芝中学校 入試対策
2022年度「芝中学校の社会」
攻略のための学習方法
例年、大問4つに総解答数40~45程度で作られている。試験の最後に100~150字ほどの論述問題が1問出される以外は、記号選択と用語記入だけ、というのもここしばらくの定型となっている。
大問1・2が地理と歴史、大問3が政治中心だが時に国際社会など他分野も含む、大問4が時事問題と論述文・・・・・・と、一応の区分けがされている。政治分野が少なめの学校も多いが、本校では3分野の問題数はほぼ等しくなっている。
長文記述は本文から要旨を読み取り、キーワードを使ってまとめる読解力や構成力という、いわば「国語力」が必要となる。
また、リード文の総計が4000~5000字にも及ぶことがあり、読むスピードも要求される点に留意が必要である。
地理分野
日本の国土・地形・気候・産業など幅広い範囲から出題される。
主な川の流域の特色(平成27年・第一回)など、あるテーマに沿った出題がよく見られるが、日本各地・さまざまな項目について(2019年度・第1回)訊かれる形もある。
地図を使って位置や大きさを比べさせるような問題、産業・人口などの統計から各地の特徴を考えさせる問題など、単純に用語を答えれば済むような問題は少ない。地図や白地図で位置や面積、主な鉄道や道路の路線などをしっかり確認しておかないとわからない問題も出されていて、難度は高めである。
基本事項をマスターしているのは当然として、日本全体どの地域についても、地名・地勢・産業や交通まで地図上でイメージできるくらい的確な知識が必要となる。
歴史分野
各時代の歴史について、幅広く出題されている。
年表をもとに歴史の流れをたどるものや、それぞれの時代についての短い説明文を読んで答えるものなど、いろいろな形が見られる。
基本的事項は用語記入で書けるかどうかを確かめ、出来事や制度の理解については選択式で選ばせるなど、やはり用語をただ覚えています・・・では通用しない問題である。物事の背景やその後の影響まで考えられないと選択肢の細かな違いを選びきれないようになっている。
また、時代順の並べ替え問題もよく出される。年表で流れをつかむとともに関連事項もまとめて覚えてすぐに引き出せるようにしておかないと、迷って無駄に時間を失うはめになる。
政治分野
日本国憲法・三権の仕組み・財政の問題がよく出されている。
また、この分野と合わせて、国際連合(平成27年度・第一回)のように国際関係や時事問題も出題されており、政治分野ばかりとは限らない。政治については上記の頻出分野を確実に押さえ、時事問題集などにもしっかり目を通しておきたい。
記述問題
3~5つのキーワードを必ず使い、100~150字ほどで答えさせる問題。ここは、社会的なことがらがテーマにはなっているが、国語の問題と思った方が良いかも知れない。
まずキーワードを確認する。本文を読みながら大事な言葉や文に線を引くなり欄外に抜き出すなりしてしまう。その際、指定されたキーワードが文中にあるその周辺は使える部分が多いので、目をつけておく。そして設問に合うように指定された字数でまとめる。答えは本文の要旨に近いものになる場合が多いのである。
それにしても、話題は現代社会で問題とされる内容が多いので、普段からニュースや新聞に目を通し、自分なりに考えるようにしておけば、このような記述にも対応しやすいであろう。国語力と社会に対する関心の度合いが試される問題である。
以上、記述が大きなポイントにはなるが、基本的事項を細かい部分までしっかり身につけていることが大前提なので、全ての分野で高い実力をつけることが第一である。テキスト・地図・白地図・資料集で、地域ごと・年代ごとの重要事項と統計データなどかなり詳しく見ておく。
そして、なぜそのようなデータになるのかまで考えるようにすれば、単なる数字の暗記を超えた、「使える」データを身につけられるのである。
また、本文の長さにも対応できるよう、読解のスピードをつけておくことも忘れないで欲しい。
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2022年度「芝中学校の社会」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
総解答数は39問。記号選択が組み合わせの正解を選ぶタイプであること、リード文も多めであることなどを考えると、40分という試験時間は長いとは言えない。
長文記述に5~7分みておいて、4つの大問に各10分かけるとすると、記述問題以外の各問に1問45秒ほどかけられるがリード文がつく大問もあり、特に記述問題のリード文は量も多いので、あまり余裕は無さそうである。
【大問1】地理分野
- 難度:標準
- 時間配分:12分
- ★必答問題
中部地方の地図を見て、各地の特徴や産業などについて答える問題。
問1 (1) a. 天竜 b. 木曽 c. 赤石 d. 遠州 e. 伊勢
(2) 三角に並んだ3つの点は茶畑の地図記号。史跡・名勝・天然記念物の記号でもある。
問2 アの新潟市とオの静岡市が政令指定都市になっている。
問3 X. 近隣9町村との合併により最も広い市となった、岐阜県高山市。
Y. 住宅の延床面積が日本一である、富山市。
問4 冬の降水(雪)量が多いという日本海側の気候の特徴がみられるAとBで、気温が低いBが内陸部にある高山市でAが富山市、Cは豊橋市となる。
問5 Y. 距離が最も短いのは、若狭湾―伊勢湾の間である。
問6 福島が2位の③がもも、山形が3位の①がぶどう、群馬が上位の②がレタスの表である。そこからXは山梨、Yは長野、Zは茨城と考えられる。
