豊島岡女子学園中学校 入試対策
2020年度「豊島岡女子学園中学校の算数」
攻略のための学習方法
豊島岡の算数は他の女子校と一線を画した仕上がりになっている。
ほとんどの女子校においては,ある程度の「速さ」と「正確さ」があれば合格ラインを超えることは出来る。どちらかだけでも十分,という学校もたくさんある。中堅校の場合は「どれだけ出来るか」というよりは「どれだけ間違えないで進めるか」によって勝負が決まり,初めからミスの数も計算のうちに入っている。相手よりもミスを減らせばよいのであって,ノーミスは眼中にない。
しかし豊島岡の場合,この二つの要素に加えて「深さ」-難易度の高い問題に対処し,しかも正解できるという条件が加わってくる。受験勉強を真摯に続けていれば「速さ」や「正確さ」は身についてくる。本人の学力が落ちていくと言うことはあり得ないからだ。しかし「深さ」だけは最後まで持てない可能性がある。指導の中で時間をかけて問題を解説してもらい理解したとしても,「自分で一から解く力」を身につけるのは非常に大変なことだ。ここが最後の関門となる。普通の学校であれば「ここまでできていれば必要十分」という範疇を超えて解いていかなければいけない。
豊島岡の過去問をやらせてみて,たとえばある生徒が60%くらいの得点を取ったとしよう。基本的にはほぼパーフェクトと言える。スピードも正確さも申し分ない。生徒としては勉強法をたしなめられたり,注意を受けたりする箇所はほぼないわけだ。しかしそれでも合格点には10点以上不足していることと思われる。
なぜか。豊島岡の受験生たちはそれを超えて解けてしまうからである。当たり前のことを言っているようだが,これは相当な厳しさと言える。問題作成者がたまたま手心を加え少しでも問題をやさしくしようものなら,平均点は優に80点を超えてしまう(第2回・第3回のテストを含めると今まで何度も起こっていることだ)。平均が80点と言うことは,90%を目指さなくてはいけないことになる。これはどこの学校にもあり得ないことなのだ。
ただ,算数のテストとしてみた場合,その難度というのはきわめて正統的なものだ。
奇をてらった問題もなければ,途方もなく時間のかかる作業を含む問題もない。算数の入試問題としてオーソドックスに発展した形がそこにある。中学年から真面目に問題演習を積み重ね,数え切れないほどの解法を身につけてきた生徒のみがその問題への解き方を頭に浮かべることができるだろう。たいていの問題は典型題の先にあるものであり,一部の男子上位校のように「センスがなければ解けない」とか「ひらめきが必要だ」と言うことはない。あくまでも受験算数の頂点の一つとして受験生たちの挑戦を待っているのである。
また,豊島岡の場合,その難易度は他の科目にも波及している。やはり「深さ」がどの科目でも必要となる。そんな中で,ある程度実力アップの道筋がわかりやすい算数はましな方かもしれない。
分野別に二つほど。
「立体図形」は豊島岡克服のための重要な分野である。ここ数年は最期の大問として登場することが多く,そしてどの問題の難易度も高い。普通の学校であればいわゆる「捨て問」として処理してもいいレベルなのだ。しかし,この学校においては,「解くための」問題として存在している。
この分野の問題を手がける場合には,十分な時間をかけよう。「何分で解く」という答えだけを導く要領よりも「解くために必要な技術」を身につける時間を作りたい。
具体的に言うと,与えられた図以外の作図をこなせるようになっておきたい。本年(2020)度【大問6】においては,さまざまな方向からの投影図が必要だった。これは,模範解答を見て納得したからと言って次に書けるものではない。フリーハンドで図が書けるように練習しなくてはいけない。立体図形の見取り図・展開図などをササっと書けるだろうか。作図できる能力をハイスペックで自分のものにしておきたい。
また,切断問題も多いことから,立体的視点もできれば養っておきたい。切断後に出来る立体のイメージを頭に浮かべて,それを手かがりに解法を考えつくということだ。これも容易ならないレベルの技術であるがいくつもの類似問題をこなしていきながらなんとか身につけてもらいたい。
さらに立体図形の問題にもかかわらず,図が書かれていないものもある。この場合は,一から自分で図を書いて問題を整理することになる。そのとき,最も適切な図を選択できるかどうか。立体図形の場合は,普通は見取り図から書くことが多いが問題によっては断面図で問題が解決するときもある。これも模範解答を見て納得,ではなくて自分自身がその図を選んで書けるよう訓練しておきたい。
