読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。100字程度で書いてみる(「長文自由記述問題」の練習になる)。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけること。書こうとしている内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要になる。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」や「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要の要素」を文末にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
意識
いつ何時も、何かを「意識」しながら学習することが大切だ。無意識に机に向っていても無意味だ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが重要。
そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにして学習したい。「設問」を正しく理解しているか? 「細部」を無視していないか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。
45分という時間で解き進めていかなくてはならないSFCでは、ひとつのミスが致命的になる。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2019年度「慶應義塾湘南藤沢中等部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「総合的知識問題(一般常識含む)」。
小問なし(解答数5)。「慣用句の空所補充記述」および相当する「『物の絵』の選択肢」。2分程度で丁寧に終えたい。
大問二は「説明文」、出典は鈴木紀之「すごい進化」(文字数約2500字)。
小問は全4問(解答数11)。「選択肢」(「空所補充」「正誤判別」あり)、「抜き出し」(3問。全て「空所補充」)。問題文は3分ほどで読み切り、設問を6分程度で解きたい。
大問三は「小説」、出典は大山淳子「あずかりやさん 桐島くんの青春」(文字数約8800字)。
小問は全9問(解答数24)。「漢字の読み書き」、「選択肢」(「空所補充」「時系列整序」、「複数完全解答」あり)、「総合的知識問題」(慣用句)。問題文は10分程度で読み切り、設問を16分ほどで解きたい。
大問四は「統計資料についての自由論述問題」(「160字以内」指定)。
8分程度でまとめたい。
【大問1】「総合的知識問題」(慣用句)
- 難度:標準
- 時間配分:2分
「慣用句の『空所補充記述』および相当する『物の絵』選択」(全5問/「記述」は「ひらがな」指定・「選択」は「8択」/複数完全解答)。
示されている①~⑤の例文中の空所 にあてはまる「物の名」を「ひらがな」で答え、その「物の絵」を選ぶ。
そもそも「慣用句」を問われているのだが、「答え」に相当する「物」が「絵」で示されているので、それらを「手がかり」にすることができる(本年度は、なぜか「親切」だ)。
それぞれの「絵」が表している「物」の方から確認する。
(ア)=「軍配」⇒8つのなかで唯一「一般常識」の部類だが、本校志望者であれば、知っていて当然のはず。これ以外は一目瞭然。
(イ)=「団扇(うちわ)」、(ウ)=「くぎ」、(エ)=「メガネ」、(オ)=「スプーン(さじ)」、(カ)=「エンピツ」、(キ)=「はしご」、(ク)=「てんびん」。
では、それぞれの「慣用句」を特定して、「答え」を判別していくことにする。
①「医者も を投げそうになった」⇒「匙(さじ)を投げる」=「答え」は「さじ」・(オ)、
②「悪いことをしないように、あらかじめ、 をさしておく」⇒「釘をさす」=「答え」は「くぎ」・(ウ)、
③「大接戦の末、赤組に があがった」⇒「軍配があがる」=「答え」は「ぐんばい」・(ア)、
④「名監督の にかなった新人俳優」⇒「眼鏡にかなう」=「答え」は「めがね」・(エ)、
⑤「おだてられてその気になったところで を外されてしまった」⇒「はしごを外す」=「答え」は「はしご」・(キ)。
本問では「軍配」というものを知っていたかどうかが雌雄を決する。やはり、慶應義塾ではこうした「一般常識」が問われるということだ。
【大問2】「説明文の読解」(「正誤判別」あり)
- 難度:易
- 時間配分:9分
スズメバチにうまく擬態しきれないアブ、他種のメスに求愛してしまうテントウムシのオス……、一見不合理に見える生き物たちのふるまいは、進化の限界を意味しているのか? それとも、意外な合理性が隠されているのか?――「生物学」の最新仮説を紹介し、私たちの直感を裏切る「進化の秘密」に迫っている。
本文では、「進化」が指す意味とその要因について説明している。
