早稲田大学高等学院中学部 入試対策
2019年度「早稲田大学高等学院中学部の算数」
攻略のための学習方法
難易度の変化
高校入試において、かつてより難関校として名を馳せていた早稲田大学高等学院。その中等部として、大きな期待を持って開校したのが2010年。
以来、高い倍率と入試問題の質で受験生に「狭き門」「高い壁」を抱かせてきた同校。
問題の質に上下動はあるものの、多くの受験生の憧れの的となっている。
まず、テスト自体は量より質の学校であること。これを頭に置きたい。
要求されることは、早く問題を解くような機械的な作業というよりは、条件の複雑な問題に対応できるような柔軟な頭である。
難度の低い年度の問題にもその傾向は見られる。
基本は計算力
学院の問題ではじめに目に飛び込んでくるのは計算問題である。
塾や家庭教師での勉強が説明を要する問題中心となり、学校の勉強は役に立たない水準なので、受験生たちはその問題適応力(応用力)に比べると計算力が貧弱で あることが少なくない。模擬試験でも覚えがあるだろう。後ろの方の問題は正解なのに、はじめの計算問題でミスをしてしまい点数がまとまらなかったことが…
このような場合、先生や保護者は「計算問題で間違えるな」「計算でミスするな」と注意はするものの、「算数の力がないわけではないから…」と浅く反省するだけで次の「文章題」に進んでしまったりする。
もし学院の過去問において計算問題の失点があったようなら、改めて計算についてチェックをしてみる必要がある。間違えるからには必ず理由があるはず。
1つは、分数や小数が混合されている場合、「小数→分数」や「分数→小数」の変換がおぼつかない可能性がある。またはその方法に無駄がある。
もう1つは、特殊な計算問題における、解くためのテクニック不足である。
割合や速さ同様に、計算問題もしっかりチェックしておかないと「ほっといても、いつか出来るようになるだろう」というものでもない。いい機会だと思ってしっかり点検しておこう。本年度の「繁分数」出題は意表をつかれた感がある。
次に頻出分野の「平面図形」や「割合と比」・「文章題」・「速さ」などであるが、こちらは学院ならではの問題の出され方に注意したい。普通の場合、過去問をたくさん解けば慣れが生じてくるのだがご存じの通り、過去問は少ない上にレベルが一定ではない。
学院も含め同じ系統の早実や、併願校となるだろう立教新座・明大明治(併願校にはならないかもしれないが)早稲田・海城など少し手強い問題を出す学校の過去問にあたっておくとよいだろう。
基本マスター
これから算数の基礎を固めていこうとする生徒は、過去問対策は秋になってからでも十分間に合う。
まずは、早い時期に解き方のベースとなるテキスト(「四科のまとめ」「ベーシック」など)に出題されている例題・典型的問題の解法に用いられる公式や解き方はすべてマスターしてしまおう。学院レベルになると、誰でも解ける問題は本当に誰でも解いてしまう。ここで差をつけられるのは致命傷となる。
この3年ほどは、手が付けられないほど難しい出題ではなくなった。平成26年度以前の問題をみるとどうにもならない問題がいくつも存在する。そういった問題が解ける力というのは必ずしも努力によって身につくものでもない。
やはり、得手不得手の領域に達しているレベルである。だから、多少言い回しにクセがあっても、そこを乗り切りさえすれば解きほぐしていける問題に変わったのは合格への可能性を高めてくれる、大切なポイントになる。
ただ、合格点の上昇は予想できるので学校自体の難易度が低くなると言うものではない。
まとめ
以上のことから、合格するための学習法をまとめると
・「計算問題」を軽視せずに、日々の問題演習の中に取り入れ、早く確実に解けるよう仕上げていくこと。少なくとも「計算問題は得意である」という言い切れるくらいになりたい。
・平面図形はじめ、頻出の単元に関しては、標準的な典型題はもちろんのこと、少しクセのある学校の過去問も含めて十分に問題演習を積むこと。
・高いレベルでの競争になるので、簡単な問題が解けるようになったくらいで慢心せずに引き続き難問に挑戦する精神をもって多くの問題にあたること。
早大学院の算数がいつまたかつての水準を復活させるかどうかは分らないが、少なくともここ数年のレベルであれば標準的な学力でも十分に対応できる。あとはその精度を上げるだけだ。最後まで悔いのない勉強を続けよう。
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2019年度「早稲田大学高等学院中学部の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が4、小問が14でさらに問題数が減った。したがって解けるかどうかは別にして時間不足になることはない。
本年度は【大問1】から【大問4】までこれといって易しい問題はなく、どの大問も標準以上の難度を持っている。また、問題文が長く、内容をよく理解してからでないと解きにくいという「早大学院」っぽいレベルを取り戻している。
問題数が少ないので,最初の計算問題はぜひ正解しておきたい。
【大問1】計算・平面図形
- 難度:標準
- 時間配分:10分
- ★必答問題
設問が4つあり、最後のひとつが難しかった。はじめの3問は必答し、4つめの問題に普段の特訓が活かせたかである。
(1)①、②とも分母は1つずつ大きくなっていくもののとりたてて役には立たず、通分しやすいもの同士をまとめたり、逆算に注意して計算していくしかない。しかし以前の計算問題よりは解きやすくなっている。
