豊島岡女子学園中学校 入試対策
2014年度「豊島岡女子学園中学校の算数」
攻略のための学習方法
[難易度]
豊島岡の算数は、他の女子校と一線を画した仕上がりになっている。
ほとんどの女子校においては、ある程度の「速さ」と「正確さ」があれば合格ラインを超えることは出来る。どちらかだけでも十分、という学校もたくさんある。
中堅校の場合は、「どれだけ出来るか」というよりは、「どれだけ間違えないで進めるか」によって勝負が決まり、初めからミスの数も計算のうちに入っている。
相手よりもミスを減らせばよいのであって、ノーミスは眼中にない。
しかし、豊島岡の場合、この二つの要素に加えて、「深さ」-難易度の高い問題に対処し、しかも、正解できるという条件が加わってくる。
受験勉強を真摯に続けていれば、「速さ」や「正確さ」は身についてくる。本人の学力が落ちていくと言うことはあり得ないからだ。
しかし、「深さ」だけは最後まで持てない可能性がある。指導の中で時間をかけて問題を解説してもらい理解したとしても、「自分で一から解く力」を身につけるのは非常に大変なことだ。ここが最後の関門となる。普通の学校であれば「ここまでできていれば必要十分」という範疇を超えて解いていかなければいけない。
豊島岡の過去問をやらせてみて、たとえばある生徒が60%くらいの得点を取ったとしよう。基本的にはほぼパーフェクトと言える。スピードも正確さも申し分ない。生徒としては勉強法をたしなめられたり、注意を受けたりする箇所はほぼないわけだ。しかしそれでも合格点には10点以上不足していることと思われる。
なぜか?豊島岡の受験生たちはそれを超えて解けてしまうからである。当たり前のことを言っているようだが、これは相当な厳しさと言える。問題作成者がたまたま手心を加え少しでも問題をやさしくしようものなら、平均点は優に80点を超えてしまう。平均が80と言うことは、90%を目指さなくてはいけないことになる。これはどこの学校にもあり得ないことなのだ。
ただ、算数のテストとしてみた場合、その難度というのはきわめて正統的なものだ。
奇をてらった問題もなければ、途方もなく時間のかかる作業を含む問題もない。算数の入試問題としてオーソドックスに発展した形がそこにある。
中学年から真面目に問題演習を積み重ね、数え切れないほどの解法を身につけてきた生徒のみが、その問題への解き方を頭に浮かべることができるだろう。
たいていの問題は典型問題の延長線上にあるものであり、一部の男子上位校のように「センスがなければ解けない」とか、「ひらめきが必要だ」と言うことはない。あくまでも受験算数の頂点の一つとして受験生たちの挑戦を待っているのである。
また、豊島岡の場合、その難易度は他の科目にも波及している。やはり「深さ」がどの科目でも必要となる。そんな中で、ある程度実力アップの道筋がわかりやすい算数はましな方かもしれない。
分野別に見ると、以下の二つになる。
[立体図形]
「立体図形」は、豊島岡女子克服のための重要な分野である。
ここ数年は、最期の大問として登場することが多く、そしてどの問題の難易度も高い。普通の学校であればいわゆる「捨て問」として処理してもいいレベルなのだ。しかし、この学校においては、「解くための」問題として存在している。
この分野の問題を手がける場合には、十分な時間をかけよう。「何分で解く」という答えだけを導く要領よりも「解くために必要な技術」を身につける時間を作りたい。
具体的に言うと、与えられた図以外の作図をこなせるようになっておきたい。
本年度【大問Ⅵ】においては、斜めから見た断面図が必要だった。これは、模範解答を見て納得したからと言って次に書けるものではない。フリーハンドで図が書けるように練習しなくてはいけない。立体図形の見取り図・展開図などをササっと書けるだろうか。作図できる能力をハイスペックで自分のものにしておきたい。
また、切断問題も多いことから、立体的視点もできれば養っておきたい。切断後に出来る立体のイメージを頭に浮かべて、それを手かがりに解法を考えつくということだ。これも容易ならないレベルの技術であるがいくつもの類似問題をこなしていきながらなんとか身につけてもらいたい。
