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2020年度「芝中学校の算数」
攻略のための学習方法

芝中の算数は、数ある学校の中でも良問率が高く、算数の実力を公正に測れるという意味では、志望校として過去問対策にあたる場合も、力をつけるために演習として解く場合も必ず実力アップできるという効果がある。

では、芝中学に合格するためには何に注意し、どのような対策を施せばよいのか?
具体的な問題を例にとって説明したい。

2011年(平成23年度)第1回出題【大問6】
『ある水そうには、2つの注水管AとBがあり、A管では45分、B管では1時間3分で、それぞれ空の水そうをいっぱいにすることができます。
空 の水そうに、はじめの10分はA管とB管の両方を用いて水を入れました。その後、A管だけを用いて□分水を入れ、つぎにB管を用いて何分か水を入れたところ水そうがいっぱいになりました。空の水そうに水を入れ始めてから、水そうがいっぱいになるまでに43分かかりました。』

仕事算に比を用い、さらにつるかめ算で解答していくというパターン化した問題だが、「芝」らしく解答欄ひとつしかない。あまり難しくない問題だが、解く流れとしてはこうだろう。

1.A管とB管の1分間に入れる水量の比を出す。…a
2.aを用いて水そう全体の容積を整数値bで出す。
3.bの答えからA・B合わせて10分間の水量をひく。…c
4.cの数値を用いてつるかめ算の解き方から答えを導き出す。

芝中の場合、解答欄には答えを書きこむだけなので、ひとつの大問に対する小問の数が少ないと配点がそれだけ高くなる。                                             設問(1)(2)と分かれている方が点数がとりやすいのだが、上記の段取りをきちんと踏んで最後までミスしないで終了したとしてようやく1問解いたことになると言う、大変手間がかかるのが特徴である。

公開模試や塾の教材には親切なものが多いので、たいてい解きやすいように(2)のヒントとして(1)が設定されることが多く、しかもそこで得点(マルつけ)出来ることになっているが、芝では解く過程を最後まで見通せた上でいくつかの段階を経て解いていけない限り点数には結びつかない。

例に挙げた大問はそんな中ではまだ解きやすい方である。現段階で易々と解けてしまった生徒もいるだろう。いつもこんなものではないので、1つの例として考えてもらいたい。

それでは普段何を行えばよいかと言うことだが、過去問を解くのはもちろんとして、中・上クラスの文章題、しかも設問が1つしかない問題に多くあたることが大切である。

周りを見ても適切なものがないという場合は、ある大問の(2)や(3)だけ、先生に指示をもらって解いてみてはどうだろう。文章題でもそうだが、平面図形特に相似形などでは最後の設問だけ答えるのは難しいことが多く、簡単に得点をくれない芝中の対策にはうってつけだと思われる。

ただしそれよりもっとずっと前のステージで止まっている生徒、さきほどの「水そう問題」で、1の段階にも進めなかった生徒は基礎力不足と言えるので、ひとつ学年を戻した教材でまずは典型題にあたり、いろいろな解き方をマスターすることが必要だ。

芝中合格を目指す生徒は「つるかめ算の解き方=九九」程度に使いこなせることが最低条件だ。

 

合格するための学習法をまとめると

・過去問を解きながら本校の問題レベルを把握し、上記の対策法を用いて多くの文章題にあたり、複雑な条件下の問題にも対応できる力をつけること。

・平面図形の問題には積極的に手を出し、難易度の高いレベルまで解けるよう時間をかけること。

・基本的な力だけでは合格点には到達しない。一行問題集のレベルで安住せず、同レベルの学校の問題などでも演習をすること。

 

過去問に取りかかるのは秋からでよいが、時間配分・問題量などにはとりたてて大きな特色はないのでそのときの実力が出やすい形式になっている。
本番までに3度は繰り返し、芝中合格の力を身につけて臨もう。

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2020年度「芝中学校の算数」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

50分で大問が10、設問が18問。大問2から大問10までは「易」「標準」「やや難」の文章題が、分野のバランスよく並んでいる。本年度は設問数が18題と増えたもののテストの難化を招くものではなかった。
捨て問にあたる超難問は存在せず、いずれの大問もそれまでの勉強の成果を出しやすいレベルで、本年度は典型的な問題も目立つなど、この学校特有の難しさは影を潜めたままだ。
普通の勉強でも対応しやすい問題の上に、この質・量ならば50分で合格点をとるのは十分可能である。

【大問1】計算問題

  • 難度:標準
  • 時間配分:5分
  • ★必答問題

本年度の計算問題は例年並みの難度に戻り、過去問でみっちりと計算問題対策を積んできた受験生たちはその成果を出せそうだ。

【大問2】数の性質

  • 難度:標準
  • 時間配分:5分
  • ★必答問題

(1)は「易」レベルの設問。割る数と余りの差がともに2になっているので、求める数は「公倍数-2」となる。ここでは2けたで一番小さい数なので最小公倍数でオーケーだ。

(2)は「やや難」レベルに難度がアップしている。(1)で求められる数と、「5で割ると1余る」数が一致するところまで調べていき、さらに3つの数の最小公倍数を利用して、3けたで一番大きい数を求めなくてはならない。ここの(2)は合否への分岐点となる設問と言えよう。

