突然の事故で両親を亡くし、「青葉おひさまの家」で暮らすことになった小学生の太輔。心を閉ざしていたが、仲間たちのおかげで次第に打ち解けていく。そして、みんなにとって大切な存在の佐緒里が施設を卒業することになり、子どもたちは、ある「作戦」を計画する……。本文は、太輔が「バザー用のキルト」をだいなしにしてしまった場面から始まる。文章は分かりやすいが、「回想シーン」が複雑にからんでいて「構成」がつかみづらい。「解答数19」の中で「抜き出し」がなんと９、「脱文挿入」もあり、いかにもという感じの典型的な「早実問題」が並ぶ。ただ、初出の「記述問題」も登場する。以下、いくつかを考えてみる。

[問6] 「場面転換箇所の抜き出し」
傍線部(５)「二人がいなくなる直前の記憶」について「記憶の始まりの部分」を抜き出す(はじめの３字指定)。前述のように「回想シーン」が入り組んでいるので分かりづらい。先ずは、直前直後を確認(「小説」は「同一場面の直前直後に根拠あり」は基本的「解法」)。「思い出して」いる「二人」は「お母さんとお父さん」だとすぐに分かる。さらに前に戻る。８行前の「思い出す。思い出す」の前も「二人」が登場している。どこまでか？ 丁寧にたどっていく。ここで注意することは、必ずしも「回想に移るきっかけ」が明確に表現されているとは限らないということだ。この問題もそうだ。「細部」にこだわって戻っていくと、「お母さんのことはいつも、声から思い出される」という箇所がある。「その声」は直前の「ほら、太輔とお父さん……」。「声から思い出される」のだから、ここからに違いない。念のために確認すると、前行は別の場面だ。従って、「ほら が答えとなる。「記号も一字」という「条件」なので「 も数えること。「細部へのこだわり」と「丁寧さ」が重要。難易度：Ｂ(「標準」。以下同じ)。
＜時間配分目安： 2分弱＞

[問7] 「脱文挿入の抜き出し」
「場面２」から抜けている「そうだ、お母さんは右ほほにだけえくぼができる」という一文が入る「直前の三字」を答える。「脱文挿入」の基本は「接続詞、指示語、そして内容」だ。ここでは「そうだ」という「指示語」がある。つまり、「お母さん」の「右ほほ」に「えくぼ」があることを思い出しているのだから、当然、直前に「お母さん」の「顔」について説明されているはず。「お母さん」のことなので「回想」、「問６」で「回想シーン」の「始まり」は分かっているので(「設問」どうしは関連し、お互いにヒントになっている)、「範囲」を絞り込んで探す(当てもなく探しても時間の無駄)。すると、「場面２」の最後の部分に「お母さんの横顔」とあり、直後は「新しいことを思い出せたときには」となっている。「横顔」⇒「右ほほ」・「そうだ」⇒「新しいことを思い出せた」は直接つながるので間違いない。「抜き出し」では「範囲の絞り込み」が大切だ。また、「設問」どうしの関連にも注意。難易度：Ｃ(「難解」。以下同じ)。〈時間配分目安:３分弱〉
＜時間配分目安： 3分弱＞

[問15] 「空所補充の記述」
傍線部(12)の「約束」について説明した「『これからは 』という約束」の「空所」を「場面３」の「文中のことばを用いて」答える(15字以内)。早実初出の「記述」だ。が、焦る必要はない。要は、「抜き出し」の別パターン。「抜き出したもの」を「文脈」に合わせて修正しろということだ。先ずは、「傍線部一文一部の法則」(傍線部が一文の一部分の場合、傍線部以外が重要ということ)で考える。「もうしないって」とある。「もうしない」ことを「約束」するということ。何をしないのか？ 直前を確認、「みんなが作ったものを壊すのは、絶対にダメ」とある。ということは、「みんなが作ったものを壊す」ことは「もうしない」ことが「約束」の内容だと分かるはずだ。あとは、字数に合わせてまとめればいいだけ。決して難しくはない。冷静に「設問条件」を読み解くこと。難易度：Ｂ。〈時間配分目安:２分程度〉
＜時間配分目安： 2分程度＞

「子どもが新しくことばを覚え、母語として体系化していく過程」を「実験」やいくつもの「具体例」を通じて論じている著作。本文は、「前後」「左右」が「どこを指し示しているか」は「視点」、そして「文化」によっても異なるということを述べている部分。「図」についての「設問」や難しい「語句」などで若干戸惑うかも知れない。早実ならではのハイレベルな「総合的知識問題」もある。以下、いくつかの「設問」を検討してみよう。

[問2] 「空所補充の選択肢」
「空所」〈１〉〈２〉に入る「副詞」を答える(５択)。「文法」だ。２か所に対して「選択肢」は５つ。「細部」にこだわった「正確さ」が求められる。特に、「呼応の副詞」(〈２〉は「結び」が「ように」となっているので「比喩」の「あたかも」がふさわしい)などは見逃さないこと。早実ではやはり「高度な語彙力」が求められている。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安： 1分弱＞

[問7] 「空所補充の選択肢」
「空所」(Ⅰ)～(Ⅳ)に入る「ことば」を答える(４択)。「条件」は「同じものが入る場合もある」、曲者だ。わざわざ「場合もある」と断っている以上、「ある」に決まっていると考えること。さて、本問は組み合わされている「空所」がそれぞれ「対の関係」なのか「イコールの関係」なのかという問題だ。早実ではよくある。一見わけが分からないかも知れないが、実は難しくないのだ。落ち着いて「関係」を見極めることが重要。たとえば、(Ⅰ)と(Ⅱ)は、直前に「逆転」とあり「Ｂ」＝「(Ⅰ)」、「Ｄ」＝「(Ⅱ)」なのだから、結局「イコールの関係」だと分からなくてはいけない。ややこしいが、いかに「冷静」になれるかがポイントだ。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安： 2分程度＞

[問10] 「換言の選択肢」
傍線部(８)「文化に依存します」について「どういうこと」なのか「ふさわしいもの」を答える(５択)。「選択肢設問」の基本的「解法」は「消去法」。そして、先ずは「原意消去」(「原意絶対優位の原則」＝「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。また、「選択肢」は「下から消去」が原則。「依存」(＝「他のものにたよって成立・存在すること」)で確認する。(ア)～(オ)全てが「○○によって××」となっているので、「原意」としては結びつき「消去」できないことは分かるはず。次に「文化」に注目、(ア)「風土の違い」・(イ)「文明の発達度合い」・(ウ)「歴史」・(オ)「教育制度の違い」、どうか？　どれも「文化」の「原意」とは異なっていることが分かるか？　分かってほしい。残った(エ)を確認する。「それぞれの人が属する国や民族、話す言語」とある。問題ない。よって、「答え」となる。早実の「選択肢」には確かに紛らわしいものが多い。だが、このように「解法」を用いて段階的に「消去」していけば短時間でたどり着くことが可能だ。ここでも改めて「解法」の重要性が浮かび上がった。