｢漢字の書きとり｣(全５問)。示されている(Ａ)～(Ｅ)の各文中の｢カタカナ｣を｢漢字｣に直す。

大問として独立したが、難易度はこれまでとさほど変わらず平易だ。

２問だけ確認しておく｡

(Ｄ)｢このままのジョウタイが続けば｣＝｢状態｣

　　⇒｢態｣は｢14画｣だ。細部まではっきりと記すこと。

(Ｅ)｢この仕事だけに私をセンネンさせて｣＝｢専念｣

　　⇒｢専｣の右上に｢`｣を打たないこと。昨年度は｢専門｣が出題された。｢専｣には要注意だ。

無論、本校志望者は｢全問正解｣でいきたい。尚、本校の｢漢字の書きとり｣では、わざわざ｢ていねいに書きなさい｣という｢条件｣が明記されている。ということは、それだけ厳しく採点されるわけだ。一点一画を意識して記すこと。

＜時間配分目安：全問で２分弱＞

夏目漱石の書き残した若い人への手紙は、小説とは違った感慨を読む者に与える――綴(つづ)られる励まし、ユーモア、人としての深さといった示唆(しさ)に富む手紙を紹介し、文豪･漱石の新たな横顔について説明している。本文では、｢木曜会｣(漱石の面会日)に来ていた若者たちの小説について率直な感想を述べる手紙を紹介している。何人もの作家や学者が登場し、時代背景ゆえの難解な語句も多く、｢手紙｣と｢説明｣が混在するという構成もあって、内容を完全に理解することは難しい。しかし、設問自体の難易度は決して高くはない。多彩な小問が並び、最後に難関の｢自由作文｣が待ち構えている。圧倒的なスピードが求められるので、即断即決で解き進めていきたい。以下、いくつか確認する。

[問一]　｢語句の意味の選択肢｣(全５問/各４択)。｢総合的知識問題｣｡波線部(ａ)｢類のない｣､(ｂ)｢蛇足(だそく)｣､(ｃ)｢お墨付き｣､(ｄ)｢老猾(ろうかつ)な｣､(ｅ)｢通り一遍(いっぺん)｣の｢意味｣を答える。

これらの｢原意｣(本来の意味)に忠実に判別すれば何の問題もないはずなのだが、本文中での意味を意識し過ぎると､間違ってしまう可能性があるので、要注意。

(ａ)･(ｂ)は即答できるはず。それぞれの｢答え｣は、

(ａ)＝(ウ)の｢似たもののない｣･

(ｂ)＝(ア)の｢後から加える余計なもの｣。

他はどうか？ 確認する。

(ｃ)｢お墨付き｣＝｢権威や地位のある人からもらった保証｣のことなので、(ウ)｢大丈夫だという保証｣だ｡

(ｄ)の｢老猾な｣⇒これは難解だ。｢老猾｣＝｢いろいろ経験を積んでいて、悪賢いこと｣なので、(イ)｢経験豊富でずる賢(がしこ)い｣になる｡

(ｅ)｢通り一遍｣＝｢うわべだけで誠意のないこと｣なので、(ウ)の｢形式的で誠意のない様子｣だ⇒(ア)の｢その時だけのこと｣と勘違いしないこと｡

こうした｢語句の意味｣では、｢原意絶対優位の原則｣(｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣を最優先に考えること)を徹底させることが肝要。

＜時間配分目安：全問で２分強＞

[問三]　｢換言説明記述｣(｢40～50字以内｣指定)。傍線部①｢ただ牛のように図々しく進んでいく｣について、｢これはどういうことを言っているのか｣を説明する。

典型的な｢比喩換言｣だ。先ずは｢牛のように｣という｢比喩表現｣の｢原意｣を捉(とら)えたい｡｢力強い｣｢ゆっくり｣｢穏やか｣｢持久力がある｣……、こうした言葉と結びつくはず。で、｢図々しく進んでいく｣わけだが、無論、｢字数｣を考えるとこれだけでは説明不足になる。補足できる内容を｢同一意味段落｣から読み取りたい(｢説明文｣｢論説文｣では｢同一意味段落｣に根拠･手がかりがある)｡傍線部直前に｢然(しか)し無暗(むやみ)にあせっては不可(いけ)ません｣とあり、３段落後では｢牛は超然(周囲を気にせず平気でいる様子)として押して行くのです｣と述べられている。こういった要素を整理して｢過不足なく｣まとめていけばいい。

たとえば、｢周囲のことなど一切気にせず超然として、単に自分の道だけを力強くあせらずに突き進んでいくということ｡｣(49字)といった｢答え｣となる。｢説明文｣｢論説文｣では｢同一意味段落｣を丁寧に読み取ることが肝要。