繰り返すことになるが,ここでいう最後の大問「立体図形」は通常であれば「捨て問」といえる水準のものなのだ。しかしここを落とすと,他の問題をほぼ正解しない限り合格ラインに届かなくなる。では,他の分野が簡単かというとそんなことはないわけで,最後の設問ひとつに至るまでしっかり目を通して解き方またそのための技術を確認しておきたい。
「しらべる問題(場合の数ふくむ)」ではそつのない手順を繰り出せるかどうか。
しかし2017年度【大問5】では,すべての場合において調べておくという作業が必要とされ、ただただそつなく問題をこなしさえすればよいというものでもない。ときには愚直とも思える作業も必要となり、まさに臨機応変,その場での対応力が合否を分ける結果となる。
他にも「速さの問題」「割合と比」など重要な分野ではあるが,十分に解ける範囲であると言うことで割愛したい。
豊島岡の算数ではこれ以外にも,標準的難易度をもつ前半の一行問題を2・3分で完璧にこなしていかなくてはならないというスピード養成が必要となる。問題を解く速さに関しては,自覚的にスピードを上げるよう心がけることだ。マイペース,という耳あたりのよい言葉は捨ててもらいたい。鉛筆を動かす筋肉さえ早く動かすよう脳に伝達し,無駄のない思考で正解に到達できるよう鍛えていくしかない。姿勢を正して問題に相対し,問題文を読み終わったときにはもう正解までの道筋がたっていて,すでに手は作図や立式に入っているくらいに,イメージで言えば陸上の短距離の選手のような切れ味で問題にあたっていってもらいたい。
豊島岡の算数は確かに難しいものである。しかし受験生の相手は大学生や大人ではない。同じ小学6年生の女子なのだ。小学6年生として成熟した学力を持てるよう,残された時間を有効に使っていけば必ず合格までの道が見えてくる。
こころざしを高く持ち,豊島岡の校門をくぐる日を夢見て,難問に挑戦してもらいたい。
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2020年度「豊島岡女子学園中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が6,小問が18。この分量は本年度もまた不変。
テスト形式は前半の小問(大問1・2)は基礎的なものまたは標準レベルまでのもの、中盤(大問3・4)は標準からやや難しめの問題、後半(大問5・6)は難易度の高い問題と整然とした構成になっている。分量も時間に対して適切である。
【大問3】以降の応用問題は設問によって難易度が大きく異なり、最後の【大問6】に至るまで(1)は着実に正解しておきたい。合格へのポイントは(2)以降に見られる高水準の設問にいくつ対応できるか、である。算数で勝負したい生徒は一つでも多く挑戦してものにしたい。
【大問1】計算・数の性質・分数・約束記号
- 難度:易
- 時間配分:8分
- ★必答問題
(1)は分数・小数の混合四則計算であるが、とりあえず頭をほぐすために設置されている易問。
(2)もまた頭をほぐす系の問題といっては良いものの、問われているレベルが低すぎてかえって「こんなのでいいんだろうか?」と疑問を抱いてしまうくらい。倍数・約数すら使わないのでかえって新鮮…ではある。
(3)は典型的な分数の問題で、202を素因数分解して割りきれる数を探していくのだが202=2×101にしかならないので問題が基礎レベルに堕している。せめて、a×b×cくらいに素因数分解できないと豊島岡の受験生たちには物足りない。
(4)は約束記号の問題。他に語ることはない。
当然全問正解して進みたい。
【大問2】分配算・場合の数・時計算・平面図形の求積
- 難度:標準
- 時間配分:12分
- ★必答問題
【大問1】よりはやや手強く、時間を費やす設問もあるが、合格するためには全問正解もしくは悪くても1問不正解にとどめたい。
(1)は小4か小5時代を思い出させてくれる分配算の基本的な問題。
(2)の「場合の数」に至り、このテストではじめて差がつき始める箇所に突き当たる。2けた・3けた・4けたと場合分けをして、2を2回だけ使う数を「積の法則」を用いて調べていく。
(3)は一風変わった「時計算」で、ここは受験生がつまるところであろう。類似問題に触れたことがない限り、初の失点を経験することになるかも知れない。解き方は「なあんだ」と思われるほど平易なものの初出の問題にはとまどうものだ。
(4)は逆に既視感ただよう問題で、聡い受験生であれば「答えは三角形ABCの面積」と覚えているはず。しかし、そのときの三角形は「5:12:13」か「3:4:5」の辺比を持つ直角三角形だったはずだ。ここでは直角二等辺三角形…果たして結果は同じになるのだろうか?
