臨床医として睡眠障害の外来を担当する一方で睡眠の基礎研究もこなす筆者が、｢生物時計｣研究の現状を自らの研究アプローチも織り交ぜつつ紹介している。本文では、動植物が｢概日周期｣を刻む｢生物時計｣を持っていることと、そのメリットに関して説明している。｢生物学｣がテーマだが、とても分かりやすく説明されており、内容もすぐに理解できるはずだ。｢設問｣も本校らしいオーソドックスなものだ。ただ、最後の｢説明記述｣では苦心するかも知れない。以下、いくつか検証してみたい。

[１]　｢漢字の書きとり｣(全４問)。
例年と比べ難易度が明らかに上がっている。｢過去問｣に合わせた準備だけをしていた本校志望者はとまどったかも知れない｡確認する｡(ａ)｢ユライする｣(＝｢由来｣)、(ｂ)｢テチョウでスケジュールを確認｣(＝｢手帳｣)、(ｃ)｢光をカンチ｣(＝｢感知｣)、(ｄ)｢コウリツも大切｣(＝｢効率｣)｡やはり、万全の準備が欠かせない。｢トメ｣｢ハネ｣等にも要注意。

＜時間配分目安：１分＞

[２]　｢語句の空所補充選択肢｣(３問/５択)。
本文中の空所  Ａ  ～  Ｃ  に｢入る言葉｣を答える。各選択肢は｢接続詞｣､本校に限らず定番の問題だ。｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、｢順接｣には十分に注意すること。同じ｢順接｣だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。で、それぞれの空所は、  Ａ  には｢結果｣を示す選択肢(イ)の｢そのため｣､   Ｂ  には｢転換｣を示す(エ)の｢さて｣､   Ｃ   には｢逆接｣を示す(ア)の｢しかし｣が入ると判別できるはずだ。｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず全てを｢代入確認｣すること。尚、   Ｂ  のように段落冒頭の｢接続詞｣は、前段落全体の内容を受けているので注意すること。

＜時間配分目安：１分半＞

[４]　｢換言説明抜き出し｣(｢25字以内｣指定)。
傍線部②の｢内因性･自律的なリズム｣とは｢どういうリズムなのか｣を抜き出す。｢抜き出し｣では、｢抜き出し内容｣をとらえた上で｢抜き出し範囲｣を絞り込んでいく。先ずは、｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という｢重要解法｣)から｢内容｣をとらえていきたい。前後から､この｢リズム｣とは｢生物リズム｣のひとつで、｢外因性･他律的なリズム｣に対応するものだと分かる。次に、｢抜き出し範囲｣だ。最優先は｢同一意味段落｣なので(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)、｢段落相互関係｣(これも｢重要解法｣のひとつ)でつかむ。傍線部の段落のみが｢同一意味段落｣だと判断できなくてはいけない。確認していく。すると、傍線部の５行後に｢生物がもともと持っていて自分で作り出しているリズム｣とある。｢もともと持っていて｣＝｢内因性｣､｢自分で作り出している｣＝｢自律的｣と合致する。｢字数｣もＯＫだ。従って、｢生物がもともと持っていて自分で作り出しているリズム｣が｢答え｣になる｡｢抜き出し設問｣では、｢内容｣→｢範囲｣と段階的に解いていくこと。

＜時間配分目安：１分半＞

[５]　｢換言説明選択肢｣(４択)。
傍線部③｢温度補償性と呼ばれる大切な性質｣について、｢この意味｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)したいが、何の｢性質｣なのかが分からなくては始まらない。｢同一意味段落｣を確認すると、直前に｢体温変化があっても、生物時計はだいたい24時間で一周してくれないと困ります｣とある。ということは、｢生物時計｣の｢動き方｣の｢性質｣だと分かるはずだ。また、｢体温変化があっても｣という｢条件｣がある。まさしくこれは、｢温度補償性｣の｢原意｣に通じる。であれば、｢温度補償性と呼ばれる大切な性質｣＝｢体温変化があっても、生物時計がだいたい24時間で一周する｣という｢性質｣だとなる。ここで、各選択肢の｢文末｣(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)を確認する。選択肢(ア)と(イ)は｢動き｣に関する｢性質｣で、(ウ)と(エ)は｢温度｣に関する｢性質｣なので、(ウ)(エ)は｢消去｣でき、さらに、｢ある温度さえ保てば｣となっている(ア)ではなくて、｢温度に関わりなく｣とある(イ)が｢答え｣だと判別できなくてはいけない。｢原意消去｣を突破口にして、一気に解決というパターンだ。本校では｢解法｣を駆使することが何より肝要ということだ。