＜時間配分目安：２分半＞

[問五]　｢空所補充の語句選択肢｣(４択)。本文中の空所　 　に入れるのに｢最も適当な語｣を答える。

空所部は｢　 　を押すのです｣となっている。各選択肢は、(ア)｢相手｣･(イ)｢家畜｣･(ウ)｢根気｣･(エ)｢人間｣だ。

｢押す｣のだから、(ウ)は自動的に｢消去｣。そして、｢同一意味段落｣を確認すると、３行前に｢相手を押しちゃ不可(いけま)せん｣、空所直後には｢文士(小説家、文学にたずさわる人)を押すのではありません｣とある。ということは、｢相手｣ではない｢人｣になるので、｢答え｣は(エ)の｢人間｣だ。

｢空所補充｣では、｢内容｣とは別に｢形式的｣にあてはまらないものを、先ずは｢消去｣することが重要。

＜時間配分目安：１分＞

[問六]　｢具体的内容説明の条件付き抜き出し｣(｢30字前後の部分｣指定)。傍線部②｢君が心配していること｣について、｢この『心配』の内容を具体的に説明している三十字前後の部分｣を抜き出して、｢最初と最後のそれぞれ五字｣を答える。｢条件｣は｢これより後の本文中から探す｣こと。

｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣を捉えた上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。先ずは、｢内容｣を捉えるために｢同一意味段落｣から｢状況｣を読み解いていく。傍線部は｢漱石の手紙｣の一節で、｢芥川龍之介｣が｢新小説｣(当時大変権威のあった文芸雑誌)に発表した小説｢芋粥(いもがゆ)｣を読んだ直後の感想だと分かる。

そして、その感想は｢新思潮(｢芥川｣らが創刊した文芸雑誌)へ書く積(つも)りでやったら、全体の出来栄(できばえ)もっと見事になったろうと思います｣と結ばれている。つまり、｢君｣＝｢芥川龍之介｣が｢新思潮｣ではなく｢新小説｣に｢芋粥｣を発表したことを｢心配｣している、その｢具体的内容｣を抜き出すということだ。｢範囲｣は当然、｢同一意味段落｣。しかも｢条件｣に｢これより後｣とある。丁寧に探していくと、次段落に｢漱石の指摘は要するに、発表の場が新人作家の登竜門(出世の道が開けるもののたとえ)とみなされていた文芸誌であることを意識しすぎて硬(かた)くなり……｣という部分がある。｢発表の場が新人作家の登竜門とみなされていた文芸誌であること｣(29字)、｢内容｣は合致し｢字数｣もＯＫだ。他に適切な部分はない。したがって、｢答え｣は｢発表の場が～であること｣となる。

尚、｢抜き出し｣では｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず全ての｢範囲｣を確認することが肝要。

＜時間配分目安：全問で２分半＞

[問十]　｢条件付き自由作文｣(｢字数指定｣なし、｢150字ほど｣の解答欄)。｢作文問題｣。｢あなたにとって理想の『師弟関係』とはどのようなものか｣を｢作文｣する。｢条件｣は｢実際の経験ほか具体的な例もあげ、作文する｣こと。

｢師弟｣とは｢『師匠(ししょう)』と『弟子(でし)』のことで、『先生と生徒との関係』を指す場合もある｣と説明されている。｢あなたにとって｣なので、何を書いても自由だ。ただ、｢具体例｣をあげる必要があるので無論、｢師匠と弟子｣より｢先生と生徒｣と捉えた方が書きやすい。学校だけでなく、習い事などの｢先生｣でもいい。自らにとっての｢理想｣の授業や練習の｢経験｣を振り返り、その｢経験｣が｢なぜ｣｢どのように｣、｢理想｣になるのかも含めて説明し、まとめていきたい。その際、問題文に｢評価は、表記もふくめ言葉としての正しさ、巧みさにも着目しながら、文章として完結しているもののみ内容を中心に行います｣と記されていることを十分に留意する必要がある。尚、｢作文問題｣は本校が求めている｢鑑賞力･想像力･創造力･表現力｣の全てが網羅されているので、｢白紙｣のままというのは避けた方がいい。

＜時間配分目安：５～６分＞

ひな祭りに｢ようこ｣が｢おばあちゃん｣からもらった人形の名は｢りかちゃん｣――生きている人間の強すぎる気持ちを整理し、感情の濁(にご)りを吸い取る力を持った人形と｢ようこ｣の触れ合いを優しく描いたファンタジー。本文では、みんなが持っている｢リカちゃん人形｣が欲しかった｢ようこ｣のもとへ、｢おばあちゃん｣から｢りかちゃん｣という名前の市松(いちまつ)人形が届いたときの様子が描かれている。分かりづらい言葉もあるが、｢※注｣を使えば内容は理解できる。｢空所補充｣、｢理由説明選択肢｣、｢内容説明記述｣、｢考察記述｣……、目まぐるしく出題形式が変化するので注意したい。以下、いくつかの｢設問｣を検討してみたい。

