１万年以上に及ぶ人類の歩みを独自の切り口でまとめあげた人類文明史。本文では、お金の交換機能について説明し、地域間で｢あるモノ｣と｢ほかのモノ｣との交換比率が異なる場合、その差を利用して大きな利益が得られると論じている。｢岩波ジュニア新書｣なので、文章は平易で読みやすいはずだ。｢設問｣も基礎的レベルのものが多い。以下、少しだけ検証してみたい。

[問二]　｢乱文整序｣。

｢問題文の最初｣の｢並び順が入れ替わっているア～エの四つの段落｣を｢正しい順序｣に並び替える。
｢乱文整序｣では、先ず｢乱文｣どうしで順序が特定できるものを確定し、次に｢乱文｣のつながる｢本文｣との関係から｢最初｣と｢最後｣を決めていくのが鉄則。その際、｢根拠｣となるのが｢指示語｣｢接続詞｣｢助詞｣などだ。
ここでは、｢お金は便利なもの｣と述べているエの｢具体例｣が、｢日本中どこでも買い物ができる｣というイなので、｢エ→イ｣は確定できるはず。また、｢お金に『交換』機能があるから｣というウは、｢お金には人の心や行動を支配し、変えてしまう側面もある｣と指摘しているアの｢理由｣になっていので、｢ア→ウ｣も確定だ。
｢本文｣との関係では、ウが｢次段落｣につながることは容易に分かる。従って、｢答え｣は｢エ→イ→ア→ウ｣となる。

＜時間配分目安：２分＞

[問三]　｢語句の空所補充選択肢｣(４問に対し８択)。

本文中の｢Ⅰ～Ⅳの空所｣に入れる｢語｣(ほとんどが｢接続詞｣)を答える。
頌栄に限らず定番の問題。
｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、｢順接｣には十分に注意すること。同じ｢順接｣だと、どれも当てはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。
ここでは、｢逆接｣の選択肢(イ)｢しかし｣がⅡに入ることはすぐ分かる。｢順接｣では、｢添加･塁加｣の(ア)｢そして｣がⅢに、｢例示｣の(エ)｢たとえば｣がⅠに、｢換言｣の(オ)｢つまり｣がⅣに入る。

＜時間配分目安：２分＞

[問七]　｢換言説明選択肢｣(４択)。

傍線部③｢『奴隷貿易』にも役立った｣の｢説明｣を答える。
｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣を試みたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡
ここでは、｢助詞｣の｢も｣に着目。｢原意｣は｢並立｣｡各選択肢の｢最後｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。
(ア)｢勝てなかった｣、
(イ)｢さらに大きなものにした｣、
(ウ)｢『奴隷貿易』にも使われた｣、
(エ)｢買い取ることができた｣｡
どうだろうか？ 当然、(ウ)以外は｢消去｣できるはずだ (ウ)の前半の｢説明｣も特に不適切ではない｡ということで、｢答え｣だ。
このように｢原意消去｣で一発消去も可能なので、活用すること。

＜時間配分目安：１分＞

ひとり胸に秘めた記憶を包み直してくれるお店｢コンビニたそがれ堂｣にまつわる、人と時間の不思議な物語の一篇。本文では、人間の姿になった猫の｢あんず｣が飼い主の｢お兄ちゃん｣と話をし、姿を消すまでの様子を描いた場面。頌栄らしい｢知識問題｣、そして、｢新傾向｣の｢長文自由記述｣も登場する。以下、いくつか確認する。

[問二]　｢条件付き理由説明記述｣(｢40字以上60字以内｣指定)。

傍線部①｢一つ息をついて｣について、｢あんずはなぜ息をついたのか｣を説明する。
｢条件｣は｢本文中の語句を用いる｣こと。先ずは｢記述の要｣となる｢最重要要素｣(正否の決め手となる)を考える。｢理由説明｣なので、｢直接的理由｣となる。
｢息をついた｣のはなぜか？ 誰もが納得する理由は、｢気を落ち着かせたかったから｣だと分かるはずだ。これを｢文末｣として(｢記述｣では｢最重要要素｣を｢文末｣にすること)、
他に｢必要な要素｣を｢字数｣に合わせ｢前｣に加えていく(｢積上げ方式｣が原則)｡
何のためか？⇒｢天体望遠鏡をのぞくため｣(傍線部直後にそうある)、
どうして？ 前の段落に、｢子猫のときにはのぞいても見えなかった｣｢星｣や｢宇宙｣が、｢人の目で見ると見えると、みんなは言っている｣とある｡
そこで、｢息をついた｣ということは、｢本当に見えるのか心配で、緊張していたからだ｣と結びつけたい。以上を｢過不足なく｣まとめればいい。

＜時間配分目安：３分強＞

[問三]　｢文の空所補充選択肢｣(４択)。

本文中の｢②の空所｣に入れる｢文｣を答える。
頌栄ならではの｢高度なひっかけ問題｣｡
｢空所｣は｢あんず｣が｢つぶやいた｣言葉だ。直後に、｢きらきらの中には、死んだお母さん猫の瞳のきらめき……｣などとあるので、選択肢(ア)の｢こんなにきれい｣や(エ)の｢星に、なってた｣、(ウ)の｢お母さん｣といった表現に引きずられると間違ってしまうので要注意。
｢小説｣では、｢動作｣の｢きっかけ｣が最も重要な｢根拠｣だ。｢つぶやく｣直前には、｢宇宙では、星たちが、あんずを見つめてくれていた｣とある。これが｢きっかけ｣で｢つぶやいた｣のだから、その言葉は当然、(イ)の｢ひとりじゃ、なかったんだ｣になる。
｢解法｣を忠実に応用し、惑わされたりひっかかったりしてはいけない。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問五]　｢語の空所補充選択肢｣(４択)。

傍線部④｢■から力が抜けて｣の■に入る｢語｣を答える。
慣用句だ。傍線部直前は｢ほっとするし｣、直後は｢素直な自分になれそう｣となっている。であれば、｢緊張がほぐれる｣といった意味内容のはずだ。
選択肢
(ア)｢肩｣、
(イ)｢肘｣、
(ウ)｢腹｣、
(エ)｢膝｣｡
無論、｢答え｣は｢(ア)｣｡頌栄志望者であれば、知っていて当然だ。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問十]　｢本文全体に関する自由作文｣(字数指定なし、120字程度の解答欄)。

｢『お兄ちゃん』は、命はどこからきて、どこに帰ると考えているか｣について、｢あなたはどう思うか｣を、｢理由｣も含めて｢自由に作文｣する。
いくら｢自由｣といっても、｢本文｣に関することを問われているのだから、先ずは｢手がかり｣｢ヒント｣を探す｡傍線部③直前の｢お兄ちゃん｣の言葉に、｢死んだ｣｢父さんが｣｢宇宙のどこかで暮らしているような気がした｣、｢星の海で父さんに再会できると思っている｣とある。つまり、｢お兄ちゃん｣は｢死んだ人は宇宙＝星の海にいる｣と考えているわけだ。
あとは、自ら考えて｢自由｣にまとめればいい。ただ、｢評価は内容と表現の両面から行う｣と明記されているので、｢表記｣｢文法｣｢構成｣等にも十分に配慮すること。
尚、この｢設問｣は頌栄が求めている｢鑑賞力･想像力･創造力･表現力｣全てが網羅されているので、｢白紙｣のままというのは避けた方がいい。

＜時間配分目安：５～６分＞