｢漢字の読み書き｣(全８問)。｢読み｣が３問で｢書きとり｣が５問。例年、｢神奈川女子御三家｣のひとつである本校ならではの罠(読めるか？ ｢答え｣はどこかに……)がある｡しかし、本年度は昨年度同様に平易だ。本校志望者であれば｢全問正解｣が必須だ。注意すべきものだけを確認していこう。(１)｢おじの車に便乗して駅へ行く｣＝｢びんじょう｣⇒もちろん、｢べん(・・)じょう｣ではない⇒｢他人の乗り物に、ついでに乗せてもらうこと｣という意味も知っておくこと。(２)｢戸外で元気に遊ぶ｣＝｢こがい｣⇒うっかりして｢と(・)がい｣にしないこと。(４)｢春のヨウコウが降り注ぐ｣＝｢陽光｣⇒｢文脈｣を正確に読み取ること。(８)｢議長をツトめる｣＝｢務(める)｣⇒注意すべき｢同訓異字｣の典型だ⇒｢務める｣｢努める｣｢勤める｣｢勉める｣の｢意味･用法｣の違いを確認しておきたい。本校では高度な｢語彙力｣が問われていると心得よ。尚、｢トメ｣｢ハネ｣などにも要注意、罠(わな)があるやも知れぬ。

広島県尾道が舞台の、｢べんり屋｣(たのまれた仕事を何でも引き受ける商売)の春夏秋冬のできごとを描いたシリーズの最終編。小学５年生の｢美舟(みふね)｣の父は売れない画家で、母は｢べんり屋｣を経営している……。本文では、｢美舟｣がクラスの中で気になっている｢筒井君｣が、庭にカメを飼うための池を作ってくれるよう頼みにきて、その事情を知った｢わたし｣(美舟)が｢筒井君｣のために何ができるのかを見つけようとする姿が描かれている。平易な文章なので、内容はすぐに分かるはずだ。いかにも本校らしい多彩な小問が並んでいる。いくつかをチェックしておく。

[問二]　｢語句の意味の選択肢｣(５択)。｢総合的知識問題｣｡傍線部(２)｢恒例行事｣について、｢恒例｣の意味を答える。誰もが知っていなくてはいけない言葉だ。｢恒例｣＝｢(儀式や行事が)いつも決まって行われること｣なので、｢答え｣は選択肢(ア)の｢いつも決まったときに決まった形で行われること｣になる。尚、こうした｢語句の意味｣では、｢本文｣の｢文脈｣に惑わされずに｢原意絶対優位の原則｣(｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)を徹底させることが肝要だ。

＜時間配分目安：30秒＞

[問五]　｢心情説明選択肢｣(５択)。傍線部(５)｢少ししゅんとしてしまった｣について、｢このときの美舟の心情｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(原意絶対優位の原則)。ここは｢心情説明｣なので、｢しゅんとしてしまった｣の｢原意｣と結びつかない｢心情｣を消去する。各選択肢の｢文末｣を確認する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)｡(ア)｢敗北感を味わっている｣､(イ)｢ふがいなく思っている｣､(ウ)｢元気をなくしている｣､(エ)｢がっかりしている｣､(オ)｢はずかしくなっている｣｡どうだろうか？ ｢しゅんとする｣＝｢元気をなくし、しょげてしまうさま｣を表わすことは知っているはず。なので、｢元気をなくしている｣以外はそのまま｢消去｣できなくてはいけない。念のために、他の部分の説明を｢同一場面｣で確認する(｢小説｣では｢同一場面｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。特に誤っていないと分かる。したがって、｢答え｣は(ウ)になる。何とも素晴らしい｢一発消去｣ではないか。畏るべし｢原意消去｣！ 確実に理解･定着させて応用できるように練習すること

