｢漢字の読み書き｣(全８問)。｢読み｣が３問で｢書きとり｣が５問。例年、｢神奈川女子御三家｣のひとつである本校ならでは罠(読めるか？ ｢答え｣はどこかに……)がある｡しかし、本年度は例年よりは平易だ。注意すべきものだけを確認していこう。(１)｢山の頂に立つ｣＝｢いただき｣⇒｢頂上｣なら誰でも読めるが、意外と抜けてはいないか？ (４)｢ヨチョキンの額を調べる｣＝｢預貯金｣⇒｢預金｣と｢貯金｣のことだが、あまり馴染みがないかも。(５)｢船がシンロを北にとる｣＝｢針路｣⇒｢進路｣ではない。｢同音異義語｣に要注意。(６)｢コウミョウ心にかられる｣＝｢功名｣⇒｢手柄を立てて名をあげようとする心｣という意味の｢功名心｣で定着させておきたい。(７)｢湖のほとりにチクジョウする｣＝｢築城｣⇒これは書けて当然。(８)｢委員会の議論をヘる｣＝｢経(る)｣⇒｢訓読み｣を忘れがちなので注意せよ。本校では高度な｢語彙力｣が問われていると心得よ。尚、｢トメ｣｢ハネ｣などにも要注意、罠(わな)があるやも知れぬ。

親もなく、家もない、本当の名前を知らずに育った少年｢モギ｣。その日食べるものをどうやって調達するかだけを考えて生きてきた｢モギ｣が、ある日、高麗青磁の美しさを知り、｢焼きもの師｣になることを夢みるようになる――どんな境遇であろうとも、明日を信じて凛として生きる少年の成長の物語。｢小説｣の王道である｢心情説明｣｢心情変化｣や｢状況説明｣などが、｢選択肢｣｢空所補充抜き出し｣｢記述｣等で問われている。
※尚、本大問の｢問題文｣は｢著作権上の問題｣で非公表になっているので、｢語句｣についての小問だけをチェックしておく。

[問一]　｢語句の意味の選択肢｣(５択)。｢総合的知識問題｣｡傍線部(１)｢みれんがましく｣の｢ここでの意味｣を答える。｢原意｣(本来の意味)に忠実に判別すれば何の問題もないはずなのだが、｢ここでの意味｣を意識し過ぎると間違ってしまう可能性があるので、要注意。確認しよう。｢未練(みれん)がましい｣＝｢思い切りが悪い。あきらめが悪い｣。各選択肢は、(ア)｢思い切れない様子で｣･(イ)｢不安そうな様子で｣･(ウ)｢未熟な様子で｣･(エ)｢せわしない様子で｣･(オ)｢観念した様子で｣。無論、｢答え｣は(ア)だ。こうした｢語句の意味｣では、｢本文｣の｢文脈｣に惑わされずに｢原意絶対優位の原則｣(｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)を徹底させることが肝要だ。

１%でいい、誰かのために生きてみる――ＳＮＳ全盛時代、本来言葉のキャッチボールであるはずのコミュニケーションは、相手が見えないまま、多くの人は自分がどれだけよい球を投げるかのみに終始しているように見える。ボールを受け止める側に思いを馳(は)せにくい社会で、これから私たちは、どう生きていけばよいのだろうか？ 今日から誰でもすぐに始められる｢相手の身になる練習｣を提起している。本文では、個性や考え方が違う相手に興味を持ち、相手の身になって考え、助け合い、一緒に生きていくことが多様性の時代には求められると論じている。文章は分かりやすく、内容は難なく理解できるはずだ。｢本校らしさ｣にあふれる多種多様な小問が並ぶ大問。以下、いくつかを検証してみたい。

[問一]　｢空所補充の語句選択肢｣(全３問/６択)。本文中の空所　Ａ　 ～ 　Ｃ　 に｢あてはまる言葉｣を答える。各選択肢は、｢接続詞｣と｢副詞｣だ。本校に限らず定番の問題。｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外ではどれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認すること。また、形式段落冒頭の｢接続詞･副詞｣は｢前段落全ての内容｣を受けていることにも注意したい。では、それぞれの空所の｢答え｣を確認する｡ 　Ａ　 には｢転換｣の｢接続詞｣(オ)｢そもそも｣、 　Ｂ　 には｢順接｣の｢接続詞｣(ウ)｢すると｣､ 　Ｃ　 には｢逆接｣の｢接続詞｣の(ア)｢けれども｣がそれぞれ入ると判別できるはず。｢候補｣はひとつとは限らないので、必ず全て｢代入確認｣すべし。

