筑波大学附属駒場中学校 入試対策
2021年度「筑波大学附属駒場中学校の国語」
攻略のための学習方法
第1(出題形式について・・・前述と同様)
1 出題形式は、ほぼ一貫している。年度による難易度の変化も(難易度が高いという意味で)、目立って異なることはないようにみられる。もっとも、算数で易化した年があることから、思い込みは厳禁である。各設問の難易度も(これもまた難易度が高いレベルで)平均しているので、各設問について50%程度の得点を(採点基準にまんべんなく触れ、0点の設問がないように)得ることを目標に学習し、いずれかの設問で加点をねらうべきである。
2 詩・短歌・俳句がほぼ例年出題されるので、この分野の学習も怠りなくする必要がある。
3 漢字については、ここでの失点は避けなければならない。日々の(毎週行われる小テスト)漢字学習を怠りなく消化するように心がけるべきである。
第2(記述式問題について)
1 記述式問題については、その採点基準、すなわち出題趣旨を把握することが重要になり、これさえできれば合格点以上の点数を得ることが可能になる。
もっとも、筑駒については、この設問の入り口の部分のハードルが(極めて)高いという特徴がある。すなわち、設問が(不親切なくらい)シンプルなため、過去問を通じて筑駒の問題検討を入念に行わない場合、出題趣旨および出題意図が捉えられず、「何について」「どの程度」「どうやって書けばよいのか」が全く分からずに、あさっての答案を書いてしまう事態になってしまう可能性が高い。
これは、受験生のレベルが(極めて)高いため、他の中学校の記述問題にみられるような丁寧な誘導をしてしまうと、ほとんどの受験生が容易に解答をしてしまう可能性が高く、その結果、出題趣旨・意図の把握も、問題の中に織り込んで出題しているからだと思われる。
2 さらに筑駒の国語の問題の難しさは、字数制限の厳しさにもある。すなわち、解答欄が小さい、すなわち書くことが許されている字数が少ないということである。麻布中学や武蔵中学のように大きな解答欄を与えてくれれば、出題趣旨・意図が正確にとらえきれない場合、採点基準に関係ありそうな事項を網羅的に数多く(言い方は悪いが、数を撃てば当たる式の考え方)書けば、その中のどれかが採点基準に引っかかることを期待できる。
しかし字数が制限されると、その方法は使えない。なぜなら、採点基準に含まれない事項を書けば、必然的に採点基準に該当する内容が書けなくなるからである。
したがって、筑駒を目指すのであれば、短い字数で解答できるように、具体的には、文章中の言葉の継ぎはぎではなく、文章中の内容を、自分の言葉でわかりやすく説明するトレーニングをすることが必要になる。
3 以上をまとめると、極めて当たり前のことになるが、過去問を教材に、シンプルな設問からその出題趣旨・意図を的確に把握し、その内容を文章中の語句の継ぎはぎではなく、自分の言葉でわかりやすく説明する学習をできるだけ早い段階からすべきといういことになる。
第3(詩・俳句・短歌の出題)
冒頭にも述べたように、筑駒は、詩・俳句・短歌からの出題がなされる。この点、多くの受験生はこのジャンルの出題を苦手とする傾向があるが、その大きな理由は、学習分量の少なさにあると考えられる。
実際、このジャンルの問題は(筑駒といえども)一定程度限定された設問にならざるを得ない。その意味では知識問題に近いともいえるので、より多くの問題を研究して、いわゆる解答の枠を身に着けてもらいたい。
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2021年度「筑波大学附属駒場中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は小島俊明「ひとりで、考える――哲学する習慣を」(文字数約1900字)。小問は全5問(解答数9)。「説明記述」(「字数指定なし」4問)、「漢字の書きとり」(全5問)。問題文は2分半ほどで読み、設問を14~15分で解きたい。大問二は「随筆」、出典は五味太郎「ときどきの少年」(文字数約3000字)。小問は全4問(解答数4)。「説明記述」(「字数指定なし」4問)のみ。問題文は4分程度で読み、設問を12~13分で解きたい。大問三は「詩」、出典は貞久秀紀「昼のふくらみ」所収の「体育」(文字数約180字)。小問は全3問(解答数3)。「説明記述」(「字数指定なし」3問)のみ。7分弱で解きたい。