「生物学」に関する論述だが、分かりやすい表現で述べられているので内容は理解しやすい。平易な問題がほとんどなので、一気に解き進めたい。
やや注意が必要な2問だけを確認してみたい。
[問一] 「語句の空所補充選択肢」(全4問/4択)。
本文中の空所 ① ~ ④ に「あてはまる語」を答える。
各選択肢は全て「接続詞」。本校に限らず、「接続詞」や「副詞」などの「空所補充問題」は定番だ。
特に、「接続詞」では「逆接」以外に十分に注意すること。しっかりと確認しないと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。前後の「文脈」をしっかりと確認することが肝要だ。
では、「答え」をチェックしていく。
① には「選択」の(ア)「あるいは」がふさわくし、
② には「転換」の(イ)「では」、
③ には「理由説明」の(エ)「なぜなら」、
④ には「逆接」の(ウ)「ところが」がそれぞれあてはまる。
尚、こうした「空所補充問題」では「候補」がひとつとは限らないので、必ず全ての「候補」を「代入確認」すること。
<時間配分目安:1分強>
[問三] 「内容説明の抜き出し」(「50字程度」の「はじめと終わりの7字」指定)。
本文中の下線部「DNA配列の違いはどのようにして生じるのでしょうか」という「質問に対する答えとなる部分」を「五十字程度」で抜き出して、「はじめと終わりの七字ずつ」で答える。
「抜き出し設問」では、「抜き出すべき内容」を正確に捉えた上で、「抜き出し範囲」を絞り込んでいく。
「内容」は「DNA配列の違いの生じ方」だとすぐに分かるはずだ。「範囲」は「同一意味段落」となる(「論説文」「説明文」では「同一意味段落に手がかり・ヒント」がある)。
確認する。
下線部は段落冒頭で、ここから新たな「意味段落」になっている。そして、下線部は「問題提起」なので、その後にそれに対する「答え」が説明されているはずだと分かる。
そこで、直後から丁寧に探していきたい。
すると3行目に「DNAの配列を複製するときにごく稀にミスが生じてしまい、元の鋳型となる配列とは異なる配列が生成される場合があります。」という「一文」がある。「異なる配列が生成される仕組み」が説明されており、「内容」は合致している。
「指定字数」で「部分」を抜き出すことも可能だ。これ以降、他の部分には適切な説明がないので、「答え」は「DNAの配列を~列が生成される」となる。
「抜き出し設問」ではいかに「範囲」を絞り込めるかがポイントだ。また、「抜き出し候補」はひとつとは限らないので、必ず「範囲全て」を隈なく探すこと。
<時間配分目安:2分>
【大問3】「小説の読解」(「「時系列整序」」あり)
- 難度:やや難
- 時間配分:26分
- ★必答問題
東京の下町にある商店街のはじでひっそりと営業する「あずかりや・さとう」。店を訪れる客たちは、さまざまな事情を抱えて品物を預けにくる。どんなものでも一日百円。店主の桐島はなぜこんな奇妙な店を開いたのか? その理由は、桐島の青春時代に隠されていた――平易な言葉で綴(つづ)られる、切なくもほっこりする物語。
本文では、オルゴール職人の「ゼムス」が妻と生まれてくる子どものために丹精込めて作った「オルゴール」の数奇な運命が描かれている。本文内容は理解しやすいが、何せ9000字弱という長文だ。「場面分け」を押さえながら、一気に読み進めていきたい。
以下、いくつかの「設問」を検証してみよう。
[問一] 「漢字の書きとり」(全5問)。
二重傍線部①~⑤の「カタカナ」を「漢字」に直す。
昨年度に比べ易化している。本校志望者であれば「全問正解」が必須だ。「答え」だけ確認しておく。
①「それ(=音源)をナイゾウして音を響かせる木箱」=「内蔵」⇒まさか「内臓」としてしまう諸君はいないはず。
②「人気のヒミツ」=「秘密」⇒問題なし。
③「十代後半でショタイを持つ」=「所帯」⇒本校特有の「一般常識」の範囲。
④「時代や人の心をウツす」=「映(す)」⇒「同訓異字」に注意。
⑤「最後の作品だというジフがわたしの中に芽生え」=「自負」⇒平易だ。
どうだろうか? 万一曖昧(あいまい)なものがあったら、徹頭徹尾「漢字練習」を繰り返すことが必要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問二] 「漢字の読み」(全5問)。
波線部(A)~(E)の「漢字」を「ひらがな」に直す。
「書きとり」同様に本年度はとても易しい。失点は致命的だと心得よ。チェックする。
(A)「百二十年経った」=「た(った)」、
(B)「連呼」=「れんこ」、
(C)「紅潮」=「こうちょう」、
(D)「細工をほどこして」=「さいく」、
(E)「不得手」=「ふえて」。
(E)は唯一本校らしいが、不安な「読み」があった諸君は徹底して復習しておくこと。
<時間配分目安:1分弱>
[問三] 「漢字の空所補充記述」(「1字」指定)。「総合的知識問題」。
「慣用句」だ。本文中の空所 1 ~ 4 に「体の部分を表す漢字一字」を入れる。