さらに立体図形の問題にもかかわらず、図が書かれていないものもある。この場合は、一から自分で図を書いて問題を整理することになる。そのとき、最も適切な図を選択できるかどうか。立体図形の場合は、普通は見取り図から書くことが多いが問題によっては断面図で問題が解決するときもある。これも模範解答を見て納得、ではなくて自分自身がその図を選んで書けるよう訓練しておきたい。
繰り返しになるが、ここでいう最後の大問「立体図形」は通常であれば「捨て問」といえる水準のものなのだ。しかし、ここを落とすと、他の問題をほぼ正解しない限り合格ラインに届かなくなる。では、他の分野が簡単かというとそんなことはないわけで、最後の設問ひとつに至るまでしっかり目を通して解き方またそのための技術を確認しておきたい。
[しらべる問題]
「しらべる問題(場合の数ふくむ)」では、そつのない手順を繰り出せるかどうか。
平成24年度【大問Ⅳ】などで、まさか図3に続けて三角形と数字を書いていく人はいないと思いたい…まさか色をぬったりはしていないだろうか?規則が分るのが一番だが、どうしても数え上げるときにも数字だけを書いていくというように時間にかからない手法を使えるようにしておきたい。
他にも、「速さの問題」「割合と比」など重要な分野ではあるが、十分に解ける範囲であると言うことで割愛したい。
豊島岡の算数ではこれ以外にも、標準的難易度をもつ前半の一行問題を2・3分で完璧にこなしていかなくてはならないというスピード養成が必要となる。問題を解く速さに関しては、自覚的にスピードを上げるよう心がけることだ。マイペース、という耳あたりのよい言葉は捨ててもらいたい。鉛筆を動かす筋肉さえ早く動かすよう脳に伝達し、無駄のない思考で正解に到達できるよう鍛えていくしかない。姿勢を正して問題に相対し、問題文を読み終わったときにはもう正解までの道筋がたっていて、すでに手は作図や立式に入っているくらいに、イメージで言えば陸上の短距離の選手のような切れ味で問題にあたっていってもらいたい。
[最後に]
豊島岡の算数は確かに難しいものである。しかし、受験生の相手は大学生や大人ではない。同じ小学6年生の女子なのだ。
小学6年生として成熟した学力を持てるよう、残された時間を有効に使っていけば必ず合格までの道が見えてくる。
こころざしを高く持ち、豊島岡の校門をくぐる日を夢見て、難問に挑戦していこう!
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2014年度「豊島岡女子学園中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が6、小問が18。例年ほぼきっちり決まっている。
時間に対して適量ではあるが、この適量には若干の説明が必要となる。前半の小問を「1問 2分」でこなせたとしての「適量」なのであって、ここに4分も5分も費やすようでは最期まで辿り着けない。そういう意味では分量は多く、全般的に見て難易度は高い。
本年度の問題においても、解けそうな問題はいくつも見あたるがそれらはすべて正解していかないと合格点は見えてこない。
前半の標準的な問題をそつなく正確にこなし、ノーミスで通過してから、後半のボリュームあふれる大問に挑戦していきたい。
[大問Ⅰ]小問
- 時間配分:8分
ここは「小手調べ」。説明すべき設問はない。
(3)を間違えたor解き方を忘れてしまった生徒はすぐさま教材に戻って復習しておこう。
[大問Ⅱ]小問
- 時間配分:12分
少しグレードが上がるがここもノーミスで行きたい。
(1)は素因数分解による解法を紹介されると思うが、書き出しても時間はかからない。
(2)は問題集で何度も出会った問題だろう。それぞれ周期の最小公倍数までは表にして書いていくというやり方。最後の詰めまでよどみなく処理を進められるかどうかがポイント。正解したとしても5分以上かかるようではまだ「修行が足りない」。
(3)は補助線がひければすぐ解答に結びつく。
(4)は試される問題か。条件を読み終わったときに解き方が思い出せればすばらしい。また、ABとADが等しいところから、2つの三角形をつなぎ合わせればよいとヒントを受けても、もう1つヤマがあるのでそこもクリアできるかどうか。平面図形「ちょい応用」モードを身につけているかどうかが判断されよう。もちろん、速読即解が期待される。