【大問一】
- 難度:標準
- 時間配分:17分
- ★必答問題
2020年度からの教育改革で重視されるようになった「アクティブラーニング」などの「主体的・対話的で深い学び」「探究型学習」「哲学対話の授業」等――ますます求められるようになった「正解のない課題」に対して自分で「考える」ことの重要性について論じている。本文では、フランスの子育ての仕方や赤ちゃんへの対応方法のよい点をあげながら、「『孤独』の味」を覚え、上手に持つことの大切さを指摘している。「哲学論」ではあるが、「ジュニア向け」なので内容は理解できるはず。「説明記述」と「漢字問題」がある大問構成。本校としては「標準レベル」の大問だ。以下、いくつかを確認する。
[問一] 「換言説明記述」(「字数指定」なし、「30字ほど」の解答欄)。傍線部①「よろこびを与える」について、「ここではどういうことか」を説明する。誰が、誰に、どのような「よろこびを与える」のかといった「状況」を、「同一意味段落」から読み解いていく(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。直前直後から、「赤ちゃん」が「泣いた」ときの「お母さん」の対応について述べていることが分かる。傍線部は「待たせてから、よろこびを与える」となっており、続けて「赤ちゃんが泣いたとたんに抱き上げてあやしては、観察したことになりません」とある。ここから、「待たせる」とは「お母さんが赤ちゃんを観察する」ことで、「よろこびを与える」は「抱き上げてあやしてあげる」ことだと読み取れるはずだ。では、「赤ちゃん」の何を「観察」するのか? さらに確認していくと、次段落から「赤ちゃんがぐずっている原因」を「見極める」(観察する)ことだと判断できる。説明すべき「要素」はそろった。あとは、「よろこびを与える」の「換言」を「文末」として、補足説明を加えるようにまとめていけばいい。たとえば、「母親が赤ちゃんの泣いている原因を見極めてからあやしてあげること。」(32字)といった「答え」になる。 尚、「説明記述」では、「最重要要素」を「文末」にすることが肝要だ。<時間配分目安:2分半>
[問四] 「理由説明記述」(「字数指定」なし、「60字ほど」の解答欄)。傍線部④「『列車が遅れて、ご迷惑をおかけして、まことに申し訳ありません』などとは、けっして言いません」について、「その理由」を説明する。先ずは「状況」を「同一意味段落」で確認する。「ヨーロッパでは列車が遅れても、みんな黙って待ち」、「駅の放送」は「遅れることを知らせるだけ」で、傍線部のようなことは「けっして言わない」ということが分かる。それはなぜなのか? 直後に「考えてみれば、迷惑をこうむったのは鉄道会社のほうですね」とある。「迷惑をこうむった」ので「謝罪する必要はないから」⇒「けっして言わない」、「理由」になっている。だが、それだけでは「みんな黙って待ち」とは結びつかないし、「字数」を考えても不十分だ。他の「理由」は? 「同一意味段落」からはもう読み取れない。どうする? ここで気づきたいのは、本問の傍線部が「本文」の「最後」だということだ。したがって、「本文全体」から読み取る必要があるのだ。確認する。「フランス」では赤ちゃんの頃から「待つ」ことを教わり、「待つ」ことにより「問題の原因を見極め」、「対処」できると理解していることが分かるはずだ。こうした「要素」を加えていき、「過不足なく」まとめていくことになる。よって、たとえば、「列車が遅れて迷惑をこうむったのは鉄道会社であるし、待つことで原因を見極め対処することが謝罪するより重要だと考えているから。」(61字)といった「答え」だ。「理由説明」では、必ず「直接的理由」を「文末」とすること。尚、「論説文」で「本文最後」に関する設問は、「論旨」そのものに関連していると考えよ。<時間配分目安:3分半>