(3)以外は着実に正解して中盤に進もう。
【大問3】速さと比
- 難度:標準
- 時間配分:6分
- ★必答問題
豊島岡中盤に頻出の「速さの問題」はそれほど高い難度になると言うことはなく、ここも標準的な問題になっていて、ぜひ正解しておきたい。
(1)はAさん、Bさんの速さをそれぞれ比で表し、問題を整理してから歩いた距離と符合させると答えが求まるようだ。
(2)は(1)の正解者のみが解答権を得る設問で、逆に(1)が出来ていればボーナスステージである。
線分図を書いてていねいに解き進みたい。
【大問4】平面図形と比
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
本年度のテスト構成でいくと、この【大問4】が正解できたかどうかが大きく合否を道を分けたと後付けできる。後述する【大問5】が予想に比べて平易、【大問6】がかなりの難問なので、合格ラインの70%を超えるには【大問4】の正解は欠かせなくなる。
問題自体に個性はなく、補助線をひいて相似な(または合同な)関係にある図形を作り出し、それを元にして辺の比・面積比などを駆使して解いていくという、受験生時代に何度もくり返してきたであろう細かい作業を堅実に出来た生徒が勝つ、という図式になっている。(1)はおもに相似比から答えが求まるが、(2)は面積比も使われるので両方できれば合格はグンと近づく。1つだけ正解でもまだ土俵から下りることはないだろう。ちなみに大相撲本場所の土俵には女性は上がれないことになっている。
【大問5】条件整理
- 難度:標準
- 時間配分:8分
- ★必答問題
後半の1問目はこれもまた頻出分野の「条件整理」であるが、本年度はこの問題が意外なほど手応えがなかった。(1)(2)と解いていって、さすがに(3)はしんどいだろう、と思いきやさして作業も複雑ではないので拍子抜けしてしまったというのが本音ではあるまいか。しかし豊島岡女子の算数には手強い「条件整理」の問題が往々にして存在する。多くの過去問に触れて準備だけは十分にしておきたい。
【大問6】立体図形(立体の切断)
- 難度:難
- 時間配分:8分
大問全体の難易度として「難」をつけたが、厳密には(1)は「標準」、(2)・(3)は「難」という水準だろう。よって、(1)は必ず正解しておきたい。(2)(3)は他の問題に自信があって、作図が得意・空間把握能力が高いという生徒は挑戦してもらいたい。難易度はかなり高いので一般的におすすめしにくいものの本年度の算数ではこの問題がベストの問題と言えるだろう。今後模倣する問題が出現する可能性は大、である。
攻略のポイント
テスト時間は50分で100点満点。
受験者平均は56.52%,合格者平均は68.95%と前年度とほぼ変わらない数値であり、問題の質を考えるとやはり難関の名にふさわしい険しさである。この平均点から見て合格にはやはり65点前後の得点が必要とされる。ただし、本年度に限って言えば、難問は【大問6】だけと言える構成だったので、標準レベルの問題を外さなければ例年よりは取り組みやすかったと思える。
1問5点ないし6点の点数配分から見て,18問中12問の正解が必要となる。
【大問1】・【大問2】はできるだけ速く正確に解いて全問正解を目指したい。
【大問3】・【大問5】も同様に全問正解を目指したい。
ポイントとなったのは【大問4】の平面図形で、類似問題には数多くあたってきたと思われるがこの問題の成否が大きく道を隔てたと考えても良い。
逆に【大問6】は(1)が正解できれば御の字で、(2)(3)は特に難度が高く捨て問として処理しても合否には関係ないだろう。
豊島岡の入試問題を攻略するための方法としては、
・女子校全体に必要とされる「速読即解」の力は当然身につけた上で、標準問題まではつねに100%の正解率を目指し、実現すること。
・さらに余裕の持てる生徒は質の高い設問に対応できるよう、「立体図形」の難問にも果敢に挑戦してみること。
・また勉強量は算数だけに偏らず,どの科目にもまんべんなく時間を注いで苦手科目を作らないことである。
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