(2)は平面図形の面積を求めるもので、早大学院の算数ではおなじみの内容。①は小5レベルの問いだが、はたして②ができたかどうか。①の正解がないと②は求められないのでやさしいとはいっても①の正解は必須だ。
②では、2つの合同な三角形を見つけて等積移動、さらに三角形CEDが直角三角形であることに気づかなくては答えが出せない。
難問に属するレベルで、初っぱなから差のつく設問が表れたと言える。
【大問2】立体図形(展開図の利用)
- 難度:やや難
- 時間配分:10分
分野は立体図形に所属するものの解法は「展開図を利用した相似形の問題」なので、限りなく平面図形に近い立体図形の問題である。同一傾向の設問が相次ぐので大きく点差が開いた大問となったことだろう。
(1)①は条件どおり正方形になるとき、おそらくP,Q,R,Sはそれぞれの辺の中点になる、と想像はつくものの証明することはなかなか難しい。ここは1辺6cmの正方形の面積を求めて先に進もう。
②は立体図形の見取り図に条件を書き込み、平行線を利用して答えを出すことができる。②はやや難である。
ここからが「展開図解法三連発」で、いずれも一から展開図を書かねばならず、また「長さ」または「長さの和」が最小になる場合がどういう場合を知っていなければできないので、問題集などでこの類いの問題をたくさん解いてきた生徒には「標準」クラスの問題に思え、逆に解いた経験が少ない生徒には「最難関」問題に見えたことだろう。
(2)~(4)は、直線を書くために必要なだけ立体の展開図を書けば良い。
(2)は1面、(3)は2面、(4)では3面である。最も解きやすいものは(3)で、Qの位置が辺の中点とわかる。
(2)ができた生徒にとっては(4)はおまけのような問題で、そうなると(2)で引いた直線AQが辺BDに対する垂線になることがわかるかどうかがカギを握る。そのあとの相似形での解法もやや難しい。
この大問を制した生徒は合格の可能性をかなり高めただろう。(1)①と(3)のみの正解にとどまった生徒は【大問4】をなんとか正解したい。
【大問3】和と差の文章題(不定方程式)
- 難度:標準
- 時間配分:15分
- ★必答問題
その内容を「不定方程式」と呼ぼうが「いもづる算」と呼ぼうがかまわない。要は正解することである。
ここでは作図の必要はないが作表を行わなければならない。これもまた普段から読みやすい評を書いているかどうかが成否を分ける。
与えられた図・与えられた表にあとから補助線や数字だけを書き込んでいる受験生には厳しいテストとなった。
(1)ここでは最も多く使われる材料、商品Bの材料Qに目をつけ、条件に当てはまる組み合わせを表に書き込んでいく。1500÷130=11(あまりは省く)となり、商品Bはできて11個である。その時点で残った材料Pは670g、Qは130gとなるが、商品Aを1つ作るにはPが60g、Qが20g必要であり、Aを9個作らなくてはならないのはPはまだしもQは足りなくなる。よって、Aが9個、Bが11個という組み合わせはできない…あとはBを10,9,8,…と1個ずつ減らしていき、そのときにできる商品A10,11,12,…ができるかどうかを調べていく。
こうした「いもづる算」の場合、あまりが出ない問いの方が多いので面倒ではあるが時間をかけて解くことができるのであせらずに問題にあたりたい。10分もかければ表を完成させることができるだろう。
(2)は(1)ができた生徒にはやはりおまけのような設問で、表にあるいずれかの組み合わせが「売上金額最大」になるのでそれを調べる。とは言うものの、商品Bの方が高いのでBが最も多い組み合わせを答えとすれば良い。こちらは2分もあれば片付く。
ここはできれば正解しておきたい。
【大問4】規則性(平面図形)
- 難度:やや難
- 時間配分:15分
過去2年間ラストの大問は拍子抜けするレベルの問題でさすがに苦言を呈させてもらったが、本年度の問題は言われた内容を理解することが難しく、またそれぞれに作図も必要なので3問とも正解するのは至難の業だろう。(1)はできて欲しい。あと(2)(3)いずれかの正解があれば十分合格点を出そう。(3)の方が作図さえできればやさしいかもしれない。
(1)(3)の正多角形Aは正方形なので作図も容易に行える。あとはかきたす三角形が「正三角形」か「直角二等辺三角形」かの違いである。
(2)ははじめの正多角形がわからないので作図による解答は難しくなる。時間に余裕があればはじめの正多角形を正三角形、正方形、正五角形、正六角形…として1つずつ試してみるのも一考だ。
時間がないようであれば、テストのはじめに戻って見直しを始めよう。
攻略のポイント
テスト時間は50分で100点満点。
本年度の問題は、ここ数年度の中ではもっとも早大学院中等部のテストにふさわしい、一生懸命受験勉強して解くだけの価値がある良問が多かったと思う。
【大問1】【大問3】をしっかり正解した上で【大問2】【大問4】の設問を半分くらい解ければおのずと合格を手にできたことと思う。この学校を制するにはやはり作図力が必要であることを改めて思い知った年度となった。
受験に際し、当校の算数に対応するためには標準的な問題を数多くこなしす一方で高難度の問題もこなしておく必要がある。おそらく併願するであろう六大学付属中の過去問でも算数の難度が高い「立教新座」「明大明治」「早稲田実業」の問題は要チェックだ。
また、出題分野の傾向をつかむためにも早大学院の「過去問」にもすべての年度分触れておこう。
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