【大問3】消去算

  • 難度:標準
  • 時間配分:4分
  • ★必答問題

アイスクリームの数が5種類なのでやや計算が厄介。合計金額をすべて加えると「アイスクリーム5種類×4個」分の合計になるので4で割って5種類の和を求めるまでが勝負。

【大問4】周期算

  • 難度:
  • 時間配分:3分
  • ★必答問題

5で割ったときの余りは規則性を持って出てくるので、あとは5つ1組として周期算を使おう。小5初期に登場しそうな基本問題である。

【大問5】立体図形

  • 難度:標準
  • 時間配分:4分
  • ★必答問題

三角柱を切断して上下の立体の体積が等しくなるためには「高さの和」が上下で等しくなればよい。

高さに当たる3辺は4等分されているので、1つ分の高さを1とすると、3辺全てを合わせると全部で4×3=12。これを2で割った6になるように高さをそろえる。高さが(1,2,3)となる場合と(2,2,2)となる場合があるのでそれぞれ場合の数を調べれば解ける。

ここまではできれば全問正解しておきたい。

【大問6】売買損益

  • 難度:やや難
  • 時間配分:5分

売買損益の問題についてはしっかりと対策してきていることと思うが、この問題は「やや難」にあたる。正解すればアドバンテージがとれる2つめの合否分岐点といえる。

売れ残りの数が1個減るごとに利益は93円増えるので、7035円と5640円の差を93で割ることによって、実際に売れ残った個数が求められる。これが8%と2%の差である6%にあたるので、そこから仕入れた個数を出すことができる。

普通、売買損益の問題では、個数が求まれば仕入れ値などは、(ひねってはいけないものの)赤子の手をひねるように簡単に求まることが多いのだが、この問題はここからもう一山あるので油断が出来ない。

【大問7】平面図形(面積の比)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:7分

昨年度も「平面図形」の難問が出題されたが、本年度も同趣旨の面積を求める問題が出た。ここの(2)は本年度の設問の中では最も難しい。

(1)は「易」レベルに近い問題で、辺の長さを整数で置き、2つの面積を比で求めることによって容易に解答できる。

(2)は「捨て問」クラスの難問で、複数の相似の関係を見つけそれを利用して四角形DECFの面積を求めなければならない。もし時間がかかりそうだと思ったら、(2)は飛ばしてもよい。

【大問8】仕事算

  • 難度:標準
  • 時間配分:4分
  • ★必答問題

ありがたいことにこの仕事算は典型中の典型的な問題。

給水管A,B,Cの仕事量を連比で表せれば(1)は瞬殺で、(2)はつるかめ算で容易に応えることが出来るだろう。

未だにこの手の問題を解くときに仕事量を分数のまま作業している生徒は整数比に置き換えて解き進める技術をマスターしてもらいたい。

【大問9】三角形・円の面積

  • 難度:標準
  • 時間配分:5分

この問題は、芝の後半の問題としては少し物足りない水準の問題である。

(1)では、四角形イケエBが正方形の面積の4分の1であるので、そこから三角形イエBをひけば良い。

(2)では、まず8つの点を通る円が正確に書けるかどうか、がカギを握る。

書けたと仮定して話を進めると、(1)で求めた三角形イエケの辺イケまたはエケが円の半径になるので、半径×半径÷2=(1)の答え、から半径×半径を求め、あとは面積の公式通り計算すればよい。

半径がわからない円の面積も、十分に勉強済みだろう。

【大問10】ダイヤグラム

  • 難度:標準
  • 時間配分:8分

最後は大きなグラフを与えられて、さぞ難しい問題だろう、と構えるところであるが、あに図らんやさほどの複雑さもなく解けていくので安心できる。

距離や時間の具体的な数値が与えられているので、速さの比を使うこともなくひとつずつ丹念に求めていくことができる。
はじめに求める特急の速さは速さの公式通り。その速さを使って急行の速さを求め、さらにS駅に止まっていた時間も公式のままに求めることができる。

ポイントは最後の□で、求め方が難しいわけではないが答えが分数になってしまうので心に不安がよぎる。しかし解き方には間違いはないのでその答えにすべてをたくすことになる。結果としてそれは正しい選択だった。

攻略のポイント

テスト時間50分で100点満点。合格者平均点は67.1点,受験平均は54.2点と昨年度と比較してもその差は小数点以下の差であり、テスト全体の問題レベルから見て想定内の数値である。合格に必要な点数は65点くらいなので、少し上の70点を目標と定めよう。

【大問1】~【大問5】は確実に当てておきたい。
【大問6】~【大問10】では、【大問7】の(1)・【大問8】(1)(2)は正解しておきたい。また、【大問10】のダイヤグラムも設問は素直なので正解しておきたいところだ。
上記通りに正解できれば、優に70点以上の得点が望めるだろう。

そのためのポイントとしては
・塾の教材や市販の問題集などで,標準からやや難しめの問題に多く触れ,典型的な出題への耐性と解き方をたくさん身につける。

・問題を解くための手段(線分図や数式など)をきっちりと身につけ、問題によって使い分けられるようにしたい。

ほぼ同程度の難易度を持つ学校の問題も時間があったら解いておくとよい。

本年度は前半から後半に至るまで問題が「易」「標準」せいぜい「やや難」レベルであったので取り組みやすい問題群だったと言えよう。

しかし4年前のように突然難度が高くなる年もある。入手できる範囲の過去問にはすべてあたり、難易度への耐性をつけてテストに臨もう。

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