誰もが習得しているはずの「慣用句」ばかりだ。確認しよう。
「注意されても、 1 を貸そうとしません」⇒「答え」は「耳」⇒「耳を貸す」=「人のいうことを聞く」こと。
「 2 を細めてうっとりと聴いて」⇒「答え」は「目」⇒「目を細める」=「顔中にほほえみを浮かべる」こと。
「ゼムスは 3 を曇らせ」⇒「答え」は「顔」⇒「顔を曇らせる」=「表情を暗くする」こと。
「ゼムスに 4 を下げる場面」⇒「答え」は「頭」⇒「頭を下げる」=「おじぎをする。謝る。心から頼む」こと。
本問は平易だったが、「慣用句」に限らず「ことわざ」「故事成語」、そして、無論「四字熟語」等は難解なもの含めて確実に定着させておくことが肝要。
<時間配分目安:1分>
[問四] 「心情読み取り選択肢」(4択)。
傍線部(1)の「大丈夫なの?」という「言葉に込められた意味」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)をしたいが、ここだけでは「心情」は読み取れないので、さすがに「消去」は無理だ。
そこで、直前・直後から「状況」を捉えていく(「小説」では「同一場面の直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。
傍線部は、「(ゼムスの)奥さん」が「ゼムス」に、自分のために作ってくれたオルゴールについて語っている言葉の一部だと分かる。そして、直前には「随分とよいクルミ材を使ったのね。」とある。
したがって、「随分とよいクルミ材」を使った「ゼムス」に対する「大丈夫なの?」という言葉だということを考えて、その「心情」と結びつかない「選択肢」を「消去」することになる。
各選択肢の「文末」を確認する(「選択肢」の「説明」で「最重要要素」は「文末」に記されている)。(ア)「経済的なことを気にかけている」、
(イ)「ゼムスの腕に不安を持っている」、
(ウ)「ゼムスを気づかっている」、
(エ)「オルゴールの音色を気にしている」。
「随分とよいクルミ材を使った」を気にしているのだから無論、(ア)以外は「消去」できると分かるはず。他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」は(ア)でいい。
「小説」での「心情」や「動作」の読み取りに関しては、「きっかけ」がとても重要だと心得よ。尚、ここでは無理だったが、時間短縮のために、設問段階での「原意消去」には必ずチャレンジすること。
<時間配分目安:1分半>
[問七] 「理由説明選択肢」(5択)。
傍線部(2)「あえてそのことには触れませんでした」について、「それはなぜか」を答える。
無論、先ずは「原意消去」だが、真っ先に為すべきことといえば「指示語」の特定だ(「指示語」が出たら即開くが鉄則)。
確認する。
「そのこと」=前文にある「そのこと」だと判明する。「二重指示語」なのでさらに開く。
前文の「そのこと」は段落冒頭にある「指示語」なので、前段落全ての内容を指し示している。
そのことを踏まえて特定すると、「そのこと」=「ゼムスが大好きなオルゴール作りをやめること」だと分かる。
次に、「誰」が「誰」に対して「そのことには触れなかった」かを読み取りたい。
「傍線部一文一部の法則」で確認すると(「傍線部」が「一文の一部分」だった場合、「傍線部以外」に「手がかり・ヒント」がある)、直前に「奥さんは気づいていましたが」とある。
つまり、「奥さんはゼムスが大好きなオルゴール作りをやめることに気づいていたが、あえてゼムスに対して触れなかった理由」が問われているわけだ。
「理由説明」なので、各選択肢の「文末」が「直接的理由」として結びつかないものを「消去」することになる。
本問では各選択肢の説明が短文なので、全文で確認する。
(ア)「ゼムスのきげんを損ねたくなかったから」、
(イ)「自分の体調がすぐれず、聞く元気がなかったから」、
(ウ)「ゼムスが本当はオルゴールを作りたいことが分かっていたから」、
(エ)「自分もオルゴールの欠点に気づいていたから」、
(オ)「自分のためにオルゴールを作ってくれたのがうれしかったから」。
「ゼムスに対して」「大好きなオルゴール作りをやめること」に「あえて触れなかった」のだから当然、 (ウ)以外は「消去」できなくてはいけない。よって、「答え」は(ウ)だ。
「理由説明」でも「原意消去」は有効だと心得よ。
<時間配分目安:2分>
【大問4】「統計資料についての自由論述問題」
- 難度:難
- 時間配分:8分
「統計資料についての条件付き自由論述問題」(「160字以内」指定)。
示されている2つのグラフ(「日本のプロ野球選手の月別出生数」と「日本人男性の月別出生数」の「棒グラフ」)を見て、「なぜ日本のプロ野球選手は四月~七月生まれが多いのか」という問いに対する「『答え』(仮説)を考えて書き、また、その『答え』(仮説)が正しいことは、どうすれば証明されるか」を「百六十字以内」で論述する。
