本書は、天気の変化に富み、雨が多く降る国に暮らす日本人が、雨と深く関わりながらどのように生活してきたのかについて、具体例を示しながら論じている。「漢字問題」や「接続詞空所補充」など、ごく一般的な問題が並ぶ中に、「東邦大東邦の国語」らしさあふれる「ワナ」が潜むものが登場している。以下、いくつか考えてみる。

[問３]　「理由説明の選択肢」
傍線部(１)の「これではお天気は挨拶にはならない」について、その「理由」を答える(「４択」)。「指示語」があるのですぐ開く(これ、大原則)。「乾季のインド」で「連日の天気予報」が「昨日と同じ」となっていること。つまり、「連日の天気が同じ」では「お天気は挨拶にはならない」ことの「理由」となる。「段落相互関係」で考える(「論説文」の基本的「解法」のひとつ)。傍線部(１)の段落冒頭に「なるほど」とあるので、「前段落」を確認する。すると、「お天気が挨拶になる」のは「お天気が変わりやすいからだ」となっている。そのものズバリの「理由」だ。「単純な理由説明」、確かにそうなのだが……。選択肢(イ)(ウ)は瞬時に「消去」(「選択肢設問」は「消去法」が鉄則)できる。次はどうか？ 残りの(ア)(エ)、どちらかを確かな「根拠」で「消去」できるか？ それが難しい。ここに「ワナ」が仕掛けられているのだ。「確かな根拠」で判別するには「原意消去」しなくてはならない(「原意絶対優位の原則」＝「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。「挨拶」の「原意」を「根拠」として、(ア)の「関心」を「消去」し、(エ)の「話題」を「答え」とする必要がある。東邦大東邦の「ワナ」は「細部」に宿る。従って、「細部へのこだわり」が重要。難易度：Ｃ(「難解」。以下同じ)。
＜時間配分目安： 2分程度＞
 
[問５]　「説明文内空所補充の抜き出し」
傍線部(３)「この願いは、宗教や儀礼などにも結びついていった」についての「説明文」中の、空所[１][２]に当てはまる「言葉」を本文中から抜き出す(各３字指定)。「説明文」は「日本人の生活に[１]な雨が降るように[２]などが行われた」となっている。「抜き出し」では、先ずは「抜き出すべき内容」をつかみ、次に「抜き出し範囲」を確定する。「内容」についてはすぐに分かるはず。「この願い」(「指示語」)＝「雨が適度に降ること」という「日本人の願い」なので、[１]は「必要」といったことで、[２]は「雨が降ることを願う宗教や儀礼」ということだ。次に、「抜き出し範囲」、「段落相互関係」からすると、傍線部(３)の次段落は「さらには」で始まるので、その後の「意味段落」を確認する。「雨ごい」の「風習・儀式」の「具体例」だ。ということは、[２]は「雨ごい」が「答え」だと判明する。だが、この「抜き出し範囲」には、[１]に当てはまる「必要」といった「内容」で「条件」に合致する「言葉」はない。傍線部の段落にも「必要」以外の「言葉」はない。ここにも「ワナ」が仕掛けられていた。こうなると、さらに前の段落から合致する「言葉」を探す他ない。すると、最初から５段落目に「不可欠」という「言葉」がある。これが[１]の「答え」になる。「抜き出し」では「内容」はいいが「条件」に合致しないということがある。その際は、「抜き出し範囲」以外も探す必要があるので、注意すること。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安:4分程度＞

[問８]　「条件付き説明の選択肢」
実はこの問題、「設問」自体に「ワナ」が潜むので要注意。傍線部(５)の「そのアッピールの方法はさまざまである」に関して、「さまざま」な「アッピールの方法」についての「説明」を答える、と勝手に「解釈」すると「ワナ」にはまる。よく読むこと。「アッピールの方法」についての単なる「説明」ではなくて、「筆者」の「説明」を答えなくてはいけないのだ(「４択」)。正しく「設問」を理解して最初のハードルをクリアできれば、あとは易しい。無論、「段落相互関係」で考える。「さまざま」な「アッピールの方法」は、傍線部(５)の次の段落から「具体例」が紹介されている。が、これは「単なる説明」で、「筆者の説明」は「このように」で始まる最後の段落で述べられている(「段落冒頭」に着目することも重要な「解法」)。そこを読み取れば、「答え」は「(ア)」だと容易に分かる。東邦大東邦では「設問のワナ」にも十分注意すること。難易度：Ｂ(「標準」。以下同じ)。
＜時間配分目安:２分程度＞

落ちこぼれ高校に通う理穂・美咲・如月。理穂は17歳を目前に失恋、病弱な美咲は入退院を繰り返し、如月は優れた兄と何かと比較される。しかし、そんなことにはお構いなしに、それぞれの夏は輝き、葛藤しながらも自分自身を受け入れていく……。本文は、「理穂」が「美咲」との「小学６年生の時」のできごとを「回想」する場面。この大問にも東邦大東邦らしい問題が並ぶ。以下、２問だけ検討してみよう。

[問１]　「語句の意味の選択肢」
波線部(ａ)「肩書き」、(ｂ)「一段落」の本文中での「意味」を答える(各「４択」)。「原意」ではなく「慣用的意味」で使用されている。いわゆる「大人の語彙」だ。「文脈」から判別できないことはないが、難しい。「答え」は、(ａ)「肩書き」＝(ウ)「演じる役目」、(ｂ)「一段落」＝(イ)「一応の区切りがつくこと」となる。東邦大東邦では「高度な語彙力」が求められているということ。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安:２分弱＞
 
[問４]　「理由説明文内空所補充の抜き出し」
傍線部(２)「嫌な予感がした。ひどく落ち着かない気分だった」について、「理穂」がそのような気分になった「理由」の「説明文」中の、空所[１][２]に当てはまる「言葉」を本文中から抜き出す(各５字以内指定)。「説明文」は「美咲の様子は理穂から見ても[１]であったが、それに対する友迫さんの言動は[２]をしているようでまずいと思ったから」となっている。東邦大東邦ではおなじみの「空所補充抜き出し」だ。[１][２]は「内容」的には、「美咲の様子」と「友迫さんの言動の意味」になる。「抜き出し範囲」は「同一場面」(「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」は「小説」の「最重要解法」)。[１]はすぐに見つかる。９行前から「美咲の様子」が説明されていて、そこに「はかなげ」とある。[２]は「友迫さんの言動」を、先ずつかむ。直前直後を確認する。「嫌な予感がした」きっかけの「言葉」は、直前の「師岡さん(＝美咲)、かわいそう」、「動作」としては「泣き出した」ことだと分かる。理穂に「まずい」と思わせた、これらの「言動」の「意味」は何か？ ということだ。「嫌な予感」が「現実」になった部分で判明するはずなので、読み進む。「理穂と美咲の会話のやりとり」の部分に、「美咲にとって、安易な同情ほど屈辱的なものは、ない」とある。これが「言動」の「意味」だ。「条件」に合致する「安易な同情」が「答え」となる。やはり、適切な「解法」を用いることが、素早く「抜き出す」ポイントだ。難易度：Ｂ。
＜時間配分目安:３分程度＞