[問五] 「漢字の書きとり」(全5問)。傍線部(A)~(E)の「カタカナ」を「漢字」に直す。平易なものがほとんど、本校志望者であれば「全問正解」が必須だ。「答え」だけを確認しておく。(A)「自分のシッパイ談」=「失敗」。(B)「研究セイカ」=「成果」。(C)「睡眠時間のカクホ」=「確保」。(D)「ザツオンを発したりする」=「雑音」。(E)「ヨダンになりますが」=「余談」⇒これだけはやや難解か? 「用件以外の話。本筋を離れた話」という意味も押さえておきたい。<時間配分目安:全問で2分弱>
【大問二】
- 難度:標準
- 時間配分:16分
「少年」は見るのが仕事。町を、風景を、大人を、子どもを、そして自分自身を――昭和20年代から30年代にかけて東京郊外で過ごした絵本作家・五味太郎の「少年の日々」を綴(つづ)った自伝的エッセイ。本文では、家に遊びにきた子どもたちが仕事部屋に入り込み、はしゃぎだしたことに辛さを感じながらも、「ぼく」自身、子どもの頃に悪気はないものの電車の運転手を困らせていたことを思い出している。内容は難なく理解できる。ややユニークな「理由説明記述」と「心情説明記述」がある。それら2問だけを検討したい。
[問一] 「理由説明記述」(「字数指定」なし、「60字ほど」の解答欄)。傍線部①「何故(なぜ)かぼくに言った」について、「『何故か』と書かれている理由」を説明する。「何故か」の「理由」ではなく、「『何故か』と書かれている」は「なぜか」を説明するという点がユニークだ。「ぼくに言った」ことが不思議なので、わざわざ「何故か」と書いたことになろうが、そのあたりの「状況」を読み解きたい。「同一場面」を確認する(「小説」「随筆」では「同一場面」に「手がかり・ヒント」がある)。「ぼく」の仕事部屋での見知らぬ男の子2人との会話のやりとりだ。「何で絵描いてるの」と小さいほう(の男の子)。「仕事だもん」とぼく。すると大きいほう(の男の子)が「あ、ぼく知ってるよ。絵を描く人だよ」と、何故かぼくに言った。こうした「流れ」になっている。「大きいほう」が「ぼく」に言った「内容」は、「小さいほう」の「何で絵描いてるの」という質問に対する「答え」になっているわけだ。にもかかわらず、「ぼく」に言ったところが「不思議」だったので、「何故か」と書いたことになる。こうした内容を的確にまとめていけばいい。たとえば、「大きい男の子が、小さい男の子の質問に対する答えを、わざわざ『ぼく』に向かって言った理由が分からなくて不思議だったから。」(59字)といった「答え」だ。「小説」では、「同一場面」から的確に「状況」を読み取ることが重要だ。<時間配分目安:2分半>
[問四] 「心情説明記述」(「字数指定」なし、「60字ほど」の解答欄)。傍線部④の「悪気はないんだ」には、「筆者のどんな気持ちが込められているか」を説明する。先ずは、「原意絶対優位の原則」(「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)に則して「心情」を捉(とら)えたい。「悪気はないんだ」⇒「悪く思わないでほしい」と結びつくはずだ。次に、この「心情」に関するここでの「説明すべき内容」を押さえていく。「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という「重要解法」)で「手がかり」を求める。直前に「そう、これだって」とある。「指示語」があるので開く(「指示語」が出たら即開くこと)。「これ」=「こら、いいかげんにしろ。あっちへいけ」という「ぼく」の言葉だ。そして、「これだって」なので、この前に別の「悪気はない何か」があったはずだと分かる。確認すると、「ぼく」の仕事場に入り込んだ「男の子」が、さんざん仕事のじゃまをして、「ぼく」に「辛(つら)い思い」をさせた上に、「スケッチブックに悪戯(いたずら)書きを始めたこと」に対して、「悪気なんてないんだ」と「ぼく」が思ったことが読み取れる。つまり、「悪戯書きをする男の子」に「悪気はない」のは分かっているが、「仕事のじゃまをされるぼくも辛い」ので「あっちへいけ」と言うのであって、「悪く思わないでほしい」ということだ。あとは、整理して「過不足なく」まとめていきたい。たとえば、「悪戯書きに悪気はないのは分かっているが、仕事をじゃまされるのが辛くて追い払うのであって、悪く思わないでほしいという気持ち。」(61字)といった「答え」になる。 「指示語」を含む「文脈」では、「指示語内容」がポイントになると心得よ。<時間配分目安:3分>