[問二]　｢原因説明の条件付き内容抜き出し｣(全２問/｢５字以内｣と｢20字以内｣の指定)。傍線部(１)｢相手の身にならなくても済んでしまう｣について、｢その原因を二つ｣抜き出して答える(ただし五字以内と二十字以内とする)。｢条件｣は｢【※】より前から抜き出す｣こと。｢抜き出し設問｣では先ず｢抜き出し内容｣を特定し、｢抜き出し範囲｣を絞りこんでいくのが鉄則。｢内容｣は｢相手の身にならなくても済んでしまう｣ことの｢二つ｣の｢原因｣だ。何か？ ｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という｢重要解法｣)に｢手がかり｣を求める。直前に｢現代の社会は、意識して相手の身になろうとしなければ｣とある。つまり、｢現代の社会｣の｢状況｣が｢原因｣だと分かる。よって、｢抜き出し内容｣は｢現代の社会｣の２つの｢状況｣ということになる。｢範囲｣は｢同一意味段落｣になる(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)｡ここでは、傍線部からの３つの形式段落だとすぐに分かる(｢条件｣である【※】はそれよりずっと後なので、ほとんど意味がない)。丁寧に探していく。すると、傍線部の次の形式段落冒頭に｢一つは、競争社会という仕組みです｣とある｡｢現代の社会｣の｢状況｣の｢一つ｣に違いない。｢二つ目｣は何か？ さらに探していくと、直後の形式段落の最初が｢もう一つは言葉に偏ったコミュニケーション社会という仕組みです｣となっている。まさに、ともに内容的に合致する。｢同一意味段落｣には他に候補はない。したがって、｢指定字数｣を勘案すると、｢答え｣は｢競争社会｣(４字)と｢言葉に偏ったコミュニケーション社会｣(17字)になる。尚、｢抜き出し設問｣では｢抜き出し範囲｣の絞り込みがポイントとなると心得よ。また、｢抜き出し候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢範囲｣の全てを隈なく探すこと。

[問五②]　｢理由説明選択肢｣(５択)。傍線部(４)｢ますます相手の身になる力がないがしろにされてしまうのではないか｣について、｢筆者がこのように考える根本的な理由｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(原意絶対優位の原則)。ここは｢理由説明｣なので、傍線部の｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣する。各選択肢の｢文末｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)｡(ア)｢増えていくと思われるから｣､(イ)｢不利になりそうだから｣､(ウ)｢目立つようになってきているから｣､(エ)｢推測することはできるから｣､(オ)｢まだまだ少ないから｣｡どうだろうか？ ｢ますます～｣なのだから、｢増えていく｣以外はそのまま｢消去｣できるはずだ。念のために、他の部分の説明を｢同一意味段落｣で確認する。特に誤っていないと分かる。したがって、｢答え｣は(ア)になる。何とも素晴らしい｢一発消去｣ではないか。畏るべし｢原意消去｣！ 確実に理解･定着させて応用できるように練習すること

[問六]　｢換言説明選択肢｣(５択)。傍線部(５)の｢コミュニケーションはキャッチボールです｣とは｢どういうことかを答える。無論、｢原意消去｣から。ここは｢換言説明｣なので、｢キャッチボール｣という｢比喩表現｣の｢原意｣と結びつかない｢換言表現｣を｢消去｣したい。各選択肢の｢文末｣と照合する｡(ア)｢解説するということ｣､(イ)｢気にしないということ｣､(ウ)｢変えるということ｣､(エ)｢答えていくということ｣､(オ)｢変えるということ｣｡｢キャッチボール｣は相手の｢ボール(言葉)の投げ方(伝え方)｣に応じて自分の｢捕球の仕方(受け取り方)｣を変化させ、それに従って相手に対する自分の｢ボール(言葉)の投げ方(伝え方)｣も変える必要があるのだから、｢変えるということ｣以外は｢消去｣できると分かる。(ウ)か(オ)の｢２択｣になった。次に、｢何を変えるのか｣で｢消去｣したい。(ウ)は｢内容｣、(オ)は｢伝え方｣だ。当然、(ウ)が｢消去｣だと判別できるはずだ。｢同一意味段落｣で他の部分の説明を確認して、特に誤っていないと判断可能。よって、｢答え｣は(オ)だ。本問は｢２段階消去｣だったが、先ずは｢原意消去｣だと心得よ。

[問十]　｢条件付き内容説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢120字ほど｣の解答欄)。傍線部(８)に｢これから多様性の時代になる｣とあるが、｢『多様性の時代』において私たちはどうあるべきだと筆者は考えているか｣を説明する。｢条件｣は｢本文全体をふまえ、具体的な場面を設定してわかりやすく説明する｣こと。最初に、筆者の考える｢多様性｣とはどのような内容なのかを｢同一意味段落｣から捉(とら)えたい。直後に｢多様性とは、いろんな個性、いろんな考え方をもった人たちが、それぞれ認め合いながら一緒に生きていくこと｣とある｡次に、そうした時代に｢私たちはどうあるべき｣なのかを本文全体から読み取っていきたい。そして、｢条件｣である｢具体的な場面設定｣だが、本文をふまえて｢文化の違い｣･｢性別や趣味の違い｣･｢ある問題に対する意見の違い｣などが設定しやすいだろう。あとは、｢設定｣に即して本文における｢筆者の考え方｣を、｢多様性の時代に私たちはどうあるべきなのか｣という視点で整理して、｢過不足なく｣まとめていきたい。たとえば、｢いろいろな個性や考え方を広い視野をもって認め合い、相手の身になって気づかい合い、助け合う必要があり、たとえば異文化を持つ人には、相手の文化や習慣を排除せずに尊重しつつ、日本の文化や習慣にも理解を求め、協調をめざしてじゅうなんに対応すべきだ｡｣(120字)といった｢答え｣になる。本校では近年、本問のような｢長文説明記述｣がほぼ必出だ。説明すべき内容を読み解くことはもちろんだが、｢長文記述｣の構成、まとめ方も十分に練習しておくことが不可欠だ。

※[問十一]は｢本文内容合致選択肢設問｣。｢論説文｣なので｢論旨合致｣となり、｢頭括型｣にせよ｢尾括型｣にせよ、｢序論部分｣と｢結論部分｣との照合で判別可能だ。果敢にチャレンジしたい。尚、｢小説｣の場合の｢本文内容合致｣では、｢本文全て｣と照合させる必要があり、とても手間ひまがかかるので｢戦術的｣には｢捨て問｣で構わないと心得よ。