＜時間配分目安：１分弱＞

[問八①]　｢具体的内容抜き出し｣(｢２文｣の｢初めの３字｣指定)。傍線部(８)｢もし、美舟が筒井君にしてあげられることがあるとしたら、そういうふつうの、ちいさなことなんじゃないのかな｣について、｢美舟が具体的に何をしようとしたか｣がわかる｢ひと続きの二文｣を本文中から探し｢初めの三字｣を抜き出して答える。｢抜き出し設問｣では先ず｢抜き出し内容｣を特定し、｢抜き出し範囲｣を絞りこんでいくのが鉄則。｢内容｣は｢筒井君にしてあげられるふつうのちいさなこと｣の｢具体的内容｣だとすぐに判断できるはずだ。｢範囲｣は無論、｢同一場面｣｡ここでは、本文冒頭から傍線部直後の１行スペースが空いている前までだと分かる。だが、傍線部(８)は｢おばあちゃん｣が｢美舟｣に語った｢筒井君にしてあげられること｣について初めての言葉であり、｢美舟｣はもちろん、まだ何もしていない。そこで、｢同一場面｣の最後までを確認するが何もない。よって、次の｢場面｣が｢抜き出し範囲｣になるはずだ。丁寧に探していく。すると、本文最後から６行前に、｢筒井君｣に対しての｢美舟｣の言葉で｢こんど、うちに来て｡お父さんの絵、たくさんあるから、アトリエで遊ぼう｡｣という｢二文｣がある｡｢美舟｣が｢筒井君｣に対して｢具体的にしようとしていること｣で間違いない。｢範囲｣には他に候補はない。したがって、｢答え｣は｢こんど｣(３字)になる。尚、｢抜き出し候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢範囲｣の全てを隈なく探すこと。

＜時間配分目安：２分強＞

[問八②]　｢換言説明記述｣(｢50字以内｣指定)。同上傍線部(８)の｢そういうふつうの、ちいさなこと｣とは｢どういうことか｣を説明する。｢そういう｣とあるので基本的には｢指示語換言｣だと分かるはずだ。先ずは、開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢そういう｣＝｢『おばあちゃん』のいとこの『ナオちゃん』が、『おばあちゃん』が悲しい気持ちにならないように、ちょっとだけおひなさまにさわらせてくれるという｣だと読み取れる。そして、｢そういうふつうの、ちいさなこと｣は｢美舟が筒井君にしてあげられること｣なので、そうした補足すべき要素を｢同一場面｣からさらに読み解いていきたい。｢美舟｣は自分自身で｢筒井君｣の｢家庭の事情｣に立ち入ることをいましめており、｢おばあちゃん｣も｢ともだちとしてふつうに接し、ちょっとした楽しい時間を共有するのがいい｣とアドバイスしていることが分かる。したがって、こうした内容を整理して、｢過不足なく｣まとめていきたい。たとえば、｢家庭の事情を特別視しないで、ちょっとした楽しい時間を共有するなど、ともだちとしてふつうに接すること｡｣(50字)といった｢答え｣になる。尚、｢説明記述｣では｢最重要要素｣(｢理由説明｣では｢直接的理由｣)を必ず｢文末｣とせよ。

＜時間配分目安：３分＞

[問十]　｢役割説明選択肢｣(５択)。｢本文における『ハナゾウ』の役割として考えられるもの｣を答える。｢原意消去｣からといきたいが、流石(さすが)に本問では無理だ。本文で｢ハナゾウ｣が登場するのは、傍線部(８)の｢同一場面｣の最後の部分だけだとすぐに分かる。そこには、｢おばあちゃん｣が｢わたし｣(美舟)に、｢筒井君にしてあげられること｣についての語っている最中に、｢ハナゾウ｣がその部屋に顔を出し、｢ペロンと舌を出し、笑ったような顔で『パウッー』とほえて、｢しんみりとしていた部屋の空気が、いっきに明るくなった気がした｣とあり、続けて｢ハナゾウ｣が｢散歩を催促｣して鳴いたので、｢わたし｣は｢しかたなく部屋を出て｣いる。そして、次の場面へと転換していることが分かる。したがって、｢しずんでいた場のふんいきを変え、次の場面へのてんかんをうながす役割｣とある選択肢(オ)が｢答え｣になる。やや変則的な設問内容だったが、こうした問題では冷静に対応することが重要だと心得よ。