【大問三】
- 難度:易
- 時間配分:7分
「昼のあかるみは、ふくらみがあるようでなく、ないようであるような、そんなものであるかもしれない」と語る作者による、言葉の磨かれた明るく奇妙な詩集の中の一篇。「こころ」(精神)と「体」(肉体・動作)について、無意識に行われた動作によっても、さまざまな気持ちが生まれてくることを表現している「詩」だ。本校必出の「韻文」では、一語一語に込めた作者のこだわりを「表記」(カタカナ・ひらがな・漢字……)を含めて捉え、さらに、「韻文」特有の「リズム感」をも感得しなくてはいけない。ただ、本年度は例年と比べ解きやすい出題になっている。1問だけ考えてみる。
[問二] 「内容説明記述」(「字数指定」なし、「60字ほど」の解答欄)。「11・12行目」の「あるきながら考えていると/考えながらあるいてもいた」とは、「どういうことを言っているのか」を説明する。「あるく」ことと「考える」ことが同時進行しているわけだ。では、この「詩」では「あるく」ことと「考える」ことは何を表現しているのか? 全体を確認していくと、「3行目」に「(ひとの世には)こころをこめた体がある」、「5・6行目」には「体/をこめたこころも人の世にはある」とある。「あるく」=「体」、「考える」=「こころ」と対応していると分かるはずだ。その上で、「詩」なので一語一語に着目する必要がある。「ながら」をはさんだ「あるく」と「考える」の語順、そして、後半の「あるいてもいた」という表現をしっかりとつかんでまとめていきたい。たとえば、「あるくという動作とこころで考えることを同時に行っていると、ひとのこころと体とがひとつになっていたと気づいたということ。」(59字)といった「答え」だ。「韻文」では、一つひとつの「言葉」の細部にまでこだわることが求められると心得よ。
<時間配分目安:2分半>
攻略のポイント
●「字数指定」がなく、「必要要素」の絞り込みが難しい本校の「説明記述」を如何(いか)に攻略するか? それは、実直に「記述」の「練習」を続けることに尽きる。先ずは、正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていく手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先順位を特定し積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習することが肝要。本校では「50~100字ほどの解答欄」が多いので、2~5つ程度の「要素」でまとめることに慣れておきたい。「合格ライン」は7割弱(過去13年間の「合格者最低得点率」は67.4%、本年度は66.8%)。1問あたりの配点が高い「説明記述」では(本年度は8~9点)、「減点」はともかく「失点」は大きな打撃になると心得よ。
●必出の「韻文」、攻略のためには十分な準備が不可欠だ。過去問演習などを通じて、「一語」「一音」に徹底的にこだわり、作品の世界観を読み取る練習を繰り返したい。また、「韻文」特有の「リズム感」を感得することにも慣れておきたい。尚、「短歌」「俳句」では、テキストに掲載されているような有名なものは解説も含めてしっかりと読み込んでおくこと。「韻文」は、練習次第によって「差」がつきやすい。確実に「得点源」とすることが肝要だ。
●「漢字の書きとり」では「ことわざ」が定番だ(本年度は未出)。数多くのものを定着させておく必要がある。無論、「故事成語」「慣用句」などの習得も忘れてはいけない。
●試験時間は他校より短い40分。時間配分には細心の注意を要する。問題文の文章量は全体で4000~5000字(本年度は約5100字)と決して長くはないが、速く正確に読み取れる方が当然、有利だ。分速750字以上を目標に「読む練習」をしておきたい。
志望校への最短距離を
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