＜時間配分目安：１分半＞

[９]　｢条件つき内容説明記述｣(｢60字以内｣指定)。
｢『生物時計』を持っていると、生物にはどんなメリットがあるか｣を説明する。｢条件｣は｢本文から読み取る｣こと。そもそも本文は｢生物時計｣がテーマだということは分かっているはずで、しかも｢本文から読み取る｣という｢条件｣もあり、結局、｢要旨｣を説明することが求められているわけだ。｢説明文｣で｢要旨｣は通常、最後の｢意味段落｣にまとめられていることは知っているはず。本文では、傍線④の次段落から最後までだとすぐに分かる。そこには、｢生物時計｣の｢役割｣が３つまとめられている。第１は｢どのような状況(環境)でも時刻を知ることができる｣､第２は｢季節の変化を測り効率よく準備ができる｣、第３は｢方角を決めることができる動物もいる｣ということだ。この３点を｢過不足なく｣まとめていけばいい。たとえば、｢どのような状況でも時刻が分かり､季節の変化を測ることで効率よく準備ができ､方角を決められる動物もいるというメリット。｣といった｢答え｣になる｡｢本文から読み取る｣＝｢本文合致｣ということを心得よ。

家族、友達、そして､自分自身と初めて本気でぶつかった夏――｡｢ぼく｣(大地)と｢キング｣のひたむきさが胸を衝くサッカー少年の青春ストーリー。本文では、レギュラーを外され問題行動を起こした｢キング｣を｢ぼく｣が訪ね､深く傷ついてしまう様子が描かれている。内容はとても分かりやすい。が、本校らしい｢ごくフツーの問題に潜むワナ｣が仕掛けられている。以下、いくつか確認する。

[１]　｢場所説明記述｣(｢11～15以内｣指定)。
｢『ぼく』と『キング』はどこで話しているか｣､その｢場所｣を｢本文から読み取り｣説明する。あまり類例のない問題で､とまどうかも知れない。が、｢場所｣は｢小説｣の読解では重要な要素なので、しっかりと押さえておかなくてはいけない。傍線③の直前に｢ぼくはガラスの大窓の外、見たところで楽しくもなんともない駅の通路を見てる｣とあり、また、最後の場面に｢キングはまだカフェのカウンター席に座ってる｣ともある。ここから｢場所｣が読み取れるはずだ。たとえば、｢駅近くのカフェのカウンター席｡｣といった｢答え｣になる。｢小説｣では、｢時｣｢場所｣｢人物｣は｢場面分け｣でも重要な要素なので、確実に押さえながら読むこと。

＜時間配分目安：１分＞

[３]　｢心情表現選択肢｣(５択)。
本文中に２ヶ所ある波線部｢どうこう｣について、｢共通してどのような心情を表しているか｣を答える。｢どうこう｣とは主に否定表現に用いて、｢特にそれと定めず、さまざまな行為や事態をひっくるめて指し示す｣､一種の｢指示語｣だということは知っているはずだ。従って、傍線部前後から｢心情｣を読み取る必要がある(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡２ヶ所のどちらで判断してもいいが、後の方が分かりやすい。｢キング｣のセリフで｢本気で言ったわけじゃない。大地がどうこうじゃないんだ｣とあり、｢イラついちゃってさ｣と続いている。ということは、｢キング｣が言った｢どうこう｣は､｢イラつい｣ている｢心情｣と結びついているわけだ。各選択肢を確認する。(ア)｢違和感｣､(イ)｢好感｣､(ウ)｢反感｣､(エ)｢優越感｣､(オ)｢劣等感｣｡｢イラついている｣のだから当然、｢反感｣以外は｢消去｣できなくてはいけない。よって、｢答え｣は｢(ウ)｣だ。尚、各選択肢の｢言葉｣の意味でひとつでも知らないものがあった諸君は要注意。｢語彙力｣が不足していると自覚すること。

＜時間配分目安：１分半＞

[４]　｢空所補充の心情表現選択肢｣(５択)。
本文中の空所  　　  に｢あてはまる語句｣を答える。｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で確認する。｢  　　  が音に出る｣となっている｡つまり、｢出ている音｣＝  　　  ということだ。では、どのような｢音｣なのか？　直前に｢氷をシャリシャリとかみ砕いた｣とある。各選択肢は、(ア)｢あせり｣､(イ)｢いらだち｣､(ウ)｢不安｣､(エ)｢悲しみ｣､(オ)｢なさけなさ｣｡｢シャリシャリとかみ砕いた｣｢音｣であれば、｢いらだち｣の(イ)が｢答え｣だと判別できるはずだ。ここでは｢音｣から｢心情｣をとらえた。｢小説｣では、｢セリフ｣｢ト書き｣｢動作｣｢情景｣などといった多角的な要素から多面的に｢心情｣をつかむことが求められる。

＜時間配分目安：１分＞

[７]　｢換言説明選択肢｣(５択)。
傍線部④｢その壁はガラスだから見通すことはできる。でも確実に存在した｣について、｢どのようなことを表しているか｣を答える。無論。先ずは｢原意消去｣｡各選択肢の｢文末｣で、｢ガラス｣の｢壁｣が｢確実に存在した｣という｢原意｣に結びつかないものを｢消去｣したい。(ア)｢つながりは断たれた｣､(イ)｢決して許さないだろう｣､(ウ)｢互いに不信感をいだき続けるだろう｣､(エ)｢もどるつもりがないとさとった｣､(オ)｢信じることはできない｣｡｢壁｣が｢存在した｣⇒当然、｢つながりは断たれた｣以外は｢消去｣だ。(ア)は前半の部分の説明も特に誤ってはいない。なので｢答え｣ということだ。結果として｢一発消去｣｡｢原意消去｣は大いに活用すべき。

＜時間配分目安：１分以内＞