＜時間配分目安：２分半＞

作ることで得られるセンス、ものづくりから生まれる知とは？――かつての日本では、多くの少年が何らかの工作をしていたが、今では手を汚して実際にものを作るという習慣は衰退してしまい、失われた大切なものがある……。｢ものを作る体験｣でしか学べない創造の領域、視覚的な思考、培われるセンスについて、筆者自らの経験を踏まえつつ論じている。本文では、｢ものを作る｣うえで設計図があるものとないものの違いを述べ、設計図に従わずに作る場合、何を得ることができるのかを指摘している。やや分かりづらい語句があるが、｢注｣を活用すれば内容は理解できる。本校としてのオーソドックスな小問ばかりで、難易度も標準レベルだ。手際よく解き進めたい。以下、いくつかを検証してみたい。

[問四]　｢理由説明選択肢｣(５択)。傍線部(３)｢その方が面白いし、文章も自然な思考の流れになる｣について、｢その理由｣を答える。先ずは｢原意消去｣を試みたいが、前提として｢指示語｣があるので開いておく(｢指示語｣が出たら即開くこと)。直前から、｢その｣＝｢(小説を書くとき)行き当たりばったりで書く｣だと分かる。さて、ここは｢理由説明｣なので、｢(行き当たりばったりで書く)文章が自然な思考の流れになる｣ことの｢直接的理由｣として結びつかないものを｢消去｣する。各選択肢の｢文末｣⇒｢だから｣⇒｢(行き当たりばったりで書く)文章が自然な思考の流れになる｣と結びつくかどうかだ。確認する｡(ア)｢気楽に書けるから｣､(イ)｢人物の心情などもいかしながら書くことができるから｣､(ウ)｢わかりやすい文章が書けるから｣､(エ)｢スリルがあって面白いから｣､(オ)｢結末はどうなるかという期待を持ちながら楽しめるから｣｡どうだろうか？ ｢書く｣のだから、(エ)と(オ)はそのまま｢消去｣でき、｢自然な思考の流れになる｣のであれば、｢気楽に書ける｣と｢わかりやすい文章が書ける｣も｢消去｣可能だと判別できなくてはいけない。念のために、他の部分の説明を｢同一意味段落｣で確認する(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)。特に誤っていないと分かる。したがって、｢答え｣は(イ)になる。｢一発消去｣だ。やはり、｢原意消去｣は必須定着ツールだ。

＜時間配分目安：２分弱＞

[問五]　｢具体例判別選択肢｣(５択)。傍線部(４)｢流れに従って作っていく｣について、｢これにあてはまるもの(具体例)｣を答える。本問は｢具体例判別｣なので単純な｢原意消去｣はできない。｢流れに従って作っていく｣とはどういうことなのかを、｢同一意味段落｣から読み取っていく。直前直後から、｢設計図に従おうと無理に考えず｣に、｢作っているときに、自分の感覚として『こうした方が良いな』と思えば、素直にそうする｣ことだと判断できるはずだ。この内容を｢消去基準｣として各選択肢の説明を判別すれば、｢答え｣は(エ)の｢母の日のおくり物として赤いカーネーションの花束をかき写していたが、一本をアクセントとしてピンクに変えた｣だと判別できる。尚、｢具体例判別｣では、｢一般論｣としての内容を正確に理解して、｢具体例｣に的確にあてはめることが求められる。

＜時間配分目安：２分＞

[問六]　｢条件付き内容説明抜き出し｣(｢30字以内｣の｢初めと終わりの３字｣指定)。傍線部(５)｢抽象したものにこそ本来の価値がある｣について、｢どのような考えにもとづいて、このように述べているのか｣を本文中から｢三十字以内｣で探し、｢初めと終わり｣の｢三字｣を抜き出して答える。｢条件｣は｢『という考え』に続くように抜き出す｣こと。｢抜き出し内容｣は、筆者が｢抽象したものにこそ本来の価値がある｣と｢述べている｣ことのもとになっている｢考え方｣になる。その｢考え方｣の｢手がかり｣を｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という｢重要解法｣)に求める。直前に｢『抽象』とは、見える『象』を取り除く、という意味であり｣とある。つまり、｢見えている部分を取り除いたもの｣にこそ｢本来の価値がある｣ことになる。｢抜き出し範囲｣は無論、｢同一意味段落｣。ここでは、傍線部の形式段落から本文の最後までだとすぐに分かる。丁寧に探していく。すると、傍線部の４行前に｢ものごとの価値は、その内部に隠れて見えない『本質』にある｣という部分がある｡内容はまさに合致する。｢字数｣も｢28字｣でＯＫだ。｢同一意味段落｣には他に候補はない。したがって、｢条件｣を勘案すると、｢答え｣は｢ものご～にある(という考え)｣になる。尚、｢抜き出し設問｣では｢抜き出し範囲｣の絞り込みがポイントとなると心得よ。