問7 (1)は瀬戸・多治見など、陶磁器の製造が盛んである地域で、α。(2)は楽器や輸送用機械の製造が盛んな浜松市周辺で、β。(3)は製紙・パルプ業が盛んな富士市・富士宮市がある、γ。
問8 愛知県・静岡県などでは自動車工場やその関連工場が多く、ブラジル人がたくさん働いている。また、全体的には中国人が最も割合が高い。以上の点から、いずれの表でも上位に入るXが中国、2つの表で1位になっているZがブラジル、Yがベトナムと考えられる。
【大問2】歴史分野
- 難度:標準
- 時間配分:9分
- ★必答問題
主に弥生時代~昭和時代の略年表を題材に、各時代の出来事や時代順などが訊かれている。
問1 X. 五色塚古墳は樹木ではなく、葺石(ふきいし)におおわれた古墳である。
問2 X. 法然上人が開いた浄土宗では、「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えればだれでも極楽浄土へ行けるとされた。
Y. 浄土宗の総本山・知恩院は京都にある。
問3 a. 弥生時代になっても、狩りや漁は行われていた。
- 大津宮からではなく、飛鳥から藤原京に遷都した。
問4 真言宗・天台宗が日本に伝えられたのは、およそ9世紀の初めと考えられている。藤原純友の乱は939~941年、白河上皇の院政は1086年である。
問5 ア. 鎌倉時代の説明として、正しい。
問6 枯山水は石、砂の模様・樹木などで山水を表した日本特有の庭園様式である。
問7 すべて合っている。
問8 地租改正(1873年)・自由党の結成(1881年)・内閣制度の発足(1885年)・下関条約(1895年)・日英同盟(1902年)・韓国併合(1910年)の順。
問9 X. 民本主義を提唱したのは吉野作造である。
Y. 治安警察法ではなく、治安維持法である。
問10 ア. 選挙権年齢が18歳に改められたは2015年で、翌年から施行された。
【大問3】政治経済分野
- 難度:標準
- 時間配分:11分
国際連合を題材に、日本の国際協力や裁判制度などについて訊かれている。
問1 ① アイヌ民族支援法は、初めてアイヌ民族を先住民族と明記しており、従来の政策に加えて地域や産業の振興などのさまざまな課題を解決することを企図してつくられた法律である。
② 世界人権宣言は、初めて人権保障の基準や目標を世界的に示した宣言で、以降の基本的人権の規範となった。正式名称は「人権に関する世界宣言」。
問2 ミャンマーでは2021年、軍部によるクーデターで民主化運動の指導者・政治家であるアウンサンスーチー氏が再び軍に拘束された。以降、軍事政権による非民主的な政治が行われつつある。
問3 (1) イ. 拒否権は安全保障理事会の常任理事国の5か国にだけ与えられている。ウ. 非常任理事国にはなったことがある。
エ. 国連軍は常設ではない。
(2) Ⅰ. 東ティモール(2002~04年)や南スーダン(2012~17年)など、2000年代にも派遣されている。
問4 刑事事件の裁判が確定した後で、誤って認定された事実などがあったと疑われる場合、その是正を目的として裁判のやり直しができる。これを再審制度といい、誤って有罪になってしまった人を救済する制度である。
問5 (1) 植村直己は世界的に知られた登山家・冒険家、緒方貞子は国連高等難民弁務官事務所で弁務官を務めた女性、杉原千畝は第二次大戦下のリトアニアでユダヤ人を救うためビザを発給した外交官である。
(2) 中村哲氏は医師として医療を提供するかたわら、用水路を掘るなどして水を得る手助けをした。また、食物を生産するにはその過程で大量の水が必要とされ、発展途上国から食料を輸入することはその国の水資源を使っていることになるのである。
(3) NGOはnon-governmental organization の頭文字をとったものである。
問6 (1) ジェンダーは広い意味を持つ言葉だが、一般には性別に関する社会的規範と性差という意味である。
(2) 西洋のことわざ「ペン(言論)は剣(武力)よりも強し」。
(3) 女性の教育の権利を訴えたマララ・ユスフザイ氏。
【大問4】現代社会分野
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
月へ移住する際のルール作りを話題とした記述問題。
問1 南極条約で、南極大陸の平和的利用やどこの国にも属さないことが決められている。
問2 イ. 全ての労働者の最低賃金は最低賃金法などの法律で決められている。
問3 エ. 日露戦争のころなので、明治時代である。
問4 3つのワードに注目すると、第6段落の「立場の違いは必ずしも個人の努力や才能だけで決まるのではない」、第5段落の「現実の社会には格差があり、生まれ育った環境などの偶然も関係します」、第4段落の「弱い立場の人に配慮した制度設計に納得できる」が見つかる。これらを筆者の考えに沿ってまとめると、「立場の違いや格差は努力や才能だけで決まるものではなく、生まれ育った環境などの偶然も関係しているので、弱者に配慮した制度設計が必要である」のようになるだろう。
攻略のポイント
多く出題されてよく見かけるような統計から少し外れたデータで問題が作られている印象である。
たとえ見知らぬ統計データが出されたとしても、その今見ている見知らぬデータと自分の知っている知識とを結びつけて正解につなげられるかという、知識と思考の結びつきの問題となってくる。
普段からいろいろな物事の背景・理由・周囲への影響などを考えて、思考力をつけられるよう、訓練しておこう。付け焼き刃の浅い勉強では厳しいテストである。
そして大問4は、やはり国語力のある人に有利な設問だと言わざるを得ないだろう。
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