芝中学校 入試対策
2016年度「芝中学校の算数」
攻略のための学習方法
芝中の算数は、数ある学校の中でも良問率が高く、算数の実力を公正に測れるという意味では、志望校として過去問対策にあたる場合も、力をつけるために演習として解く場合も必ず実力アップできるという効果がある。
では、芝中学に合格するためには何に注意し、どのような対策を施せばよいのか?
具体的な問題を例にとって説明したい。
2011年(平成23年度)第1回出題【大問6】
『ある水そうには、2つの注水管AとBがあり、A管では45分、B管では1時間3分で、それぞれ空の水そうをいっぱいにすることができます。
空 の水そうに、はじめの10分はA管とB管の両方を用いて水を入れました。その後、A管だけを用いて□分水を入れ、つぎにB管を用いて何分か水を入れたところ水そうがいっぱいになりました。空の水そうに水を入れ始めてから、水そうがいっぱいになるまでに43分かかりました。』
仕事算に比を用い、さらにつるかめ算で解答していくというパターン化した問題だが、「芝」らしく解答欄ひとつしかない。あまり難しくない問題だが、解く流れとしてはこうだろう。
1.A管とB管の1分間に入れる水量の比を出す。…a
2.aを用いて水そう全体の容積を整数値bで出す。
3.bの答えからA・B合わせて10分間の水量をひく。…c
4.cの数値を用いてつるかめ算の解き方から答えを導き出す。
芝中の場合、解答欄には答えを書きこむだけなので、ひとつの大問に対する小問の数が少ないと配点がそれだけ高くなる。設問(1)(2)と分かれている方が点数がとりやすいのだが、上記の段取りをきちんと踏んで最後までミスしないで終了したとしてようやく1問解いたことになると言う、大変手間がかかるのが特徴である。
公開模試や塾の教材には親切なものが多いので、たいてい解きやすいように(2)のヒントとして(1)が設定されることが多く、しかもそこで得点(マルつけ)出来ることになっているが、芝では解く過程を最後まで見通せた上でいくつかの段階を経て解いていけない限り点数には結びつかない。例に挙げた大問はそんな中ではまだ解きやすい方である。現段階で易々と解けてしまった生徒もいるだろう。いつもこんなものではないので、1つの例として考えてもらいたい。
それでは普段何を行えばよいかと言うことだが、過去問を解くのはもちろんとして、中・上クラスの文章題、しかも設問が1つしかない問題に多くあたることが大切である。周りを見ても適切なものがないという場合は、ある大問の(2)や(3)だけ、先生に指示をもらって解いてみてはどうだろう。文章題でもそうだが、平面図形特に相似形などでは最後の設問だけ答えるのは難しいことが多く、簡単に得点をくれない芝中の対策にはうってつけだと思われる。
ただしそれよりもっとずっと前のステージで止まっている生徒、さきほどの「水そう問題」で、1の段階にも進めなかった生徒は基礎力不足と言えるので、ひとつ学年を戻した教材でまずは典型題にあたり、いろいろな解き方をマスターすることが必要だ。つるかめ算?芝中合格を目指す生徒は「つるかめ算の解き方=九九」程度に使いこなせることが最低条件だ。
合格するための学習法をまとめると
・過去問を解きながら本校の問題レベルを把握し、上記の対策法を用いて多くの文章題にあたり、複雑な条件下の問題にも対応できる力をつけること。
・平面図形の問題には積極的に手を出し、難易度の高いレベルまで解けるよう時間をかけること。
・基本的な力だけでは合格点には到達しない。一行問題集のレベルで安住せず、同レベルの学校の問題などでも演習をすること。
過去問に取りかかるのは秋からでよいが、時間配分・問題量などにはとりたてて大きな特色はないのでそのときの実力が出やすい形式になっている。
本番までに3度は繰り返し、芝中合格の力を身につけて臨もう。
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2016年度「芝中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が9つ、設問が17問。大問2から大問9までは中程度~高難度の文章題が分野のバランスよく並んでいる。昨年度・本年度と設問数がやや多いという傾向が見られる。
本年度のレベルはここ数年の中では最も難しく、時間内にこれだけの問題に対応するのは容易ではない。また、前半の問題が平易で後半のほうが難しいということはなく、上手く問題を選択しないと得点がとりにくくなる。全体としては、算数の典型的問題をうまく応用させた良問が多く、算数の力が公正に判定されやすいテストと言えよう。
【大問Ⅰ】計算問題
- 難度:標準
- 時間配分:5分