[大問Ⅲ]数の性質・整理する問題
- 時間配分:6分
(1)は問題文が読めていれば普通に解ける問題。
(2)がカギ。通常の学校であれば(1)を解いて(2)は飛ばそう!といきたいところだが、豊島岡の場合は、そうは問屋が卸さない。ここもうまく数を処理として正解まで持って行きたい。
(2)は解けなくても仕方ないが、後半ハンディを背負うことになる。
【大問Ⅳ】動点グラフと平面図形
- 時間配分:8分
平面図形の上を点が動き、それをグラフにまとめたという問題はいたる所に見られるものの、なかなかユニークな解法を必要とする問題で、本年度最も面白く感じた問題である。
(1)において、色のついた部分を「三角形ABO」「三角形BCO」というように区分し、それをグラフと関連づけて「三角形ADO」の面積を求めるところまで結びつけられただろうか。ほとんど計算は要らないのに難易度が高いというひらめきを必要とされる設問。ここは苦戦しても仕方ないかもしれない。
(2)は(1)の結果を利用するのだが、いかにもつけたし的な設問。OH、OIをそれぞれ三角形の高さとして、「面積÷底辺」で求めさえすればよい。
しかし、(1)が出来ていないとどうしようもない。(1)が正解だった生徒は(2)もあたっているだろう。「◎か×か」というこわい問題だった。
【大問Ⅴ】食塩水の問題
- 時間配分:6分
食塩水の濃さと消去算を融合させた問題で、あまり珍しいものではない。
ただ、(1)だけでなく(2)もできれば、(3)まで解けておきたいという問題。そうなると要求はきつくなる。
(3)はてんびんを使っても面積図を使ってもよいが最後まで解ききれるパワーが必要だ。
【大問Ⅵ】立体図形
- 時間配分:8分
これも(1)から難問だ。いや、豊島岡の算数のために長い時間と多くの努力を惜しまなかった生徒にとっては、斜めからの断面図を書くなど当たり前に出来るのだろうか。最期の問題がやはり最も難しかった。
(1)が出来た以上は(2)まで目を通しておきたい。
この学校では珍しくない立体図形に相似形をからませたもの。男子上位校ばりの難易度ではあるが、男子になったつもりで挑戦しておこう。
今後もこういったレベルで出題されるのは間違いないのだから。
攻略のポイント
いくつもの学校を見てきたが、「速さ」「正確さ」「深さ」をここまで要求される学校は少ない。いや、女子校ではトップと言っても過言ではないだろう。
受験者平均は約63%、合格者平均は77%なので70%の得点を期待されるが、このレベルでの70%はまったく容易ではない。
【大問Ⅰ】・【大問Ⅱ】は速く正確に全問正解を目指したい、ではなくて「達成する」。目指していただけではダメだ。全問正解は最低レベルの話である。
【大問Ⅲ】~【大問Ⅵ】も設問10のうち6個は正解できるようになりたい。ここまで行ければ合格ラインは突破できることになるだろう。
そのための攻略法としては、
1.女子校全体に必要とされる「速読即解」の力は普段の勉強の中で身につけておきたい。どんな問題にもていねいにあたる態度、それを忘れてはいけない。
2.質の高い問題が解けるようになるほど厳しい「壁」はない。これも1歩1歩の積み重ねである。難易度を急に上げるのではなく教えていただいている先生方のアドバイスを聞いて問題を選択してもらおう。そして、無理のない力作りを時間をかけて行っていきたい。
3.算数だけに偏らず、どの科目にもまんべんなく時間が注げる余裕と勉強量を誇りたい。
豊島岡の算数は誰にとっても容易ではない壁である。初めのうちはその難しさに舌を巻くかもしれない。過去問をやってみたら取ったこともないような点を取るかもしれない。しかし、それは今までの受験生も通ってきた道なのだ。そこで挫けることなく、地道に合格点を捕らえたものこそが来年の合格を手にするのである。難しいからこそ、やりがいもある。逃げることなく、まっ正面から挑戦して欲しい。
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