＜時間配分目安：１分半＞

[問七]　｢条件付き内容説明記述｣(｢字数指定｣なし、｢120字ほど｣の解答欄)。傍線部(６)｢工作のセンスは、そのまま『生きるセンス』になる｣について、｢その理由｣を説明する。｢条件｣は｢本文全体をふまえて説明する｣こと。｢理由｣の｢手がかり｣を｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣で確認する。直前に｢だから｣とある。そのものズバリだ。｢だから｣の前が｢理由｣だ。そこには｢工作から学ぶことはいろいろなことに広く活かすことができ、社会にだって活かすことができる。そして、それ以前に自分に活かすことができ、自分の人生が、つまりは毎日の工作と同じだと気づくことになる｣といった内容が述べられている。さらに、｢補足すべき要素｣を｢条件｣である｢本文全体｣から読み取っていくと、｢工作から学ぶこと｣について｢自分で作ることによって自分の力量や作る意義に直面し、その過程で楽しさや新しさを見つけられる｣ことが分かる。以上のような内容を的確にまとめる。たとえば、｢自分で作ることによって自分の力量を知ったり、作る意義に直面したりするなどして、工作から学ぶことは社会を含めて広く活かすことができるし、何よりも工作は自分に活かすことができることによって、自分の人生は毎日の工作と同じだと気づくことになるから｡｣(120字)といった｢答え｣になる。本校では近年、本問のような｢長文説明記述｣がほぼ必出だ。説明すべき内容を読み解くことはもちろんだが、｢長文記述｣の構成、まとめ方も十分に練習しておくことが不可欠だ。

＜時間配分目安：５分＞

｢問十｣　｢品詞判別選択肢｣(５択)。｢総合的知識問題｣。｢文法｣だ。二重傍線部(Ａ)～(Ｅ)の｢ある｣のうち、｢他と異なるもの」を答える。それぞれの｢品詞｣を特定していきたい。(Ａ)｢よくあるパターンだ｣⇒｢自立語｣で｢活用｣がある⇒｢五段活用｣の動詞｢ある｣の｢連体形｣｡(Ｂ)｢自然にある石や樹｣⇒｢自立語｣で｢活用｣がある⇒｢五段活用｣の動詞｢ある｣の｢連体形｣｡(Ｃ)｢『工芸』という言葉があるように｣⇒｢自立語｣で｢活用｣がある⇒｢五段活用｣の動詞｢ある｣の｢連体形｣｡(Ｄ)｢人間というのは、ある知見を｣⇒｢自立語｣で｢活用｣がない⇒｢体言｣を｢修飾｣している⇒｢連体詞｣｡(Ｅ)｢目の前にあるのは｣⇒｢自立語｣で｢活用｣がある⇒｢五段活用｣の動詞｢ある｣の｢連体形｣｡したがって、｢答え｣は(Ｄ)だ。｢品詞判別｣では｢品詞分類表｣に従って段階的に特定していくことが肝要だ。

＜時間配分目安：30秒＞

※[問九]は｢本文内容合致選択肢設問｣。｢論説文｣なので｢論旨合致｣となり、｢頭括型｣にせよ｢尾括型｣にせよ、｢序論部分｣と｢結論部分｣との照合で判別可能だ。果敢にチャレンジしたい。尚、｢小説｣の場合の｢本文内容合致｣では、｢本文全て｣と照合させる必要があり、とても手間ひまがかかるので｢戦術的｣には｢捨て問｣で構わないと心得よ。