(1)・(2)とも普段触れている計算問題よりも数値が多く長いものなので、計算のルールに従ってていねいに問題に当たりたい。小数を分数に直し、あわてることなく解いていけば正解に到達する問題。
容易ではないが、必ず得点できるようにしておこう。
【大問Ⅱ】数の性質…分数
- 難度:標準
- 時間配分:5分
これはよく見かける問題である。分母の80を素因数分解すると、2×2×2×2×5となるので、約数の個数は全部で(4+1)×(1+1)の10個。この中から1と80をのぞけばよい。
もう一つの設問は1から79のなかに2または5の倍数が何個あるのかを求め、全体の個数から引けばよい。ベン図の解き方が一般的。
ここは必ず正解しておきたい。
【大問Ⅲ】速さの問題
- 難度:やや難
- 時間配分:5分
旅人算の形をとっているものの、会うたびにB君が休むという条件が加わって難しくなっている。しかし3分休んでもらわないと会うまでの時間が割り切れなくなるのでそのあたりからぴんと来た生徒は正解できただろう。最後は最小公倍数を用いて解く。
ここは出来なくても仕方ないかもしれない。
【大問Ⅳ】平面図形と比
- 難度:標準
- 時間配分:5分
- ★必答問題
【大問2】と並んで、問題集などでも見たことがあるだろうという問題。こういう問題では解き方をきっちりと決めておくほうがよい。たとえば、全体や部分の面積を比の大きさで表すというように。決めておかないと正解まで行き着かないときが出てくる。後のことを考えるとここは正解しておきたい。
【大問Ⅴ】立体図形の転がり移動
- 難度:標準
- 時間配分:6分
といっても面積や体積を求める問題ではない。面に書かれているハンコのもようをていねいに追っていけばよい。(1)はあてておきたいところ。
【大問Ⅵ】場合の数…正方形や三角形の数
- 難度:やや難
- 時間配分:6分
(1)では、斜めの正方形を忘れがち。(2)の直角三角形は三角形全体の形が斜めになるので難問だ。すべて求めるのは容易ではない。(1)のみの正解で合格としよう。
【大問Ⅶ】割合と比(売買損益の問題)
- 難度:やや難
- 時間配分:6分
- ★必答問題
よく見かける問題のようだが、条件は複雑であり正解できた生徒はこの分野に自信を持ってよい。
(1)では仕入れにかかった金額(=1個の仕入れ値×個数)を1として、式を立てて考える。
(2)は(1)の個数を踏まえてつるかめ算などを用い答えを導くようになっている。
(1)が出来た生徒は(2)も正解したことであろう。
なかなか骨のある問題だった。
【大問Ⅷ】点の移動
- 難度:やや難
- 時間配分:6分
- ★必答問題
(1)は典型的な問いだが、長方形の対角線の交点をP・Qを結んだ線が通ればよいということを覚えていないと解けない。しかもPが案外進んだ後だけに解くのは難しかったかもしれない。
(2)もPの位置を特定するのが難しく、(1)同様正答率は低いと予想される。
ただ良問であるので、解き方を自分のものにしておきたい。
【大問Ⅸ】水槽グラフ
- 難度:難
- 時間配分:6分
昨年度も同内容のものが後半にあったが、本年度のもののほうがずっと難しかったようだ。グラフの変化に合わせてAとBの状態を追っていき、わかりやすくするために水槽の断面図などを書くのもよいだろう。
(1)では45分後にBの水槽がいっぱいになったことがわかればすぐ解ける。問題はここから…
(1)の結果から水槽Aの容積がわかるので、排水される水量を求めておく。さらにA・Bの底面積を求めることで1分間に何cmずつ水の高さがあがっていくかを求め、30分後の高さの差を求めるということ。
(3)では排水によって減っていく水の高さを求め、(2)で求めたアの高さをAの減り方とBの増え方の和で割る。
問題文は短いがやりがいのある問題になっている。
攻略のポイント
テスト時間50分で100点満点。合格者平均点は54.6点、受験平均は40.4点ということで、50点を合格の目安としよう。これは例年に比べると10点ほど低い数値であり、問題のレベルが上がったことを意味している。
設問の難易度で考えると、前半のまだ易しい大問はきっちり当てて、後半の問題で解ける設問を見つけてねばり強く正解を出していきたい。
そのためのポイントとしては
・塾の教材や市販の問題集などで、中~高程度の難易度を持つ問題に多く触れ、ねばり強く問題を解くこと。
・問題を解くための道具(線分図や数式など)を書くことをいやがらず、1つずつ問題を解きほぐすことに情熱を持つこと。
・ほぼ同程度の難易度を持つ学校の問題も時間があったら解いておくとよい。
本年度のレベルが続くようだと、標準的な問題解法だけでは物足りなくなる。難易度の高い問題に対してねばり強くあたれる生徒に向いた学校である。
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