[問一]　｢語句の空所補充選択肢｣(全３問/６択)。本文中の ａ ～ ｃ の空所に入れる｢適当な語｣を答える。

各選択肢は｢接続詞｣と｢副詞｣だ。｢接続詞｣は本校に限らずどこの学校でも定番の問題。｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。

順に｢答え｣をチェックしていく。

ａ には｢逆接｣の｢接続詞｣の(オ)｢でも｣(｢それでも｣の略)､

ｂ には｢転換｣の｢接続詞｣の(ア)｢さて｣､

ｃ には｢順接｣の｢接続詞｣の(イ)｢すると｣がそれぞれ入ると分かるはずだ｡

｢逆接｣以外では、いくつかの｢候補｣をしっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要。

＜時間配分目安：全問で１分半＞

[問三]　｢換言説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢60字ほど｣の解答欄)。傍線部①｢なんでこんなことになったんだろう｣について、｢『こんなこと』の指す内容｣を説明する。

典型的な｢指示語換言説明｣だ。｢指示語が出たら前を見よ！｣が鉄則。直前から、｢こんなこと｣＝｢『ようこ』はリカちゃん人形が欲しかったのに、『おばあちゃん』からプレゼントされたのは、大きさが｢リカちゃん｣の倍近くもある真っ黒の髪(かみ)の市松人形だったということ｣と読み取れる。あとは、｢指定字数｣に応じて、的確にまとめていく。たとえば、｢ようこが欲しかったのはリカちゃん人形だったが、おばあちゃんがプレゼントしてくれたのは全く違う市松人形だったということ｡｣(59字)といった｢答え｣だ。

｢説明記述｣では、｢最重要ポイント｣を必ず｢文末｣にすること。

＜時間配分目安：２分＞

[問五]　｢理由説明選択肢｣(４択)。傍線部③｢いつもなら、ようこも電話口に出てありがとうを言うのだけれど、今日のようこはそんな気分になれない｣について、｢なぜ『ようこ』は『ありがとう』と言えないのか｣を答える。

｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣を試みたい(原意絶対優位の原則)｡ここは｢理由説明｣なので、｢『ありがとう』と言えない｣ことの｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣する。各選択肢の｢文末｣と照合する(｢選択肢説明｣での最重要ポイントは｢文末｣だ)｡

(ア)｢辛(つら)く悲しかったから｣⇒｢『ありがとう』と言えない｣､

(イ)｢後悔しているから｣⇒｢『ありがとう』と言えない｣､

(ウ)｢腹を立てていたから｣⇒｢『ありがとう』と言えない｣､

(エ) ｢不満を抱いているから｣⇒｢『ありがとう』と言えない｣｡

(ア)と(イ)は即｢消去｣できなくてはいけない。また、｢なぜ『ようこ』は『ありがとう』と言えないのか｣と｢現在｣のことを問われているのに、(ウ)は｢腹を立てていた｣と｢過去｣で説明しているので｢消去｣だと判別できるはずだ。念のために他の部分の説明を｢同一場面｣で確認しても特に誤っていないので(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢根拠･手がかり｣がある)、｢答え｣は(エ)になる。｢一発消去｣だ。

｢紛らわしい選択肢説明｣にも惑わされず、時間短縮もできる｢原意消去｣､練習を重ねて完璧に活用できるようにすることが肝要。尚、その際には｢時制｣も判別基準になると心得よ。

＜時間配分目安：１分弱＞

[問七]　｢続きの表現の考察記述｣(｢15字以内｣指定。句読点不要)。傍線部⑤の｢こんなにおしゃれしてたのに｣の｢後に続くと思われる言葉を、十五字以内で考えて｣答える。

先ずは、｢指示語｣を開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢こんな｣＝｢おかっぱの市松人形(りかちゃん)が高級絹織物の晴れ着を着ている様子｣だと分かる。次に、｢同一場面｣から｢状況｣を読み解く。傍線部は、｢ようこ｣が｢箱から出してもいなかった『りかちゃん』｣に対して、｢何で抱いてもみなかったんだろう｣と｢後悔が胸に拡(ひろ)がった｣直後に、｢りかちゃん｣を｢両手で抱き上げて、頬(ほお)ずりして｣いる｢状況｣での｢思い｣だと読み取れるはずだ。そして、直後では｢……りかちゃん｣と｢声に出して呼びかけ｣ていることを考え合わせると、｢後に続くと思われる言葉｣は｢りかちゃん｣への｢ようこ｣の｢心の言葉｣で、申し訳ないという｢思い｣を表すと類推したい。

したがって、たとえば、｢(こんなにおしゃれしてたのに)いちどもだいてあげないでごめん｣(15字)といった｢答え｣になる。

一種の｢創作問題｣ではあるが、｢同一場面｣の｢文脈｣を正確に読み解いて類推する必要がある。

＜時間配分目安：１分半＞