「条件」は「原稿用紙の使い方に従って書くこと。ただし改段落をする場合は行をかえず、一マス空けることで示す」こと。
なんじゃこりゃ? 本年度、「慶應義塾湘南藤沢(SFC)」の「中等部」を受験した諸君は一様に、頭が真っ白になったに違いない。
それもそのはずで、「仮説と証明」という本問はまるで「SFC」の「大学入試」で課される「小論文」の課題のようだ。他校も含めて、こうした「中学入試」の設問は類例を見ない。
無論、本校では例年「長文自由記述(論述)問題」が出題されているが、昨年度までの課題とは完全に一線を画している。何をどうすればいいのか見当もつかないだろうから「捨て問」でもいいのだが、配点も大きいし(11点)、何より本校志望者であれば、とにもかくにもチャレンジしてみたい。
先ずは、2つの「グラフ」をしっかりと見比べて、設問の前提を確認してみる。
すると確かに、「プロ野球選手のグラフ」(以下①とする)から「4月と7月の出生数が極端に多いこと」が分かる。そして、「日本人男性のグラフ」(以下②とする)からは、「7・8・9月の出生数が他の月よりやや多いこと」が分かる。
これらから、「7月生まれ」に関しては、そもそも全体の「出生数」が多いから「プロ野球選手」も多いという説明ができそうだが、「4月生まれ」については通用しないので残念ながら「仮説」としては成立しない。
新たな「発想」での考察が求められる。
「プロ野球選手」と「4月生まれ」との相関関係とは? さまざまな視点から考えを結びつけていきたい。
「プロ野球選手」に絶対に必要な資質は?⇒「運動能力」⇒どうすれば養える?⇒幼いころから身体を動かすこと?……。一方、「4月生まれ」はどうか?⇒同学年では一番「年上」で、身体能力も高いはず⇒同学年でトップクラス⇒「やる気」が出てますます「運動能力」が高まるはず……、また、「4月生まれ」の赤ちゃんが歩けるようになるのは、ちょうど翌年の春の頃(1歳程度)⇒他の月に生まれた赤ちゃんよりも早く外で身体を動かせるようになる⇒それだけ「運動」に親しむことができる……。などといった「仮説」が立てられるはずだ。
しかし、「運動能力の発達」が「出生月」と関連しているとすれば、「プロ野球選手」だけではなく「サッカー選手」や「陸上選手」などの他のアスリートにも同じ傾向がみられるはずだ⇒そうしたことについての「資料」を調べて確認することが、「仮説」を「証明」するためには必要になってくる……。
こういった具合に考察を進めていけば、本問の「論述」も可能になるはずだ。
来年度以降も同種の出題があり得る。これまでの本校の「長文自由記述(論述)問題」対策では太刀打ちできないので、新たな「論述対策」が求められることになる。
尚、本問の「条件」には要注意だ。「原稿用紙の使い方に従って」ということは「改段落」のときに「改行」するのが当然なのに、「行をかえず、一マス空けることで示す」と指示されている。「常識」が通用しないのだ。
「条件」に従わなければ、「失点」あるいは「減点」となるのは当然なので、細部にも十分配慮しなければならないことになる。
攻略のポイント
●「長文自由記述(論述)問題」をいかに攻略するかが最大のポイント。しかし、突飛とまでいえるユニークな「題材」や「設問内容」は毎年変わるのだから、具体的な「対策」は難しい。
特に本年度は全く新しい傾向の出題だったので尚更だ。
ただ、着目すべきはこの問題を通して本校が何を問おうとしているのかということ。
簡潔にいえば、柔軟な「発想力」や「着想力」と「構成力」だ。したがって、こうした「力」を磨く訓練をすることが攻略への道となる。
「発想力」や「着想力」については、たとえぱ、目前にある「何か」(「消しゴム」でも「ノート」でも「お守り」でも何でもいい)について「100字程度の自由記述(論述)」をしてみる。思いつくままでいい。とにかく、「何か」に着目して次々と「連想」し「発想」を広げて書いていく。その繰り返しこそが重要なのだ。
何度も何度も練習したい。また、「構成力」は「長文記述(論述)」の基本的「解法」なので、しっかりと磨いておくこと。
●無論、通常の「読解問題」も侮れない。「高度な読解力」が求められるが、その基本も「解法」だ。それぞれの「文章内容」や「設問内容」に対応した「解法」を、的確に用いることが重要。
特に、本校では「空所補充設問」の比率が高いので、十分に練習を重ねておくことが求められる。
●本校に限らず慶應義塾は「教養人」を求めている。それは、単に「国語」としての「語彙力」というだけでなく、「一般常識」「社会的通念」というものまで問うてくるということだ。
本校を志した瞬間から「あらゆる知識」を吸収するように努力することが必要だ。
●制限時間は45分。問題文のボリュームは全体で7000~10000字超(本年度は約11300字)。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。
志望校への最短距離を
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